URAトレーナーは狭き門だが、成ってしまえば高収入が期待できる職場である。
地方レース場併設の学園所属では給料はそこまで高くないが、中央トレセン学園所属であればレースは勝てなくても、チームを持っていなくても、なんなら担当ウマ娘が1人もいなくてもURAから支払われる給料だけで日本人の正社員平均年収は軽く上回る。
さらにその中でバカみたいに重賞、GⅠを勝たせているようなトレーナーは進上金としてその賞金の10%が自動的に振り込まれるので、担当ウマ娘がGⅠ勝利ともなれば固定給の他に1,000万円以上の手当を稼げるのた。
一方で、意外とこの職業は「生涯での収入割合」で見るとそう高くはない。
まず、URAトレーナーに合格するような人材はエリートである。
必死に勉強をして高収入が確約される職に就いたにもかかわらず、トレーナー業はなかなか長続きしない。
事実、トレーナーは狭き門だなんだと言う割に、常に人手不足なのだ。
人手不足による激務に疲れてリタイア、というのもいるにはいるが、一番多い理由は、ある程度稼げたウマ娘が卒業すると同時にトレーナーと結婚して、教え子と共に引退する寿退社である。
若くして実績を残したチート級トレーナー程この傾向が強く、現在中央トレセン学園に在籍している高ランクのトレーナーはほとんどが中年以上となっている。
この人達はトレーナーこそが生涯の職業と考えているからこそ、教え子との恋愛感情を持たないか、あるいはとっくに結婚して家庭をもっているという、指導者としては理想的な人格者である。
なお、そんな堅物でも教え子の「
さて、チーム・ピーコックの木野トレーナーもそろそろ身の振り方を考える時期であった。
既に30歳も超え、一応独身だが通い妻に近いような彼女がいる。
しかしその彼女というのが、まさに教え子、しかも現役ウマ娘。
つまり、まだトレセン学園に在学中の学生であった。
彼女は高等部という扱いではあるが、今年で20歳を迎え、高等部3年生としての留年も2回目である。
実際この手の留年生は珍しくなく、ウマ娘の「本格化」が遅い生徒は高等部に上がってからようやく出走可能になるので、そうなると高等部として留年しつつ全盛期を迎えることになる。
あるいはシンボリルドルフ生徒会長はじめ、生徒会や両寮長など「学生」身分でしかできない役職を長く続けている生徒も留年生扱いである。
彼女らはトゥインクル・シリーズは引退してドリーム・リーグで走りつつ、高等部3年の学生として在籍しているのだ。
当然、ウマ齢は言うに及ばず、である。
彼女達は結婚はしていない。
元トレーナーや専属のトレーナーといいところまで行っている、という噂は絶えないが。
話を戻して。
木野トレーナーの教え子の1人、スペシャルレートが通い妻のような関係になったのは彼女が1回目の留年生となった年である。
学生身分でありながら週に4回は外泊申請を提出するスペシャルレートであるから、
ただこれはあくまで通い妻になったのが留年1回目の年である、と言ったまでであり、スペシャルレートが半ば強引に木野トレーナーの童貞を奪ったのは、先輩も同期もみんな卒業か中退を決めてチーム・ピーコックの在籍が彼女1人となった、高等部2年の年度末頃であった。
これがバレてしまうと、青少年保護育成条例違反で、木野がトレーナーとしての立場を失うどころか犯罪者となってしまうので、これは誰にも言えない秘密だ。
学生身分でコトに及ぶような生徒は総じて平場クラスでクスブっているようなタイプが多い。
彼女らは勝利と名誉、金への欲求が満たされないので、食欲か性欲で不足を補うのが常である。
しかし金がなければメシも食えない。
ただでさえウマ娘が満足するほどのメシを食おうとすれば、安く見積もっても1食あたり万の金が飛んでいってしまう。
結局、その行為に
なお、財界政界にはウマ娘を妻や娘に持つ人は少なくなく、そもそもウマ娘界をリードする名家の人達が重鎮になっていることも多いので、自分達の経験や「牝バの領域」としてトレーナーとウマ娘学生の恋愛については上手いこと握りつぶされているのが実情だ。
スペシャルレートは高等部3年のシニア期までに未勝利と1勝クラスは突破したが、2勝クラス以上では勝てなくなり、以降もそこそこの頻度で善戦し入着賞金を稼いではいるが、これ以上の勝利は到底見込めないのと、そろそろ正式に結婚して子供を作りたいという願望もあり、引退、卒業を考えていた。
そうなると木野トレーナーも引退するか、このままトレーナーとして在籍するか、決断しなければならなかった。
冒頭で書いた通り、チーム実績など無くてもURAから給料は入る。
しかしこのままスペシャルレートをサブトレーナーかマネージャーとして雇う場合、木野トレーナーが雇用主にあたる。
URAから2人分の給料が入ってくるわけではないので一種の家族経営状態になるが、既に通帳は共有しているからそこは今更の話。
あとは木野トレーナーの「やり甲斐」の問題だ。
トレーナーとスペシャルレートの危うい関係を感じ取っている他の生徒はチーム・ピーコックの門は叩きづらく、そもそも勧誘も積極的ではない上に、重賞クラスの実績すらロクにないチームを知っている新入生などまずいない。
所詮は数多のトレーナーの1人である。
競争意識も失い、トレセン学園職員ではあるものの「トレーナー」としての立場がない状況で、果たしてモチベーションを保てるかどうか。
年齢も年齢なだけに、人生をやり直すチャンスも少ない。
このままダラダラとトレーナーを続け、心が折れたら鬱病まっしぐらである。
そんな切羽詰まった状況の中、チーム・ピーコックの部室に突撃してきた「ヘソ曲がり」が3人も現れたのだ。
彼女達のことはよく知らない。
というより、未所属の生徒を指導している高嶋トレーナーなどと違い、ほとんどスペシャルレートの指導と設備管理などの雑務をしているだけの木野トレーナーは、他生徒のプロフィールなど調べる機会も動機もなかった。
聞けば彼女達は全員が模擬レースすら未出走の中坊共で、そのうち1人は新入生であった。
木野トレーナーは、未出走の割に自信満々な3人を見て、良くて2勝クラスまでだな、と感じていた。
大抵この手の生徒は模擬レースやメイクデビューで力の差を感じて挫折するのがお約束で、卒業に至る前にチームを抜けるだろ、と考えていたのである。
チームの在籍人数でボーナスも出るし、この3人の面倒を見終わったら辞めるか、とその夜スペシャルレートと話していた。
しかしその結婚プランはあっさり崩れた。
直後に行われた模擬レースへの出走を勧めてみたところ、3人ともとんでもないタイムで1着を獲ってきたのである。
これは自分にはレベルが高すぎるぞ、と内心慌てた木野トレーナーは、模擬レースを見て勧誘したがっている他の高ランクトレーナーをさり気なく勧めたが、翌日、「文句は言わせない」とばかりに3人揃って入部届を叩きつけてきたのだった。
スペシャルレートを先行させた最初の併走練習では、天才的なコーナーワークで一気に加速する2人と短い直線ながら強烈な追い込みを見せた新入生を見て、大きいところを狙うか、と久々に光が差し込んだ感覚であった。
有望な後輩が加入したスペシャルレートも大喜びで、その夜は2人でワインを開けた。
季節柄スペシャルレートがちょうど発情期に当たっていたが、ハメは外してもゴムは外さない理性が残っていたのは幸いであった。
転生チートトレーナーでもなく、悪役守銭奴トレーナーでもない、平凡より二段階ぐらい下のトレーナーです。
相ウマ眼も、お世辞にも良いとは、言えない。
言い訳に言い訳を重ねて大変恐縮なのですが、
出馬表や登場人物情報などをまとめていたExcelが、officeのサブスク切れにより編集ができない状況でして、
買い切り型を入手するまでしばらくお時間を頂きます。
5月分いっぱいは書けてる分を少しずつ投稿いたしますが、6月からはだいぶ遅くなると思われます。