UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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今回から、後書き欄に登場キャラと他のキャラとの関係などを書いていきます。


第三話:賞金稼ぎと魔法使い

 

「うーん、どうすっかなぁ」

 

帰りが遅くなったこともあり既に外は真っ暗で、雪姫も帰宅済みの宿直室の外にて。ウロウロと悩みながら歩き回る刀太。そんな彼に対して、一緒に帰ってきた虚影(きょうか)は我関せずという様子で床に座り込んでいた。

 

「なぁ〜、そろそろ拗ねてないで一緒に考えてくれよぉ〜」

 

「・・・勝手にしろ」

 

「だぁかぁら、さっきあんなに怒鳴った事は悪かったって!」

 

ゆっさゆっさと刀太が揺すってくるが、絶対に許さないと言わんばかりにそっぽを向き続ける虚影(きょうか)。 その姿にイライラが募っていく刀太は、

 

「ええい!当たって砕けろだ!」

 

そうヤケクソに叫んで宿直室の扉を開けた。

 

「ん? 外が騒がしいと思えば刀太か。 虚影(きょうか)はどうした?」

 

読書に耽っていた雪姫が顔を上げる。

 

「あー、あいつはってそんなことよりも・・・こ、これ、やるよ」

 

顔を真っ赤にしながら刀太は橘から受けとった腕輪(ブレスレット)を雪姫に放る。それを受けとり、まじまじと見つめながら、

 

「? 何だコレ?」

 

「いや、ちょっと・・・たまたま手に入って普段の礼って気な感じで・・・い、いらなかったら捨てればいいし・・・だから・・・その・・・じゃ、じゃな!!」

 

「・・・なんだアイツ?」

 

急に早口であーだこーだと言い捨てて逃げ出した刀太の姿に?を浮かべる雪姫。

 

「・・・うむ。珍しいこともあるものだな」

 

少しして受け取った腕輪(ブレスレット)を見て頬がかすかに緩む。悪の魔法使いとして生きてきた彼女にとって誰かからのプレゼントとというのはかつての級友達とあの少年から貰ったとき以来だ。そんな昔のことを思い出して雪姫は少しづつではあるが自分も変わったのだと感じたのだった。

 

---①---

 

翌日の夕方。雪姫が学校帰りにコンビニに寄るという話を橘から聞いた虚影(きょうか)達は魔法組と徒歩組に分かれ、そこから数キロ離れた二つの場所で待ち伏せしていた。というのも雪姫に奇襲をかける以上、距離が近ければ近いほど気配がバレやすい。ただでさえなんの訓練もしていないどこにでも居る中学生集団。忍者や暗殺者のように息を気配を殺す修行や軍人のような戦闘技術さえもない精々棒切れを振り回せる程度の技量しか持ち合わせていないのだ。

 

「刀太はちゃんと渡してくれたみたいだし、後は魔法が使える俺らが上手くやれば・・・」

 

「都行きチケットゲットだ!!」

 

「やるぞー!」

 

「おー」

 

意気揚々と雪姫がコンビニから出てくるのを待つ肉丸と武来人、徹と祈の魔法組。

 

「魔法使えねえのにこの距離を徒歩ってマジ?」

 

「・・・文句を言うな。動き始めたら教えてやる」

 

「ちぇっ。あ、そうえばお前は橘先生からなんで魔法教わるの嫌だったんだ?」

 

不貞腐れる刀太の質問に虚影(きょうか)は振り返りもせずに率直に答える。

 

「決まってるだろ。フィジカルアプリなんて高価な物を俺たちの下らない目的の為に貸すのは怪しすぎる」

 

「またそれかよ〜。お前は疑い深すぎるんだって」

 

「そういうお前は人を信じすぎだ。少しは疑うってことを学べ」

 

「誰が馬鹿だってぇ!?コノヤロウ!」

 

雪姫打倒作戦の最中だと言うのに、突っかかってくる刀太に体を揺すられる虚影(きょうか)という魔法組とは真反対の緊張感のない徒歩組。そんな馬鹿なやり取りをしている内に事は動き始めた。

 

「おい、刀太」

 

「んだよ?今更謝ってもおせえぞ!」

 

「--アイツらが仕掛けたぞ」

 

「--マジか!? じゃあ俺らも向かわねえと!」

 

虚影(きょうか)から手を離して、地面に置いていた自身の得物である木刀を手に取りコンビニ方面へと駆け出した。

 

 

一方その頃。一足先に転移術による奇襲をしかけた魔法組のメンバーと雪姫がいるコンビニの駐車場では--

 

「フ・・・『魔法』か、一体どこで・・・?いや、今のはなかなか見事だったぞ!」

 

拘束する蔦(バインド・アイヴィー)の二重がけにより全身に蔦を絡ませながら雪姫は笑う。これまでの単純な戦術じゃなく、まだ粗はあるもののこの戦術には驚きを隠せない。

 

「フ、フフフフ!強がっていられるのも今のうちですよ!雪姫先生!!」

 

「その最新魔法アプリでもう身動きできません! 昨日までの僕たちとは違う!!」

 

 

初めて奇襲に成功し、雪姫を倒す可能性を感じた魔法組四人。対して、そんな彼らの成長ぶりに喜びと驚きを抱く雪姫はこれまで誤魔化してきたアプリとは違う真の魔法を隠すことをやめた。

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!」

 

「・・・!?」

 

魔法の詠唱を開始した雪姫に魔法組四人が身構える・・・が、しかし--

 

「・・・む?」

 

構築されていく魔法陣が途中で砕け散った。自らの意思ではなく、何かによる妨害でしか起きえない現象に驚く雪姫。

 

「今日こそ年貢の納め時です!」

 

魔法が発動しないと予め聞いていても『奥の手』が本当に通用するのか不安もあった魔法組だったが効果は絶大のようで安心し、追撃を行おうとする。その時--

 

「ご苦労様です、生徒諸君」

 

先程まで気配を一切感じなかった橘が姿を現した。唐突な事に魔法組の面々は追撃をしようとしていた手を止め、雪姫さえも驚きの顔を浮かべていた。しかし、その中で橘だけはいつもの柔らかな笑みを浮かべたまま、両手で徹の頭と武来人の頭をぶつけて昏倒させ、続けて肉丸の顎と祈の顔面を各々肘と掌底で気絶させた。目の前で起きた状況に雪姫が疑問を抱く中、

 

「いやぁ、雪姫先生。私の赴任以来半年間、全く隙を見せないので困りましたよ。 さすがは六億円の賞金首です」

 

橘はそう答える。そして拘束され魔法も使えない雪姫に対し、魔法アプリによる武器格納BOXから複数の槍を取り出し射出され、ドスドスッと雪姫の全身に突き刺さる。

 

「フッ、賞金稼ぎか・・・半年も私に気づかせぬとはご苦労な事だ」

 

「えぇ、正直大変でした。それに貴女の元にいた虚影(きょうか)君にも困らされましたよ。無駄に勘は鋭いし疑い深い。彼は本当にただの中学生なんですか?」

 

橘は少しだけ苛立ちの感情をチラつかせながら長刀を取り出す。

 

「ただ、吸血鬼相手に余裕こいて返り討ちに遭うような間抜けは演じたくありませんからね。彼が本当にタダの中学生なのかどうかは虚影(きょうか)君自身に聞くことにしましょう」

 

ツカツカと雪姫の元に歩み寄り、橘は長刀を振り下ろし--

 

「・・・!?」

 

かけた軌道を後ろへと方向修正した。すると、ガキンッ!!と重い衝撃が長刀にのしかかった。

 

「てめぇ、一体なんなんだ!!俺のダチと雪姫に何しやがる!!」

 

その衝撃の正体は刀太による木刀の一撃だ。

 

「無事か!? 雪ッ」

 

刀太が橘から目を離し、雪姫の方に視線を向けた瞬間、木刀を握っていた側の腕に違和感が生じる。あるはずへきものがない感覚。木刀を握った時に感じる力の入る感覚がない。遅れて刀太の全身を痛みが襲った。

 

「あ・・・な・・?あぐ・・・があぁぁぁ!?」

 

痛みが刀太の全ての思考を感覚を奪っていく。そんな彼を見下ろすのは長刀から血をしたらせる橘。

 

「残念ですが、近衛刀太君。 君の物語はここで終わりです。なんて言うんですが、勇気をだして踏み出してみたら失敗した・・・そんなけの話です。 単純バカな君達を食い物にする悪人もいるということです・・・勉強になりましたか?」

 

「・・・が」

 

「まぁ…もう遅いですが」

 

橘が振り下ろした一撃は拘束されて動け無いはずの雪姫によって防がれる。

 

「貴様なぜ動ける!?私特製の拘束呪を受けながら…」

 

そんな彼の質問に雪姫は答えもせず、ただ自分を守ろうとした刀太へと言葉をかける。

 

「さっきの一撃は良かった。お前のダチの奇襲もな、合格点をやろう。 ただあのバカだけは不合格だな…未だ顔を見せぬとは。あぁ、あとアレだ。お前からの初めてのプレゼント・・・そのなんだ、嬉しかったぞ」

 

それはまるで最期の言葉のようにも聞こえて…刀太は痛みで声が出ない中、なんで今そんなこと言うんだよという困惑した表情で、自分を守る雪姫を見る。

 

「・・・なるほど。大切なものを守りたいという心が私の拘束呪を乗り越えたと! --愛ですねぇ」

 

嘲た笑みと共に橘は容赦もなく雪姫を切り刻んだ。ドサドサと刀太の前で雪姫だった残骸が降り注ぐ。その惨劇を目にした刀太の思考を痛みではなく絶望が塗りつぶした。

 

「さて、君も彼女の元に送ってあげましょう」

 

ドスッと刀太の身体に刃が突き刺さ--

 

影の茨(スピィナ・ウンブィラ)

 

刀太(かれ)の影から無数の黒い茨が橘の長刀を絡めとった。続けてその茨から黒い手が伸びてきた。

 

「・・・っ!」

 

橘はその手から感じた不気味な気配に長刀を手放し、距離をとる。その間にもその黒い手は刀太の影から伸びていき、やがて腕や頭、胴体、足と人の形を作り出していく。

 

「--あなたは虚k!?」

 

「・・・影の剣(グラディーブィア)

 

驚く橘に答える素振りもなく追撃を仕掛ける黒い影。魔法アプリの武器格納BOXとは比べ物にならない程の影の剣が降り注ぐ。回避を専念される橘は全ての剣を弾き躱し砕きと抵抗を続ける。やがて剣の雨によってコンビニと駐車場一面がいつの間にか砂煙に覆われていた。

 

「・・視界が悪すぎる」

 

砂煙が支配する空間。虚影(きょうか)の姿だけでなく雪姫、刀太の姿も見えない。

 

「--念の為に刀太の影と自身の影を繋げていたが・・・どうやら正解だったらしいな」

 

不意に、虚影(きょうか)の声が聞こえた。

 

「ふふふ、ですが刀太君(かれ)雪姫(かのじょ)も既に手遅れ。なぜ今になって姿を現したのですか?」

 

至って冷静を装いながら、虚影(きょうか)の心を乱そうとする。その問いにたいし、返ってきた応えは--

 

「--なに、首輪(これ)の抜け道を探しててな」

 

橘には分からないものだった。【魔力喰らいの首輪】の効果は主の許可無く魔法を使用した際に使うのを止めない限り永遠に魔力と生命力が喰われるというもの。ただし、その主が死んだ場合や命の危険に陥った時はどうなるのか?を虚影(きょうか)は試したことがなかった。その結果は--

 

「橘、お前には感謝する」

 

ドプンッと液体の中に物が落ちたような音が何も見えない砂だらけの世界に響いた。

 

「オプス・ニ・テンス・クーリラヴィ・エンテ」

 

続けて響く魔法詠唱。

 

 

「--巡れ影の茨(スピィナ・ウンブィラーツア)

 

砂の世界に先程の影の茨が次々と生まれ始める。

 

「--黑無き世界を染めろ(オプス・ニヒェドゥス・ティンクトゥイラ)

 

 

徐々に地面を巡っていた黒い茨が絡み合いひとつの大きな黒い庭園を創り出す。

 

「・・・これは・・・影の魔法!? もしや…!?」

 

ふと、橘の脳裏にとある魔法使いの名前が過ぎった。

 

「貴様は! スk」

 

魔法をかじった者なら誰もが知っている最凶最悪の影の魔法使いの真名を告げるよりも早く、橘の全身を茨の群れが包み込んだ。そして、

 

咲け(フロィス)影茨庭園(スピィブィータ・ホルトゥス)】」

 

魔法が完成し--橘を包み込んでいた茨の棘が全身に突き刺さり、血の華が咲き誇った。




【登場キャラ紹介】一人目

名前:虚影(きょうか)→???

性別:男性

年齢:年齢不詳(目測では20代手前)

外見:雪のような白さの中に薄らと水色が混じった雪結晶の髪色と何色にも染ることのない夜空色の瞳。 数千年前は汚れた煤けたローブで全身を覆っていたが、現在は中学校の制服を着用している。

性格:数千年も生きているため、感情が死んでいる。現在は雪姫の罠に嵌められたことで怒りと屈辱の感情、また刀太や級友と過ごした時間により微かに人間としての感情も芽生え始めている。

その他:かつて最凶最悪の魔法使いと恐れられた存在。何千もの魔法使いを殺戮し魔法世界や悪を狩る者たちからは有名。ただし、現在は【魔力喰らいの首輪】によって大悪人の姿とは思えないほどに若返り弱体しているため、タダの中学生にしか見えない。

★他キャラとの関係性

雪姫→主従関係であり、復讐対象兼家族

刀太→お節介な家族

肉丸、武来人、祈、徹→ただの級友








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