UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

21 / 22
第二十話:組手

「・・・という訳だ」

 

虚影は先日の影傀儡の件を夏凜に伝える。1日時間を空けての説明となったのは、あの後、【影の霊兵】からの伝達で影傀儡の残党を潰し回っていたからだった。

 

「そう、報告助かるわ。それにしても、貴方は相変わらず絵が下手ね」

 

報告を受けた夏凜は紙を手に取る。そこにはかろうじてフードを被って不気味な笑みを浮かべる人形のようななにかが描かれていた。画力は恐らく4歳児の子供が目や手足を左右対称に書き始めて数日経った頃くらいの絵と大差ない。

 

「・・・?」

 

「お前は何言ってる?みたいな表情しないでくれるかしら」

 

「ところで刀太と九郎丸はどこに行った?」

 

虚影は三人に影傀儡の情報を伝えるつもりで教会に戻ってきたのだが、夏凜以外の2人の姿はどこにも見当たらない。

 

「さぁ?近衛刀太は、『今日も修行だ!」とか言ってあちらへ走り去って、それを九郎丸は追っていったわ。あなたの影で追跡できないの?」

 

「外せ外せと2人してうるさくてな」

 

普段であればあの二人にも自身の影を繋げていたのだが、プライバシーの侵害だと何度も言われた為に外している。そこの配慮というものは虚影には分からないものであるため、理解はできていないが。

 

「面倒だが【影の霊兵(アイツら)】に探させるか」

 

虚影は各地に配置している影の霊兵達に『刀太と九郎丸を探せ』という命令を伝達する。しばらくすると頭の中に全霊兵たちの視界が共有され始め、その中にゴミで囲まれただだっ広い荒れ地のような場所で瞬動術を練習する刀太とそれを見守る九郎丸の姿を見つけた。

 

「ここからそう遠くない場所だな、行ってくる」

 

「えぇ、行ってらっしゃい。私は構成員の人達や教会の大人達にこの傀儡の事を伝えておくわ」

 

「あぁ、頼んだ」

 

夏凜の言葉にそう返して、刀太と九郎丸がいる荒れ地付近にいる【影の霊兵】の影へと転移した。先程の静けさとは違い、耳に聞こえてきたのは刀太の気合いの入った声と地を蹴る音や擦る音。どうやらかなりの時間をかけて瞬動術を修行していたのか、当初よりマシになっている。

 

「ここにいたのか、刀太と九郎丸」

 

「お、虚影じゃん!聞いてくれよ!俺ってやっぱ天才だと思うんだよ!瞬動術の修行を初めてまだ2日だってのにこんなにも上達したんだぜ」

 

刀太はそう言うと、砂煙をほぼ舞わせないずに、瞬動術の修行成果を披露する。

 

「前よりはマシというレベルだな」

 

「そういうお前はどうなんだよ?いつも影でビュンビュン移動してるくせに!!!」

 

「あ、そうえばそうだね。虚影君っていつも影を移動してるけど、瞬動術を使ってる所は見たことないかも」

 

大したことないと一蹴された刀太の発言に、九郎丸も疑問を抱く。彼らが言う通り、虚影は1度たりとも瞬動術を使ったことはない。というのも、結局は影で移動した方が楽だからである。

 

「ふむ…ちょうどいいか」

 

「--ん?」

 

「いや、今後お前らが俺の役に立つかどうかを試すにはちょうどいい機会だと思ってな」

 

疑問符を浮かべる刀太と九郎丸に虚影はそう言うと構えを取る。

 

「お!ひさびさの組手か!行くぜ!九郎丸!」

 

「え、う、うん!!」

 

「今回、俺は影への移動及び魔法は使わない。逆にお前らは使えるものは全て使え」

 

虚影はルールを定めたあと、地面を蹴る。次の瞬間には--

 

「・・・は?」

 

「・・・え?」

 

刀太と九郎丸の背後に移動を済ませていた。続けて振り向くと同時に二人の後頭部を掴もうと両腕を前に伸ばした。

 

「うお!?」

 

「くっ!?刀太君!?」

 

九郎丸は何とか自身の得物で虚影の腕を切り落とす事に成功したが、反応に遅れた刀太は後頭部を掴まれると共に引き寄せられる。

 

「刀太君を離せ!!!」

 

即座に刃でもう片方の腕を切り落とそうとするが、それよりも早く虚影が動く。引き寄せた勢いを殺さずに、斬りかかってくる九郎丸目掛けて刀太を叩きつけるように前へ突き出した。

 

「・・・なっ!?」

 

九郎丸は振りかぶっていた得物を一瞬止めかけるが、

 

「九郎丸!俺ごと斬れ!!!!」

 

刀太の声に迷いを振り払い、一閃する。が、僅かな躊躇が虚影の次の攻撃を生み出す時間を確保するのに余りにも十分だった。

 

「--遅い」

 

パッと刀太の後頭部から手を離し、瞬動術で背後へと回り込むと九郎丸の背骨を折る勢いの蹴りを躊躇なく叩き込んだ。

 

「・・・・あがっ!?」

 

「・・・おわっ!?」

 

得物で上半身と下半身を真っ二つにされた刀太を巻き込むように九郎丸の体は、くの字に折れてゴミの山へと激突した。砂煙が舞い、二人の姿が見えなくなる。しばらく経っても立ち上がる様子はなく、やがて砂煙が晴れた。

 

「・・・この程度か」

 

虚影はそう淡々と告げる。彼の視界に映るのは真っ二つにされた刀太と、くの字に折れ曲がった九郎丸が気絶している姿。

 

「・・・少しやりすぎたようだな」

 

ピクリともしない2人の様子を見て、虚影は仕方ないと影の霊兵を2体呼び出し、刀太と九郎丸の介抱を任せて、その場を後にした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。