UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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第十九話:潜入者

 

腕相撲を終え、夏凜達と別行動をとる虚影はスラム一帯を見回るように歩いていた。スラムを囲む森や周辺は【影の霊兵】が監視している為に安全ではあるが、念には念をと言うわけだ。どこもかしこもボロく古びた服に身を包んだ老若男女が歩いている。

 

「つくづくUQホルダー(あの組織)はアイツと同じで綺麗事ばかりを愛しすぎている」

 

虚影の脳裏に浮かび上がるのは他人のためなら自分を顧みない赤毛の少年。反吐が出るほどに綺麗事を並べ自己犠牲の精神を大切にする彼を一度も肯定できたことはなかった。

 

「コレがなければ・・・どれだけ楽だか」

 

忌々しい首輪に触れてそう呟く。あの時、油断していた訳でも慢心していた訳でもない。純粋に雪姫に興味が無かったのだ。いや、正しくは全ての生命に興味が無かった。死だけを望まれてきた彼にとってこの世界は意味のあるものではなく、そして無価値なものでもなかった。ただこの世に生まれてしまい、死ぬことも許されないから生きているだけ。生も死も彼にはどうでもよかった。

 

「・・・?」

 

急に何かの気配を感じ、路地裏へと入っていく。そこには一人のフードを被った子供の後ろ姿があった。虚影はその子供を視界に捉えると、誰かに合図を送るように手を前に振った。瞬間、目にも止まらぬ速さで影の矢が子供の体を貫いた。この場に刀太がいたら怒りのあまり殴りかかってきていたかもしれない。然し、倒れた子供からは赤い血が流れることも、ましてや苦しむ声さえしなかった。

 

「影傀儡か」

 

先程殺した子供のフードを無造作に取りながらそう告げる。虚影が言う通り、現れたのは人間の顔ではなく、不気味な笑みを浮かべた魔法で作られた傀儡。

 

「【影の霊兵】の監視を潜り抜けてきたのか?」

 

そんな考えが一瞬、頭をよぎったが直ぐにそんなことはありえないと捨て去る。【影の霊兵】はたとえどんなに魔力が小さくても見逃すことはない。少しでも僅かな異物が包囲網の中に入れば一瞬でバレる。

 

「というとことは・・・【瓦礫屋(あの男)】が襲撃してきた時には」

 

虚影は直ぐに【影の霊兵】達に影傀儡の情報を伝達し、スラム周囲だけでなく内部にも目を配るように命令を書き換える。

 

「さて、こいつの僅かな魔力から辿るとするか…」

 

ガシッと影傀儡の頭を鷲掴みにし、何処に潜んでいるか分からない刺客の捜索を開始した。かかること数分。

 

「--邪魔だ」

 

背後から感じた殺気に瞬時に気づいた虚影は掴んでいた影傀儡を後ろへと振る。ガっと衝撃音がなり、ガシャガシャンと二体目の影傀儡が不気味な機械音をあげながら地面に倒れる。

 

「まだいたのか・・・都合がいい」

 

影の槍を数本作り出し、地面に倒れる二体目の影傀儡の四肢を縫い止める。そして先程掴んでいたボロボロの影傀儡から手を離し、二体目の影傀儡の背中に手を当て、魔力を読み取る。やがて、虚影はもう用はないと影傀儡を完全に破壊する。

 

「どうやらここからかなり距離があるな」

 

居場所を突き止めることができたが、距離の遠さに今から向かうのは難しいと考える。更には、単独で向かうとしてもそう簡単にはいかない。

 

「とりあえず夏凜達に共有しておくか」

 

虚影はそういうとその場を後にした。

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