ツーターン・スリーターン   作:ジェレミー

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模擬レース後半戦


【ウマ娘】中長距離は華やかに

 

「さて、アイルさんパドックに行きましょうか」

 いつの間にかあたしのバッグを肩にかけたリベが促した。

「あ、バッグ」

「いいですよぅ。パドックまでお付き合いしますから」

「ジェルは?」

「シャワー浴びてからスタンドで見てると思います。木野トレーナーとも会ったみたいですよ」

 リベがウマホをポンポンと叩いた。

 

「あ、そうそう、レースが終わったら、結果次第ではいろんなトレーナーからのスカウトがあると思います」

 リベがウマホを見ながら言った。おそらくジェルから何かしらの言伝が来ているのだろう。

「木野トレーナーを見つけられたら真っ先に合否を聞きにいく。それで木野トレーナーと約束があるってことを他のトレーナーに知らせるのがひとつの手段です。で、もし他のトレーナーに声をかけられたら――」

 

 そこでリベがふと顔を上げた。

 

「かけられたら?」

「――もし、その人のほうがいいと思ったら、スカウトを受けてしまうのもいいんじゃないでしょうか。あるいは、『別のトレーナーと約束があるので、まずはそのトレーナーに話をしたいです』といって離れるか。アイルさんの人生です。大切なトレーナー選びで、私たちに義理立てる必要はないんですから」

「ふうん」

 私のウマホがなった。ジェルから「Good Luck」というスタンプが来ていた。

 

 パドックの柵の一番端にいるスタッフに名前を告げ、ゼッケンを受け取りパドックの中に入れてもらった。

「スタンドから直接ここに入れるのは模擬レースの時だけで、シリーズのレースでは控室からここに来ます」

 背中にゼッケンをつけてくれたリベが、パドック左手前のトンネルの入り口を指さした。

「基本的にいったん控室に入ってしまえば、あとは係員さんが案内してくれるので間違いはないでしょうけど、さすがにGⅠに出走するような人がさっきのところから入ろうとしたら大騒ぎになりますからね」

 

 外で第4Rのファンファーレが鳴り、場内実況がパドックまで聞こえてきた。

 そして、スカウトしたいウマ娘がいなかった7割のトレーナーがパドックに戻ってくる。

 木野トレーナーの姿もあった。

「それじゃ、私も準備を始めますから、頑張ってくださいね」

 リベがパドックから抜け、先に自分のゼッケンを受け取ると更衣室に走っていった。

 

 渡されたゼッケン番号は2番。後入れ、内枠という開幕週東京2000mでは最高の枠を引いたと言えよう。

 ゲートが開くと早速外の枠を引いたウマ娘達が一斉にインコースに群がっていく。

 あれから何日か3人で特訓をしたが、一番コーナー加速が下手だったあたしがいくら2番枠とはいえコーナーから始まる2000mでいいポジションを取れるわけがなく、2コーナーを抜ける頃には後ろから数えて3人目にまで下がっていた。

 

 ロクに子供のころからトゥインクル・シリーズを見てこなかったあたしにはまともなレース経験はない。

 首を伸ばして一通り隊列を見渡し、とりあえず走りやすい直線で少し前に行きつつ最短コースを進む。

 中距離ということもあってなかなかレベルが高いウマ娘達が揃っているようで、最後の直線に入るまで前の子が下がってこなかったのはラッキーだった。

 もう一度顔を上げて前方を見ると、やや外目がいい具合にバラけていた。

 後ろの子より先に先頭集団に取りつけば、あとは2歩右にズレただけで前が開く。

 

 そのまままっすぐ走り切れば、4バ身差の圧勝。

 

 ジェルと同じように着順掲示板の点滅を確認するとスタンドに振り返った。

 ゴールの手前辺りで見ていたジェルが拍手をしている。

 次のレースに出るリベはもうパドックに行っているので、ジェルに軽く手を上げ採決室に向かった。

 

 採決室前ではトレーナーが何人も待ち構えていた。

 14人出走の2000mで王道の差し競馬、しかもインを突く判断の良さからの3バ身差の圧勝となれば将来有望どころかGⅠを約束できる逸材と言える。

 当然実績のあるトレーナーが人だかりの前列を賑わせている中、レースのとき同様背伸びをして首を伸ばすと、運よく奥の方に立っている木野トレーナーを見つけることができた。

 

 偉そうなトレーナー達の差し出す名刺をすべて手で制して、木野トレーナーのところまで直行する。

「どう?」

 木野トレーナーは親指を立てた。

「俺にはもったいないね。高ランクのトレーナーもいっぱい来てるんだから、話を聞いてみたらどうだ」

「入部届は書いてるから。明日、持ってく」

 木野トレーナーは軽く笑うと、親指で後ろの更衣室を差した。

「ありがとう。着替えておいで。俺はリヴェッティのレースを見に行くから」

 残念そうに上へ歩いていくトレーナー達に混じって、パドックに上がっている木野トレーナーを見送り、更衣室に向かった。

 

 着替えを終えると、ジェルからメッセージが届いており、「おめでとう。さっきの場所にいる」とあった。

 リベが出走する第6競走は本バ場入場が始まり、急いでジェルが立っているゴール前に向かう。

 

「さすがでしたねえ、アイルさん」

「合格、もらったよ」

 ジェルと軽くタッチを交わすと、ターフビジョンに映されたゲートを見つめる。

 リベが出走する東京芝2400mはスタート地点がゴールの手前にあるので、ここからでは直接リベの様子は見れない。

 東京2400mは王道の距離であり、当然出走ウマ娘も多い。リベは12人中9番ゼッケンであった。

 

 発走ランプが点灯しゲートが開くと、まずリベが先頭を奪った。そのまま3バ身差をつけて1コーナーに飛び込んでいく。

「よしッ!いい位置だ!」

 隣でジェルが叫んでいた。普段のアイツとは思えない口調に少し耳を向けながら、ターフビジョンに注目する。

「ねえ、飛ばしすぎじゃない?」

「いえ、むしろ遅いぐらいだと思います。もうすぐ1000mになるので、タイムを見てください」

 ターフビジョンに1000m通過のタイムが表示されると、「1.01.9」と出た。

 

「まあトレーニングも積んでいない模擬レースなのでこれでも速いくらいなんですが、このペースなら逃げきれますね」

 3コーナーに入ると、リベがチラチラ後ろを見るようになった。

「よぉし!伸ばせっ!5馬身つけろ!!」

 ジェルの声に応えるように、リベが単独先頭で直線に出てきた。

 

 地面を蹴る音が大きくなっていき、もうすぐあたし達が観ているところまで来る。

「行ける?」

あたしが聞くと、ジェルは足を踏み鳴らしながら叫んでいた。

「行ける行ける行ける!リベ残せっ!追え追え!!」

 しかしさすがに苦しそうなリベは残り200mを切ったあたりで減速、追い込み勢があっという間に1バ身差まで接近してきた。

「最後!寄せろ寄せろ!併せろッ!」

 

 1バ身――半バ身――クビまで迫られたところがゴールだった。

 

「よぉーし!粘った!獲った!」

 ジェルが柵を叩いて喜んでいる。

 リベもこちらに軽く手を振って、採決室に戻っていく。さっきまで上にいた木野トレーナーの姿もなくなっていた。

「あとはリベが合格するかどうかだけど」

 リベから『ご う か く』のメッセージが届いたのはそれから10分後。

 

「うし!」

 

 あたしたち3人、全員が模擬レース1着という実績を引っ提げてチーム・ピーコック入りを果たしたのだった。

 





【リヴェッティ】
芝A ダートF
短G マD 中A 長D
逃C 先A 差B 追G

固有スキル: 徹底的作戦立案
最終直線で前のウマに進路を空けさせ、速度を上げる

初期スキル
ありったけ 登山家 中距離直線◯

覚醒スキル
Lv2 コーナー加速
Lv3 秋ウマ娘◯
→※日本の守りはお任せを(秋と冬のレースが得意になり、スタミナと根性が上がる)
Lv4 栄養補給
Lv5 起死回生
→※蜘蛛の糸(終盤初めの方で中段以降にいるとしばらくの間加速力とスピードが上がる/作戦・先行)


 先行メインの脚質だが、回復系スキルが少ないので少々工夫が必要。
 シナリオ、チャンミ両方で安定して強いスキルを持っているため使いやすいキャラの1人。
 長距離適性を上げればトリプルクラウンも狙えるが、後述する固有二つ名取得のためには上げ過ぎてもいけないジレンマ。
 固有スキルが発動すると自身の前にいるウマ娘が自動的に左右に分かれるため、賢さをそこまで上げる必要はない。ただし垂れウマ回避などの左右移動スキルが発動しなくなるので注意。
覚醒スキルの起死回生は成長させると、強力ながら「先行作戦で後方に位置しないと発動しない」というスキルになるので、保険として使う必要がないなら成長させないほうがいい。

 固有二つ名条件【レジスタンス】
 長距離適正C以下の状態で春シニア三冠、もしくは秋シニア三冠を達成する



【アイルシリアス(アンベストネヴァー)】
芝A ダートG
短G マF 中A 長C
逃G 先F 差A 追C

固有スキル: 本気にさせないで
最終直線で3バ身圏内にいる相手の速度を下げる

初期スキル
プレッシャー 垂れウマ回避 小休止

覚醒スキル
Lv2 中距離直線◯
Lv3 ロンシャンレース場◯
→※海外旅行(海外レース場全てが得意になり、パワーが少し上がる)
Lv4 東京レース場◯
Lv5 ※海外ウマ娘キラー(最終直線で海外ウマ娘と競り合うと速度がすごく上がる)
→※青いやつ見つけた(最終直線で海外ウマ娘が先頭を走っていると加速度と速度がすごく上がる)


 王道系差しウマ娘。L’Arcシナリオでは普通に強い。
 進化スキルがどちらも海外向けであり比較的初心者向け。
 一方でチャンミ等の対人戦になると海外ウマ娘キラーが発動しないので、シナリオ重視でなければスキルを強化するメリットが少ない。
→進化スキル「青いやつ見つけた」は、賢さが低いと特定の日本ウマ娘相手でも発動することが確認された。

 長距離適性が低いので三冠を狙うのはやや難しい上に、ドバイシーマクラシックは2410mで「長距離」カテゴリに分類されるのが厄介だが、目標は5着以内なので適性を一段階でも上げておけば「海外ウマ娘キラー」で乗り越えられる。

固有二つ名条件【ニヒルな笑い】
海外GⅠを3つ以上勝利し、うち3戦で「垂れウマ回避」を発動させる。
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