一人ヘルヘイムの森を探索する鉱芽。新たな発見がないまま徒労に暮れている鉱芽の前に、彼の父、戦極岳斗が姿を見せる。相対する親子。だがそんな二人にインベスの群れが襲い掛かった。鉱芽は鎧武に変身し敵と応戦する中、戦極岳斗はバナナロックシードを起動、アーマードライダーバロンへと変身したのであった。
久しぶりの更新。ですが今回は短めです。
それではどうぞ。
俺たちが戦闘を始めてから幾分か時間は経つが、一向にインベスの勢いが減る気配はない。戦闘の騒音が辺りの獣たちをかき集めてしまったのだろうか。それとも、俺が殺せていない分のインベスが再び引き返してきているだけなのだろうか。
「ハァッ!」
そんなことも露気にせず、赤き戦士はその手に握る巨大な槍をまるで指揮棒を振るうがごとく華麗に操り、群がる異形を薙ぎ払っていく。槍とは本来敵を突くものであるはずだが、アーマードライダーの腕力で操られるこの巨大な槍の前では、ただ振るわれるだけでも致命傷となり得る。故に赤騎士──バロンは、自身の槍──バナスピアーを、主に鈍器として使用していた。
故に──
『カモン! バナナスカッシュ!』
「フンッ! ハァアアッ!!」
「っおわッ!? っぶねぇなオイ! お前それ槍だろ!! ぶん回すんじゃねぇ!!」
ドライバーで必殺技でも繰り広げようものなら、
「フン、一つの武器の用途がたった一つだと決めつけるのは常識に縛られているからだ。頭が固いんじゃないのか?」
「そうじゃねぇよ! こっちに配慮するとかそんなもんねぇのかって!?」
「お前が俺に近すぎる……そんなに俺が心配か?」
「っ!!」
途端に何かが切れる音がしたがきっと気のせいだろう。
「っはぁああああ~!? だぁ~れがぁぁぁお前なんかぁぁぁぁ!!」
とっさにカチドキ旗を投げ捨てて、俺は火縄大橙DJ銃を取り出した。武器のターンテーブルを回すと、まるでDJが鬨をあげているかのような軽快な音声が流れる。すぐさま出力を調整する"DJピッチ"を赤色の方向へ回すと、流れるラップ調の鬨が更に軽快なものへと変化する。最後にもう一度ターンテーブルを回し、銃口を周りを取り囲むインベスへ向け、弾丸を連射しだした。
「イギュlル!」「ギァ」「グルロォォ!」「キュウウグ!?」
マシンガンの如く火を噴く火縄大橙DJ銃。怒涛の連射にたまらず周囲のインベスは爆散していく。火縄大橙DJ銃の連射モードとでも呼べばいいのだろうか。知識としては変身時から頭の中にあったが、実際に使ってみるとその威力に怒りも忘れて内心驚いてしまう。
「甘いと思ったが、
「自分が死んだら元も子もないだろ。それにっ、ゥラァッ! 今更だ!」
「そうだな。そうでなくてはこの先も生き残れまい」
「……はっ(この先、ね……)」
結局、侵略者でも害獣でもないインベスの命を奪ってしまったが、悲しいかな、もはやそれに心を痛めている余裕は今はなかった。あらゆる事態を想定していた戦極岳斗が「この先」と呼ぶものがあるのなら、きっと俺の戦いも終わることはないのだろう。ならば俺は、この先も命を奪う覚悟を決めていかなければいけないのだ。
そんな諦めにも似た思いが、嘲笑となって口から吐き出されていた。
『カモン!』
『ロックオン!』
あれほど減らないと思っていたインベスだが、気付けば残りの数は少なくなっていた。最後の仕上げと言わんばかりに、バロンはドライバーのカッティングブレードを振り下ろし、俺はカチドキロックシードを火縄大橙DJ銃にセットさせた。
『バナナスパーキング!』
『カチドキチャージ!』
それぞれの得物に色とりどりのエネルギー体が集約されていく。俺がエネルギーがあふれ出んばかりのDJ銃の銃口を敵に向ける一方で、バロンはバナスピアーの輝く槍先を地面に突き刺していた。
「オラァ!」
そしてDJ銃から放たれた巨大な火球は、木々をなぎ倒しながら俺の眼前のインベスを全て巻き込んだ。その背後では、バロンの前方の地面から無数のバナナ状のエネルギー体が突き出し、インベスを貫いていた。
「ギュイギィ──」
断末魔すら最後まで轟くことなくインベスたちは爆音に飲み込まれる。やがて煙が晴れ、音が消え失せた森の中には静かに佇む二人のアーマードライダーが立つだけであった。
『ロックオフ』
光とともに鎧と仮面が剥がされ、二人の男の姿が現れる。当然のことだが俺は戦闘が始まる前のやり取りは忘れていない。先の話の続き──コウガネの正体について聞かんと戦極岳斗へ振り返るが、彼はその場から動くことなく、こちらを振り返るでもなくただ立ち尽くすだけであった。
「さっきの続きだけどよ──」
「明日のこの時間、またここに来い」
「──は?」
今この場で話す気はない──そんなことを言われたような気がして苛立ち、敵意を隠せない疑問の声が腹の底から響く。先の戦闘の間に気が変わったのだろうか。感情の読み取れないその背中を、とかく蹴り倒したくなる
「おい、コウガネがどうとかって話はどうしたんだよ」
「明日来たなら、舞衣……お前の母親に会わせてやる」
「っ」
戦極岳斗の言葉の前に俺は絶句してしまう。今この世で誰よりも会いたかった人、母さんと会える。その言葉だけで先ほどの会話の内容などどうでもよくなってしまった。今の自分にとってどんな誘惑よりも甘い言葉なのだ。
しかし他人が言った言葉ならいざ知らず。その言葉を述べたのが目の前の男ならば鵜呑みに出来るはずがなかった。
「適当抜かしてんじゃねぇだろうな……」
「ああ」
「だったら今すぐにでも会わせろよ! できるだろ! ああッ!?」
何せこの男が──あの日、幼い自分との約束を破った男がこんな約束を守るとは思えなかったからだ。
「またあの時みたいに嘘ついて、いなくなるつもりじゃないのか?」
「……そこまでの記憶はあるか」
「あ?」
そう呟いた一瞬だけ、彼の声のトーンが落ちたような気がした。相変わらず背を向けているため、その表情は窺えなかったが。
「いや……だが確かに信用される言われはないことは自覚している。それでもお前には一度、見せておかなければいけないと思ったまでだ」
「見せるって、何をだ……?」
「ヘルヘイムの全てだ」
そう言って戦極岳斗はようやくこちらへ振り返った。相変わらずの横に伸びた厳しい目つきだが、瞳に宿した光は彼の真剣さを物語っていた。これを俗に、嘘を言っていない眼というのだろう。
しかし正直な話、それでも彼を信じ切れない自分がいた。それほどまでに俺はこの男の存在を信用できなくなっていたのだ。
──明日から、また母さんと三人で暮らせるさ。
あの日の夜、彼の言葉を信じた自分がどれほどの絶望に見舞われたか。その時の戦極岳斗の顔は
故に、どう彼が弁明しようが、簡単に信じることはできなかった。
「舞衣に会いたくはないのか?」
「本当にクソ野郎だな。恐れ入るわ」
そしてこういう魅力的な餌で釣ってくるあたりが非常に気に食わない。
しかし分かっていたのだ。個人的な感情でチャンスを棒に振るのは愚かなことだと。
恐らく彼は嘘を言っていない。幼いころの自分ならいざ知らず、今の自分なら目の前の男が真剣かどうかなど理解できていた。
「……」
次の言葉が出るまでの間、痛くなるような沈黙が続く。その間、戦極岳斗は何も言わない。そして──
「……明日、絶対母さんに会わせろよ」
「決まりだな」
俺は目の前の男の誘いに乗ることにした。この選択が間違いではないと信じて。今度こそ彼が約束を守ることを期待して。
「フン。じゃあな。また明日」
「鉱芽」
今はあまりこの男の顔を見たくないがために、颯爽とその場を後にしようとしたが、ふと名前を呼ばれてつい振り向いてしまう。彼に名を呼ばれ、条件反射的に動く自分の身体に腹立たしさを覚えながら、戦極岳斗の言葉を待つ。
「明日、できる限りの舞衣の私物を持ってこい」
「は?」
「俺や、お前との思い出がこもったものならなおいい。分かったな」
「え、あ、ああ……」
それだけ伝えると戦極岳斗は背を向け、森の奥へと消えていった。残された俺は一人、ヘルヘイムのいけ好かない風に吹かれながらその言葉の意味を考えていた。
「……明日、全部分かることだ」
途中でその考慮を全て破棄したのは別に嫌な予感を感じたからではない、と自分に言い聞かせ、その場を後にした。
「明日か……」
明日は『ラブライブ!』本戦の前日。何も起こらなければいいが……。
戦極岳斗が語るヘルヘイムの真実とは?
そして鉱芽は母親に会えるのか?
しかしその前にひと悶着あるようで……。
次回もご期待ください。
感想お待ちしております。