UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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第九話:銭湯で戦闘 前編

 

九郎丸との決闘も終わり、数時間後。

 

「結局、どの車も使い物にならなかったな、虚影」

 

「・・・うるさい」

 

「ははは!そう拗ねるな」

 

ニヤニヤ顔で煽ってくる雪姫に頭をグシャグシャと撫でられながら虚影は顔を逸らす。彼女の言う通り、サービスエリアで集めてきたオンボロ車のどれもが使えそうな所もあったが致命的な部分が多く使い物にならなかった。結局、時間の無駄となり、変わらずの徒歩。ひとつ違う点と言えば

 

「おーい!九郎丸!そんな遠くにいないでこっちこいよ!ダチじゃんかよ!」

 

「誰がダチだーッ!君たちは不死者!僕は不死狩り! 僕たちは相容れない敵同士なんだぞ!!」

 

不死者狩りの九郎丸が仲間(?)として加入した点だろう。勝者である刀太が九郎丸に提示したのは【友達】になること。戦いの中で約束してしまったことで真面目すぎる九郎丸は拒否ることも出来ず、仕方なく契約を結んだ訳だが、敵同士という線引きはまだあった。

 

「--で、若造。貴様がカタチだけでも我が弟子の友人となった以上、私も貴様を殺す気はなくなった。居辛いなら去るがいい、どこへなりへと」

 

先程まで虚影を弄っていた雪姫が満足したのか、九郎丸に声をかける。

 

「・・・僕に帰る場所はありません。 任務に失敗すれば帰るな、どこでなりとのたれ死ね・・・と言われました」

 

「--やはりか。不死相手に不死を送ってきた時点で予想はしていたが・・・」

 

陰鬱な顔で告げる九郎丸の言葉に、刀太のように怒りを顕にする訳でもなく、虚影は答える。彼自身、不死者として生きてきたからこそ理解はできる。然し、希望なんてものは存在しなかった。誰もが生まれ落ちた彼の死を望んでいたのだから。

 

「まぁ、俺には関係のないことだ。お前がどこで野垂れ死のうと・・・」

 

「オイオイ、その言い方はねえだろ、虚影?」

 

気に食わないという表情で虚影の首に腕をまわし、ぐりぐりとこめかみを攻撃する刀太。

 

「ただ、それは逆に役目や一族のしがらみを捨てて、自由に生きろという意味でもあると俺は思う」

 

「・・・え?」

 

「ふむ、それも一理あるな。 九郎丸、良かったら私の弟子にならんか? なにお前が答えを見つけたその時は、私と殺し合うなりどこかで自由に生きるなり好きにすればいい」

 

話を聞いていた雪姫が虚影の言葉に驚く九郎丸にそう提案する。その案に誰よりも食いついたのは九郎丸本人ではなく、

 

「おお!そりゃナイスアイデアだぜ!雪姫!!」

 

刀太であった。村の外で友達を作ることが出来、オマケに虚影以外の兄弟弟子が出来ることは刀太にとってはありがたい話だった。

 

「ちょ、勝手に・・・待ってください!雪姫殿!!」

 

「よろしくな!兄弟!」

 

「誰が兄弟か!?」

 

「いや、弟弟子よ!」

 

「弟なのか!?」

 

九郎丸の返答を待たずに勝手に進んでいく師弟契約と兄弟契約に待ったをかけるが誰一人耳を貸さずにそそくさと歩いていく。取り残された九郎丸は「なんなんだあの人たちは・・・」と困惑しつつも彼らの後ろをついていく。

 

暫くして。

 

「お?なんか人通りが増えてきたな? 見ろよ、温泉街だ!すげー人がいるぜ!」

 

刀太の言う通り、風情を感じる温泉街の光景が視界一面に拡がっていた。先程までの放棄されたコンビニやサービスエリア、廃道の景色が嘘かのようだった。

 

「ふむ、よかろう。今日は宿に泊まるか」

 

「マジか!? お金大丈夫なのか?」

 

「ガキが、要らん心配するな。今日は温泉だ」

 

「おおー!」

 

雪姫の提案に刀太と九郎丸が驚きの表情をうかべる。

 

「それに裸の付き合いが出来る良い機会だ。腹を割って話してこい、刀太と九郎丸」

 

「お!いーね!それ!っし、いくぞ〜、九郎丸!」

 

「ちょ、ま!? あ〜〜!」

 

刀太はあわあわしている九郎丸の首根っこをつかみ引きずっていく。その背を眺めながら、

 

「・・・相変わらずだな、あんたのそういう所は」

 

「ん?何の話だ?」

 

ニヤニヤとした顔ですっとぼける雪姫。この弄りがいのあるおもちゃを見つけた時の彼女は虚影にとっては苦手な方だったりする。というのも彼自身も何回か彼女の嗜虐心の餌食になっていたからだ。

 

「まぁ、いい。それよりも俺達はどこを目指しているんだ?」

 

「ん?決まっているだろう。不死者を拒まない馬鹿な連中のいる所だ」

 

「・・・あそこか。確かに不死者にとってはいちばん安心と言える場所だが・・・」

 

虚影の脳裏にある女の顔がチラついた。無表情な癖に謎に圧のある女の顔を。

 

「あいつもお前が戻ってくるのを楽しみにしているみたいだぞ」

 

「・・・・冗談はよしてくれ」

 

虚影の頭の中を見透かすように、雪姫はニヤニヤしながら告げる。余計なお世話とはこういうことである。

 

「そう、照れるな。後のことは風呂でも入りながら聞いてやろう」

 

「・・・なぜお前と入る前提かはさておき、風呂に入るのは賛成だ」

 

虚影は適当に雪姫の誘いを断り、温泉宿の暖簾をくぐった。

 

---①---

 

「ふぃー、貸切だな」

 

「うん、そうみたいだね」

 

一足先に温泉に浸かる刀太と九郎丸。数分前まで九郎丸が温泉に入るのを渋るという一悶着もあったが、一回入ってみれば些細なことと横並びで温泉を満喫する2人。

 

「そうえば虚影(きょうか)君は何者なんだい?不死者なら不死狩りの僕が知らないはずないし・・・」

 

「ん〜、わっかんねえ」

 

「・・・へ?」

 

「俺が雪姫と出会った時にはもういたし、アイツが不死って知ったのも最近だからなぁ」

 

話題は虚影について。刀太と同じようななりたての不死者でもなければ、雪姫のようにリスト入りされている程に有名な名前という訳でもない。むしろ、無名。これまでの経歴が分からない存在。そんな無名の存在が刀太を拾うよりも前に雪姫と一緒にいたという事実。九郎丸がイメージする雪姫は極悪非道な魔法使い。身寄りのない子供を拾うなんていう慈善活動をするような人だとは思えない。

 

「君は素性のしれない人と一緒に暮らしてたのかい?」

 

「素性ってそこまで必要か? 砂糖と塩を間違えるほどの味覚バカで、同じ釜の飯食って川の字で寝て学校行って雪姫に一緒に挑んでやられて。そんなけ知ってればオレは充分だ。それに悪いヤツならもっと早く裏切ってるしな」

 

「・・・君は優しいんだね。僕みたいなのにも友達になろうなんて言うんだから」

 

九郎丸はクスッとかすかに微笑む。

 

「よし、今から女風呂覗きにいこーぜ!今、ちょうど雪姫が入ってるはず!」

 

雰囲気がこそばゆく感じた刀太は切替えるようにとち狂った提案を九郎丸に持ちかける。

 

「温泉来て男二人以上集まったら女風呂に行くのがセオリーらしいぜ!・・・って、虚影がまだ来てなくね?」

 

「あ、そうえば・・・まだ来てないね。何かあったのかな?」

 

「んー、まぁ、いいや!目指すは崖上にある女湯だ!行くぞ!!」

 

ノリノリの刀太は崖上を指さして宣言する。その宣言に訳分からないと言う表情の九郎丸。

 

「安心しろって、雪姫はボンキュッボンの魅惑ボディらしいからよ」

 

「僕はソレ興味無いんだけど」

 

「ん?そうなのか?因みに俺も興味はないぜ」

 

「なんでやる!?」

 

九郎丸の疑問に、男の性だろ、とキリッとした顔で決める刀太。正直に言って馬鹿である。然し、男としては間違ってもいない。魅惑のボディをひと目見れるチャンスがあるというのに逃す手はない。

 

「そうえばあの(ヒト)…雪姫。僕を弟子にすると言っていたけど、本物のエヴァンジェリンなのだろうか?」

 

「んー?何言ってんだ?」

 

「奴が本物ならかつて裏の世界では『闇の福音』『人形使い』『不死の魔法使い』等と恐れられた世界最強の使い手のハズなんだ」

 

「確かに雪姫は(つえ)ぇけど、そこまで世界最強って感じはしねえな、確かに」

 

九郎丸の疑問に、刀太は雪姫に出会ってからのことを思い出しながら答える。現に世界最強であるならば橘との戦いで深手を負うこと自体有り得ないだろう。

 

「だからこそ、あの雪姫が本物か怪しいんだ」

 

「ま、お前は一撃で負けたけどな。虚影に俺にも」

 

「・・・うるさいな」

 

図星をつかれ顔をひきつらせる九郎丸。

 

「フフフ・・・ハハハハ!!」

 

「え?」

 

男湯に突然響き渡る笑い声。

 

「こっちだ!こっち!」

 

「!?」

 

声のする方角、崖の上。そこは女湯がある場所。刀太と九郎丸が上を向くと--

 

「フハハハハ!我が実力に疑問ありか?九郎丸!」

 

「・・・なぜ俺まで」

 

バスタオルを巻いてコチラを嘲笑うかのように見下ろす雪姫と小脇に抱えられた虚影の姿があった。

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