UQ HOLDER!~影の魔法使いと闇の福音~   作:さゃなほりなの

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今回で序章は終わりです。

次回から第一章開幕です!


第四話:旅立ち

 

「さて・・・どうしたものか」

 

虚影(きょうか)は全身穴だらけの橘の亡骸を眺めながら呟く。本人的には殺すつもりはなかったが、賞金稼ぎを生業とする者の力量を見誤っていたらしい。オマケに【魔力喰らいの首輪】によって膨大な魔力と魔法技術・戦闘技術の衰えを感じていたが、実際はそんな事はなかったということも今回の戦いで仮定することが出来た。

 

「よし・・・影に喰わせるか」

 

そう言うと虚影(きょうか)の足元の影が蠢き、橘の影と繋がり呑み込んでいく。ズブズブと沈んでいく橘の亡骸。やがて完全に沈み切るとその場には血痕だけが残った。

 

「あとは・・・」

 

「え?なに今の?」

 

影による捕食を終え、雪姫たちの安否を確かめようと立ち上がった瞬間、背後から刀太の驚く声が聞こえた。虚影(きょうか)は驚くこともせず振り返る。

 

「--そちらの道に決めたか」

 

「・・・ん?今のって魔法だよな?ってか、雪姫から聞いたぞ!お前も不死者ってやつなんだろ?! 」

 

「不死と言っても色んな奴がいる。雪姫やお前みたいな吸血鬼や義体(サイボーグ)化、呪いや祝福といったあらゆるものまで。ちなみに俺は--」

 

虚影(きょうか)は突然、自分の片手を影で切断する。

 

「なっ、お前なにし・・・!?」

 

血迷ったかのような行動に刀太は驚き、止血しようと思って虚影(きょうか)の手首に目をやって動きが止まる。なぜなら、

 

「俺の身体には血が流れていない」

 

本来なら血が流れてくる箇所から溢れてきたのは膨大な数の生き物の顔の形をした影。そのどれもから何百何千もの怨嗟の声が微かに聞こえてくる。ハッキリと耳を澄まさなければ聞こえないほどに小さいが、そのどれにも『死ね』『悪魔』『殺してやる』という言葉が含まれていた。暫くして怨嗟の声を叫んでいた影達の表情が引き攣り、形を変えていく。それは徐々に人間の手と同じ形に構築されていき、骨・筋肉・皮膚と覆われていく。

 

「これが俺を不死たらしめている呪いだ。お陰で数千年以上は生きている」

 

虚影(きょうか)は完治した腕の機能が問題ないか力を込めたり緩めたりと確かめながら、自身の不死のカラクリを刀太に告げる。

 

「・・・そっか、不死にも色々あんだな…。まぁ、でもよ・・・不死も悪いもんじゃないんじゃねえか?」

 

「・・・なにをいっ--」

 

虚影(きょうか)にとっては数千年前の事でもあり、自身が不死になった時にどんな感情を抱きながら過ごしてかなんてもう覚えていないこであり、善し悪しはどうでもよかった。そんなことを露知らず、刀太は近くにいた雪姫と困惑する虚影(きょうか)の肩に手を回して、

 

「お前が数千年も生きてなかったら、雪姫と俺とこうして家族になれてなかったんだからな!!」

 

ぐいっと引き寄せながら笑った。虚影(きょうか)には家族の温かみというものがまだ分かりきってはいないが、誰かの命を奪い命を狙われる日常と比べればぬるま湯に使っているかのような平穏で静かなものではあった。

 

「・・・暑苦しい」

 

「・・・ふっ」

 

「はははは!」

 

されるがままでちょっと嫌そうな顔をする虚影(きょうか)としおらしくしていた自分が馬鹿らしいと笑みを浮かべる雪姫、そしてそんな二人の様子に幸せを感じながら刀太は笑った。

 

---①---

 

翌日の朝。昨日の橘による問題は雪姫、刀太と虚影(きょうか)以外は真実を知らずに幕を閉じた。因みに、肉丸達4人には虚影(きょうか)が『橘を殺した事実』と『不死』だと言うことを伏せ、『刀太に負けて警察に連れてられた』という内容を伝えた。というのも虚影(きょうか)の素性がバレることを雪姫が禁止したからだ。

 

「くっそー、お前らが都一番乗りとはなぁ、卑怯者め」

 

「仕方ねえだろ、雪姫の素性がバレて、またいつあんな物騒なのが襲ってくるかわ分かんなくなったんだから、ここにはいられねえよ」

 

悪態をつく級友に刀太はそう説明する。

 

「羨ましいーってんだよ、俺と代われ」

 

「ま、じゃあな。俺達も必ず後をおうからな!だから、あの塔でまた皆で会おう」

 

級友たちの言葉に刀太はニッと笑うと、

 

「ああ、待ってるぜ。あの塔の先で!」

 

背を向け歩き始める。

 

「では行くか・・・都へ。 新東京天之御柱市へ」

 

「・・・」

 

刀太のことを待っていた雪姫と虚影(きょうか)も歩き始める。

 

「よし!じゃあ行こうぜ、あの塔の先へ!」

 

改めて自身の目標指針を口にする刀太。

 

「塔?あぁ、日本軌道エレベーター『アマノミハシラ』か?」

 

「あぁ!!それが俺の!俺達の夢だからな!!」

 

ガシッと隣を歩く虚影(きょうか)の肩に腕を回して雪姫に応える。

 

「ん?虚影(おまえ)もそうなのか?」

 

「・・・」

 

肩にまとわりつく刀太を払いのけもせずにうんともすんとも言わない虚影(きょうか)。その姿は満更でもなさそうな様子にも見え、雪姫は

 

「ふっ、お前も変わったな」

 

かつての自分、そしてあの時の虚影(きょうか)を思い出して告げた。

 

こうして彼らは九州・熊本県阿蘇郡のとある村から旅立つ。

 

一人の少年は、仲間たちと交した夢のために。

 

そしてまた一人の少年は--目的を果たすために。




今回は虚影の使用した魔法について紹介します。

★【転影術】→自分の影と自分以外の影を繋げることで行き来することが可能となる転移術の劣化版。 繋げることの出来る対象は生き物は最大5人まで。物などの影には無制限。但し、影の無い場所には転移できないというデメリットがある。

★影の茨(スピィナ・ウンブィラ)→刀太の影から使用した魔法。自分もしくは自分以外の影を使うことで発動する拘束魔法。魔力が無くならない限り茨は伸び続ける。但し、影のない場所では使えないデメリットを持つ。

★影の剣(グラディーブィア)→自分もしくは自分以外の影から発動可能な攻撃魔法。魔力が無くならない限りは何本でも生成可能。影がない場所は使えない。

★影茨庭園(スピィブィタ・ホルトゥース)→攻撃魔法の一つ。影の茨を組みあわせて【庭園】と呼ばれる魔法領域を展開し、術者が指定した対象を拘束そして刺し殺す。
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