※時系列的には問題の無いように作っていますが、別に正史として見なくて大丈夫です。
それではどうぞ。
「ラブライブ!まであと一ヶ月か……」
ふと口から思ったことを零してしまう、ある日の午後。俺は自分の部屋でのびのびと身体を休ませていた。しかしクラックはいつ開くか分からないし、いつまた彼女達が襲われるか分からない。だから俺はこれからもインベスとの戦いに向けて備えていかなければならない。
ふむ、ならば……。
「久しぶりに見てみるか」
押し入れに歩みて戸を開けると、そこには何冊にも重なった冊子の束があった。そして、俺はその中からある一冊の冊子を手にする。
「クラックの活動が再開してからも相変わらずインベスは変わらないなぁ……」
手にとった冊子の表紙に書かれた文字に目を通す。
【インベス名鑑 著者・編集:戦極岳斗】
表紙にはそう印刷の活字で刻まれているが、その下にまた別に、親父の手書きと思われる注釈が付け足されている。
そこに書かれているのは──
『なお、本書に記載されている情報はあくまでインベスの特徴を中心にまとめたものである。国際動物命名規約に乗っ取って明記された詳細などは別資料を参考されたし』
……本当、律儀なことである。どこに公表する気だよその研究成果。
「……ま、今一度復習しとくか」
普通、ヘルヘイム関連の内容が書かれたものは、その日が過ぎるとともに全く別のものへと書き換えられ、その証拠は残らない。所謂「世界の改変」というやつだ。しかしどういう訳か、この文書含めて親父から送られてきたもの全部、世界の改変の影響を受けることはない(ただし、俺がここに書き込みをした場合はその限りではないようだ)。
でもま、こうしていつでもロックシードやインベスの説明を確認できるのはありがたいことだ。
親父からドライバーを(一方的に)送られてきた時と同時に傍にあった数冊の冊子。その内の一つを、俺は久しぶりに開いた。
……親父が命名したであろう愉快な学名には……まあ、触れない方向でいこう。彼の名誉のためにも。
【初級インベス】
学名:Helheimia unguis(ヘルヘイムの爪)
インベスの中でも、現段階で最も多く森に生息していると推測される種。全身を濁った白色の装甲で覆われており、右腕の爪が左腕のそれよりも発達している。赤、青、緑と顔面の形の違うの三色の個体が確認されるが、その生体や行動パターン、遺伝子情報に全くの変化が見られないことから、この三種を同種(または亜種)と見なす。また凶暴化すると顔面が四方に割れ、その中には更なる顔が存在することも確認されている。
【初級インベス飛行体】
学名:Helheimia pluma(ヘルヘイムの羽根)
初級インベスがヘルヘイムの果実を食べて進化した種。人間世界の昆虫のような羽根を持ち、飛行能力を獲得した。しかし、飛行能力を持つ以外は殆ど初級インベスと変わらない生体である。
<なお、「初級インベス」と「飛行体」は身体の造りが違えど同種の可能性が高く、今後の研究・調査が期待される>
「ま、ここら辺はよく見るよな」
そう漏らしながら、俺はことりと初めて会った時の事を思い出す。そう言えばあの時のインベスも初級インベスだったよな。なんかもうことりとの出会いが懐かしく感じるよ。そんな昔の事を思い返しながらも、俺は次の項の説明へと目を移す。
「さ、次々……と」
<なお、以下に著される【上級インベス】は、全て初級インベスがヘルヘイムの果実を摂取した事による急速な進化の結果誕生した、「別種」である事をここに注釈しておく>
【シカインベス】
学名:Helheimia sonoruscornu(ヘルヘイムの騒がしい角)
人間界のシカのように、頭部に大きな角を持つインベス。全身が青色に染まり、背中にも鋸状の突起物を備えている。また、手足は硬い蹄のような外骨格で覆われている。全身の筋肉がバネのように発達しており、非常に軽快な動きを取るとともに、その腕力や脚力が協力なものになっている。
【シカインベス強化体】
学名:Helheimia brachium(ヘルヘイムの腕)
シカインベスがヘルヘイムの果実を摂取して更に進化した種。全身が巨大化するとともに、腕が特に発達している。性格も凶暴化していると考えられ、その攻撃方法もより荒々しいものになっている。見かけの巨体に見合わず非常にアクティブな動きを繰り出してくることから、この強化体は持ち前の筋肉以上に、質量や密度が見かけよりも小さいものだと思われる。これには更なる研究、調査が必要とされる。推定身長約5m。
「そういやぁ、コイツにはスイカさんも潰されたっけ」
いつぞやか真姫を助けに行った無人スイカアームズがこの強化体に潰されたのを思い出し、苦笑する。それと、あの時だよなぁ。真姫が、俺が再び戦いのさなかにいることを知ったのは。いや、知ったというより確信した、という方が正しいか。何だかんだで真姫も鋭いところがあるし、アイツも心のどこかで感じていたんだろう。俺が戦っていることを。
……さて、次々。
【コウモリインベス】
学名:Helheimia nigerala(ヘルヘイムの黒い翼)
人間界の蝙蝠のように翼を持ち、飛行能力を持ったインベス。その翼自体が鋭い作りになっており、翼を剣のように振るって敵に攻撃を仕掛ける。また、空中からの強襲も得意戦法とし、例の翼ですれ違いざまに相手を斬り裂く。その姿はさながら吸血鬼のようであり、恐らく西洋における「吸血鬼伝説」の正体であると考えられる。
【コウモリインベス変種体】
学名:Helheimia albusgladius(ヘルヘイムの白い剣)
白い翼を持つ、コウモリインベスの変異種。当初コウモリインベスの白色個体あるいはアルビノ個体かと思われたが、コウモリインベスと違い右腕が肥大化、剣のような形に変化し、更に超音波を使った攻撃をしてくることから、現種をコウモリインベスとは別種と考える。
「コイツはいつだったか、ことりを守ってくれたよな」
ことりがロックシードを使用して呼びだしたコウモリインベス変種体。ソイツは呼びだした主であることりの命に従い、彼女と、そして彼女の友である穂乃果と海未ちゃんを敵インベスから守ってくれた。
「まあ、結局俺がいいとこ取っちゃったんだけどな」
それに、海未ちゃんに自分のしている事(鎧武)を知られたのもこの時だと思い出し、ふと苦い笑みを浮かべてしまう。
よし、じゃあ次の項目だ。
【セイリュウインベス】
学名:Helheimia longuscollum(ヘルヘイムの長い首)
全身を半金属化した強固な皮膚で覆われた、人間界で言うヒト型の「龍」のような姿をしたインベス。口から高熱の火球を飛ばして相手を攻撃する。
【セイリュウインベス強化体】
学名:Helheimia caelum(ヘルヘイムの空)
セイリュウインベスがヘルヘイムの果実を摂取して進化した種。その姿はまるでヒト型ではなく、我々人間の知る「龍」そのものであり、恐らく有史以前から各地に伝わる龍の伝説はこの種のことだと考えられる。強化したことによりその身体は巨大化し、身体をうねりながら宙を浮遊し、飛行能力を獲得した。セイリュウインベス同様、口から火球を飛ばして攻撃する他、その巨体を持ってして突進や尾での薙ぎ払い、鋭い爪での斬撃を繰り出すなど、その攻撃性、残虐性がより高まった種である。
「見た目はカッコいいよな。見た目は」
いつぞやか、ダンデライナーを壊されたことを思い出し、少し怒りがぶり返してくる。結局あの後、無事に森で補給できたからよかったものの……。
しかしこれを読む限りヘルヘイムと人間界との繋がりは古いらしく、有史以前にもコイツやコウモリインベスは姿を現したようだ。しかもその伝説が残っているということは、やはり過去には世界の改変は起きていなかったということなのだろうか……? じゃあ今のこの現象は何なんだ? やはり誰かが意図的に……。
しかし今の俺が考えたところで答えは出ないだろう。少なくとも親父に会わない限りは、な。
「そういや、希の時には二体も現れたっけコイツ」
龍の伝説って安いなぁ……。軽くガッカリしながらも、俺は次の項へと視線を移す。
【カミキリインベス】
学名:Hlheimia antenna(ヘルヘイムの触角)
カミキリムシを連想させる長い触角が特徴的なインベス。頭の触角を鞭のように振り回して攻撃するという特異的な攻撃方法をとる。また全身が瑠璃色の滑らかで硬質な外骨格に覆われ、前方に掛かる装甲が陣羽織のような造りになっている。現在著者が開発中のジンバーアームズのデザインの参考になっているインベスでもある。
「あ、そうだったのね。ジンバーって」
穂乃果の前で初めて変身した時の事を思い出しながら、俺はコイツの評価を少し改める。まあ、確かに陣羽織っぽいけどさぁ。
「確かにこの冊子が届いた時はまだエナジーロックシードも無かったしなぁ……」
随分前の事を思い出して懐かしくなりながらも、俺の目線は止まる事はない。よし、次の項目っと……。
【ライオンインベス】
学名:Helheimia sollemniscoma(ヘルヘイムの荘厳な
人間界のライオンに似た赤いインベス。獰猛な性質のインベスで、その身体能力はインベスの中でも突出している。俊敏な動きと持ち前の爪を用いて敵を容赦なく追いつめる。また、全身を覆う赤い装甲は外骨格というよりも非常に高質化した筋肉であると考えられる。翼が生えた個体も確認されているが、これはライオンインベスの成長した姿だと考えられる。この種は成長と共に爪や背中の翼が大きくなり、飛行能力を得るようになる。
【ヤギインベス】
学名:Helheimia rubeoramula(ヘルヘイムの赤い蹄)
山羊のように捻じれた角を持つインベス。瞬発力に優れているだけでなく、その強固な角を用いた突進を得意とする。そしてこの種の最大の特徴は伸縮自在なその角である。敵と判断したものに対して、その角をドリルのように回転させながら敵を貫こうする。その最大射程距離は推定15m程度。
「こいつ等は絵里と関連深いな……」
俺が初めて絵里を助けた時のライオンインベス(翼無し)、そして絵里に傷を負わせたヤギインベス。今更ながら彼女に傷を負わせてしまったことに対し、自分自身に怒りが込み上げてくる。あの時、俺が絵里を傷つけていなければ。俺がもっと早くたどり着いていれば。とは思っても、もう過去の事だ。今更過去を変えることなんてできない。こればかりは仕方無いだろう。
そう言えば初めて凛ちゃんの前で戦った時のライオンは翼持ちだったなぁ。そう思い返しながら俺は次の項へと視線を動かす。
【イノシシインベス】
学名:Helheimia currus(ヘルヘイムの戦車)
人間界の猪に酷似した、赤い皮膚を持つ巨大なインベス。今まで発見されたインベスの中では比較的人間界の生物に似た特徴を兼ね備えているが、後ろに波打つ二本の角や西洋建築のような造りの外骨格で覆われた皮膚など、明らかに既存の生物ではありえないヘルヘイム生故の特徴も有している。その攻撃方法も猪宛らの突進戦法だが、子の種は従来の人間界の猪とは異なり、得物を逃したと感じた瞬間に方向転換することが可能である。
「コイツは合宿の時に現れたよな……」
お蔭でほぼ不意打ちがてらにツバサにゲネシスドライバーを渡す羽目になってしまった。ま、結果的にμ'sのみんなが無事だったからいいけどな。そしてコイツの件でニコと花ちゃんが巻き込まれ、μ'sのみんなが鎧武の事を知ることになったんだよな。結局みんな本当に因子持ちだったし、鎧武の事を知られたのもこれはこれで良かったのかもしれない。
花ちゃんにも「鉱芽さん」って、名前で呼んでもらえるようになったしな。
「ま、ケセラセラってな」
そして俺は次のページを捲り、その最初の名前を確認しようとする。
しかし──
【ヘキジャインベス】
「…………」
その名前──―正確にはその隣に描かれているヘキジャインベスのスケッチ画を見て、俺はそっと冊子を閉じる。そうか……この名前も既に……ここに、書かれていたのか……。そしてコイツの画も、ここに残っていたのか……。
でも、そんなのが無くたって、どんな見た目かなんて覚えている。
どんな能力を持っていたかも覚えている。
全部……全部覚えている。
絶対に忘れない……忘れてなるものか……っ。
「もしアイツを忘れてしまったら俺は……俺は……っ」
『──ピピッ──ピピッ──』
「っ!?」
そんな中、端末が告げるクラック出現の通知。それを聞いた途端に俺は全てのスイッチを切り替え、いつものように戦士の仮面を被る。
──────────────
「ここからは俺のステージだ!」
サクラハリケーンに跨り颯爽とインベスの眼前に現れる俺こと鎧武。今回は因子に引き寄せられたクラックではなく、自然に発生したものらしい。しかしそれでもインベスという異界の野獣を解き放つ門は危険すぎる。今だって俺の目の前の初級インベスの背後には、クラックが不気味に浮いている。
とにかく今は別の敵が現れる前に、目の前の敵を倒すことに集中しよう。
そして俺は懐からロックシードを取り出し、解錠する。そこに施されたデザインは、宛ら松ぼっくりのようだった。
『マツボックリ!』
その電子音と共に俺の頭上に人工的にクラックが生成され、その中から巨大な松ぼっくり型のアームズが姿を現わす。
そしてロックシードをドライバーにはめ込んで施錠し、俺はカッティングブレードでロックシードを切り開いた。
『マツボックリアームズ! 一撃! イン・ザ・シャドウ!』
黒色の松ぼっくりが展開され、鎧武の更なるアームズへと変化する。オレンジアームズのような和風の鎧だが、オレンジやメロンのように荘厳な武将というようなものではなく、むしろ戦の最前線で戦う足軽のような姿だった。
これがマツボックリアームズ。今の俺が持つロックシードの中では最も出力の低いアームズだ。これを使うくらいなら、普通にオレンジのままで戦った方がいいくらいだ。しかし侮ること無かれ。
「うるぁあっ!」
アームズの展開と共に右手に現れた一本の黒い槍──
マツボックリアームズ自身に大した能力は無いが、この影松が非常に扱いやすいのだ。このマツボックリアームズは相手の力に対して柔軟に流すこと戦うことを求められてくるが、それも影松さえあれば容易だ。敵の攻撃を簡単に否すことができる。そして、そこからの止めの一撃も簡単に……。
『マツボックリスカッシュ!』
「セイハアアアアァァ!!」
影縫い突き──黒いオーラを纏った影松の一撃がインベスの身体を貫き、インベスは呆気なく爆発してしまう。
しかし、どうやらまだまだ終わりそうにないみたいだ。
「ルゥォオオオオ!!」
更なるインベスがクラックを超えて人間界に現れる。お次はセイリュウインベスか……だったら次はコイツだっ。
『ドングリアームズ!
続いて鎧武に展開される新たなアームズ。それはまるでドングリを被ったようなアームズ……ってそのまんまだな。しかしその鎧はかつての古代ローマの兵を連想させる不思議な造りであった。
「ふんっ!」
ドングリアームズの武器、それはハンマーである……と言えば聞こえはいいかもしれないが、実際のところ少々大きめの小槌といったサイズだ。しかも名前が「ドンカチ」ときたもんだ。
一体どう言う趣向なんだ? これ、本当に親父が考えたのか? いや、そもそも「花道・オン・ステージ!」とかいう謎の音声自体おかしすぎる。ほぼ確実に親父ではない誰かの意図さえ感じる。例えば母さんとか……。
「(って、んな事考えてる場合じゃねぇよな)せやぁああ!」
こんな見た目こんな名前でも、その性能は本物だ。現に今だって、半金属化した強固な皮膚を持つセイリュウインベスにドンカチの強烈な一撃が炸裂し、セイリュウインベスの皮膚を越えて身体の芯にまでダメージを与えるに至っている。
『ドングリスパーキング!』
「はぁああああ!!」
そのままカッティングブレードを三回下ろし、必殺技を発動させる。ドンカチを中心に大気の空気が圧縮されていき、それをインベスに向けて放った瞬間、槌から高圧力の衝撃弾が発射される。その弾丸をまともに受けたセイリュウインベスは悲鳴と共に業火の中へと消え去った。
「グウォォォォォ」
「やっぱまだ来るよな。だったら──」
『クルミアームズ! ミスター・ナックルマン!』
それでも減る事はないインベスに対し、俺も更にアームズを変えて対抗する。今纏っているクルミアームズの最大の特徴は何と言ってもその拳だ。両腕に備え付けられた「クルミボンバー」と呼ばれる巨大なガントレットが、このアームズの戦闘方法を見事に表している。そう、このアームズはただ殴るのみ! 巨大な拳で、圧倒的な威力わ持ってして、敵に鉄拳をお見舞いするのがこのクルミアームズだ。
『クルミオーレ!』
カッティングブレードを二回下ろして放たれるクルミアームズの必殺技。両拳に集まる高密度のエネルギーを、右、左、と順に相手に殴りかかるように振り被る。するとクルミボンバーから溜まったエネルギーが一気に放出され、敵インベスを一瞬で飲み込んでしまう。
「セイッ、ハアアアァ!」
「グギィャァァァァア!!」
そして俺の鉄拳を食らったインベスは、悲鳴と共に呆気なく爆散してしまった。
「そろそろクラックも閉じてくれると嬉しいんだけどね」
「グルゥォォォォオオ!」
俺の願望虚しく、新たに現れるインベス。あぁ〜もう、くそッ。なんで今日はこんなに長いんだよっ!?
「だったらいくらでもやってや──」
「鉱芽!」
「鉱芽さん!」
「鉱芽!」
「──って、絵里にことり……それに真姫もっ?」
どういうわけかこの戦いの最中、彼女達はこの場まで駆け付けてきたのだ。
「何でここに……」
「妙な少年に言われたのよ。『鉱芽が戦ってる』って」
「妙な少年?」
「うん、私たちも同じことを言われて、それで……」
彼女たちのその言葉にとてつもない違和感を感じてしまう。真姫やことりの証言が本当だとしても、俺を──しいてはヘルヘイムを知っている「少年」なんていないはずだ。少なくとも俺はそんな奴知らない。とすれば、ソイツは一体何者なんだ……?
「ギュルルルゥゥ……」
「……まあ今はそれどころじゃないよな。ことり! お前の錠前貸してくれ!」
「えっ? は、はいっ!」
そしてことりは以前俺から託されたキウイロックシードを俺に投げ渡し、俺も回転しながらそれを掴んでベルトに施錠、そしてアームズチェンジを開始させる。
『キウイアームズ! 撃・輪・セイッ! ヤッ! ハッ!』
鎧武の身体に新たに装着される緑色のアームズ。まるでエラのように兜の側面に備えられた飾が特徴的なキウイアームズ。そしてその武器は、両手に構えられた大きな円形の刃──キウイ撃輪だ。更に言うなら、古代インドで使用されていた「チャクラム」という投合武器に近い形状をしている。
「ふんっ、せあぁ!」
まるで躍るように身体を回転させながら、キウイ撃輪の刃で流れるように敵に連撃を浴びせる。その動きはしなやかでスピーディーで、まるで捉えどころがない。近接武器としても割と戦えるのだが、それだけではない。
「はぁっ!」
「ギュワァア!!」
俺は距離を取ろうとしたインベスへ向け、身体を回転させてキウイ撃輪をブーメランのように投合する。キウイ撃輪はチャクラムのように投げ飛ばして中距離の敵を斬り裂くこともできるのだ。その威力も相当なもので、必殺技を発動させることなく、簡単にインベスは爆散してしまった。
まあ強力なのは強力なんだが、如何せん戦闘時の動きが一定化されてしまうため俺はあまり使用してこなかったアームズでもある。
「絵里っ、次お前の貸してくれ!」
「ええ、受け取って!」
「っし、サンキュ!」
『ドリアンアームズ! ミスター・デーンジャラース!』
続いて深い緑色の鎧、ドリアンアームズにチェンジする鎧武。ドリアンの名から分かる通り、その装甲は棘だらけで全身凶器とも言えるものだ。兜は古代ギリシアのスパルタ兵のような造形で、力強い風貌を感じさせる。そして両手に現れる鋸状の双剣──ドリノコを構え、続いてクラックから現れるインベスを斬り裂いていく。
「っらあぁ!」
実を言うとこのドリアンアームズ、ジンバーアームズや一部の試作品を除けば今のところ一番スペックが高かったりするのだが……如何せん使いづらい。間違いなく破壊力はあるのだが、どうも動き辛いというか、二刀流はオレンジで間に合ってるというか……。まあ、何だかんだでこれもキウイ同様そんなに使っていないアームズだったりする。
『ドリアンオーレ!』
ドリノコを高く構え、その剣先にバチバチと音を放ちながら緑色の球体のエネルギーを作りだす。そしてその球体──ドリアンのように刺々しいエネルギー弾を、俺はインベス向けて放った。
これがドリアンアームズの必殺技「ドリアッシェ」……本当に誰のネーミングなんだよ、これ。インベス名鑑共々送られてきたカタログ説明に必殺名諸共全部記載されていたが、いい加減そのセンスの出所が知りたくなってきた。
しかしそれでもロックシードの力は相当なもので、ドリアッシェの一撃が目の前のインベス複数を巻き込み、まとめて葬り去ってしまう。
それに、そろそろ終わりが見えてきたようだ。
「真姫っ、お前のも!」
「分かってるわよ!」
『ウォーターメロンアームズ! 乱れ玉・ババババン!』
真姫からロックシードを受け取り、すぐさまアームズチェンジを済ませる。そうして現れる鎧はウォーターメロン──即ちスイカだ。親父から送られてきたカタログによれば、元々スイカアームズの試作品(失敗作)だったものを使用可能なまでに改良したものらしい。しかしその形状はどちらかというとメロンアームズよりで、左手に出現したのはメロンディフェンダーに酷似した、巨大な楯──ウォーターメロンガトリング。ガトリングの名の付く通り、これは巨大な盾とガトリングガンが一体化した超兵器である。
そして俺は得物のバルカン砲の照準を目の前のクラックに捉えると、そこから出てこようとするインベスに容赦ない攻撃を始めた。
「「「グギュゥゥアァァァォォァア!!」」」
「っ……きっつ、これっ……」
しかし、やはり強力な分、その疲労も半端ない。これでようやく使用可能とは……試作品ってのがどんなヤバいものなのか余計に気になってしまう。
だが、そろそろいつも通りに決めさせてもらおうか。
『ウォーターメロンスパーキング!』
「ライダーキック……っ!」
カッティングブレードを三回斬り下し、俺はウォーターメロンガトリングを投げ捨てて空高く跳躍する。そして最後に残ったライオンインベス向けて、その右足を付きだした。
「セイハアアアアァァァァァア!!」
無頼キック──緑色の果実のエネルギーを纏わせた鋭い蹴りがインベスを吹き飛ばし、敵は悲鳴を上げることなく、爆炎と共に跡形もなく消え去った。
それと同時にクラックの消滅を確認し、俺は軽く息を吐きながら変身を解除する。
「ふぅ……ま、こんなもんか」
「鉱芽っ」
「お疲れ様です」
「大丈夫? どこか怪我なんて──」
「してないって。こんなんでやられるタマかっての」
戦闘が終わったことを察し、俺に駆け寄ってくる3人の女神達。心配かけてくる絵里を安心させるように返しながら、彼女達に先程受け取ったロックシードを返す。
今回現れたクラックはどうやら自然発生のようだが、とにかく誰にも危害が及ばなくてよかった。そんなひと時の安堵を噛みしめながら、俺たちはつい先程まで戦場だった公園を去っていった。
──────────────
鉱芽がインベスを全て倒したのとほぼ同時期、ヘルヘイムの森にて──
ギュィィィィィィン
「……」
静かに閉じられるクラック。その光景──正確には鎧武とインベスの戦闘を、ずっと見続けていた影が二つ。
彼らはそこに確かに存在していた。
一人は男。もう一つの影は黒い蝗のような異形。
彼らが放つ異様な存在感は、ヘルヘイムの森という異質な空間の中でもとりわけて異彩を放っていた。しかし彼らが纏う空気はインベスとは比較にならないほど重く、どす黒い。
「……ふん」
そして男は自分の手に握られているソレを見やる。
それはロックシード。
黒いリンゴを模った、正しく「闇」を表すもの。
『ダークネス!』
新たな脅威は、彼らのすぐ近くまで迫っていた。
──────────────
鉱芽が出ていった後の無人の部屋。その机の上に置かれているインベス名鑑の冊子。そしてその冊子は丁度、鉱芽が急いで動きだしたことにより自然とページがめくれていた。そこに開かれていたのは表紙の裏のページ。そしてそのページに書かれていたことは……。
──インベス(Helheimia属)を遺伝子学的観点において研究した結果、インベスの遺伝子情報はいずれもヒト科のそれと一致することが判明している。従って分類学上においてインベスはその
本書に挙げるインベスのタイプ標本は全て旧グランジョム邸にて保管されている。
なお、本書を編集するにあたってアドバイザーとして監修に当たってくださった戦極舞衣、ロシュシェンム、シャムビシェに対し、多大な感謝を送ります。
著者・編集:戦極岳斗
以前に期間限定で投稿した話の増量版ですね。どうにかしてアームズウェポンの紹介はしておきたかったので(もちろん
あと、活動報告で行われているアンケートに是非ご協力ください。
それでは次回、第二部開始です。どうぞご期待ください。
(もしかすると期間限定で予告編を入れるかもしれませんが……)