ラブライブ! ー果実の鎧武者ー   作:春巻(生)

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みなさまのおかげで本作品も通算100,000UAを達成しました。
そこで今回は、今まで10,000UA毎に上げたキャラクターデータの総集、第二部に登場した人物のデータ、そして短編集を公開します。

それではどうぞ。


【100,000UA記念】キャラクターデータ&短編集

 名前 葛木(かつらぎ) 鉱芽(こうが)

 一人称 俺

 年齢 19歳(物語開始時)

 誕生日 7月7日

 血液型 B型

 身長 180cm

 好きな食べ物 寿司、オレンジ

 嫌いな食べ物 トマト(1年前と比べ食べられるようにはなった)

 変身ライダー 鎧武

 

 フルーツパーラー「ドルーパーズ」でバイトをしており、μ'sの指導者としても彼女達と共に活動している好青年。器用で多才であり、また生まれつき五感が異常に優れている。どこか達観したような姿勢を見せながらも、その実目立ちたがりな一面も持つ。

 

 

 

 

 名前 板東(ばんどう) 又三郎(またさぶろう)

 一人称 俺

 年齢 34歳(初登場時)

 誕生日 5月25日

 血液型 A型

 身長 186cm

 好きな食べ物 カレーライス

 嫌いな食べ物 無し

 

 フルーツパーラー『ドルーパーズ』のオーナー。鉱芽からは「おやっさん」と呼び慕われている。パフェ作りに関しては彼の横に出る者はいないと言われるほどの腕の持つ。非常に達観した考えの持ち主であり、過去の鉱芽を救い、そして現在の鉱芽の人生観にも強い影響を与えている人物。

 

 

 

 

 名前 尾崎(おざき) 勇次(ゆうじ)

 一人称 俺

 年齢 20歳(初登場時)

 誕生日 11月20日

 血液型 O型

 身長 182cm

 好きな食べ物 ピーナッツ

 嫌いな食べ物 蟹

 

 鉱芽と同じくドルーパーズでバイトをしている大学二年生(一浪している模様)。「ザック」という愛称で親しまれており、本人もこの呼び名が気に入っている。鉱芽の事情(ヘルヘイムの浸食)を知らないが、相談に乗ってくれたりと何かと鉱芽の助けになってくれる存在。

 

 

 

 

 名前 鹿角(かすみ) 裕吾(ゆうご)

 一人称 僕

 年齢 21歳(初登場時)

 誕生日 5月5日

 血液型 A型

 身長 175cm

 好きな食べ物 さくらんぼ

 嫌いな食べ物 辛い物

 

『フラワーショップゆうゆう』の経営者。花を扱う人らしく、笑顔の綺麗な青年。親が他界しているため、弟の裕太の親代わりとして今まで彼を育ててきた。なお、その端整な顔立ちから女性ファンが多く、バイトの希望者が後を絶たないらしい。

 

 

 

 

 名前 鹿角(かすみ) 裕太(ゆうた)

 一人称 僕

 年齢 8歳(初登場時)

 誕生日 12月12日

 血液型 A型

 身長 127cm

 好きな食べ物 チョコレート

 嫌いな食べ物 レモン

 怪人態 ビャッコインベス

 

 祐吾の弟。小学三年生。絵里と仲良くなるが謎の男から受け取ったヘルヘイムの果実を摂取し、インベス化する。人間素体インベスの性質故の行動で多くの被害を出し、絵里も説得を試みるが効果はなく、鉱芽の変身した鎧武ジンバーチェリーアームズに倒される。

 

 

 

 

 名前 内城(うちしろ) 美保(みほ)

 一人称 私

 年齢 26歳(初登場時)

 誕生日 8月31日

 血液型 O型

 身長 165cm

 好きな食べ物 カステラ

 嫌いな食べ物 ドリアン

 

 ことりがアルバイトをしているメイド喫茶の店長。眼鏡をかけていて知的な大人の印象を与えるが、どちらかというと可愛い系。また、どこかサバサバした性格でもある。おとめ座という事もあって凰仙に気に入られてスカウトされ、そのまま店長を務めるまでに至った。

 

 

 

 

 名前 凰仙(おうせん)・ピエール・アルフレッド(本名:凰仙(おうせん) 岩之介(がんのすけ)

 一人称 ワテクシ

 年齢 40歳(初登場時)

 誕生日 5月14日

 血液型 B型

 身長 185cm

 好きな食べ物 スイーツ全般

 嫌いな食べ物 心のこもっていない料理

 

 ことりがアルバイトをしているメイド喫茶のオーナー。メイド喫茶だけでなく様々なジャンルの店を構える大経営者であり、同時に一流のパティシエでもある。かつてフランス国籍を得るためにフランス軍に入隊していた経験を持つが、それも全てフランスで一流のパティシエになるという夢のためである。ことりをメイドにスカウトした張本人。

 

 

 

 ──以降、第二部からの登場人物──

 

 

 

 名前 立花(たちばな) 道行(みちゆき)

 一人称 僕

 年齢 19歳(初登場時)

 誕生日 7月4日

 血液型 A型

 身長 170cm

 好きな食べ物 葡萄

 嫌いな食べ物 蛸

 変身ライダー 斬月・真

 

 通称「ミッチ」。鉱芽と亮子(後述)と共に「チーム鎧武」発起人の一人。鉱芽の一つ下で親友、そして亮子の恋人であったが、亮子のインベス化後は彼女に関する記憶を全て失う。立花ホースライディングクラブの経営者の息子であり、また祖父による鍛錬のために人並み外れた運動能力を持つ。現在のチーム鎧武のリーダーを務めており、鉱芽と同じくドルーパーズでバイトをしている。

 

 

 

 

 名前 長谷川(はせがわ) 亮子(りょうこ)

 一人称 私

 年齢 17歳(享年)

 誕生日 3月22日

 血液型 B型

 身長 161cm

 好きな食べ物 刺身

 嫌いな食べ物 グリーンピース

 

 鉱芽の初恋の相手でミッチの恋人。ヘルヘイムの実を摂取してインベス化し、鉱芽の変身した鎧武ブドウアームズに倒される。インベス化した後に自分の叔母であり、鉱芽の家政婦であった伊織(後述)に重傷を負わせる。その容姿は絵里に非常に酷似しており、鉱芽は一度、絵里を亮子と見間違えている。なお、鉱芽と出会った当初は彼から敵意を抱かれていた。

 

 

 

 

 名前 草薙(くさなぎ) 伊織(いおり)

 一人称 私

 年齢 32歳(現代編登場時)

 誕生日 1月14日

 血液型 A型

 身長 166cm

 好きな食べ物 とんかつ

 嫌いな食べ物 無し

 

 亮子の叔母で、鉱芽の家政婦。鉱芽が東京に戻り、一人暮らしを始めるにあたって親戚が勝手に雇っていた。彼女自身も非常にお人よしな性格。しかし鉱芽にとってはなくてはならない存在であった。鉱芽が亮子と知り合えたのも彼女のお蔭。現在、西木野総合病院で入院中。怪我によって歩くことができなくなったために、車椅子の生活を強いられることになった。時たま鉱芽が見舞いに訪れる。

 

 

 

 ──────────ここから小話──────────

 

 

 

【大切な人】《第37話後の出来事》

 

 

 

「……いお姉?」

 

「……」

 

「(寝てる……?)」

 

 

 片腕に花を摘んだ籠を提げ、育ての親が入院している病室の扉を開けたはいいが、返事は無くどうやらおやすみのようだ。せっかく"彼女たち"を連れてきたのに……。

 

 ここは西木野総合病院。真姫の父が経営している、ここらで一番大きい病院だ。俺は先ほど「フラワーショップゆうゆう」でユウゴから花を買い、そして"彼女"にμ'sを紹介せんと、ここに真姫と穂乃果と凛ちゃんを連れてきたのだが……生憎タイミングが悪かったようだ。

 

 

「とりあえず花だけでも飾ってあげれば?」

 

 

 付いてきた真姫に勧められて、俺は静かに彼女の病室へと足を踏み入れる。それに続いて真姫、そして穂乃果と凛ちゃんも彼女の近くまでゆっくり歩いてきた。

 

 

「鉱芽さん……この人は?」

 

「この人は……」

 

 

 花の籠を適当な机に置き、彼女──いお姉の目にかかってる前髪を避けようと思って彼女に手を伸ばした瞬間──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉぉぉぉぉ──ー!!」

 

 

「ぅおわぁぁっ!!?」

 

「「「っ!!?」」」

 

 

 何の前触れもなくいお姉はベッドから上体を起こし……というか跳ねた。俺の目の前で急に両手を広げて、驚かしにかかってきたのだ。正直、俺も心臓が止まるかと思った……。

 

 

「んっふふ、寝てると思ったでしょ、コウちゃん」

 

「あぁぁ~……ビックリしたぁ……」

 

 

 完全に油断してる時に、しかもいお姉にやられたのでは対処のしようがない。普段の外出時やインベスを相手にしてる時では絶対に有り得ないことだが、彼女が相手ではどうも心が緩んでしまうようだ。またいつかのように利用されてしましそうだから直したいのだが、まだどうにもならなさそうだ。

 

 

「もうやめてくれよな。心臓がいくつあっても足りないから」

 

「ええ~どうしようかな~。コウちゃんの反応かわいいんだも~ん」

 

「……ほどほどにお願いします」

 

 

 苦笑しながらも、完全に緩みきった表情で彼女と言葉を交わす。笑顔のいお姉の前では顔や身体中の筋肉が有無を言わずに解けてしまう。彼女のいるこの空間は、俺にとって数少ない完全に心の安らげる場所なのだ。

 

 

「なんだろ……鉱芽さん、いつもより楽しそう……?」

 

「あんなに声出すところ初めて見たにゃ」

 

「そりゃあそうでしょうよ。何せ鉱芽の育ての親だもの」

 

「えっ、そうなの?」

 

 

 後ろでは彼女たちのそんな会話が聞こえてくる。っと、そうだそうだ。折角起きていたなら彼女たちを紹介せねば。その為に連れてきたのだから。

 

 

「真姫ちゃんも久しぶりかな。その子たちはお友達?」

 

「まあ……そんなところ。でも単に友達っていうか、私たちは──」

 

「私たちは音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ'sです!」

 

「──って、やっぱりこうなるのね……」

 

 

 真姫の言葉を遮って、穂乃果が元気よくそれに答えた。なんとなくこうなる事が分かっていたのか、真姫は苦笑いしながら彼女に発言権を譲っていた。

 

 

「ねぇ、もっと教えてくれるかな? 今までどんな事をしてきたの?」

 

「! はいっ!」

 

 

 そして穂乃果もいお姉の期待に応えるがまま、今の自分たちの軌跡を嬉々として語り出した。

 学校を廃校から救うためにスクールアイドルを始めたこと。敗北から始まったらしいファーストライブ。数々の苦難に増えていく仲間。新たなる目標──ラブライブ! そして数日後に迫ったオープンキャンパスへの想い。

 一つ一つの思い出をまるで昨日のように、いや今も体験しているように感情豊かに話す穂乃果は、きっといお姉の眼にはとても輝かしく、そして愛おしくみえたことだろう。本当、人の心を掴むのが得意な奴だ、高坂穂乃果という人間は。

 

 

「──というわけで、今も音ノ木坂を廃校から救うために、日夜努力に励んでます!」

 

「そうなの……ふふ、みんな可愛いわ」

 

「ありがとうございます! それで、鉱芽さんには毎日ダンスを指導してもらってるんです!」

 

「あらぁ、そうだったの。通りでコウちゃん、最近楽しそうだと思った」

 

「っていうか鉱芽、伊織さんに話してなかったの? μ'sのこと」

 

「あっはは~、ごめんごめん」

 

「全く……」

 

 

 真姫から小言を挟まれるが、だからこそ今日いお姉にμ'sを紹介しようと思ったのだ。今まで彼女に伝えなかったことについては勘弁してほしい。

 

 

「私の知ってる子もスクールアイドルやってるの」

 

「そうなんですか!? どんな人なんです?」

 

「とっても可愛い子よ、ふふっ。でも、あなた達も負けてないよ」

 

「そ、そうですか~えへへ~」

 

 

 何てない事のように知り合いのスクールアイドルの話をするが、いお姉の言ってるアイドルとはツバサのことだ。彼女も時たまここへ見舞いに訪れて、彼女と談笑をしゃれ込むことがある。俺とチームを組んでいたツバサのことをいお姉はよく知っているのだ。だから、いお姉はツバサがどんな立場にいるかということも全部知っている。

 

 全国で圧倒的トップの人気を誇るスクールアイドル──A-RISE、そのセンターだということを。

 

 だけど彼女は敢えて言葉にはしない。全スクールアイドルの憧れであり目標である彼女の名を出して、目の前の少女たちをプレッシャーにさらすことを彼女は善しとしないのだ。非常にほんわかした態度で尚且つお節介な彼女だが、そう言うところはしっかりと配慮する人なのだ。

 

 

「そう言えばコーガさん、伊織さんのこと『いお姉』って読んでるけど、二人って親戚だったりするんですか?」

 

「あ、それ私も気になってた。ねえ、どうなの鉱芽さん?」

 

「いや別にそういう訳じゃないよ。いお姉は、元々は俺の家政婦だったんだよ」

 

 

 凛ちゃんの抱いた質問に穂乃果も賛同するようにこちらに問いかけてくる。違う苗字に似てない顔、少なくとも姉弟でないのは分かるだろう。俺は正直に彼女が俺の家政婦だったことを二人に告げる。二人とも意外そうな表情を隠そうともせず「へぇ~」と同じ反応を繰り出してきた。

 

 

「元々じゃなくて、今も家政婦のつもりだよ?」

 

「俺が高校出るまでって話だったでしょ」

 

「あれ? そうだっけ?」

 

「そうだよ……でも、まあ……」

 

「ん? なぁに?」

 

「何でも」

 

 

 ……彼女と共に暮らしていくはずだった亮ちゃんはもういない。だからいお姉さえ良ければ、彼女が退院した後もずっと俺の家で働いて……いや、暮らしてほしい。これからもずっと、いお姉と家族として過ごしていきたい。そう願っているのだが、この場でそんな大それたことを言える勇気もなく、俺は言葉を飲んだ。

 

 

「……他人に言っておいて自分だって素直じゃないじゃない」

 

「聞こえてるぞ真姫」

 

「聞かせてんのよ」

 

 

 こりゃ耳が(いて)ぇや。ボソっとわざと俺にだけ聞こえるように毒づいて何故か嬉しそうな真姫。普段口喧嘩で勝てない故の憂さ晴らしだろうか? ……だったら。

 

 

「そうだ、いお姉聞いてくれよ。真姫ったらよぉ、まだみかんが食べれないんだって。せっかく俺はトマト食えるようになったってのによ~」

 

 

 だからそんな非常に稚拙な仕返しを始めた。語尾を伸ばしながら出来るだけ嫌味に聞こえるように。

 因みに俺と真姫は会った時から好みが正反対だったのだ。俺はオレンジが好きだが真姫はみかんをはじめとした柑橘類が苦手。真姫はトマトが好きだが俺は苦手。よくもまあここまで仲良くなれたと思うよホント。

 ま、俺は食えるようになったんだけどなトマト。

 

 

「何よ。苦手なものは苦手なんだから仕方ないじゃない」

 

 

 しかし真姫に何とも幼稚な開き直り方をされ、俺は軽く頬が引きつってしまう。

 

 ──せっかく俺が克服してやったというのに……。

 

 だが真姫のこの返しが意外な人物の爆発を引き起こした。

 

 

「あぁー! 真姫ちゃん凛には『魚ぐらい食べれるようになりさい』なんて言ってたのに自分だけ食べないのはズルいにゃー!」

 

「ぅ゙え゙ぇぇ? そ、そんなこと言ったっけ?」

 

「言ったにゃー! 凛が骨刺さって嫌いになったの知ってるくせに『骨を取る練習』て言って"開き"食べさせようとして!」

 

「えぇっ!? そうだったの!? 凛ちゃんの魚嫌いの理由!?」

 

「私も知らなかったよ」

 

 

 凛ちゃんが魚を嫌いなのは知っていたが、よもやそんな理由だったとは……。あまりにも意外すぎて叫んでしまったわ。でもつまりアレか、味自体が嫌いなわけじゃないから刺身とかなら普通に食べれるわけか……よかった。

 

 

「コウちゃんお寿司大好きだもんね」

 

「なんで考えてること分かるの……」

 

「分かるよ。コウちゃんのことなら何でも」

 

 

 目の前で少女たちが病院内である事も忘れてわちゃわちゃと騒いでいる中、いお姉の宥めるような声が聞こえてきた。彼女へと目をやると、全てを包み込むような温かい眼差しがそこにあった。彼女は今、俺の心を完全に見透かしていたのだ。

 自分の好きなものを嫌いと言われるのは悲しい。それは趣味でも食べ物でも同じだ。だから凛ちゃんが刺身なら食べられるというのを知って少し安心したのだ。そんな俺の気持ちすら、いお姉にはお見通しだというのだ。

 

 

「……敵わねぇよ、いお姉には」

 

「えっへん♪ でもきっと、私よりコウちゃんの事を分かる子……いると思うなぁ……」

 

「え?」

 

「あ、ごめんね、最近なかなか泣かないからさ。ちょっと心細くなっちゃったのかも」

 

 

 と、珍しく寂しそうな表情を浮かべるいお姉。しかし失敬な、まるで人を泣き虫みたいに……。と言うものの、実際何度もいお姉に甘えに来ていたのも事実だし言い返す言葉も出てこない。

 

 

「でもツバサちゃんか真姫ちゃんか、あの子たちか、それとも私の知らない誰かが、きっとコウちゃんのこと幸せにしてくれる。私はそう信じてるよ」

 

「……ありがと」

 

 

 家族として俺の幸せを願っていれる彼女に嬉しくなり、顔も熱が上がってしまう。しかしそんな彼女から照れ隠しで顔を逸らしつつ、俺は賑やかに騒ぎ立てる凛ちゃん達に目をやった。そこではいつの間にか穂乃果も巻き込まれてその音量が大きくなっていた。本当、向こうも楽しそうだ。だが流石にこれ以上は追い出されかねないからそろそろ止めないとな。

 

 

「(でも……)」

 

 

 いつか、彼女に言えたらいいなと思う。

 

 ──家族として、これからも一緒に過ごしてほしい。

 

 とりあえずは今は、自分を幸せにしてくれる人が現れるよりも、彼女にそう言える日が来るのを願っていた。

 

 

 

※※※※

 

 

 

【名前を呼ばれて】《第49話内のある出来事……》

 

 

 

「あ、あの……」

 

「ん? どうしたの花ちゃん?」

 

 

 真姫の家の別荘付近で謎の敵との邂逅があった後、俺は彼女たちを守るためにこの合宿に途中参加することになっていた。そしてそれに関する説明もあらかた終わり、あとは迷惑をかけたみんなのために俺が夕食でも作ろうと意気込んでいた時、背後から遠慮するような花ちゃんの声が聞こえてきたのだ。

 

 

「ぇ、ぁ、いや……その……」

 

「?」

 

「きょ、今日はっ、ありがとうございます! ぅぅえっと、葛木さんに助けてもらって、まだ何もお礼言えてなかったから……それで……」

 

「ああ、ね」

 

 

 そう言えば、と俺は思い出す。ヘルヘイムの森を抜けてきた時に目の当たりにしたのは、インベスに追い込まれて正に危機一髪といった彼女とニコの姿であった。あと少しでも遅れたらと思うとぞっとするし、それまで何とか持ち答えた彼女たちも本当によく頑張ったと思っている。きっと年長のニコが必死で彼女を引っ張ってくれたのだろう。

 

 

「でも、花ちゃん。本当に大丈夫だった? 多分、凄く怖い思いさせちゃったと思うけど……」

 

「そ、それは……」

 

 

 しかし彼女は今日初めてインベスと、そして鎧武の姿を目の当たりにしてしまったのだ。スクールアイドルとはいえ、彼女は何てない一女子高生。きっとその時感じた恐怖は相当のものであったはずだ。現に俺の言葉の所為でその時の恐怖を思い出したのか、僅かに震えが蘇る花ちゃん。

 

 

「……ごめんな」

 

「ふぇっ? へっ、あ、あの……っ」

 

 

 ほんの少し彼女の身体を抱き寄せて、震えが止まるようにと頭に手を乗せる。案の定戸惑いの声が肩から聞こえてくるが、そんな彼女の動揺とは裏腹に次第に震えも止まっていく花ちゃん。安堵してくれたのだろうか。そう判断した俺はゆっくりと彼女を離す。俺の予想通り、彼女の顔は真姫の髪の毛のように真っ赤に染まっていた。

 

 

「ちょっと……恥ずかしいです……」

 

「あはは、ごめんごめん。でも……よく頑張ったな。無事でいてくれて俺も救われたよ」

 

「ふぇ……救われた……?」

 

「うん。花ちゃんを助けられなかったら、きっと俺は自分を一生許せなかったから」

 

 

 花ちゃんにはこう言うが、助けられなかった人たちなら既にいる。花ちゃんを救えたとしても、俺は自分のことを許せなくなるまでには、無力であった。それでも、彼女一人助かるだけでも、俺にとっては大きなことだった。

 

 

「葛木さん……」

 

「だから、本当によかった」

 

「……」

 

 

 俺の言葉に何か思うところかあるのだろう、花ちゃんは難しい表情を崩さないまま、しかし何も話すことができず固まっていた。同じ話をツバサや真姫にしようものならまず間違いなくツッコまれるだろうが、生憎彼女はそこまで踏み入られる子じゃない。

 

 

「じゃあまた後でな花ちゃん。今日は俺が皆に腕を振るってご馳走してやるからな。楽しみに待ってな」

 

「ぁ……」

 

 

 そして俺は軽く花ちゃんの肩を叩くと、それだけ伝えて彼女に踵を返した。俺ももう少し彼女と話ていたいところだが、これ以上ここで屯してると厨房を誰かに盗られてしまうかもしれないからな。主にニコとかに。だから花ちゃんには悪いけど、一旦ここらで会話を切らせてもらうことにした。まだ言葉が固まっていないなら後でもう一度話せばいいだろうと思って。しかし……。

 

 

「ま、待ってください……"鉱芽さん"!」

 

「っ!? え、今……」

 

 

 予想外の彼女からの名前呼びで、つい足を止めて振り向いてしまう。そこには珍しくしてやったり顔の花ちゃんの姿があった。

 

 

「ふぅ、何とか止められました」

 

「え、それだけのために名前で?」

 

「はっ、い、いえっ、元々呼ぼうって思ってたんです。みんなも読んでますし、何より鉱芽さんが……ぇぇと……」

 

「俺が……?」

 

「……こ、鉱芽さんが私のこと、『花ちゃん』って呼んでくれるの……ちょっと嬉しかったから……」

 

 

 再び先程のように顔を赤らめて、でも嬉しそうにほほ笑む。だからその言葉は真実なのだろうと信じることができた。

 

 

「鉱芽さんだけなんですよ『花ちゃん』って呼ぶの。そのおかげでさっきのお侍さんも、鉱芽さんだって分かりましたし……」

 

「……」

 

「でも、それが何だか特別に感じて、ちょっと誇らしく思ってたんです。だから私も『鉱芽さん』って呼びたくて……でも中々勇気が出なくて……ぅぅ、ごめんなさい」

 

「いやいやいやいやっ、全然謝る事ないでしょっ?」

 

 

 急に頭を下げてきた花ちゃんに焦って軽くあたふたしてしまう。彼女の本心を知れて嬉しいのだが、如何せん謝られてしまってはこちらの罪悪感が半端ないのだ。しかしそういうところも実に彼女らしいと、苦笑いを浮かべながら心を落ち着かせていたところで彼女は……。

 

 

「でも鉱芽さん」

 

「んぉ、何?」

 

「自分を許せないなんて言わないでください。助かった自分が何だか凄く惨めに思ってしまいますから」

 

「え……?」

 

 

 花ちゃんは俺が予想だにしなかった返しをしてきた。焦りから一転、ほんの少しだけ固まってしまう俺。この空間には花ちゃんと、そして彼女がそう言い返してくるものかと驚き立ち尽くしている自分の姿だけがあった。

 

 

「言いたいのはそれだけです。それじゃあまた」

 

「え? お、おう……」

 

 

 そうして今度は花ちゃんが俺に踵を返して歩きだす。俺は目をぱちくりさせながら彼女の背中を何度も見つめなおし、そして彼女の言葉を反芻していた。

 

 ──自分が惨めに思える……か。

 

 まさか彼女に反論に近い言葉を返されるとは思ってなかった。ただ大人しいだけの少女という認識は変えねばならない。いや、μ'sと枠組みにいる限り、誰もが単純ではないのだ。穂乃果も絵里も、ことりも海未ちゃんも凛ちゃんも、真姫も希もニコも。そして花ちゃんも、決して簡単に説明できる存在じゃない……ということか。

 

 

「あ、鉱芽さんっ」

 

「ん?」

 

「お料理、期待して待ってますねっ」

 

 

 少しばかり反省していたところでふと思い出したように花ちゃんから声がかかる。そして返ってきたのはとても嬉しい言葉だった。ふふふ……ならば覚悟しておけよ。とびっきり美味いごちそう作ってやらぁ。

 

 

「……ふふっ、おう。任せとけ」

 

「はいっ」

 

 

 因みにその後の夕食で、俺が彼女の白米への執着に驚くのは、またいつかのお話……。

 

 

 

※※※※

 

 

 

【夜は静かに】《第50話中のある出来事……》

 

 

 

「はぁ……みんな伸びてんなぁオイ」

 

「あはは……海未ちゃんの枕投げ凄かったもんね……」

 

 

 疲れた身体を休めさせようと思った矢先の、大広間での枕投げ大会──という名の『新・海未ちゃん無双』によってわざわざ二階から出向くことになってしまった俺。海未ちゃんは何とか再び眠りに就いたため、俺たちはくしゃくしゃになった布団やシーツを元に戻し、今なお(海未ちゃんの犠牲になって)伸びてるメンバーを布団に戻すという作業を進めていた。

 

 

「でもコーガさんもすごいにゃー。あの海未ちゃんを止めるなんて」

 

「伊達に鍛えてないって」

 

「しかも片手でしたよねさっき」

 

「お、花ちゃんよく見てたね」

 

 

 先ほど海未ちゃんの投合した枕を片手で掴み、そのまま投げ返したシーンを記憶の中で再生する。その時にノリで変なこと口走った気がするが、まあ気にしないでおこう。とにかく今は伸びてる連中を何とかしなきゃな。

 

 

「さてと、ほら絵里もしっかりしろって……」

 

「ぅぅん……」

 

 

 海未ちゃんにやられたのはニコ、穂乃果、そして絵里の3人だ。ニコと穂乃果は分かるとして、絵里がこんな風に無様に横たわっている様はちょっとおかしくて笑いそうになってしまう。だってあの絵里だぞ? 一ヶ月前まであんなに固かった彼女がこんなにも……まあ、言葉を選ぶとすれば、柔らかくなっているものだから、それは面白くもあったりする。

 

 

「(ま、それはそれでかわいいんだけど)……よいしょっと」

 

「……ンフフ……」

 

 

 仰向けに倒れてる絵里の前髪を優しく撫で、膝を付いて優しく彼女を抱え上げる。その時に僅かに気持ちよさそうな絵里の笑い声が聞こえてきたが、いい夢でも見てるのだろうか? とりあえず絵里をしっかり布団に寝かせ、パジャマや髪の毛を軽く整えてあげる。

 

 

「(しっかし本当に似てるな……こう髪を下してると……)」

 

「……」

 

 

 記憶の中に眠る"彼女"の面影を思い出し、ふと笑みが零れてしまう。ほぼ無意識的に絵里の頬を優しく撫でる俺を見て、真姫が何を思っていたかなどこの時の俺は知る由もなかった。

 

 そして彼女に掛布団をかけるために、俺が立ち上がろうとした時であった。

 

 

「ねぇ、鉱芽……ってちょっ!?」

 

「穂乃果ちゃんは私が……っ、わぁあ!?」

 

「真姫? こと……ってちょっとぉっ!?」

 

 

 こちらへ近づいてきた真姫が、そして穂乃果を運ぼうと彼女に歩み寄ったことりが、互いの足に躓いて二人仲良くこちらに倒れ込んできたのだ。未だ立ちあがっておらず、絵里に身体を向けて膝を付いている俺は、倒れてくる彼女たちを止めることなどできず、よって……。

 

 

「っとぉぉ!」

 

「「きゃ!?」」

 

 

 絵里に危害が及ばぬよう彼女に背中を向けて覆いかぶさって彼女の盾になりつつ、そして片腕で肘を立てて身体を支え、もう片腕と身体を使って倒れてくる二人を受け止めた。傍から見れば大道芸でもやってるかのような体勢であっただろう。と言うか普通の人間じゃまず無理としか思えない体勢を俺は維持していた。こういうことがあると、普段身体を鍛えてる自分に感謝したくなってくる。

 

 

「おお!」

 

「サーカスかにゃ?」

 

「助けろよっ!!」

 

 

 凄いものを見たと言わんばかりの歓声を上げる希と凛ちゃんに吠えて助けを求める。真姫を身体で、ことりを腕で受けて止め、そして絵里に覆いかぶさった状態のままなのだ。海未ちゃんではないが、はっきり言って破廉恥極まりない。はっきり見えないが、真姫の身体はわなわな震えてるし、多分顔も真っ赤になっていると思われる。

 

 

「わぁー流石鉱芽さんです」

 

「お前は本当マイペースだな……」

 

 

 おまけにことりはことりで今の状況を楽しんでる節が見られる。なんだこのカオスな空間は。

 

 しかも、だ。

 

 

「フフ……」

 

「えっ何してんのこの子!?」

 

 

 支えてる方の腕に絵里が寝ぼけて抱き付いてきたのだ。二の腕を揉まれて正直くすぐったい。お前は一体何の夢を見てるんだ! 別に絡んでくるのはいいけど今はやめろって危ないわ!

 

 

「ちょ、絵里。くすぐったいって、あ、危ないから……」

 

「こ、鉱芽ぁ……」

 

「真姫? お前、自分で何とか降りられるか?」

 

「む、無理よ……」

 

「てことはことりも」

 

「ちょっと難しいです……えへへ」

 

「なーんてこったい」

 

 

 となると本格的に外部からの助けを必要とするしかない。未だ起きていて尚且つ頼りになるのは希と凛ちゃんと花ちゃんだけだ。誰かが怪我をしないうちに即刻手を貸して欲しい。

 

 そう思っていたのに……。

 

 

「はい、ポーズ」パシャリ

 

「なぁぁに写真撮ってんだぁぁぁぁぁーーー!!」

 

 

 希はうきうき顔でカメラのシャッターを押し俺たちの惨状を撮る始末。凛ちゃんも俺たちの再現をしようと、困惑する花ちゃんを誘ってツイスターもどきを始めてる。はっきり言ってまるで収集がつきそうになかった。

 

 

 ──なあ……さっきお前ら言ったよなぁ? 『俺が休んでくれればいい』って

 

 

「(お前ら……本当は俺を休ませる気ないだろ……)」

 

 

 ──誰か助けて……。

 

 

 そう思わざるを得ない、ある夏の一夜であった。




それでは次回、物語の続きをお楽しみください。
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