UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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第十八話:スラムでの日課

 

瓦礫屋を撃退してから数日。虚影達は1回だけの襲撃で終わりでは無いだろうという夏凜の考えに賛同し、貧困街にしばらく滞在していた。

 

「せ〜〜~の、ジャンプ!!」

 

教会入口前で響くのは刀太の声。それに合わせて、地を蹴るのは九郎丸と虚影。

 

「うお、すげー!!」

 

「刀太兄ちゃんもすげえけど…」

 

「虚影兄ちゃんのジャンプ力どうなってんの!?全く姿見えないんだけど!?」

 

子供たちが驚きの声を上げ、刀太と九郎丸からしてはドン引きするレベルの跳躍力を見せた虚影。続けて次はバーベル上げならぬトラック上げ。

 

「ふん!ぬがぐぐぎぎ!!」

 

刀太の踏ん張る声が響く中、呼吸を乱すこともなく積み上げられたトラック計3台を片手で軽々と持ち上げる虚影。

 

「すげえ!!虚影兄ちゃん!!」

 

「刀太兄ちゃんも人間じゃないけど、虚影兄ちゃんは人間とか化け物とかってレベルで測んのもアホらしいくらいすげえ!?」

 

そして最後に、短距離走。虚影達は横一列に並び、子供のスタートの合図を待つ。

 

「よーい、ドン!!!!」

 

開始の合図が響き、ほぼ同時に走り出す。全員が全員不死者ということもあり普通の人間のように100%の力が出せないという制限は存在しない。順番としては、虚影、刀太、九郎丸。その中でも虚影は圧倒的な差をつけていた。

 

「うおおおお!!1秒!?」

 

「虚影兄ちゃん始まってすぐゴールしてなかった!?」

 

スラムの子供たちが虚影の人間離れした数々の行動に驚きを隠せない中、当の本人は何も気にすることなく服に着いた砂を払い、遅れてゴールした刀太と九郎丸に声をかける。

 

「少しずつだが『気』の精度も上がってきているようだな」

 

「なんか虚影に言われても素直に喜べねえんだよなぁ」

 

「あはは…虚影君と比べるとそう思うかもだけど、僕からするとここまで早く習得できたのはすごいことだよ」

 

「ほんとか!?九郎丸に言われると信じられるぜ!さすが俺のダチ!!!」

 

虚影の言葉に不服そうだった刀太だったが、九郎丸の言葉を聞いて、打って変わるように嬉しそうな声音で九郎丸の体を引き寄せ抱き締める。急に抱きしめられた九郎丸が顔を真っ赤にして情けない声をあげる。

 

「なるほど、素人にしては気の扱いは異様に器用なようね。ただし、勝負は腕相撲です。これは先輩命令です」

 

「ううっ」

 

3人の修行を眺めていた夏凜が口にした『腕相撲』。それはこのスラムに滞在してから毎日行われている気の修行を名目とした夕食当番決めの勝負。ちなみに刀太がこの勝負に勝てた試しは今の所ゼロ。要するに圧倒的な敗北である。

 

「今日こそは負けねえぞ、九郎丸!」

 

「僕こそ負けないよ、刀太君」

 

観客は子供たち。レフェリーは夏凜。刀太と九郎丸は真ん中に用意されたドラム缶に片腕を置き、勝負開始の合図を待つ。

 

「では、レディ・・・ファイト」

 

夏凜の開始の合図が響き、勝負が始まる。苛烈な戦いが幕を開く・・・はずだったが、

 

「--九郎丸の勝ち」

 

「・・・えっ?」

 

あっさりとした幕引き。負けないという思いで腕相撲に挑んだ刀太は九郎丸に瞬殺された。そして二戦目の夏凜対刀太はと言うと、

 

「夏凜の勝ち」

 

レフェリーを交代した虚影が勝利者の名を告げる。これで刀太は二連敗。続けて最後の勝負。虚影対刀太はと言うと、

 

「他愛ない」

 

ギュルっと刀太の体が一回転二回転三回転と錐揉み回転して腕が有り得ないねじ切れ方をして勝敗が決まった。

 

「ぬぐぅあああ!?う、腕がァ!」

 

どうやったらこうなるんだよ!!と言いたげな悲痛の声を上げながら三連敗した刀太は折れた腕を押さえる。

 

「さぁ、行くわよ」

 

「あ、ちょ・・・」

 

「待たないわよ。私はもうお腹が減ってるの。敗者はさっさと勝者のために料理を作りなさい」

 

夏凜はそういうと腕を押さえる刀太を無視して、一足先に戻っていく。その後ろを虚影も着いていく。

 

「あれから数日経間、影共に見張らせているが脅威と呼べる存在は一人もいない」

 

「そう、そのまま任せるわ」

 

「--万が一、異変があればこちらで対処する」

 

「先程も言ったけど殺さないでね」

 

その忠告に何一つ返すこともなく虚影は地面へと溶け込んでいく。そして影と化した虚影はその場から立ち去っていく。

 

「あれ?虚影はどこ行ったんすか?夏凜先輩」

 

「彼なら、このスラム一帯を見張っているわ」

 

「うへぇー。あいついっつもコレした後、メシも食わずどっか行ってると思えば、んな事してたのかよ」

 

刀太は仕方ねえやつだなと呆れつつも、虚影の分の飯も作っておくかと心の中でつぶやく。

 

「所でさ、なんでパワー負けしてるわけじゃねえってのに、腕相撲で誰にも勝てねえんだ?」

 

「あぁ、それは・・・むぐっ!?」

 

率直な疑問に九郎丸が答えようとすると、夏凜が九郎丸の口を押さえた。

 

「アラ?あなたは戦闘術には興味ないと雪姫様から聞きましたけど?」

 

「んー、そうだけどよ。ここまでコテンパンに負けてばっかだと悔しいじゃんか」

 

「そうですか。では歩法【瞬動術】を修練なさい。あなた全然なっていませんから」

 

「・・・は?瞬動術?」

 

夏凜の言葉に刀太は首を傾げた。

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