UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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第二章:ナンバーズ
第十四話:初仕事


 

刀太と九郎丸が【UQホルダー】の正式なメンバーとなって半月が経った。仙境館は海に囲まれており、砂浜では朝っぱらからUQホルダー構成員の黒服達が酒の入ったグラス片手にカードで賭博を行っている。一応、平社員ではあるのだが仕事がない日はそれぞれ自分の時間を満喫していることが多い。ただ残念なことに入りたての新人二人は朝から晩まで旅館の雑巾がけを時給1600円でしている訳だが。

 

「うおおおおおおおおおお!!!!」

 

廊下に響く刀太の声。それとは反対に静かに黙々と物凄い速さで雑巾がけをする九郎丸。そして何故かそのふたりのお目付け役を任された虚影は響く雄叫びにウンザリしながら刀太の影の中でため息をついた。

 

「おい、あんまり騒ぐな。耳に響く」

 

「んなの虚影が俺の影ん中にいるからだろ!嫌なら九郎丸の影にでも入れよ!!」

 

「え!?ぼ、ぼく!?って、あぁ!?」

 

影からそう注意すると、刀太は雑巾がけの手は止めず反論する。そのやり取りにまたやってると黙って聞きながら雑巾がけしていた九郎丸は矛先がこちらに向いてペースが乱れ、ズデンっと盛大に足を滑らせて廊下から中庭の地面へと落下した。

 

「--断る」

 

「なんでだよ!? ・・・ははーん、さてはお前、俺のことが好きなんだな?」

 

「勘違いするな、阿呆」

 

即座に断られて声を荒らげる刀太だったが数秒してニヤッと笑って的はずれな発言をした。なんとも間抜けな回答に虚影は「バカが伝染る」と刀太の影の中から離れる。

 

「な!?誰が馬鹿だ!誰が!!!」

 

「汚い手で触るな。揺らすな。叫ぶな」

 

廊下を拭いた雑巾を触っていた汚い手で肩を掴み、グワングワンと揺らしながら怒声を浴びせてくる刀太に文句を垂れていると、

 

「近衛刀太、時坂九郎丸、見つけたわよ」

 

制服姿に刀と戦鎚を装備した夏凜が仕事の依頼書片手に声をかけてきた。

 

「お?夏凜ちゃん、俺達に何か用っすか?」

 

「えぇ、仕事よ。私は先にボートの前で待っていますので、さっさと準備なさい」

 

「え?まじ!?仕事!?俺達に!?嘘じゃねげはぁ!?」

 

刀太は揺らしていた虚影から手を離して夏凜に顔を近づけようとして手のひらで頰を叩かれた。ズザァァーと砂煙を舞わせながら中庭の木に顔から激突する刀太。そんな彼を気に止めることもなく、夏凜は虚影に視線を送り、

 

「今回は貴方も私と同じく彼らのサポートとして仕事に同行してもらうわ」

 

「わかった」

 

「虚影ならそういうと思って既にあなたの物も持ってきてるわ」

 

ポイッと放り投げてきたのは飴玉サイズの黒い玉がいくつも入った小瓶。それを受け取り、影に呑ませる。

 

「勝手に棚を漁るなと何度も言ったはずだが?」

 

「そんなことより腕は落ちてないわよね?」

 

「・・・おそらく問題ない。雪姫からもこの忌々しい首輪の効力を低めに調整してもらっている」

 

トントンっと首輪を指で小突きながら答える。本来ならばこの首輪自体を外して欲しい所だったが「却下」と何度も雪姫に断られていた。一度、構造を自分の方で確認しようと試みはしてみたがロックを一つ突破する度に新たなロックがかかる細工が仕込まれているようで装着者本人では外せない代物だった。

 

「そう、なら安心ね」

 

「で、今回の内容は?」

 

「ここから近くにある貧困街(スラム)を守ることが今回の私達の仕事よ」

 

夏凜が口にした【貧困街】。そこは2020年代まに出来た新しい都だったが、2050年代の混乱期に次々と貧困街(スラム)が拡大し、2086年の現在では人口が200万を超える巨大な貧困街に姿を変えていた。

 

「社会から弾き出された弱者達の住処か。偽善者ぶるのは構わんが俺は俺で好きにやらせてもらう」

 

「えぇ、あなたは仕事をこなしてくれたらそれでいいわ。言ったところで聞きやしないもの」

 

組織の信条とは真逆な虚影の姿勢に反論する訳でもなく淡々と言葉を返す。

 

「それじゃ、行きましょうか」

 

「--あぁ」

 

夏凜と虚影は仕事の準備をしている刀太と九郎丸より先にボートがある乗り場へと向かった。

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