UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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第十六話:VS『瓦礫屋』

 

「刀太君!?」

 

突如現れた襲撃者の男が放った空気の球。それをモロに顔面にくらった刀太から鈍い音がなり、吹き飛んだ。

 

「先程のあれは圧縮された空気によるものか」

 

虚影は襲撃者の先程の一撃を観察して、なにかの正体を特定する。魔法とはいえ、本来の魔法と同等かと言われれば紛い物は所詮紛い物。本物の魔法使いと比べてしまえば、程度もしれている。

 

「--くだらない。こちらの領域に踏み入れたと勘違いしている貴様に教えてやる」

 

襲撃者に対してそう吐き捨てると、

 

「オプス・ニ・テンス・クーリラヴィ・エンテ」

 

魔法の詠唱を始める。虚影の足元から無数の影が揺らめきながら湧いてきた。

 

血と影によって目覚めよ(サングィネ・エト・ウンブラ・エヴィギラ)

 

その無数の影はやがて血の色へと染まっていき、

 

影夜の(オー・モルス・)星々(シデレアールム)の槍を持つ死よ(・ハスタルム・ノクティス・ウンブレ)

 

一つ一つがひと振りの槍へと姿を変えていく。その槍は全てが星のように、そして怪しげな暗き色に輝いていた。それはまるで希望に差す光とは正反対の真っ黒な光。絶望に差す星。

 

「--殺れ」

 

その言葉を合図に幾本もの影の槍が射出される。夜空に流れる星々のように黒い輝きを放ちながら次々と襲撃者へと降り注ぐ。しかし、それに対抗するように空気を球として放出させてくる。

 

「・・・無駄なことを」

 

虚影がそう呟いた瞬間、

 

「虚影君!彼の目的は君じゃない!!子供たちだ!!!!」

 

九郎丸が叫んだ。彼の言うとおり、放たれた空気の球は槍に向かわずに子供たちの方へと狙いが向けられていた。襲撃者は最初から虚影達に興味はなく、子供たちを殺すことだけに重点を置いていた。

 

追え(セクェレ)

 

即座に襲撃者から物凄い速さで放出された圧縮空気球に対象を切替える。槍は軌道を変え、子供たちへと向かっていく空気球を追走する。やがて距離が縮まり破壊していくが、

 

「危ない!!!」

 

九郎丸が叫ぶ通り、いくつか撃ち漏らす。猛スピードで子供たちへと差し迫る空気球は速度を緩めることもなく次々と襲いかかる。が、

 

「「「 我ら!ザコでも命がけ!!!!」」」」

 

黒服達が子供たちの肉壁となり空気球を全身で受け止めていく。並の人間と比べてタフな肉体を持つ彼らが自分たちがこの場でできることを瞬時に考え、子供たちを救った。

 

「--お前たちよくやった」

 

「へへ…こんくらいお易い御用ですぜ…虚影の兄貴。んな事より、お気をつけてください。あいいつは金さえ積めばどんなクソみてえな依頼でも請け負うっつう『瓦礫屋』とかいうクズでさぁ…」

 

「・・・・」

 

役目を遂げた黒服の言葉に、虚影は怒りを覚えることも嫌悪を抱くこともない。この世に生まれる誰しもが生きる為に己が手を汚してきた。成り上がるために蹴られ蹴り落としを繰り返してきた。そのための方法だって綺麗なものばかりではない。人はいつだって全力で足掻いている。人を殺すことも厭わない存在だって誰も批判できない。彼もまたこの世界を生き抜くために足掻いているひとりに過ぎない。こちらは正義のために人に暴力を殺しを行うというのに、お前は悪だから殺しちゃいけないなんて虫のいい話だろう。だからこそ虚影にとっては自分含め全員平等に悪でもあり善でもある。

 

「--甘い」

 

殴りかかってきた瓦礫屋の拳を軽々受け止め、もう片方の手のひらを握りしめ鳩尾へと直撃させる。物凄い音が鳴り響き、瓦礫屋の身体はいとも簡単に吹き飛ばされる。

 

「さて--これでおしぶっ」

 

再び影の槍を複数本創造し放つ瞬間、

 

「どきなさい。あの外道な輩は私が自ら切り捨てます」

 

虚影の頭を踏み台にして、夏凜が前に出た。

 

「邪魔をす--」

 

「アナタは休んでいてください」

 

夏凜は虚影の言葉を一蹴して、瓦礫屋に飛びかかる。華麗な身のこなしで瓦礫屋を翻弄していく。

 

「ちっ、なんなんだこの女!!ぬぅあああ!!」

 

瓦礫屋は飄々と攻撃をかわす夏凜に苛立ちが高まり、冷静さをかきながら乱雑に拳を振るう。当然、あまりにも雑な攻撃が当たるわけも無い。

 

「その程度ですか。では--終わりにさせていただきます」

 

夏凜はそういうと刀を握る手に力を込め、

 

「何人も私を傷つけることはできません。特にあなたのような外道には」

 

懐に瞬時に飛び込むと同時に刀で瓦礫屋の体を切り伏せた。

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