セントライト記念(3歳 GⅡ)
3連休の最終日、中山に移送されると真っ黒に日焼けした
ついでに昨日のローズSでは2勝クラスの馬に乗って9人気で2着を獲ったようだ。
「
ほ?
アキさんが
まだ明らかに調整不十分の現状、強引に
心房細動等を起こしたら目も当てられないので、他馬のペースでゆっくり走らせ、ヤバそうだったらキングジョージの際に万が一を想定した時同様、黙って沈め、という指示である。
「テンから喧嘩することになるかもしれんが、すまんなあ」
ちょうどよかった、セントライト記念ではアキさんの指示に従うつもりだったから、抑えるなりイン突くなり大外ブン回すなり任せてみるよ。
中山外回りのコース形状はアスコット競馬場と似ている。キングジョージの時はジェリスターワが直線まで動かなかった分俺を捉まえきれなかったんだっけ。
……と、危ない危ない。
また先んじて作戦を考えてしまうところだった。今回は頭空っぽで走ると決めていたじゃないか。
俺は菊花賞の作戦を練っておくとしよう。どうせ菊では逃げだろうし。
もしかしたらこれは3000mの距離に不安があると見せかけるための差し戦法なのかもしれない。
この3連休は行楽日和、日本の広い範囲で3日間晴れ。馬場は当然、カチカチの良である。
9月も半ばを過ぎたというのにまだまだ暑く、パドックではミストシャワーが噴き出していた。
パドックに出ると、ビジョンに俺の近3走の成績とともに“皐月賞馬”という文字が飾りとられていた。
ちなみにダービー馬の方はと言えば、先週青い勝負服がいないフォア賞で悠々逃げ切っている。
前走がイギリスだったので俺の馬体重増減発表はなし。
馬体重は余裕残しの506kgで、未発表ではあるがキングジョージの時と比べ+10kg増えている。
単勝オッズは流石に1番人気の1.8倍。相手関係を考えたら若干高くついているが、毛艶などが目立たない鹿毛であるうえに、どうやらわざわざ演技をしなくても俺はパドックでの栄えが悪いらしい。
周回を重ねるうちに、俺がらみの連オッズが少しずつ上がっていった。
と言うのも、一般的にパドックでのいい条件として、“外側を周回しているか”、“前の馬にどれほど接近しているか”がよく挙げられる。
ミストシャワーでコウヘイが濡れないよう俺はなるべく内側を周回しているし、ボロを踏みたくないので視界を取るために前を周回する馬との距離も取っていたのだ。
まあパドック解説者にはいい顔されないわな。アスコットではベストターンドアウト賞をしっかり持ち帰ったというのに、おかしいな。
パドックの中では谷地オーナーも顔を出し、井野調教師、そして上田騎手が最後の打ち合わせをしているので通りすがりに聞き耳を立ててみた。
「アキさんは12も乗るんだよね?」
「ええ。おかげさまで仕事も増えてきまして」
「じゃあ着替え終わったらいつもの駐車場で。井野センセイは車で?」
「そうしますわ。帰りは代行呼びますから」
――飲み会の相談だったようだ。今日のレースが終わったら行くらしい。
オーナーの中でアキさんへの評価も上がってきたようだし、今年の新馬の依頼でもするのだろう。
<それではGⅡセントライト記念のパドックをもう一度見ていきましょう。解説は京浜スポーツ、井口記者です。
――まず井口さんの一番手評価は3番のテクニカルシフト、ということですが。
「はい、ダービーの後、前走新潟記念で+8kg、そして今日もまた+4kgということで、夏の暑さに負けず馬体を増やしてきました。それでいて緩くは見えないですし、調教もしっかりこなしてきたというところで、一番手評価とさせていただきました」
――それから10番のアリゼオグルーヴです。
「そうですね、こちらは夏は全休で、ここはまだ一叩きという段階でしょうけど、踏み込みもしっかり、パドックの外側を周回できています。基本的に3歳馬はこれが夏明け初戦になるという馬がほとんどですが、その中で一番見栄えがいいのは10番のアリゼオグルーヴです」
――はい、続いて1番のリヴェッティです。
「この馬は夏に放牧に出さずに、ずっと美浦の厩舎で調整を続けてきました。きっちりと乗り込んできて、ま、馬体重は+14kgと大きく増えていますが、重さは感じられませんので十分成長分の範囲内と言えるでしょう」
――現在1番人気、9番のジェルディサヴォアはどうでしょうか。
「もともと大柄な馬ですので506kgという馬体重は気にならないんですが、海外から帰ったばかりで検疫などの期間もありましたので、本格的な調教はまだこれからというところで、もうひと絞り欲しいかなという印象です」
――ほかに気になる馬はいらっしゃいますでしょうか。
「はい、4番のリッチセレクション、14番のミタノブロッケン、あとは先ほどの3頭です。」
ありがとうございました。井口さんのパドックからの推奨馬は3番、10番、1番、4番、14番です。
それでは中山11R、GⅡセントライト記念。本馬場入場です――>
暑い。冬枯れの有馬記念が待ち遠しい。
今日のコースはBコースだが、Bコース使用の最終日となっている。当然インコースはボコボコで、そこから外へ5頭分ぐらいまで荒れが目立つ。
アキさんが黙って大外ブン回ししてくれたらいいが、内で包まれるのは勘弁してほしい。
重馬場ならともかく、パンパンの良馬場で荒れたインから伸びる自信はない。
今日は前哨戦で、しかも負け覚悟の戦法のため、アキさんの手綱の当たりが柔らかい。
スタート命の逃げ戦法と言うのはそれだけアキさんにプレッシャーがかかっていたのだろう。
奇数枠9番からの枠入りということで、ファンファーレが鳴りやむ前に今日の係員は真っ先にゲートに促した。
今日は菊花賞の前哨戦、しかも中山開催ということで、関西馬の遠征は少ない。
関東所属の同志達を相手に威圧する気はないので、ゲート内で深く息をつく。
――鼻だけでなく、ため息のように口から息が漏れた。
偶数番の枠入れが始まり、外側に10番のアリゼオグルーヴ、少し間があって内側8番枠にスイーパージャックが入った。
後ろ扉が閉まる音が落ち着き、しばらくしてもう一度、パタンという音が遠くから聞こえた。
アキさんの足に力が入り、前扉が開いた。
慣れとは怖いもので、完璧すぎるスタートを切ってしまった。
2完歩の段階で5番のマックフルロンドより1馬身も前にいた。
アキさんが手綱を引っ張ったので、俺も一息つく。
馬の呼吸のペースと走るペースの関係は人間と同じで、スタートの瞬間は一瞬息を止める。速く走れば呼吸も小刻みに速く、ペースを抑えればゆっくり深い呼吸ができる。
5番のマックフルロンドを見送り、リヴェッティも前に行く。
俺が抑えたことで外から交わしていくしかなくなった11番のエミリアートガイが俺に何度か馬体をぶつけながら強引に内に切り込んでいく。
エミリアートガイは体重480kg程度だったが、506kgにぶつかったら弾き飛ばされるに決まっているのにあの騎手は何をしたかったのだろうか。
上り坂が終わり、1コーナーに差し掛かるところでマックフルロンドの単騎逃げになったようだ。
俺は2番手集団を見ながら7番リズムクラッシュの外につける。ザっと7,8番手だろうか。
後ろから12番のロックピアが睨んでいる気がするが、後ろからのプレッシャーには慣れているし、残念ながらGⅠ級の威圧ではない。
ここから少し直線だが、ダート1200mのスタート部分にあたる引き込み線を横断したあたりから右のカーブが4コーナーまで続いていく。
右回りの中山競馬場外回り、道中余裕をもって左手前を使えるのはここしかないので、1コーナーを抜ける前に左手前に替えておいた。
アキさんが舌を鳴らして何か指示をしているようだが、分からん。中学校では習ってないし。日本語で頼むわ。
アキさんの手綱が緩み、いつもの長手綱になる。
引き込み線を横断し右カーブが始まるが、左手前のまま走っているので少しずつ外に行ってしまう。
だがアキさんは手綱をダラリとしたまま向きを矯正させるつもりはないようだ。
2コーナーに差し掛かる直前で右手前に替え、内のリズムクラッシュに当たらない程度に鋭く回る。
回り終えたらもう一度左手前。3コーナーの仕掛けどころで脚を使うから、そこまで左後脚の体力を温存しておきたい。
内回りコースと合流する直前、残り800mのハロン棒を過ぎたあたりでアキさんが手綱を詰めた。後方の外に持ち出した4番リッチセレクションが上がってきたようだ。
追込馬に外から蓋をされると馬場のいいところが取られてしまう。
右の手前は残り600mまで取っておきたいので、左手前のまま少しずつ加速。当然外に振られ、後ろからきたリッチセレクションの前を押さえる格好になった。
600のハロン棒を過ぎると、周りの馬の踏み込む音が大きくなり、鞭のしなる音も聞こえ始めた。
ターゲットは1番のリヴェッティ。直線で抜け出されたら勝てる気がしないが、所詮は前哨戦。
もとよりこのメンバーの中で一番地力があるのはリヴェッティである。
俺とロックピアの間に追込のリッチセレクションを挟み込む3頭体制で、垂れてきた2番手集団を大外から交わす。その中にはリヴェッティはいない。
アキさんの左ムチが一発。利き手ではないのにバランスが崩れない。上手くなったなあ。
4コーナーから直線に向かうと、すでにリヴェッティが2馬身前にいた。
これは届かないな、と思いながらもう一度左手前に替え、坂を駆け上がる。
20mの坂と比べたら2mの坂などどうということはないが、リヴェッティも流石サトノダイヤモンドの血統。急坂は苦にしない。
耳元でヒュンヒュンとムチを振り回す音が聞こえ、直後に右ムチをもらって大きく外に進路をズラす。
あの音はムチを持ち替えた時の音だったか。
追っている腕と首の上げ下げのタイミングはピッタリであるから、アキさんはしっかり前を見たまま、姿勢を崩さずムチをくれたのだ。
リヴェッティとの差が1馬身のまま縮まってこない。
後ろとは2馬身以上離れているから2着確定なのだろうが、前との差がないのでここでアキさんが追うのを止めたら戒告になる。
アキさんは押している体勢だが、俺はフッと力を抜きつつゴール番を駆け抜けた。
リヴェッティとは3/4馬身差の2着。本番では十分逆転できる着差なので良しとしよう。
残念ながらそれを良しと割り切れない人たちの罵声がスタンドから聞こえてくるが、アキさんも怒るな怒るな。
検量室に戻ると、オーナーと井野調教師が揃って親指を立てていた。
「アキ、お疲れさん。上々だ」
オーナーも隣でウンウンと頷いている。
「想定以上に動いていたな。掲示板入りで上出来だと思ってたが」
「反応も悪くはありませんでしたし。差しでも走れそうですよ」
アキさんはオーナーとも一言二言言葉を交わし、12レースの準備に向かって行った。
アキさんのバレットが替わっていたのだが、あの女性は牧場で何度かスタッフとして見かけた気がする。転職したのか、オーナーの推薦かは知らないが。
<中山競馬場メインレースを迎えました。セントライト記念GⅡ。3着の馬までに菊花賞の優先出走権が与えられます。
只今奇数版の枠入りが終わったところ、偶数番号の枠入りになります。
12番のロックピア、誘導を受けました。最後15番のローズインフェクト、誘導を受けます。係員が離れて――スタートしました!
ポーンと飛び出した9番のジェルディサヴォア、それを内から交わしていった5番のマックフルロンド。
さあジェルディサヴォア今日は行きません!手綱を押さえた上田秋信、替わって8番スイーパージャックと1番のリヴェッティが内から2番手に上がっていく。
アリゼオグルーヴ4番手、14番ミタノブロッケンとその外から11番のエミリアートガイも先団に付けました。
その後ろ1馬身離れて7番のリズムクラッシュ、その外を追走9番のジェルディサヴォアです。今日は中団からの競馬。1コーナーに入ります。
それを見るように12番のロックピア、内から3番のテクニカルシフト追走。
このあたり一団で、外に15番のローズインフェクト、後方にかけては2番のクイックジャッキー、1馬身後方4番リッチセレクション、最後方2馬身差で13番ジェリーホーネットです。
あまり速いペースではありません。
先頭5番のマックフルロンド、後続を2馬身引き離して先頭ですが、外回りコースに入って間もなく2コーナー、今1000m通過1分4秒ぐらいで行きました。
先頭に立っているマックフルロンドですが、単独2番手スイーパージャック、まだ内に控えている1番のリヴェッティ。
800を通過して、後方集団動いてきました。
4番のリッチセレクション中村春貴の手が動いて、一気に先頭集団に追いつく勢いか、9番のジェルディサヴォアも上がっていきました。
600を通過3,4コーナーの中間を過ぎて、マックフルロンド先頭、並びかけて行ったスイーパージャック、その内に馬体をねじ込んだ1番のリヴェッティ、先頭に替わるか。
後方から9番のジェルディサヴォア、4番のリッチセレクション、12番のロックピアも上がってきた。
内に進路を取ったテクニカルシフト、13番ジェリーホーネット宜保のムチが飛んで、先頭リヴェッティで4コーナーカーブから直線、2番手集団横一線大きく広がった。
先頭1番のリヴェッティ、リヴェッティ先頭2馬身のリード、2番手9番ジェルディサヴォア抜け出してくる、テクニカルシフト懸命に頑張って外からリッチセレクション3番手に上がってくるか、先頭粘る1番のリヴェッティ、ジェルディサヴォア、リヴェッティ、リヴェッティだ!ゴールイン!
2番手9番ジェルディサヴォア、その後ろ4番のリッチセレクション3番手!
4コーナー内から早めに抜け出した1番のリヴェッティ、さあ菊に向けてダービー2着馬の逆襲なるかというところ。ジェルディサヴォア今日は控える競馬になりましたが、リヴェッティに半馬身及ばず。
その後ろは3馬身ぐらい離れての入線4番のリッチセレクション、テクニカルシフト4番手。
着順掲示板すんなり上がりました。1着1番リヴェッティ、2着9番ジェルディサヴォア、3着4番のリッチセレクション。
確定までお待ちください。>
そろそろ大安の日だけになるかな・・・
ウマ娘、もしくは競馬系のSSを、主にどのタイミングで読んでいますか?
-
出勤・登校の最中
-
昼休み
-
帰宅・下校の最中
-
お風呂に入りながら
-
就寝前
-
競馬のレース間
-
競馬が終わった後