UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~ 作:さゃなほりなの
「ケケゲッギャ!?」
「--!」
気絶する刀太と九郎丸を介抱していた【影の霊兵】が手に握る両刃剣を振ると、襲いかかってきた影傀儡の体が両断される。主である虚影の命令である『刀太と九郎丸の介抱』と『敵の力量の測定』に従う。既に数十体の影傀儡を葬った所で、もう一体の影の霊兵が消滅する気配を感じ取った。1人残された霊兵が気配のする方に振り返ると、そこにいたのは、二足歩行の白狼と白髪に白ひげを生やした老剣士、そして複数体の影傀儡。
「ん…?もう一体いたのか?お前はさっきの奴より歯ごたえあるんだろうなぁ?」
白狼は牙をむきだし突撃する。その敵意を感じ取った影の霊兵もまた突撃する。拳と両刃剣が激突し、火花が散った。幾度となく互いの一撃がぶつかり合う。白狼が繰り出す蹴りや拳を、両刃剣で弾いて反撃する。やがて、耐えきれなくなった両刃剣が砕け散った。
「これで、
白狼の鋭く尖った爪先が影の霊兵の胴体を貫く瞬間、
「やらせるかよ!!!」
「ハァァアアアッ!!」
霊兵を守るように気絶から目覚めた刀太と九郎丸が前に身を乗り出し、黒棒と刀を白狼の攻撃にぶつける。しかし、白狼の一撃は威力が衰えることもなく、刀太達三人を軽々と吹き飛ばした。
「ん・・・?おまえ…。まぁ、そういうもんだよな。ちと残念だが仕方ねえ・・・」
白狼は俊敏な動きで吹き飛ばした刀太の元に詰め寄り、ガシッと頭を掴む。そして、
「その八重歯…吸血鬼か」
刀太の体に十字を刻むように指で数回突き、十字架を取り出す。その動きを見た九郎丸は危険なものだと判断し、刀太を助けようとするが先程の一撃で体が動かない。
「吸血鬼封印術【十字封棺】」
白狼が持つ十字架が刀太に押し当てられ、その衝撃で刀太の体は吹き飛ばされた。
「刀太君!!!」
まともに動けない九郎丸は眼前で仲間が吹き飛ぶのを見て叫ぶ。
「あいつはもう使えない。次はお前の番だ。お前の不死身のネタはなんだ?」
残酷な一言を告げ、白狼は九郎丸を目標に定める。九郎丸はキッと白狼を睨み、得物を支えに身を起こす。
「2人でやる」
刀太達への圧倒的な蹂躙を黙って眺めていた老剣士が白狼の隣に降り立つ。その言葉に不満気な声をあげる白狼を気にも止めず、刀を抜く。
「俺には見えんがすぐわかる。この気はシンメー流とかいうやつだ。長ひぐのは面倒。それに・・・こちらに向かってくる気はこいつらよりも圧倒的。こんな所で足止めを食らうわけにはいかん」
「ってわけで悪いな、えーっと、お嬢ちゃんでいいのか? さっさと片付けさせてもらうぜ」
白狼はそういうと地面を蹴る。次の瞬間には、九郎丸の眼前まで迫り、拳突き放った。
「--くっ!」
危機一髪。鞘を白狼の拳にぶつけることで攻撃の軌道をズラすが、衝撃に耐えきれずに砕け散り、木片が散らばる。九郎丸は砕けた鞘を手放し、そのまま肉薄する。が、背後からの老剣士の一刀が背中を斬り裂いた。致命的とは言わずとも満身創痍の九郎丸にとっては十分な一撃。体勢が崩れ、膝が地に着く瞬間、白狼の回し蹴りが顔面を叩いた。ドパァッンと大きな衝撃音が鳴り、九郎丸はゴミの山へと吹き飛び、そして完全に沈黙した。
「これで--2人目っと」
「油断するな、不死者は完全に殺さなければ意味が無い」
「まぁ、そうか。不死のネタがわかんねえんじゃ、殺すこともできねえし、無力化だけしとくか」
白狼は面倒くさそうに告げ、倒れた九郎丸の元へ近づいていく。その背から目を背け、老剣士は刀をしまい、抹殺対象の元へ向かおうとする。その時--
「--!?」
老剣士は足を掴まれる感覚に襲われ、自身の足元に目を見やった。そこには、骨を折らん勢いで握り掴む影から生えた黒い1本の腕があった。即座に危険を察知した老剣士は締まった刀を抜き、その黒腕に突き刺した。しかし、突き刺された腕は痛みに身じろぐこともなく、むしろより握る力が増していく。
「--チッ」
イライラしげに舌打ちをし、突き刺すのではなく、黒腕を斬り落とす形に思考を切り替えた瞬間、刀が閃くより早く、老剣士の体がふわっと浮き、投げ飛ばされた。その方角は的確に九郎丸の無力化を行おうとしていた白狼の背中に合わさっていた。
「ん、はあっ!?」
背後から感じた気配に振り向いた白狼は、こちらへと吹き飛んでくる老剣士の姿に驚愕し、返り討ちにしようとしていた攻撃の手が止まり、共にゴミの山へと激突した。砂煙が舞い、ゴミが散乱する。やがて、砂煙がはれ、白狼達の視界に映ったのは、先程吹き飛ばした影の霊兵と見知らぬ雪結晶の髪色をした少年。
「--戻れ」
雪結晶の髪色をした少年を一言告げると、影の霊兵が溶け、少年の影に消えた。そして軽く息をつくような仕草を見せた後、
「--何をぼーっとしている」
「・・・?あがっ!?」
いつの間にか、白狼と老剣士が重なる前に現れ、鳩尾を踏み抜いた。