突然変異を起こしたインベスに苦戦する鎧武だったが、そこへ斬月・真が介入する。互いに息が合わずに苦い戦闘となったが何とかこれの撃破に成功する。それと同時に全員集うμ's。だが依然変身を解かず、互いに対峙したままの鎧武と斬月・真。果たして二人の運命は……。
それでは今回もどうぞ。
挿入歌:JUST LIVE MORE
「……」
無言で見つめあう二人の鎧武者。それはかつて親友同士であった二人の男。しかし互いにうんともすんとも言わないこの状況で今の俺達が親友かと問われれば、俺は即答できない。今、俺たちが作りだしている空気は静かで、重苦しく、様子を見守っているμ'sの皆も動くことすら適わなかった。
かく言う俺も……いや、ここで先に動かなければいけないのは俺の方だ。
『ロックオフ』
「っ」
ドライバーのロックシードをゆっくり閉じ、変身を解除した俺はそのままの姿を斬月・真に晒す。滴る汗や渇く喉を我慢し、できるだけ平常を保とうとする。
怖い……ただひたすら怖い……。
「ミッチ……」
だけど覚悟を決めたんだ。俺はもうミッチから逃げない。逃げちゃいけないんだって!
「もう、全部知っているんだよな」
「……」
「俺の事も、ヘルヘイムの事も……亮ちゃんの事も」
「っ……」
彼女の名をだした途端、肩のアーマーが僅かに揺れる。それでも何も言わないということは、恐らく肯定なのだろう。ツバサの言った通り、彼は全てを知った。ヘルヘイムの事も、消えていく記憶の事も、俺が戦い続けてきた事も。そして、俺が亮ちゃんを殺したことも……。
「俺、お前に言いたい事、数え切れないほどある。謝らなくちゃいけないことも、たくさんっ」
「……」
「お前が俺の事を恨んでいたとしても、ここでお前に殺されても、文句は言えない」
「っ」
その言葉を言った時、ミッチだけでなく背後の彼女たちからも息を飲む声が聞こえた。しかし今までミッチに対しての罪悪感で苦しめられてきた俺からしてみれば、ここでミッチに恨みつらみの言葉を吐かれて、そして攻撃されるのは想定内のことだった。いや、むしろ俺はそうなる未来しか考えつかなかった。決してミッチの性格を疑っていたわけじゃない。俺自身が、俺を許せなかったから、自然とその考えに……俺自身が粛清を受ける未来を想像してしまうだけなのだ。
「ミッチ……」
そして俺は、一歩、また一歩と、武器を持ったままの斬月・真に近づく。その結果どんな未来が訪れるかは分からない。殺されるのか、ただ拒絶されるだけなのか。それでも、ただミッチに歩み寄りたかった。どんな結末でも、ミッチの傍に行きたかった。近づいてくる俺に、斬月は拒絶することも離れることもしない。ただ俺が近づくのをじっと待っているだけだった。
そして俺は、斬月・真の目の前で立ち止まる。
「……っ」
──グイッ
斬月の持つソニックアローから軋む音が聞こえた。拳を強く握りしめ、微妙に震えているのが俺には見えた。そこにある感情は恐らく……怒りか。
そして斬月は刃ごと右手を振り上げ──
「鉱芽さん!」「鉱芽!」
次の瞬間、その手に掴んでいたはずのソニックアローが消えた。いや、ソニックアローだけでなく、彼の身体を纏う白いスーツも光と共に消え去っていた。そして──
「っ!!」
「ぶぐ!?」
斬月・真……いや、変身を解除したミッチの生身の拳が、俺の頬に突き刺さった。情けない声を上げながら地面に倒れ込む。戦い慣れている俺なら、この程度の痛みも慣れている。むしろいつも通りの戦いなら、その程度の痛みなど感じている余裕はないだろう。
しかしどうしてだろうか……。
そのミッチの拳は、今までに受けたどんな攻撃よりも、ずっと痛かった。
「鉱芽さん……」
「……ミッチ」
「分かりますか?」
「え?」
「今の拳に……どれだけの想いが籠ってるか、貴方に分かりますかっ!?」
「っ(涙……)」
何故拳なのか、何故ここまで痛いのか。そんな疑問も、ミッチの目に浮かびあがる涙の前には、何の意味も持たなかった。
「確かに恨みはしましたよ。どうして何も教えてくれなかったのか? どうしてリョウが死ななきゃいけなかったんだ? って。僕は、僕の知れない間に大事なものを失ったんですよ! 僕だってそこまで聖人君子じゃありません」
「……」
「でも、まだ残ってました」
「え?」
「鉱芽さんが、まだ生きてました。ツバサちゃんも、真姫ちゃんも、鉱芽さんが守ってくれました。それだけで、十分です」
何を言ってるんだこいつは。俺の所為で亮ちゃんが死んだっていうのに、今いる人が生きてるだけで十分って……俺がミッチの大事な人を奪ったというのに十分だなんて……。彼の言葉に頭が混乱して、彼が何を考えているのか理解できなかった。
少し考えれば簡単なことだったのに……。
「な、なぁ、ちょっと待てよ。そんなの、別に大した事じゃ──」
「大した事ですよ!!」
「っ」
「もう嫌なんです、これ以上誰かがいなくなるのは……僕の大切な人達がいなくなるのは! それに鉱芽さんだって、僕の大切な人です」
「……」
こんな俺を「大切な人」と言いきったミッチに、俺は目を見開いて閉口してしまう。全てを知ってもまだ俺の事をそんな風に思ってくれていたのかという驚愕で、頭がついていけてなかった。何度口を動かそうとしても、顎が震え、ぱくぱくと空気を噛むだけで何も言えなかった。心臓が高まり、息が上がり始めていた。目の前のことが、幻想かとさえ思ってしまった。
「なのに、挙句には僕に殺されてもいいだなんて……そんなこと言わないでください……」
「み、ミッチ……」
震える口を動かし、ようやく言えるのも彼の名前だけだ。
そして俺はミッチが何を言おうとしているのかやっと分かった。
分かってしまった。
彼は、俺を許そうとしているのだ。
──やめろ! 俺を許すなんて言わないでくれ!
ついそんな言葉が飛び出そうになってしまう。だが心臓を握られるような息苦しさがそれを許してくれなかった。だから精一杯の抵抗をしようとしたが……。
「な、なぁ、お、俺は……お前にゆ、許される、ような奴じゃ──」
「僕は!!」
「──っ」
体温が上がり、全身の筋肉が震え息も上がっていたが、気付けば涙声になっていた。そんな涙に震え始めた俺の声をかき消すようなミッチの声に、零そうとした悲観的な言葉を飲んでしまう。
「僕は……鉱芽さんに伝えたい事、いっぱいあるんです!」
「ぁ……」
「鉱芽さんとやりたいことも、鉱芽さんに教えてほしい事も、まだまだたくさんあるんです!!」
「っ……ぅ」
「僕は、鉱芽さんに──」
俺を許さないでくれ──なんて言葉は出なかった。出せなかった。許される事を望む自分の心に気付いてしまったから。ミッチとまた語り合いたいという自分の願いに気付いてしまったから。
「──生きていてほしいんです!!」
言葉は出なかった。代わりに声にならない嗚咽が響いていた。止めどなく溢れる涙で前が見えなくなるが、それを抑える気もなかった。無様に声を上げて泣き顔を晒す俺を前に、ミッチは少し悲しそうに語り掛けてきた。
「リョウが死んで、これでもし鉱芽さんまでいなくなったら……僕はどうすればいいんですか……っ」
「っぐぅ、ぅぅ……ぇっ」
「だから……生きてください。僕は未来が見たいんです。昨日までの絶望じゃなくて、明日からの希望を……鉱芽さんと一緒に見られる未来を!」
ミッチは俺の思っている以上に強い男だった。亮ちゃんの件で過去に引っ張られるよりも、今いる人達と未来を見る事を選んだ。
そんなミッチを見て、俺はまた勇気づけられる。おかげでようやく涙で滲んだ視界が晴れ、ミッチの顔を見ることが出来た。俺ほどじゃないが、彼の目にも僅かに涙が溜まったままだった。
「っ、ミッチ……っご、ごめ……んよ……」
「もう……そんなに謝りたいんだったら、僕のわがままくらい聞いてください」
「っ……ぁぁ」
それでも謝り倒そうとする俺に条件を出すミッチの声は、まるで子どもを包み込む親のように優しかった。
彼の願いなら何でも聞く。どんな無茶な願いであっても、俺は絶対に聞き届ける。
嗚咽交じりの声で頷いて待つ、彼の言葉は──
「ふふっ。鉱芽さん、これからも……僕の友達でいてください。それだけです」
──俺が、一番彼から欲しかった言葉だった。
「ミッチ…………っ、ミッチィィィィィィィああああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
一番欲しかった言葉を前に崩れ落ち、ミッチの腰に手をまわして抱き付いたまま子どものように泣き叫んだ。そして人目もふらず、溜まっていた涙を全て吐き出そうとするこんな俺を、ミッチは静かに受け入れ抱き返してくれた。
「ごめん……ごめんよぉ……ぉ俺、だ、誰もまぁ、ま守れっ、ぇなく、て……亮、ちゃん……助けて……やれっ、なくて……っ……」
「そんな事ないですよ。鉱芽さんは、守ってくれました……ツバサちゃんに、真姫ちゃんも……。だから、そんな事言わないでください……っ」
「ごめんよミッチ……ごめんよぉ……ぅぅっ」
何度も何度も同じように謝り倒す俺に、ミッチは何度も何度も同じ言葉で優しく返してくれた。その中で落ち着いて抱き返してくれていたはずのミッチの腕が震えていたことなんて、この時の俺が気付かなかった。ようやく感じられたミッチの温もりが嬉しくて仕方なかったのだ。嬉しさと、そして申し訳なさで頭が一杯で他の事は何も考えられなかった。
「鉱芽さん。それでどうなんですか?」
そして何度も繰り返すやり取りの末、ようやく落ち着き始めた俺にミッチは再度問いかけてきた。
「ぅぇ、どうっ、て……?」
「だから、僕のわがままですよ。聞いてくれるんですか?」
「っ、ああっ、聞くよ。聞く聞く! これから、ずっと……友達だ!!」
「はいっ、鉱芽さん!!」
嬉しくて嬉しくて嬉しくて、互いに涙を噛みしめ抱き合う男二人。もはや他の何も気にならなかった。俺たちを照らす陽の光も、風に揺れる木々の音も、俺たちを見守るμ'sのメンバーの存在も、今は俺たちの空間の中には入ってこなかった。
「ありがとう……ミッチ……」
今はこの幸せな奇跡の時間を味わっていたかった。
……その時だった。
──ブォォオォォォォォォォォ
「っ、鉱芽さん!!」
「立花さん!!」
「「っ!?」」
未だ閉じていなかったクラックの中から、耳障りな音を立てて蠢く闇が襲い掛かってきたのだ。ことり達の声に我に返ったおかげで気付くことが出来た。
「グシュァァァア!!」
「ミッチ!!」
「ぅわっ!?」
俺たちの目の前でヒト型に変化した怪人──イナゴ怪人は、躊躇うことなくその爪を振り下してきた。俺はすぐさまミッチを押し倒すようにしてその場から飛び退くも、ギリギリ間に合わず、イナゴ怪人の攻撃を背中に受けてしまった。
「ぐあっ!!」
「鉱芽さん!!」
「ぐっ、大丈夫……っ」
「でも、血が……酷い……っ」
爪が僅かに背中を掠めただけのようだが、服が破れ、血が滲んでいるのが分かる。いや、掠ったや滲んでいるなんてレベルじゃない。衣服が血を吸収しきれず、端からポタポタと血が落ちていた。普通ならどう見ても重傷レベルだ。遅れて這い上がってきた激痛に顔が歪んでしまう。
「鉱芽ぁ!」
「来るな!!」
「っ……」
居ても立っても居られなくなったことりや絵里達が駆け寄ろうとするが、俺の一声をもって止まらせる。しかし大声を出すために身体を揺らすことで服から更に血が垂れていく。正直声を上げるのも辛い。きっとこのまま倒れてしまった方が、楽になれるのだろう。
「こんなもの……屁でもねぇっての……」
しかしそれでも立ちあがる。
立ちあがらなければいけなかった。
「……せっかく、友達に戻れたんだ……」
「鉱芽さん……」
「明日から……また……未来があるんだ。ミッチや、μ'sのみんなとの……っ」
「グルルルルルルゥ……」
だから負けない。負けるわけにはいかない。歯を食いしばりながら立つ俺を、まるで嘲笑うかのように呻き声を立てる怪人。
そうだ、俺は負けない。負ける気がしなかった。
何故ならここにはミッチがいるから。μ'sがいるから。
共に戦う友がいるから。守る人がいるから。
「だから……勝つぞぉ、ミッチ!!」
「はい!!」
そして俺は隣に立つミッチに叫ぶと、ゲネシスコアを戦極ドライバーにセットし、オレンジロックシードとレモンエナジーロックシードを構えた。隣のミッチもまたドライバーから外したメロンエナジーロックシードを再度構える。
眼前のイナゴ怪人を力強く睨みつけ、手に持つロックシードにも力が籠る。隣に同じ目的の人がいるだけで、同じ気持ちの人がいるだけで、身体に力が湧いてきた。
そして──
「「変身!」」
『オレンジ!』
『レモンエナジー』
『メロンエナジー』
俺たちはロックシードを解錠し、ドライバーにセット。上空に開いたクラックから三つのアームズが召喚され、俺達はロックシードを切り開いた!
『ロックオン! ソイヤ! ミックス!』
『オレンジアームズ! 花道・オン・ステージ!』
『ジンバーレモン! ハハーッ!』
『ロックオン。ソーダ。メロンエナジーアームズ』
俺の上空でオレンジアームズとレモンエナジーアームズが融合し、漆黒の鎧と化したジンバーレモンアームズが俺の身体で展開される。隣では白き衣を纏った武者の身体でメロンエナジーアームズが展開し、鋭利で美しい鎧が完成していた。
青き衣に黒き鎧、白き衣に緑色の鎧。二人の武者はまるで異なる姿をしているが、その手に握られるのはどちらも真紅の弓──ソニックアローだ。
仮面ライダー鎧武 ジンバーレモンアームズ
アーマードライダー斬月・真 メロンエナジーアームズ
今、二人の鎧武者がここに顕現した。
「ここからは……俺たちのステージだ!!」
その声と共に俺たちは駆け出した。互いに右手に同じ武器を携え、構え方こそ違うものの、心が通じているかのようにその足並みは揃っていた。同時にイナゴ怪人も声を轟かせ、俺たちに向かって走り出す。
「ふっ」
「ハァ!」
「ギッ!? イギュアア!」
怪人と接触するや否やというところで俺たちは跳びあがり、怪人の頭上で回転しながらその肩を刃で斬り裂いた。二つの刃をもろに食らった怪人だが、決して倒れることはなく、すぐさま振り返って爪を振り下してくる。しかしそれを俺がソニックアローの刃で受け止め、その横からミッチが怪人の脇腹に潜り込むように斬り込んだ。
「ハァッ!!」
「ギュイァァア!」
怪人を二人で挟み込む形に持って行けた俺たちは、さっきのインベス戦のように両方からの攻撃を始めた。先ずは斜めに一閃。すぐに返すようにして横に一閃。また斜めに斬りかかり、今度は一旦身体に押さえつけながら深く斬り込む。その動作を、俺と斬月はまるで違えることなく、完全にシンクロしたかのように揃っていた。
「ウラァ!」
「ダァァ!」
「グッォァォォッ!!」
「すごい……」
「息がピッタリ……」
怪人に反撃の隙を与えないためには、二人の息を動きが必要になってくるが、そのどれもが完璧に揃っていた。言葉なんていらない。だって心が通じ合っているから。傍に居るだけで、相手の考えていることが分かる。次にどんな攻撃をするのか、どんな防御をするのか、今ならそれが手にとるように分かる。それが絆というものだ。
だから嬉しい。ミッチが、彼との絆をここまで感じられるのが、今はとっても嬉しかった。
「ハァ!!」
「ウグォアアア!」
そして何度にも及ぶ連撃の末、最後に下からすくい上げるように攻撃し、インベスを空中へと持ちあげた。
「ッ(ミッチ!)」
「ふっ(分かってます!)」
「グルゥゥッ!」
すぐに二人してソニックアローを空中の怪人に向け、その矢を引き絞り始めた。やはり次の行動も俺たちの間ですぐに共有できた。下から無防備な身体を狙い撃つべく矢を放ったのだ。
しかし怪人は身体の向きを腕で変えてガードの姿勢を取り、その身に矢を食らった。ダメージは避けられないがその爆風を利用して、ヤツは俺たちの斬撃の射程圏外に逃れたのだ。
「っ、マジかよ」
「来ますよ!」
「ギュア!!」
予想外に頭の回る敵に悪態をついてしまうも、無駄口を叩いてもいられない。敵とて全力で俺たちを葬りにかかっているのだから。そして怪人の複眼が光った瞬間、ヤツはこちらに向けて口から光弾を放ってきた。何発も発射されるそれは、まともに食らえば大ダメージは免れないだろう。だがそれを俺たちはソニックアローで斬り払うか、あるいは蹴り払って打ち消し始めた。しかもただ打ち消すだけではない。その内の一つを、俺たち二人で同時に蹴り付けた!
「フンッ!」
「ダァ!!」
「ギャァア!!」
そして二人して同時に蹴り返した光弾が怪人に跳ねかえり、再びよろめき始める。そこで攻撃を止めることなくすかさず俺たちは矢を放ち、強襲した二本の光の矢は怪人の体表で大きく爆発した。今度こそ大きく吹っ飛ばされた怪人は地面に背中を付き、ぶるぶると身体が痙攣していた。しかし……。
「ググ……ブォォォォォォォ」
「っ、うぉおおおっ!?」
「くっ、また」
「立花さん!?」
「鉱芽さん!」
すぐさまこの状況が不利だと感じたのか怪人は分裂を始め、あの厄介な蝗の群れへ変化し、俺たちに襲い掛かってきた。矢を放ち、刃を振るうも小さく速すぎる蟲に当たるはずもなく、成す術なく蝗の群れに飲み込まれてしまった。流石にこれに持ち上げられるのはマズい、と以前のヤツとの戦闘を思い出して少し嫌な汗が流れる。一応怪我人の俺がまた以前のように好き勝手されたなら、真剣に命の方が危ない。何か手は……。
「鉱芽さん!」
「っ、おう!」
その瞬間、ミッチの声で彼が何かを思いついたのが感じられた。それを理解した俺は、先の戦闘のようにミッチの背中に張り付き、そして同時にドライバーを操作した。
『ソイヤ! オレンジオーレ! ジンバーレモンオーレ!』
『ソーダ。メロンエナジースカッシュ!』
互いのソニックアローの刃が光り輝く。俺のは檸檬色に、斬月のは緑色に。そして俺たちを取り巻く黒い闇めがけ、空気を裂くように回転し始めたのだ。さっきの戦闘で角を薙ぎ払ったのと同じように。
「「ハァァァァァァアアアア!!」」
「ブゥゥゥ……ブゥゥウゥゥウウウウゥウゥゥゥ」
俺たちの周りに起こった斬撃の嵐によって、群れが怪人に戻る事こそ無かったものの、そのあまりの衝撃波で蝗の群れは俺たちを解放して上空へと飛び去った。
「ミッチ!」
「はい!」
開放されることはできた。そしてこの後の策なら既に立ててある。この機を逃してはならない! 俺たちは二人して空中目がけて矢を引き絞り始めた。そして──
「ふっ!」
「ハァ!」
上空の蝗の群れ目がけて放たれた二つの閃光は、蝗を貫くことはなかった。
そもそも貫くことが目的ではない。
そして目標は蝗でもない。
今放った二つの矢の標的、それは──
「ッ!! グルルルオォォォォォォォォッ!!?」
──射ち出した互いの矢だった。
蝗の群れの中心で互いにぶつかった光の矢は爆発を起こし、周囲一帯に高温の爆風を広げた。その衝撃に巻き込まれた蝗の群れはひとたまりもなかっただろう。案の定、群れは再び怪人の姿へと戻り、地面へと落ちてきた。
『ロックオン』
その瞬間を俺は逃さない。ドライバーからレモンエナジーロックシードを外してソニックアローに装填し、落ちてくる怪人に狙いを定めた。
「ハァ!」
『レモンエナジー!』
ソニックアローから放たれる檸檬色の光が怪人に襲い掛かる。しかしその矢は怪人を貫くことも、またその身体で爆発を起こすこともなかった。光に包まれた怪人は、その場で檸檬色のエネルギーに拘束され身動きが取れなくなっていたのだ。
「ギ……ギギギ……グギグガガ……」
もはやどう動こうが無駄だ。蝗に分裂することもままならない奴に、最期の時が迫っていた。
「行くぞ、ミッチ」
「はいっ!」
レモンエナジーロックシードを再度ドライバーにセットし、今度こそ終わりにさせるべく、俺たちはドライバーを操作して必殺技を発動させた。
『ソイヤ! オレンジスカッシュ! ジンバーレモンスカッシュ!』
『ソーダ。メロンエナジースカッシュ!』
「ライダー……ダブルキック」
誰にも聞こえることのない言葉を呟き、俺たちは地を蹴り跳びあがった。空中で一回転し、俺は右足を、隣の斬月は左足を付き出してインベスに向けている。互いの足を高密度のエネルギーが纏い、その色鮮やかな様子は放っている俺たちから見ても神々しかった。
「綺麗……」
「いけぇーーっ!」
そして異形に迫る輝かしい二つの煌めきが怪人へと突き刺さった!
「セイハアアアアアアァァァァァーーッ!!」
「ヤアアアアアアァァァァァァァーーッ!!」
「グルゥォァアアアアアアアアア!!」
鎧武の無頼キック、斬月・真の
「ふっ」
爆発の熱を背中に受けて立ちあがり、その様子を見んと華麗に振り返る。今度こそ手ごたえはあった。あの忌々しいイナゴ怪人は今度こそ倒せたようだ。と、安心してしまう。
そして俺たちは同時にロックシードを閉じ、変身を解除した。小さな粒子となって宙に消えていくアーマーとスーツ。その全てが消え去った瞬間、俺とミッチは揃ってその場に崩れ落ちてしまった。
「鉱芽さん!?」
「立花さん!?」
急に崩れた俺たちに顔を青ざめさせたμ'sの皆がこっちに駆け寄ってくるのが見える。クラックも閉じて、今度こそ危険が無くなったのだから拒絶する理由はないのだが、またとやかく言われそうだと苦笑してしまう。
因みに崩れたと言っても軽く尻もちを付いた感じだ。幸いミッチも近くにいたから互いを背もたれにして座る事ができたものの、俺の背中は依然血濡れのままだったため、ミッチの服まで汚れてしまう。もちろん今の俺はそんな事を気にする余裕がないほど疲弊しているのだが。
「鉱芽さん! 大丈夫ですか!? 鉱芽さん!!」
「だ、大丈夫だって。そんな心配すんなよ。俺、傷の治り早いから。知ってるだろ?」
「って、そんな血だらけで言ったって説得力ないわ鉱芽。一応救急車呼んでおいたから」
「あ、ああ。すまんな真姫」
どうやら結局、また院長(真姫の父)の世話になってしまうようだ。また怒られそうだ、と内心溜息を付いていたところで、みんなの視線が隣のミッチに集まっているのに気が付く。
「ああ、話しはしたけどここにいるほとんどは会うの初めてだっけ」
と、俺はミッチとアイコンタクトを取る。
──自分で挨拶しな。
俺の言いたいことが分かったのか、ミッチは座って背中で俺を支えたまま、笑顔で挨拶を始めた。
「えっと、初めまして。立花道行です」
やけに呆気ない短い挨拶だと思ったが、ミッチは軽く俺の方へ軽く目をやり、そして子どものように楽しそうな眩しい笑顔を浮かべてこう言った。
「鉱芽さんの……親友です!」
ようやくミッチと再び繋がる事のできた鉱芽。
これからは彼と共にヘルヘイムへと立ち向かっていく事になります。
次回からは少しはっちゃけた鉱芽が見られるかも……?
これからの展開にご期待ください。
感想や評価、いつでもお待ちしております。