UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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第十五話:襲撃

 

仙境館から数キロ離れた森の中。虚影達は木の上を飛び移りながら、新東京貧困街に向かっていた。

 

「子供たちが危ないってどういうこと!?」

 

「地上げだ。(いま)の貧困街は混乱期に宇宙に逃げていた奴らにとっては、我が地を土足で踏み歩く害虫達の溜まり場になっている。悪を駆除しようと動くのも当然で、その対象の中に子供が含まれていてもなんら不思議では無い」

 

九郎丸の質問に虚影はそう答える。

 

「所々、虚影の主観が入っていますが、大雑把にいえばそうです。ただ私たちは自らそう望んで手を汚した訳じゃない人の世から弾き出され蹂躙されてしまった者達をタダのどこにでもいる悪だとは断言しない。いつだってUQホルダーはそういう者たちに付き、彼らの為に、この力を振るう」

 

夏凜は大雑把にそして主観だらけの虚影に呆れながら告げる。UQホルダーもまた人の世を外れた者、弾かれた者、そうせざるおえなかった者あらゆる人の理を踏み間違えた存在の徒党。だからこそ弱者を救うという理念は素晴らしいものではある。が、虚影にとっては綺麗事で偽善的なもの。

 

「まぁ、よく分かんねえけどとりあえず悪い奴らから子供たちを守ればいいんだろ?」

 

「えぇ、そういうことよ。そろそろ森を抜けるわ。したらすぐさま下に目的地」

 

「ラジャー、先輩!!」

 

「あっ!?刀太君、待って!?」

 

難しいことは覚えないと言うより覚えられない刀太はおおざっばに理解したあと、スピードを上げて森を駆け抜けていく。暫くして暗い森の中に光が刺していき、新東京貧困街が顔を表した。

 

「うっし!!一番乗り!!!って、ん?」

 

森をぬけて、すぐに刀太の視界に捉えたのは強面の黒複数人とそれを見て怯えている複数の子供と一人のシスターの姿。瞬時に危険な状況だと判断し、地下で手に入れた黒い刀【黒棒】を手に握り、

 

「待ちなぁ!その地上げ!!千倍!!!!」

 

黒服たち目掛けて振り下ろした。ドズンッと地面を叩き割る音が鳴り響き、それに生じた衝撃波で黒服たちが薙ぎ払われた。

 

「UQホルダーナンバー11!! 近衛刀太、只今参上!!!」

 

ビシッとポーズを取り、名乗りをあげる刀太。

 

「あの・・・あちらもUQホルダーからの用心棒の方々ですが・・・・」

 

「・・・え?」

 

「バカ」

 

「・・・刀太君」

 

子供を守るように前に立っていたシスターが困惑した顔で吹き飛ばされた黒服たちを指さしてそう答える。

 

「刀太、敵味方の区別くらいは基本中の基本だ。覚えておけ」

 

「え?いや、覚えきれねえんだから仕方ねえだろ」

 

「仕方ないで済ませるな。そんなことでは雪姫だけでなく他の奴らもお前に背中を任せたいと思わない」

 

「うぐっ!?わ、わーったよ!」

 

「理解したならアイツらを起こしてこい」

 

虚影に釘を刺された刀太は不貞腐れながらも自分が吹き飛ばした黒服たちを起こしていく。しばらくして、全員を起こし終えたあと、

 

「いや、もー勘弁してくだせぇよ。刀太の兄貴」

 

「ほんとですぜえ。俺たち兄貴らと違ってそこまで不死力ないんすから」

 

「あ、ぐっ!?わ、悪かったって!初仕事で気張り詰めすぎてたんだよ」

 

黒服たちに責められて、悪い悪いと謝罪を繰り返す。そんな彼らを見て、オドオドと震える子供たちの姿。無理もないと虚影は子供らの様子を見て心の中でつぶやく。しかし、何かをする訳でもない。彼の根底は興味ないに尽きる。察することができたところでそこにメリットがなければ手を差し伸べない。どこまでも自身のこと以外には興味がない。

 

「虚影、なんとかしなさい」

 

「・・・断る」

 

「いいからやりなさい。目的を達するまでは私たちの偽善にも付き合ってくれるんでしょう?」

 

「・・・」

 

ドンッと背中を押してきた夏凜にそう言われた虚影は納得のいかない態度ではあるが、

 

「--影の霊兵」

 

と一言告げる。すると次の瞬間、子供7人の見た目そっくりな影人間が同じ数生み出される。そして、影にしまっていた小瓶から黒い玉をひとつ取り出して、砕いた。するとその黒玉の亀裂から影の小精霊達が飛び出し、各々が赤や青、黄に緑の魔法を華麗に操りながら踊り舞う。それに合わせて、7体の影の霊兵を延びたり縮んだり天高く飛び跳ねたりステップを踏んだりと踊り始めた。さらに黒服達もシャボン玉や複数の小さなボール等でパフォーマンスをしていく。それは魔法を使ったサーカスとでも言うべき光景。そのパフォーマンスを見て、怯えていた子供たちの顔がみるみる笑顔に変わっていき、

 

「きれーーい!!!」

 

「わーーーーい!!!」

 

「やるなー!虚影!おっちゃん達!俺にも貸してくれよ!!!」

 

その中に刀太も混じえて、楽しい声が響き渡り始めた。

 

「夏凜どの、虚影君が先程砕いたあの飴玉みたいなのは・・・?」

 

「アレですか?簡単に言えば雪姫様が編み出した【闇の魔法(マギア・エレベア)】に類似しているモノと言いましょうか。本来は自分の魔法だけでなく、他者の放出系魔法さえも自らの力へと転換するものなのですが、あの玉はあらゆる魔法を自身が編み出した影玉で圧縮し威力そのままで固定させ維持させているいわゆる永久保存ケースです」

 

「そ、そんなすごい事が可能なのですか!?」

 

夏凜の説明に九郎丸は驚きの声をあげる。それも無理はない。【闇の魔法(マギア・エレベア)】は使用者への負担がでかく、ましてや自身の魔法や他者の魔法を取り込むこと自体が容易くできることではない。おまけに、かつて始まりの魔法使いや赤髪の魔法使い、そして雪姫のみが使えたこの魔法の仕組みや構造を使用者本人から教わることなく理解し、それを『固定』し『掌握』させて己が身に術式兵装として転換させるのではなく、魔法そのものを永久に保存する新たな魔法を創造した技術と発想。

 

「只者では無いと思っていたけど…ここまでなんて」

 

「へぇー、よく分かんねえけどアイツってすごいのな」

 

いつの間にかはしゃぐ子供たちの輪から離れていた刀太が答える。

 

「あ、戻ってきたんだね、刀太君」

 

「おう、あのちっせーボールもやれて満足したしな!!」

 

「そ、そっか」

 

あはは、と苦笑する九郎丸に不思議そうに首を傾げる刀太。その光景に呆れながらも夏凜は、シスターに声をかける。

 

「仕事の話ですが、詳しく聞いてもいいですか?」

 

「へぇ、実は・・・私らこの辺り一帯の土地の権利持ってまして・・・それを売れ売れって怖い顔した兄ちゃんたちが連日連夜まーうるさいのなんの。でもここ売っちゃうと面倒見てる近所の子供たちの居場所までなくなっちまうので、こりゃいけねってことで懇意のホルダーさんに頼んだって寸法で」

 

「なるほど。そうなると穏便に移転するってのもむずか・・・」

 

シスターの話を聞いて九郎丸が困ったなと考える仕草をした瞬間、背後に建てられている教会の窓が破裂した。

 

「えっ!?」

 

驚き、全員が振り返ると、次々と何かが教会に激突し、破砕音が鳴り響く。その何かは教会だけでなく虚影達や子供たちへと標的を変え、襲いかかった。

 

「なんだ!?」

 

「--敵の襲撃だ」

 

先程まで子供たちに群がられていた虚影は降り注いでくる何かを複数の影の蔓で、地面に直撃するより早く相殺しながら、不意をつかれ驚く刀太と九郎丸に答える。やがて衝撃の雨が止み、

 

「あれだ!!!」

 

九郎丸がこちらへと向かってくる人影を捉える。

 

「うわちゃ、なんかヤバそうなの来た!!嫌がらせ通り越していきなり武力行使かい!!」

 

「急いで正解でした。シスター春日、皆を後ろへ」

 

「はいよ!!」

 

春日と呼ばれたシスターは夏凜の指示に従い子供たちをほかのシスターと共に避難させるために動く。それを確認した夏凜はすぐさま得物を取り、避難時間を稼ぐように前に出た。

 

「てめえコラ!!いきなりたぁいい度胸だな!!どこの組のモンだ、名乗りやがれ!!」

 

刀太が黒棒を手に威圧するように叫ぶ。が、そんな圧を嘲笑うように、現れた人影--ハゲ頭の男性がグッと手のひらに先程と同じ何かを生み出し投擲した。それは石やボールのような物体というより空気そのものを圧縮した球とでも言うべき代物。それは一直線に物凄い速さで駆け抜け、

 

「がっ!!!!?」

 

刀太の顔面を打ち抜いた。

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