ラブライブ! ー果実の鎧武者ー   作:春巻(生)

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着々と集まっていく鎧武のフィギュアーツ達にニヤニヤしてます。
フィギュアーツといえば、ことりと海未のも発売されるみたいですね。
どんな出来になるか楽しみです。

それでは今回もどうぞ。


第7話 帰り道・約束・疑念

 サクラハリケーンを停止させ、元のロックシードの大きさに戻して懐にしまう。うん、やっぱすっげぇ管理が楽だわコレ。もうそろそろ暗くなるけど、ことり達帰ってるかなぁ?

 そんな事を考えながらドルーパーズに足を踏み入れようとした時だ。

 

 

「えっ、鉱芽さんって踊れるんですか!?」

 

「ことりも初耳です」

 

 

 店の中から女の子の高い声が聞こえてくる。なんだ、まだ残っているのか。しかも何故か俺の話題で会話に花を咲かせているらしいが。

 とりあえず聞き耳を立てっぱなしという訳にもいかないので、店の戸を開けて店内へ入っていく。

 

 

「ただいま~」

 

「よう、おかえり。早かったな。ちょうどお前の話をしてたところだ」

 

「そうですか」

 

「鉱芽さん! 板東さんから聞いたんですけど、鉱芽さんって結構ダンスとかやったりするんですか?」

 

 

 帰ってきた俺を見た高坂は途端に訪ねてきた。ふむ、ダンスねぇ……。

 

 

「まあ、一時やってたからな。でもそれ以前からも結構いろいろ動けたしね俺。ダンスとはあんま関係ないけど、ブレイクダンスに連続バック転、バック宙かも簡単にできるよ」

 

「すごい! ねえ見せて見せて!」

 

 

 高坂は目を星のように輝かせながら俺に迫ってくる。その美しく眩しい笑顔に思わず了解してしまいそうになるが──

 

 

「あぁ~悪い。今はちょっと難しいかな。店内はまだ営業時間中だし他のお客さんに迷惑がかかる。外も人通りが増えてきて人の邪魔になっちゃう。だから今日は勘弁な」

 

「あぁ~、そっかぁ……」

 

「そうですよ穂乃果。もう少し相手や周りの事もよく考えて行動すべきです」

 

「は~い……」

 

 

 断っといてなんだが、やはり少し罪悪感を感じてしまう。あと園田は先程からもそうだが、落ち着いた冷静な言動といい、やや暴走する高坂を窘める様といい、恐らく三人組の常識人的な立場にある娘なんだろう。またの名を苦労人ともいうが。そして軽く項垂れていた高坂だが、直ぐに調子を建て直し、もう一度俺に笑顔を向けてくる。

 

 

「じゃあ、今度私たちに鉱芽さんの業を見せてください!」

 

 

 ……元気な娘だなぁ。嫌いじゃないぜ。

 

 

「穂乃果ちゃん、いくらなんでも──」

 

「ん、いいよ別に。日曜日なら何時でも開いてるし」

 

「──って鉱芽さん!?」

 

「~っ! ありがとうございます。鉱芽さん!」

 

「いやいや、でも別にそんなに大したもんじゃないからね。期待はしないでくれよ」

 

 

 時間ならいくらでもあるしな。日曜日は俺以外の人間が入ってるし特に問題ない。

 

 

「じゃあ、今週の日曜日の朝8時に神田明神に来てください。その時に私たちも集まって練習するので」

 

「オッケーい。じゃ、そろそろ暗くなってきたしお開きにしたら?」

 

 

 これ以上遅くなると親にもいろいろ迷惑が掛かるしな。俺がそう言うと三人共窓の外へ目を向ける。案の定時間を忘れて会話を楽しんでいたらしく、少し慌てた手つきで帰る支度をし始めた。

 

 

「鉱芽、今オフなんだからその子達送っていってやりな。夜道を女の子三人だけで帰るってのも物騒な話だろ」

 

 

 いつの間にか仕事に戻っていたおやっさんからのお達しがかかる。確かに一理あるが、思春期真っ盛りの女子高生がそう簡単に会ったばかりの男と帰りたがるだろうか?う~む……。

 

 

「──だそうだが、大丈夫か?」

 

「えっ、私たちは別にいいけど。ねぇ、海未ちゃん?」

 

「え、そ、そうでしょうか? ……た、確かに女子だけの帰路は少々危険かもしれませんので、途中までなら……」

 

 

 園田の反応を見るに、彼女は男性経験皆無なんだろうな……うん、初心(うぶ)だな。

 さっきまでのおしとやかさが一転、あからさまに動揺している。真姫みたいで面白いな。真姫も知り合った最初の頃はずっとこんな調子だったが……いや、今も割とこんな調子か?

 そんな事で一々考えてるわけにもいかないので、とりあえずことりにも聞いてみる。一応先の二人よりは親しいはずだから大丈夫だと思うけど。

 

 

「ことりは?」

 

「えっ? ……わ、私は……い、家まで、お願いします」

 

「よし。じゃあ早いとこ帰るか。おやっさん、お疲れ様でした」

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 

「おう、お疲れ。嬢ちゃん達もまた来てくれよな」

 

 

 よかった、三人共大丈夫なようだ。

 おやっさんに見送られ、俺たち四人は纏まって共通の帰路を歩みだした。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「そういえばやけに俺の事信用してくれているようだけど、何かあった?」

 

 

 それは店を出てからまだ五分と経っていない頃だった。しばらくの会話の後に、ふと俺は彼女たちに聞きたくなったのだ。戦いの為に俺が店を出る前と今とでは、彼女たちの俺への接し方が妙に違う──具体的に言えば近くなったような気がした。俺の予想ではおやっさんが必要以上の情報を与えたのだと思うのだが……どうだ?

 その問いには“穂乃果”が答えてくれた。

 

 

「え、いやあ。私たち、板東さんから鉱芽さんの事いっぱい教えてもらったんです。ダンスをやっていたとか、一人暮らしをしているとか、学校辞めちゃったとか──―」

 

「穂乃果っ!」

 

「っあ……ごめんなさい、鉱芽さんっ」

 

 

 “海未ちゃん”の叱責により自分の失言に気付く穂乃果。思わず手で口を塞ぐ。あまりに楽しくてテンションが上がり、思わず発してしまったようだ。確かに普通なら絶対に踏み込んでほしくない領域だろうな。しかも会ってまだ数時間とも経っていない。

 穂乃果はしょんぼりして俺に謝罪してくるが、俺としては特に気にする事はない。

 

 

「いや、別に構わないよ。おやっさんの事だから、どうせ俺がヘタレていたって話とかも聞いたんでしょ?」

 

「え、ええと……まあ、はい」

 

「知ったからってなんだよ。俺はそんなん気にしねぇよ。どうせ過ぎたことなんだし」

 

「うん……」

 

 

 一応慰めているつもりだが、穂乃果の表情は一向に明るくならない。ああ~、先程の眩しい笑みを見せた彼女がこんな顔をしてしまうとは。穂乃果には俺のどんなバカ話でもいいから、とりあえず笑っていてほしいのに。さて、どうしたものか……。

 

 

「穂乃果……」

 

「な、何ですか……?」

 

 

 互いに互いの目をにらみ合い──実際のところ俺の一方的な蹂躪だが──沈黙が二人を包み込む。

 

 

「お前──」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──確かライブの打ち上げに来たんじゃなかったっけ?」

 

 

「…………あ」

 

 

「そうだよっ! なんでお前らの打ち上げなのに俺の話で盛り上がってんの!? ことりに海未ちゃんも」

 

「そ、そういえば何でだろう? ね? 海未ちゃん」

 

「そ、それは……っ、元はと言えば穂乃果の所為でしょう! 鉱芽さんの事でことりにしつこく絡んだりするから──」

 

「え、ええ……し、知らないもーん!」

 

「はぁ……全く、貴女って人は」

 

「まぁまぁ海未ちゃん……」

 

 

 俺の予想通り、穂乃果の喧噪が海未ちゃんの叱責を招き、宥めようとすることりの図。よくもまあ、ここまで思い通りになるもんだねぇ。俺は彼女達の関係図が大体分かってきた気がした。

 

 ふふん、どうだ。これこそ俺の必殺技……ではないが偶に使う術、(話題の)すり替えだ!

 いやあ、珍しく決まったなぁ、こいつ等さっきまでの重い空気全部忘れてらぁ。

 

 

「ま、とりあえずはお前らが俺の事受け入れてくれてるってのは分かったよ。ありがとうな」

 

 

 これ以上この話題で長引かせると面倒くさそうなので、ここで話を無理矢理終わらせる。だから湿っぽい空気とはここでおさらばだ。

 そう思ってことり達の表情を見るが……どういう訳か彼女達の俺を見る目がどうにも温かいのだ。あれれ?

 先程までの後輩からの眼差しではない。我が子を見守る母のような優しい、慈愛のある表情に見えた。

 

 ……おやっさん、一体何話したんですか?

 

 そればかりが気になる今日この頃であった。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「じゃあな海未ちゃん。本当に一人で大丈夫か?」

 

「勿論です。これでも武道を嗜んでいる身。そう易々とやられる様な柔な鍛え方はしていませんよ」

 

「ほう、それはそれは。是非一度見てみたいねぇ、その姿。うん、じゃあまた日曜日に。バイバイ」

 

「はい。今日はありがとうございました。お休みなさい」

 

 

 穂乃果を家まで送り届け、今また海未ちゃんも家の近くまで送り届けて見送ったところだ。後はことりを家まで送るだけだ。

 

 

「ほいじゃ、行くか。ことり」

 

「はい」

 

 

 ことりの行動に従い、南宅へと向けて歩きだす──のだが、どうにもことりが静かだ。話したいけどどうにも話しづらい、そんな顔をしている。夜道を二人きり──という状況のせいだろうか。いや、そもそも四人で帰っている時から、ことりから聞こえてくる声が控えめなのだ。俺がことりを心配している時、ようやくことりが声を発した。

 

 

「あのっ、鉱芽さん。その……本当に迷惑じゃなかったですか?」

 

 

 ことりの言いたいことは分かる。俺は別れ際の穂乃果とのやり取りの様子を思い出す。

 

 

 ────────―

 

 

『じゃあ約束通り、日曜日に待ってます。穂乃果達のダンスも見てほしいから、絶対来てください!』

 

『おう、約束だ』

 

『えっへへ……うん、今日はありがとうございました、鉱芽さん。じゃあ、おやすみなさい』

 

『おう、おやすみ。バイバイ』

 

 

 ──────────

 

 

 ……うん、やっぱり笑顔の素敵な少女だ……っじゃなくて、ことりが言いたいことはヘルヘイムの事だろう。戦えるのは俺しかいない状況で穂乃果達の要求を聞いている余裕はあるのか? 回答だが、今はイエスだ。クラックの開くペースが今と同じなら、前みたいに一日中戦いつづけるような事は起きないはずだ。

 今日見たペースアップが少し不安なのだが……。

 

 

「ああ、大丈夫さ。いざとなったら抜けりゃいいし」

 

「そうですか……?」

 

「ああ。実を言うとな、偵察機みたいなのを飛ばしてるんだ。スゲェでかいけど。ソイツらがクラックを見つけたら俺も分かるようになっている。それにな、俺が駆け付ける間はソイツらがインベスを攻撃してくれっからな」

 

「へ、へぇ~……どんな偵察機ですか? っていうより見つからないんですか?」

 

「ちょい待ち……これな。これと同じのを数機飛ばしている」

 

 

 俺は懐からスイカの浮彫が施されたロックシードを取り出す。中心に『L.S.-10』と刻まれたそれ──スイカロックシードを眺めることりに俺は説明を続ける。

 

 

「ちょいと特殊な方法でどデカい兵隊に変わるんだ。それに目撃されても忘れるし、写真にも残らない」

 

「残らないってどういうことです?」

 

「……少し難しいんだけど──」

 

 

 森に関する記憶が消える、というのに少し説明を付け加えよう。以前話したように、森関連の記憶は24時間周期で消えてしまう。しかしこれは一日経てば忘れるのではなく、きっかり深夜0時に消えてしまうようなのだ。そこまで法則的に消えてしまう事に人為的な何かがあるのでは、と疑ってしまうが今まで手掛かりになるようなものは何一つ見つかっていない。

 そして一番不可思議な現象が、『森に関するあらゆる情報──文書、写真、言及等──が、無関係なものにすり替わってしまう』ことだ。例えば、誰かがインベスの写真を撮ったとしても、次の朝に写真に写っているのはそのあたりの風景に変わっている。撮った理由も『なんとなく』又は『流れ行く日常を写した』など適当なものに変わってしまう。これは写真だけでなく絵でも同じだ。インベス被害で間接的に被害を被った被害者は、『事故』や『不注意』等の適当な都合のいい理由が当てはめられてしまう。

 このような記憶の改変によって、世のメディアは決してヘルヘイムの森の脅威を世間に知らせることはできない。

 

 いや、これはもはや『記憶』の改変ではない。『世界』の改変だ!

 

 世界の改変の謎──それこそ、今俺が最も解明したいことの一つだ。

 

 

「──とまあそんな感じ」

 

「世界の……改変……」

 

 

 俺の説明に少し呆然となることり。そりゃあ仕方ないさ。そんなスケールのデカい話されたところで混乱するのがオチだ。

 

 

「ことりは気にしなくていいよ。何せ改変の影響を受けていないんだ。少し変な気分になるだろうが我慢してくれ」

 

 

 俺の言葉で幾らか落ち着き、頷くことり。とりあえず今はそう納得してもらうしかない。

 

 

「あの、それで前に言ってた私の記憶がなくならないって話……あれ、どうしてですか?」

 

「それは……」

 

 

 あの件だな……今ここで言おうと思えば言える。特に隠しておく必要もないし、隠すべきじゃない。まだ予想の範疇だが、教えておくに越したことはないだろう。そう思い、口を開いた瞬間だった。

 

 

 ギュィイィィィィィィィィイン

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 クラックが、まるで俺達の行く手を阻むがごとく出現した。

 

 それどころか──

 

 

 ギュィイィィィィィィィィイン

 

 

「なっ!?」

 

 

 俺達の背後にもう一つのクラックが出現した。

 

 

「下がって!」

 

「っ、はい」

 

 

 ことりをクラック同士の直線状から遠ざけ、いつインベスが襲ってきてもいいように俺も臨戦態勢をとる。

 表面上は冷静を装っているが、内心ではこれ以上ない焦燥感に追われていた。

 

 オイオイ、一体どうなってんだ!?

 

 ここにきて更に活性化なんてっ。

 

 それどころかこの配置・・・。

 

 これじゃあ、まるで“狙われている”みたいじゃねぇか!

 

 

「「ギシジャオオオオオ!」」

 

 

 キュィイィィィィィィィィン

 

 

 そしてクラックから現れる二体のインベス。しかも上級インベスかよっ!?

 それと同時に閉じるクラック。

 

 一体どうなってやがる……っ!

 

 

「変身!」

 

 

 何はともあれ、このインベスを片づけるのが先だ。俺は鎧武へと変身し、大橙丸と無双セイバーを得物として二体のインベスへと斬りかかる。

 敵は赤い装甲を持つライオンインベスとヤギインベス。戦いを始めた頃の俺なら苦戦を強いられた相手だろうが、今の俺なら問題はない。

 俺の斬撃はヤツラの腕の間をすり抜け、簡単にその身体を切り裂いた。

 俺の斬撃によろめいた二体のインベスに、俺は休むことのない連撃を与え続ける。

 

 

「ウグェア!グェア!グワァ……」

 

 

 自我のない(けだもの)の悲鳴に、俺は耳を傾けるつもりはない。情けを掛けたが最後、その牙は己の命をむしり取っていくことだろう。

 

 

「──ゥウラッシャア!」

 

 

 止めどない連撃の最後の一撃で吹っ飛ばされた二体のインベスは跪き、肩で息をし出す。しかしこちらとて慈悲をみせる気はない。

 再度インベスへ近づき、立ち上がった瞬間に更なる追撃を、一閃、二閃、三閃……もはや一方的なワンサイドゲームだ。

 

 

「「グギュァァァ……」」

 

 

「……御免」

 

 

 最後に両手の刀に力を込める。大橙丸と無双セイバーの両方に高密度のオレンジ色のエネルギーを纏わせる。更に両腕をクロスして腰を落とし、重心を低く構える。

 そして両刃を高く振りかぶり、インベスに対し順次斬りかかった。

 

 

「セイッ、ハァァァァ!!」

 

 

 二本の刃を食らった二体のインベスは爆散。辺りには平穏が戻った。駆け足でこちらに寄ることりの目も少し明るく感じる。しかし、俺の内心は未だ落ち着くことは無かった。俺は俯いたまま心の中で状況を整理しようとする。

 

 ここにきて急激に増えたクラック。

 

 まるで俺達を狙った形で現れたクラック。

 

 一体何が起きているのか……。

 

 何がクラックを呼び起こすのか……。

 

 何故このタイミングなのか……。

 

 

「鉱芽……さん……?」

 

 

 そして俺は、いつの間にか心配そうな目でこちらを見てくることりに気が付く。

 

 

 ことり……因子……っ!

 

 

「(まさか……)」

 

 

 残念ながら、どうやら正解に辿り付いたのかもしれない……。

 

 

 武神の最後の嫌がらせは、もう始まっていたようだ。




やはり最終的に落ち着く場面というのを決めておくと書きやすいんですよね。
設定だけの見切り発車よりも。
早く書きたい場面、そして結末までたどり着けるよう、これからも頑張っていきます。

それでは、また次回。
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