UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

26 / 26
第二十五話:貧困街襲撃 ⑤

 

時は戻り、ゴミの荒地にて。

 

「喰らえ」

 

鳩尾を踏み抜いた白狼と老剣士の状態を気にも止めず虚影は追撃する選択肢を瞬時に選び取る。数秒の思考が命取りとなること殺し合いの中で思考せずに躊躇なく次の攻めへと動けるのは経験があってこそだろう。

 

「影喰(えいしょく)【餓顎(ががく)】」

 

グバっと倒れる2人の地面に巨大な顎(あぎと)が出現し、瞬く間に呑み込んだ。影喰は全ての魔力と命を喰らい尽くす影の魔法の一種。呑み込まれれば最後、迎えるのは死のみ。然し、

 

「そう簡単に喰われては困る。一応、俺達も名の知れた不死狩りのエキスパートでな」

 

消え失せた空間から老剣士の声が響き、刀の軌跡が刻まれた。すると、ドロドロと切り裂かれた巨大な顎だった影が再び姿を現した白狼と老剣士の身体を返り血のように黒く染める。

 

「そうか・・・ならばもう一度、影に消えろ」

 

虚影は驚くことも慌てることも無く、至って冷静に次なる手を打つ。詠唱破棄からの【影の剣】と【影の茨】を発動し、白狼たち目掛けて放つ。更にその影の雨の中で、足元の影から小瓶を呼び出し、その中の二粒を手のひらで握り潰して告げる。

 

「【天影崩落(ルエル・ネグラ)】【黒影星(アスト・ルブラ)】影醒(えいせい)・影呑(えいどん)-- 虚殻(きょかく)【星蝕(ほしやみ)】」

 

すると、影が喰らった。【天影崩落】と【黒影星】――二つの魔法が影の中へと沈み、姿を変えていく。次の瞬間、漆黒の影が虚影の全身を包み、白銀の髪には黒が侵食し、夜空の瞳には黒い星が一つ浮かぶ。更に、身体を覆うのは所々が破損した漆黒の魔装。胸元には、光を喰らう黒い星が脈動している。そして背には翼ではなく、空間を裂いた巨大な影の亀裂があり、その奥では無数の星々が崩れ、闇へと沈んでいた。

 

「なるほど。あの頃の半分というところか」

 

完全とはならない未完成とでも言える姿。これは【虚殻】と呼ばれ、雪姫が扱う闇の魔法(マギア・エレベア)の様に魔法を掌握し受け入れるのではなく、全ての魔法を支配し、魂という器へと取り込む技術。然し、首輪により魔力が衰えてしまっているが為に全盛期と比べれば半分。もしくはそれよりも落ちている。

 

「まぁ、いい。あの程度ならこれで十分だろう」

 

淡々とそう告げ、見た事のない魔法に驚愕し、そして虚影に恐怖する南雲達に手をかざす。

 

「【影喰(かげばみ)の黒星雨(こくせいう)】」

 

背にある巨大な影の亀裂が歪み、その中から無数の影で象られた流星が雨のように南雲達へと降り注ぐ。

 

「--灰人!!!」

 

「あぁ、わかってる!!」

 

南雲達はすぐに我に返り、流星を避ける為に動き始める。然し、どれ程のスピードをもって躱そうとしても影の流星は獲物に食らいつくまで追い続けるのをやめない。ならばと、南雲は刀にて切り裂こうと鞘に一度納め、抜き放つ。影の流星と刀がぶつかり、切断されたものから順に分裂して襲いかかる。

 

「・・・くっ!?」

 

切っても切っても分裂する影の流星に着弾し、爆発に呑み込まれる南雲。それとは反対に、灰人は瞬動術を駆使して影の流星を回避しながら、虚影との距離を少しづつ詰めていく。

 

「無駄な足掻きを--ッ」

 

虚影が【虚殻】による別種の魔法を発動しようと魔力を込めた瞬間、漆黒の魔装に元々刻まれていた亀裂が広がり、弾け散った。更に、それと同時に急速な魔力枯渇による倦怠感が虚影の全身を襲った。そして--

 

「くたばりやがれ、不死の化け物」

 

眼前に到着した灰人の獣爪による一撃が無防備になった虚影の腹部を貫いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。