UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~ 作:さゃなほりなの
虚影が白狼達と相対するより少し前。夏凜は黒服達に影傀儡の情報を伝達し終え、春日が提供してくれた【超包子】と書かれた建物に置かれているシャワー室を利用していた。
「良かったの?春日。シャワーなんていただいて」
「いーのいーの。この辺の女連中で買った自慢のシャワーなんだから。みんなもあんたに使ってもらいたいんだってさ」
建物の外にいる春日は気にしなさんなという感じで笑った。
「でもこういう所の水は貴重じゃないの?」
「いつのどこの話をしてんだい。なんだかんだ言って日本は水もすごいよ。夢の新エネルギー【魔法炉】とやらのお陰で電気も超安いし、魔法が解禁されてからは国が力入れてる格安お掃除アプリのお陰で貧困街最大の問題である衛生問題も解決だしねえ。他に比べりゃ天国みたいなもんさね」
夏凜の疑問に春日はそう答える。ただでさえ貧困街は他の地域と比較にならないほどに貧しい。然し、昔ほど酷い訳でもない。ただ、春日達を悩ませる1番の問題は地上げだ。
「まぁ、あんたらにゃ悪いね。お礼も少ないのに」
「気にしないで。こちらにも旨みはあるし。言ってなかったかしら、春日?私、貴女のお婆様にはお世話になったことが・・・」
夏凜はかつて世話になった人物の話をしようとしたが、ガラスが割れるかのような音に遮られる。
「・・・・?春日?」
何かが割れたあと、外に待機していたはずの春日の返事がないことに疑問を抱く。しかし、それも一瞬。
「・・・!?」
背後から感じた気配に振り向いた瞬間、銃口と目が合い、身を守っていた魔法障壁が砕け散った。すぐに夏凜は銃口を手のひらで押さえると共に拳銃を握る謎の手を掴み取り、捻って奪い取る。そして続けざまに発砲する。
「かはっ!?」
苦鳴を上げたのは見覚えのない眼帯の男性。しかし、倒れ込む様子もそもそも身体から出血がひとつも無い。
「くっ、ハハハ!いやービックリしちゃったなー、UQホルダーってみんなこんな強いの?不死身だって聞いたから腕が鈍くなってると思ってたのに」
クルクルと指で回すのは小さなナイフ。どうやら手応えを感じなかったのはあの得物で弾丸を弾いたからだと夏凜は推理する。それだけでも恐ろしいが何よりも殺気を感じさせなかったことが生きるか死ぬかの殺し合いの経験もある夏凜に緊張を走らせた。
「表のふたりはどうしました?答えによっては・・・いいえ、あなたの相手をしてる暇はありません・そこをどきなさい」
夏凜は拳銃の引き金に予指を添え、眼帯の男を睨む。ここに襲撃者がいるとしたら、部屋の外は既に危険な状態である可能性は簡単に想像出来る。
「まぁ、これで魔法障壁も消し飛んだことだし、君の不死身を存分に味わわせてもらおうかな」
夏凜の忠告に聞く耳を持たず、眼帯の男は遊べるおもちゃを見つけた子供のようにしかしどこか狂気を感じさせる笑顔を浮かべ、
「ねぇ?『鋼鉄の聖女』」
夏凜の事をそう呼んだ。