ツーターン・スリーターン   作:ジェレミー

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凱旋門賞
(Prix de L'arc de Triomphe)
(3歳以上 牡/牝 GⅠ)

【6R】 Prix de l'arc de Triomphe
Groupe Ⅰ - 5,000,000 € - 2,400 metres


1HOLD FLOATER LAW(GB)5M bb 559,5
2RELATION SCENARIO9M b 559,5
3ROGGEN BAUER(IRE)6M b 659,5
4SOUBENIR TO RICHE(IRE)4M Al 459,5
5UNBEST NEVER(JPN)3M bb 659,5
6DAME CULTUS LOT10F Al 458
7INTER BAND8F b 458
8LA TIERRA(IRE)1M gr 356,5
9NORMAND2M b 356,5
10BLOOM FRONTHER(GB)7F bb 355


*1

*1
左から、馬番、馬名、枠番、性別、毛色、年齢、斤量




一本被り

 話は少し戻り、リンガスマイセッサが新馬戦を勝った日の夜に発走となった凱旋門賞。

 その2日前、シャンティの厩舎では最後の打ち合わせが行われていた。

 

「これ普通に走っても勝てんじゃね?」

 千石調教師が鎌田騎手と凱旋門賞の出馬表を見ながら話している。

「いつもだってあんな競馬したいわけじゃないんですよ。ネヴァーが勝手に突っ込んでいくだけで」

「ドーヴィルの時みたいに出来んか?」

「手前がスムーズに替われば。いつも体当たりして手前替えてますんで」

「いっそ風車ムチくれてやれや」

 鎌田がえー、と嫌そうな顔をした。

「そしたら制裁金取られるの俺じゃないスか……。騎乗停止はシャレにならないっすよ。天皇賞も乗りたいんスから」

「いっつも10万ぐらい取られてんだから今更だろ」

 基本出たとこ勝負っすよ、と鎌田が窓の外に目をやった。

 

 フランスダービー馬のノーマンドこそ出走を表明しているが、イギリスダービー馬のポエトリーレターはキングジョージで心を折られたのか年内休養、ジェルディサヴォアの蹄鉄が額に直撃して裂傷を負った同ダービー2着馬のエキゾチックチャペルはその後縫合手術をした上で経過観察中だが、復帰は未定となっている。

 イギリスオークス1着馬のブルームフロンティアは一応出走してきたが、キングジョージの後やや立て直しに時間を要している印象だ。

 また、アイルランド2冠を制したラティエラは、前走アイルランドセントレジャーでほぼ1世紀ぶりの3冠にチャレンジしたものの3着、そこから中2週の強行軍で初のロンシャンということで、適性不安もあり人気は低かった。

 

 古馬では昨年からアンベストネヴァーとジェルディサヴォアにやられっぱなしのスーベニアトゥリッチが出走表明をしているが、ついに6番人気想定までオッズは落ち込んでしまった。

 また、昨年の凱旋門賞大敗からほぼ一年ぶりの出走となったインターバンドが、前哨戦ヴェルメイユ賞を連覇して臨む。

 斤量恩恵が大きい凱旋門賞において、牝馬限定のGⅠヴェルメイユ賞勝ち馬は非常に優秀な成績を収めているが、相対的に3番人気とはなってはいるものの、昨年の成績と今年のヴェルメイユ賞の相手関係から見ても力不足と言わざるを得ない評価を受けている。

 

 そして何より、牝馬ながらキングジョージを勝ってアンベストネヴァーの対抗最右翼と目されていた昨年の英愛オークス2冠牝馬チョジューがフレグモーネを発症しまさかの電撃引退を発表したことによって、俄然一本被りの様相となっていたのだ。

 

「また内で包まれるのももったいないし、外回してみます」

「そうだな。阪神と違ってフォルスストレートあるし、頭数も少ないしな」

 宝塚記念では仕掛けどころで加速しきれず、先行勢の外を潰せなかったのと、手前が替わらなかったのが敗因だった。

 ロンシャンはフォルスストレートから早めに手前を替えられるので、今年こそ大外を突いていくつもりだ。

 海外遠征も3回目となればアンベストネヴァーも慣れたもので、飼い喰いもよく、いつも以上に激しく調整をしなければ体重がどんどん増えていく。

 首の硬さは相変わらずだが、心身ともに仕上がりは完璧であった。

 

 今年のペースメーカー(ラビット)はロッケンバウアー1頭。

 スーベニアトゥリッチと同じ陣営の青い勝負服が逃げていく。

 しかしその後ろ、本来ホールドフローターローが追走するはずが、口を割ってスーベニアトゥリッチが2番手に上がっていくと、自らが用意したペースメーカーを追い抜いて上り坂に突入していった。

 これではペースメーカーの意味がなく、ロッケンバウアーの騎手ももう一度先頭を目指すか、或いは後続をブロックするような位置取りを取るか迷っているうちにホールドフローターローにも抜かされた。

 

 先行する3頭が慌ただしくなっているが、後続は至って平和である。

 ブルームフロンティアが後方集団の先頭を走るが、例によってデームカルティスロットとインターバンドの先輩牝馬が目を光らせており、リレーションシナリオとラティエラの2頭はアンベストネヴァーをマークし内に閉じ込めようとしていたが、デームカルティスロットとポジションが入れ替わる格好で外に逃げられてしまった。

 フランスダービー馬のノーマンドは最内を追走し、オープンストレッチを待ってコーナーに差し掛かる。

 

 それにしてもスーベニアトゥリッチの大逃げは場内を沸かせた。

 騎手も抑えるのを諦め、手綱を長くして折り合いをつけようとしている。

 しかしそんな破滅的な逃げがロンシャンで通用するはずもなく。

 フォルスストレートに差し掛かる前にホールドフローターローが追いつくと、後方から迫る馬群を避けるように外に逃避していった。

 

 主人がいなくなったロッケンバウアーの騎手は仕方なく自分が勝ちを拾えればと動いたが、そもそも序盤で飛ばして前に付けていたロッケンバウアーはとっくに力尽きており、ホールドフローターローをもう一度抜く体力はなかった。

 

 こうなると後方勢の競馬である。

 特に逃げ馬さえも力がある日本競馬に慣れているアンベストネヴァーにはお誂え向きの展開で、フォルスストレートを抜けるまでじっと我慢すると、上がり3ハロン32.8秒という日本でも出したことのない末脚で、並んで追い上げたデームカルティスロットをスピード差で置き去りにしていった。

 

 

<凱旋門賞、いよいよ枠入りが始まりました。

日本、現地ともに圧倒的な1番人気に推されております、アンベストネヴァー。

連覇を目指して3番ゲート、すでに収まっております。

 

キングジョージの覇者チョジューが直前で出走を取消した中、地元フランスダービー馬ノーマンドが2番人気。今2番ゲートに誘導を受けました。

 

最後の枠入れは地元フランス調教馬デームカルティスロット。大外10番ゲートへ収まりました。

 

スタートしました。

アンベストネヴァーもまずまずのスタートを切って、まずは3番ロッケンバウアーが、馬群を引っ張ります。2馬身のリード。

その後ろは1番ホールフローターローと、外から4番スーベニアトゥリッチ、ジョッキー懸命に抑えようとしておりますが2番手に上がって、少し距離をとって4番手はイギリスのブルームフロンティア。3歳牝馬、オークスの勝ち馬です。

内からこちらも3歳馬、地元フランスのダービー馬ノーマンド、行きました。

 

結局先頭スーベニアトゥリッチが奪いました。ロッケンバウアーを引き離して単騎先頭。

中段にはインターバンドとデームカルティスロット。並んで行きます前哨戦ヴェルメイユ賞の1着2着馬。牝馬勢が固まって、その後ろですが、日本のアンベストネヴァー。馬群の真ん中。

 

外にはフランスの、リレーションシナリオ。

そしてアイルランド2冠馬ラティエラが最後方。

 

馬群は縦長です。

飛ばしていきますスーベニアトゥリッチ。リードを6馬身から7馬身取っているでしょうか。

離れてロッケンバウアー、すぐ後ろにホールドフローターローが付けました。

 

その後ろは4馬身ぐらい離れてブルームフロンティア。

1馬身差でノーマンド、並んでインターバンド。

いま1000mを通過、手元の時計で1分を切って、59秒7ぐらいでの通過です。

とんでもないペースになっている凱旋門賞。

先頭のスーベニアトゥリッチ、すでに2コーナーに差し掛かっております。

 

中段後方デームカルティスロット、それを見るような格好でアンベストネヴァー。きっちり折り合っているか外目を追走。

内にはリレーションシナリオ。

2馬身遅れて、ラティエラ最後方変わらず、

 

さあ飛ばしていきますスーベニアトゥリッチ、大きくリード10馬身以上離しているでしょうか。

2番手大きく離れてロッケンバウアー、並んで少し前に出たかホールドフローターロー。

その後ろ、5馬身ぐらいの差がつきました。ブルームフロンティアと、並んでノーマンド。

インターバンドがいて、デームカルティスロット、その外にアンベストネヴァー。すでに馬体を外に持ち出しています。

3コーナーを回っていく中で、リレーションシナリオは内にまだ控えて、最後方から少しポジションを押し上げていくラティエラ。

 

さあ先頭スーベニアトゥリッチもう一杯か外にモタれている。

一気に先頭変わってホールドフローターロー、ロッケンバウアーが馬群を引っ張ってここからフォルスストレート。

後方勢動きがあるか、内からノーマンドが単独4番手に上がって、ブルームフロンティアと手が動いてインターバンド。

アンベストネヴァーは外に持ち出してまだじっと構えている。

ラティエラがその内を狙って最後方リレーションシナリオ。

 

さあ4コーナーを回って直線へ残り500mの標識。

ホールドフローターロー単独先頭4馬身リード、2番手に上がってくるノーマンド。

アンベストネヴァー手ごたえはどうかまだ動いてこない。400を通過。

インターバンドが前との差を詰めて、さあ先頭ホールドフローターローに、ノーマンドが馬体を合わす。

外から2頭、デームカルティスロットと、大外から来た、アンベストネヴァーだ。

内を狙ってラティエラ、インターバンドが迫ってくる。

外からアンベストネヴァー、デームカルティスロット2頭並んで追い込んでくる。

 

先頭アンベストネヴァー突き抜ける、追いすがるデームカルティスロット。

200を通過して、完全に抜けた、アンベストネヴァー。2番手デームカルティスロット、離れた3番手インターバンド。

独走になったアンベストネヴァー、2連覇目前。こちらも単独2番手デームカルティスロット。

 

アンベストネヴァー今年も決めた連覇達成!

離れた2番手デームカルティスロット、その後ろも離れてインターバンド。

左手高々鎌田遼、今年は大外一閃凄い脚。

2着に3馬身以上の差をつけて、デームカルティスロットも同じ位置からの追い込みでしたが、離されての2着。

その後ろも大きく離れてインターバンド、そしてノーマンド。

 

宝塚記念でまさかの着外を経験したアンベストネヴァーですが、フランスでは敵なし。

海外で真価を発揮するこのステイゴールドの血脈。2018年エネイブル以来となる凱旋門賞連覇。

日本のアンベストネヴァーやりました。ロンシャン競馬場より凱旋門賞をお伝えいたしました>

 

「やっぱ余裕でしたね」

 鎌田がニコニコしながら帰ってきた。

 昨年は凱旋門賞制覇という大仕事をやってのけたのに、馬は馬体検査、本人は捻挫の上に約15万円の過怠金というカウンターを食らって、喜んでいる暇はなかったのだ。

「だろうな。今年の年末は香港予定だけど、大丈夫か?ジュベナイル(阪神JF)の予定入れんなよ」

「もちろんっス」

 千石が後ろでカメラを向けている戸次記者を振り返った。

「つーわけで戸次さん、今年は香港、よろしく」

 戸次もニヤリと笑って、親指を立てた。

 

 

2037年競馬実況スレ

 

219:名無しの競馬実況者

なんで今年の凱旋門はあんなにクソつまらなかったのか

 

220:名無しの競馬実況者

>>219

ネヴァーがまともな競馬したからじゃね

 

222:名無しの競馬実況者

>>220

普通にやっても勝てるのに昨年はなんであんな

 

225:名無しの競馬実況者

>>220

鎌田が「賞金満額貰えてうれしい」って泣いてたな

 

227:名無しの競馬実況者

>>225

いつも賞金から30万ぐらい支払わされてたからしゃーなし

 

228:名無しの競馬実況者

マジで面子いなかったな

みんな回避してチャンピオンSとかフィリーメアSに行ったわ

 

230:名無しの競馬実況者

チョジューが直前で引退したのも痛かった

 

231:名無しの競馬実況者

>>230

唯一の対抗馬候補だったのにな

スーベニアトゥリッチ……お前もう船降りろ

 

232:名無しの競馬実況者

スーベニアはマジでパンクしたな

あんな暴走するとか誰が予想したよ

 

233:名無しの競馬実況者

ネヴァーからひたすら逃げようとしてたって陣営が言ってた

 

236:名無しの競馬実況者

ロッケンバウアー(ラビット)「なんで俺の前走っとんねん」

 

239:名無しの競馬実況者

凱旋門賞10頭立てであんなハイペースになることなんてねえよ

 

240:名無しの競馬実況者

最後はネヴァーとデームカルティスロットのマッチレースになるほどみんな飛んだ

 

241:名無しの競馬実況者

>>240

マッチレース(4馬身差)

 

243:名無しの競馬実況者

4馬身・4馬身・1馬身・クビの決着

 

246:名無しの競馬実況者

去年の凱旋門賞で見つけてからずっと追ってるけど、なんか持ってねえんだよなデームカルティスロット

 

248:名無しの競馬実況者

【速報】アルゼンチン共和国杯の出馬表でた

https://~~

 

249:名無しの競馬実況者

デームカルティスロットはジャパンカップ来るってマジなんかな

 

250:名無しの競馬実況者

>>248

有能

 

251:名無しの競馬実況者

>>248

と言っても一本被りと予想

 

252:名無しの競馬実況者

>>249

一応かなり前向きらしい

あの馬主ジェルディサヴォアの馬主と仲いいし

 

254:名無しの競馬実況者

>>248

まってシビレコおらんけど

 

257:名無しの競馬実況者

>>248

シビレコいないんですが

 

258:名無しの競馬実況者

>>248

シビレコいなくね?

 

259:名無しの競馬実況者

シビレコ怪我した?

 

262:名無しの競馬実況者

うっそだろ売り上げ一気に落ちるやん

 

263:名無しの競馬実況者

シビレコいないならラックタイムとアメリカンフォースの連で確定だわ

 

264:名無しの競馬実況者

オルデニスラグーンは人気低いけど買っとけ

 

266:名無しの競馬実況者

大本営発表ってどこだっけ

 

268:名無しの競馬実況者

>>266

全スポか谷地オーナーのTwitter

 

270:名無しの競馬実況者

>>266

オーナーのXは全スポの記事出てからポストされるから遅いぞ

 

 

--- ---

 

 木曜日の夕方、出馬表が張り出されると寺尾は慌てて井野調教師に電話をかけた。

『おう、寺尾さん、どしたの』

「わかってるでしょう?シビレコの件ですよ」

『ハハハ、特に故障じゃねえよ』

 でしょうね、と寺尾はパソコンを叩きながら吐き捨てた。

「もう明日の朝刊間に合わないから一応聞きますけど、次どこ行くんです?」

 

『ちょっと思うところあってよ、取り消した。次はステイヤーズSか鳴尾記念』

 寺尾は頭をガリガリ掻いて項垂れた。

『いろいろと事情はあるんだけど、日曜にもマコに京都で仕事入ったんよ。そっちの馬主との伝手も手放したくないから、谷地オーナーに打診したら回避でいいって』

 谷地オーナーの優先順位は進藤>シビアレコードなので、進藤のために東京優駿すら回避した以上、GⅡの一つや二つ回避するのもどうということがなかった。

『机上論としては、今週末リンガスで1勝積んで、もし西の馬で1つでも取れれば30勝か。そしてシビレコで鳴尾記念を取って晴れて31勝よ』

「そんなうまくいきますかねえ」

『机上論だってば。まあリンガスのアタマは堅いと思うけど?

ただ、どっちにしてもレコードはジュベナイル(阪神JF)前に使えても1回なんよ。シングルベルをどこかで使うか、最悪千石さん(調教師)に頭下げて何頭か回してもらわんと』




次回14日予定

2話前(本編1話前)に、かなり修正入れてます。
日付に間違いがあったので強引に辻褄合わせる内容にしていますが、いずれガッツリ修正入れるかもしれません。
現在2037年の設定なので、月をまたいで土日がある週は判断難しいです。
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