UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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第二話:フィジカルアプリ

 

翌日の朝。相変わらずのように虚影(きょうか)達は雪姫に挑み圧倒的な暴力によってのされた帰り。蝉が嘲るように鳴く神社にて。

 

「くっそー、勝てねー」

 

「やっぱ魔法だよなー、アレ」

 

「くー、卑怯だぜ」

 

そんな事をボヤきながらどこかに行くわけでもなく歩いていると、

 

「私が力を貸しましょうか?」

 

不意に横から声をかけられた。そちらを見やれば、そこにいたのは橘だ。彼は眼鏡をクイッとあげてこちらに歩み寄ってきた。

 

「毎日頑張ってるのを見ていたもので・・・。君たちが良かったら魔法を覚えてみる気はありませんか?」

 

「・・・お前は魔法が使えるのか?」

 

偶然ここにいたとは思えない虚影(きょうか)は警戒しながら尋ねる。 あまりにも都合の良すぎる話であり、田舎とはいえこうも魔法を使える人間が集まるものだろうか。

 

「いえ、私自身は雪姫先生の様に魔法は使えませんよ。ただ、『フィジカルアプリ(これ)』なら君たちよりは詳しいかと」

 

橘はそう言って、懐から球体や月・星の形をした棒付きキャンディーのようなものを取りだして笑った。

 

「それは・・・杖か?」

 

「おや? 虚影(きょうか)くんはコレを知っているのですか?」

 

「・・・それに似たモノを知っているだけだ」

 

「なるほど。なら話は早いですね。ここだと目立ちますので歩きながら刀太くん達に説明しましょうか」

 

その言葉に従い、虚影(きょうか)達は神社の奥に向かった。道中に、橘が持っているものが『フィジカルアプリ』と呼ばれる魔法の使える代物だという事となぜ教えてくれるのかを話してくれた。 内容としては、『僕は君たちに人生という物語のスタート台に立つチャンスを与えてあげたい』との事だった。

 

「まぁ、そんなわけで僕の様にこの杖を使ってみてください」

 

「・・・俺には必要ない」

 

「わかりました。無理強いはしません」

 

橘はそう言うと虚影(きょうか)以外の五人に杖を手渡し、全員が構えたのを確認した後、

 

「プラクテ ビギ・ナル 火よ灯れ(アール・デスカット)

 

そう唱えた。すると先端の球体に小さな火が灯った。

 

「おおー!すげえ!ほんとに火点いたぜ!」

 

「魔法ってすげぇわ!」

 

自分たちも唱えて成功した事に大喜びする中、

 

「くっそー、出ねえーな。なんでだ?」

 

 

刀太だけは火が灯らなかった。 そんな彼の姿に橘は少し驚いた反応をしていたがすぐにいつもの柔らかな笑みを浮かべる。

 

「なるほど。刀太君は『魔法』との相性が悪いのかもですね。でも大丈夫。もうひとつ必勝法がありまして」

 

「・・・必勝法?」

 

「えぇ、そうです。ちょっと卑怯かもしれませんが本物の魔法を扱える雪姫先生に確実に勝つには必要なことなので」

 

「うーん、こういうひきょーなのは苦手だけど・・・俺たちの夢のためだしなぁ・・・」

 

刀太は珍しく頭をフル回転させどうしたものかと悩んだ末、

 

「よし、決めた!その必勝法を教えてくれ!」

 

「では--こちらの腕輪(ブレスレット)刀太(きみ)に託します。これを使えば雪姫先生にも勝てるでしょう」

 

橘は懐からパッと見はなんてことのなさそうな腕輪(ブレスレット)を取りだして、刀太に手渡す。

 

「それもコレと同じ『フィジカルアプリ』というやつか?」

 

「まぁ、そんな所です。雪姫先生のように魔法を使える存在にとっては致命的な効果がある代物なのでバレないようお願いしますね」

 

虚影(きょうか)の質問にそう答える。

 

「もう一つ質問なんだが・・・魔法を扱える者の弱点になるような代物を田舎の教師であるあんたが何故持ってるんだ?」

 

「・・・いやぁ、恥ずかしいことではあるのですが、私は根っからの魔法好きでしてね。こういう代物を集めるのが趣味なんですよ」

 

「だとしてもおかしくないか?魔法が好きなら魔法だけを集めればいいだろう?何故、魔法を殺すような物を手元に置く必要がある?」

 

「・・・それは」

 

橘の顔に微かな冷や汗が浮かぶ。答え辛い何かがあるのだろうと察した虚影(きょうか)は更に言葉を重ねる。

 

「言えないという事は、俺達に魔法を教えることで何かあんたの得にでもなることがあるのか?」

 

「・・・ははは、やだなぁ。・・・冗談も程々にしてくださいよ」

 

「どうした?笑顔がくずれてk」

 

虚影(きょうか)!それくらいにしとけって!橘先生が言ってたろ!人生のスタートラインに俺達を立たせたいみたいなことをさ!」

 

あと少しで橘の化けの皮が剥せそうなタイミングで刀太に頭を(はた)かれる。虚影(きょうか)はジンジンと痛む頭を擦りながら、

 

「刀太、邪魔をするな。あと少しであいつの・・・おい、どこへ連れていく気だ?服の首根っこを掴むな…おい、聞いてるのか?」

 

「うるせぇ、いいから帰んぞ!どうせ俺も魔法は使えねえんだし、お前は魔法修行の邪魔にしかならねえかんな! って訳で悪いな、お前ら!先帰るわ!」

 

抗議の声を上げる虚影(きょうか)を引きずりながら刀太は橘と友人達に声をかけてその場を後にした。

 

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