UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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第一話:なんてことの無い一日

 

学校での恥ずかしめと畑仕事を終えた虚影(きょうか)達が帰路に着く中、雪姫は事務作業をこなしながら隣の席に座る眼鏡をかけた男性教師に声をかけられていた。

 

「雪姫先生、少し彼らに厳し過ぎませんか?あの年頃の子達は都会に出てみたいものですよ」

 

「橘先生、口出し御無用。アレでいいんですよ」

 

「ふぅむ。まぁ、あんなに元気がいいのも最近では珍しいですかね、ハハハ」

 

雪姫の言葉にそういう考えもあるかと橘は頷く。

 

「ところで、雪姫先生。 本当に噂の「魔法」を使えるのですか?」

 

「む・・・それは・・・」

 

「やはり!いや、スゴい!『魔法』が世に知られて10年!最近では一般の人でも修練無しで扱えるアプリなるものまであるとか!」

 

今の時代であれば物珍しくも無い『魔法』という代物。都に行けば『魔法』なんてものは日常のように見られる。然し、田舎では『魔法』を使えるような人間はあまりにも珍しい事である。因みに彼がいうアプリとは『フィジカルアプリ』と呼ばれる基本魔法が一スロット数十万円する試作アプリであり、いずれ普及していければ生活の必需品になるだろうと言われている。その反面、裏ルートで手にした悪人たちによる特殊犯罪が増えたとも言われている。

 

「まぁ、数十万は確かに沢山の人が手に入れるのは難しいですよねぇ。でもだからこそ魔法を広めるべきだと私は思います。あの子達の将来の為にも、あなたの『魔法』を教えることには意味があると思いますよ」

 

普及させるには結局、利用者からのフィードバックが必要になる。たくさんの人が使えば使うほど、『魔法』は生活に必要なものだと広まり、誰もが手に入れる時代がやってくるかもしれない。

 

「勘弁してくださいよ、あんな悪ガキ共に教えたらどんなことになるやら」

 

「ふぅむ、ま、確かにそうですね」

 

雪姫の言葉に橘はこれは一本取られたと笑い、その後も軽い雑談を交わしながら事務作業に取り掛かり、やがて

 

「さて、そろそろ私たちも帰りますか、雪姫先生」

 

「えぇ、そうしますか」

 

仕事を終えた二人は職員室を後にするのだった。

 

---①---

 

一方、虚影(きょうか)と刀太は自分たちが暮らす宿直室の天井に張り付いていた。既に外は暗くなっており、蝉の鳴き声だけが時折響いてくる。

 

「んんん、ひょうふぁ?ほぉれふぁひぇんひぇいふるひゃらほぉひゅれへひぇひょいひょ」

 

「・・・何度も言ってるだろ。木刀咥えたまま話すな、馬鹿が」

 

呆れたため息をつく虚影(きょうか)。耳にタコができるくらいに聞かされた意味不明な言葉にうんざりするが、刀太はそんな事も気にせず今か今かと雪姫が帰ってくるのを待つ。暫くして--

 

「帰ったぞ、刀太と虚影(きょうか)

 

ガラガラと扉が開き、雪姫が入ってきた。それを視界に捉えた刀太は口にくわえていた木刀を手に取ると共に天井から落ちる。そしてその勢いのまま、雪姫へと切りかかった。連続の木刀攻撃に対し、驚くこともせずに平然と対処していく。普段と変わらないあしらわれ方だったが今回は違う。

 

「いまだ!虚影(きょうか)!!」

 

「はぁ…名前を呼ぶな」

 

刀太に名前を呼ばれた虚影(きょうか)はそう毒づいた後、仕方ないと天井から落下する。その際に木製の短刀二本を腰帯の鞘から引き抜くと同時に背を向ける雪姫へと切りかかる。

 

「ふっ、甘い!!」

 

「ふがっ!?」

 

ガシッと刀太の顔面を鷲掴みにした雪姫が思い切り回転する。そして虚影(きょうか)の全身に激痛が走った。一瞬、何が起きたの分からなかったが、どうやら勢いよく突っ込んでしまったことにより回避ができなくなった無防備の脇腹に刀太の脚が直撃してきたのだと虚影(きょうか)は遅れて理解する。が、それがわかった所で意味はなかった。既に勝敗は決したのだから。

 

「はぁ・・・はぁ・・・。殺されるかと思った…」

 

「・・・最悪だ」

 

刀太と虚影(きょうか)は仰向けに倒れながらそう言葉を零す。そんな彼らを見下ろしながら、

 

「いい攻撃だったぞ、刀太。それに比べて虚影(おまえ)はまだまだだな」

 

賞賛と嘲罵をそれぞれに零す。

 

「ん?へっへへー、ついに雪姫も俺のこと認めたのかよ?」

 

賞賛を受けた刀太は調子に乗り、

 

「・・・うるさい」

 

嘲罵を受けた虚影(きょうか)は悔しげにそう吐き捨てる。数百年を生きる彼にとって、雪姫と出会ってからというもの、沢山もの感情を味わされてきた。その中でも特に自身の力が落ちている事への苛立ちと雪姫による屈辱はどれだけ経験させられたことか。

 

「よっし、今日は腕によりをかけてめっちゃうめぇ飯食わせてやる!手伝ってくれよ、虚影(きょうか)!」

 

「あぁ、わかった」

 

刀太と虚影(きょうか)は呼吸を整えた後、夕飯作りに向かった。

 

「ちょ、バカ!何度も言ってんだろ!? それじゃねえって!」

 

「は?白ければどっちも一緒だろ」

 

「一緒じゃねえよ!・・・あぁ、もう!虚影(おまえ)は野菜でも切っててくれ!俺がやるから!」

 

「細かいヤツだな、刀太は」

 

料理を初めて数分。相変わらず料理下手な虚影(きょうか)の抑揚のない声と、そんな彼に振り回される刀太の悲痛な声が聞こえてきて、新聞を読んでいた雪姫はただ一言、

 

「ふっ、毎日騒がしいバカ共だ」

 

呆れと幸せの混じった表情でそう呟いた。

 

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