ツーターン・スリーターン   作:ジェレミー

90 / 90

菊花賞(3歳牡/牝 GⅠ)


11セイクリッドレイン牡3差し――――三輪神戸新聞杯9家賃高い
2ブライトエルデ牡3差し――――伊丹神戸新聞杯6長いかも
23バロックシティ牡3先行――△―杉谷セントライト記念4妙味ある
4トゥモローアビオン牡3差し△▲――ロメロ神戸新聞杯4名手託す
35フォルテグリム牡3先行――――大迫神戸新聞杯7息入れば
6ノヴァルクス牡3差し―△――早川神戸新聞杯5GⅡ実績
47エーデルシュヴァル牡3差し▲―▲△渋谷神戸新聞杯2猛追魅力
8リンガスマイセッサ牝3差し△△◎▲進藤ナッソーS1着斤量活す
59アルカディオス牡3先行――――江川セントライト記念5前残りで
10アストラヴェイル牡3先行◎◎○◎ルードルフ神戸新聞杯1三冠射程
611ヴァルザリオン牡3逃げ○△△○西垣セントライト記念1菊譲らず
12カルデラソード牡3先行△――△中村優セントライト記念2虎視眈々
713オービットクラウン牡3差し――――戸木セントライト記念6やや不足
14テンペストロード牡3先行―△―△神戸新聞杯3三列目に
15リヴァースケイル牡3差し――――東山セントライト記念7力量薄く
816レグルスハート牡3先行――――桐島神戸新聞杯8連までは
17ロングアコード牡3差し―○△―波田セントライト記念3止まらぬ
18シルヴァンリッジ牡3追込――――柚瀬神戸新聞杯10大穴狙う


1番人気 10番 アストラヴェイル 1,9倍
2番人気 11番 ヴァルザリオン  4,3倍
3番人気 8番 リンガスマイセッサ 5,1倍
4番人気 7番 エーデルシュヴァル 10,8倍
5番人気 4番 トゥモローアビオン 14,6倍
6番人気 17番 ロングアコード  17,9倍
7番人気 12番 カルデラソード  21,4倍
8番人気 14番 テンペストロード 24,8倍
9番人気 6番 ノヴァルクス   31,6倍
10番人気 3番 バロックシティ  38,7倍
11番人気 2番 ブライトエルデ  47,5倍
12番人気 9番 アルカディオス  54,2倍
13番人気 5番 フォルテグリム  68,9倍
14番人気 13番 オービットクラウン82,6倍
15番人気 16番 レグルスハート  96,4倍
16番人気 15番 リヴァースケイル 118,7倍
17番人気 1番 セイクリッドレイン 146,3倍
18番人気 18番 シルヴァンリッジ 189,5倍



消えてしまったら映らない

 

 リンガスマイセッサは地下馬道で後ろを歩くアルカディオスに2度ほど後ろ蹴りを入れようとしていたが直撃はしなかったので、特に問題なく返し馬までを完了した。

 一番の難所と言える輪乗りでもすでに何頭かが落ち着きのなさを見せており、馬券発売が締め切られたあとでのスタンドからは、呻くようなざわめきが漏れている。

 

「リン、今日は1周半だからな。最初は絶対に従ってくれよ」

 進藤が、リンガスマイセッサにというよりは、自分に言い聞かせるように呟いた。

 今日もジョッキーカメラが付けられているので、進藤自身初めて経験する3000m戦であっても、またパニックになって泣き喚くような醜態を残すわけにはいかなかった。

 

 リンガスマイセッサがゆっくりとゲートに入っていく。

 一歩一歩が遅いだけで、ゲートを渋るわけではないので、進藤が余計に促すような仕種をすることもなく、後ろから長ムチで打たれる心配もない。

 進藤以外の人間にムチを打たれても絶対に従わないどころか反抗的な態度をとりかねないので、発送委員にムチを入れられることは避けなければならなかった。

 

 スタートから3コーナーまでの距離が短く、上り坂から始まる京都3000m。

 一斉にインコースに殺到するため横方向へのポジション争いは熾烈になるが、上り坂でグイグイ押した末の消耗はなるべく避けたいという思惑もあり、無理に抵抗しての先頭争いにはなりづらい。

 まずは中央11番ゲートから、ヴァルザリオンがいつものように先頭を奪う。

 基礎的な能力は高いが手前替えに難があるエフフォーリア産駒。

 最後の直線で手前が替わるまで一度沈みかける猶予を作るため、常に先頭を走ろうとするタイプだ。

 

 一頭悠々とハナを切っていく後ろで、先行集団の争いはしばらく続く。

 好スタートを切ったアルカディオスは切り込んできたヴァルザリオンに前をカットされ、首が跳ね上がるほど江川騎手が手綱を引き、ブレーキをかける。

 一瞬減速したところ、外枠のテンペストロードがインコースを主張しながら並びかけようとするが、勢い余って馬体が少し接触した。

 

 前のバトルに突っ込まないよう、一歩下がった位置を取ったフォルテグリム。

 そしてその外に、少し手綱を押してアストラヴェイルが付けた。

 パドックから常に目を奪われていたリンガスマイセッサから少しでも離れたところを走らせようと、中団を走るリンガスマイセッサから10馬身ほど距離を取ることにしたのである。

 

 そのリンガスマイセッサはどうも欧州の狭いゲートの方が合っていたようで、前走のナッソーSの時ほどスタートはよくなかった。

 他の馬と同じようにインコースを狙うわけでもなく、出たなり、枠なりのレーンを保ちつつ、インコースに殺到する牡馬たちをやり過ごしながら隊列が決まるのを待った。

 ジェルディサヴォアやシビアレコードに引っ付いて谷地の外厩で山登りをこなし、グッドウッド競馬場では何度も繰り返すアップダウンを経験していたので、たった一回坂を登って下り、再び淀の坂を迎えるまで平坦が続く京都競馬の高低差など、ナッソーSの15mの上り坂と比べたら大したことはない。

 例によって下り坂では進藤が耳元でムチをゆっくりと振り、長いテンポでリズムを取ると、長いストライドのまま淀の坂を走破する。

 

 馬群が縦長になってきたところで得意のコーナーワークを活かし、新馬戦やオークスの時よろしく馬群の外側を撫でるように無理なくポジションを上げており、1周目の正面スタンド前ではちょうど真ん中、9番手の外目にいた。

 一つ前を走るレグルスハートの桐島騎手も、その後ろのエーデルシュヴァルに跨る渋谷騎手も、リンガスマイセッサにあまり近づかないように1馬身半から2馬身の距離を取らせたため、前後が広く空いている。

 それにも関わらず内ラチに張り付くことはせず馬場の三分どころを走り、スタンドから見ると非常に目立つポジションを取ることに成功した御令嬢はご機嫌であった。

 

 1周目の正面スタンド前を通過する頃にはほとんど隊列も決まり、ヴァルザリオンやアストラヴェイルなど有力馬が前にいることもあり、縦長のまま淡々と流れていく。

 アストラヴェイルが後ろにいるなら周りを固めるなり、先手を取ってリードを稼ぐなりやりようはあるが、前にいる以上、わざわざ絡んでいって自滅するリスクを冒すよりも、各々の得意な競馬でスタミナ切れを狙い末脚勝負を挑むのが最適であろう。

 そんな中で、コーナーを過ぎる度に少しずつ順位を上げているのがリンガスマイセッサ。

 1コーナーでレグルスハートやカルデラソードに馬体を寄せながら追い抜いていき、向こう正面に入るころには10馬身前にいたアストラヴェイルの4馬身圏内まで迫り、射程に捉えていた。

 

 菊花賞に向けて、進藤が兄弟子の上田騎手に菊花賞や天皇賞春におけるジェルディサヴォアとのレースについてあれこれ聞いたところ、坂の頂上を過ぎた瞬間に急減速をして息を入れるのだと言われた。

 但しそれはいつも5馬身ほどのリードを取って先頭を走るジェルディサヴォア特有のもの。

 オークスやナッソーSでの経験から、進藤はリンガスマイセッサの勝負どころは最後の直線ではなく、3,4コーナーだとあたりを付けていた。

 その直前に当たるこの向こう正面の中間点は息を入れるタイミングではないかと、進藤はリンガスマイセッサの耳元に顔を近づけ、

「スロー……スロー……スロー……」

と先ほどのムチより更にゆっくり、歌うように囁いた。

 耳を進藤の方に向けたリンガスマイセッサは、その声に合わせるように脚の回転数を落とす。

 

 リンガスマイセッサに抜かされたカルデラソードとレグルスハートがもう一度近づいてきたが、常に三分どころを走っているリンガスマイセッサに並びかけるには内ラチ沿いか大外の二択しかなく、これから3コーナーを迎えるというのに外に回して距離のロスを受け入れるのも、インコースに包まれるリスクを負うのもどちらも選びたくなかった。

 結局2度目の淀の坂に差し掛かるまでリンガスマイセッサに並びかける馬はいなかったので、誰にも邪魔されない外目をキープすることに成功し、上りに差し掛かった瞬間リンガスマイセッサのストライドが少し小さくなる。

 

 少しずつ進出を開始しようとするアストラヴェイルに、坂の頂上に差し掛かる手前で追いついてしまい、もう一つ外に持ち出そうとしたアストラヴェイルを逆にテンペストロードの後ろに押し付けた。

 ここで進藤は一瞬迷った。

 このまま一気に前に行くか、それともこのままアストラヴェイルをマークしたまま直線を待つか、である。

 一気に前に行けば作戦通りの競馬であるが、後続勢がまだ進出してきていないので、アストラヴェイルが楽に抜け出すスペースを与えてしまう。

 このままマークをすれば、アストラヴェイルを潰すことはできてもこちらの仕掛けどころが難しくなる。

 

――お前が迷ったらどうなるか、桜花賞で嫌というほど学んだだろ?――

 オークスの時に、中村厩務員から言われた言葉がよぎった。

 ここで進藤が考える時間を作るために手綱を引いたら、その瞬間、リンガスマイセッサはまた息を入れる指示と勘違いして急減速しただろう。

 進藤はリンガスの頭の上でムチをクルクルと回し左手に持ち替えると、握り直す勢いのまま、ムチを振り下ろした。

「いっちゃえ」

 リンガスマイセッサの尻尾が軽く跳ね、イギリスで何度も練習した坂の下りで、ストライドを広げながらペースを上げた。

 

 番手を走っていたテンペストロードとアルカディオスを一気に抜き去り、ヴァルザリオンも呑み込む勢いで4コーナーを回る。

 進藤もギリギリまで重心を倒してコーナーを回ろうとしているが、いくら改修されてコーナーの出口の角度が緩くなったとはいえ、ムチを入れて加速したスピードでは曲がり切れるわけがない。

 直線に出るとリンガスマイセッサは先頭に立っていたが、走っているレーンは馬場の真ん中よりも更に外。 

 坂の下りからスパートをかけているため、最高速で走っている距離は既に400mに及んでいる。

 以前解説したが、サラブレッドが全開で走ることのできる距離は一般的に400m程度。伝説級の名馬でもってようやく600mを超えられるかどうかのラインなのだ。

 しかも3,4コーナーの遠心力に耐えながらの400mは既に限界に近かった。

 

 進藤は次のムチを入れる前に手綱を少し引いた。

 アストラヴェイルとの差は3~4馬身ほど。

 もう一頭の有力馬、ヴァルザリオンはまだ余力を残しているようだが、鞍上の西垣騎手は何とか手前を替えさせようと藻掻いており、アストラヴェイルとの距離を確認しようと首を右後方に向けた進藤は、偶然、その様子が見えたのだ。

 

 ナッソーSでは4馬身のリードを取った上でやった最後の息入れ。

 アストラヴェイルとの距離はそれに近いもので、ヴァルザリオンの手前が替わってから3頭での叩きあいに持ち込むつもりだった。

 300m地点で一旦ペースが落ち、後続が差を詰めてくる。

 グッドウッドよりハロンタイムが速い高速馬場なので、あまり悠長なことはしていられない。

 進藤は限界に近い右手前を敢えて維持させるために左ムチを入れた。一気に右にササれば、馬場を横切るようにして再び馬体を併せに行ける。

 

 しかし、リンガスマイセッサが珍しく進藤の指示を無視した。

 左ムチが入った瞬間は一瞬右にヨレたが、すぐに踏ん張ると左手前に替え、進藤の合図を待たずして再加速を始めたのだ。

「早いよ!」

 進藤が叫ぶが、まるで聞く耳を持たず、更に外にモタれながらヴァルザリオンを置き去りにしていった。

 進藤は慌てて左ムチを振り下ろし、何とかまっすぐ走らせようとしている。

 外ラチ側にはハロン棒がないので進藤からは分かりづらかったが、残り200mを切ったところで、ようやくストライドが伸びきったリンガスマイセッサが、進藤の手綱を引っ張るようにスタンド前を駆け抜けた。

 

 

 

<史上初、クラシック二冠馬同士の激突となりました。三冠の称号を掲げる事ができるのはどちらか一頭。

枠入りは順調。18番シルヴァンリッジが収まります。

無敗の三冠か、牝馬クラシック三冠か。第99回菊花賞、スタートしました。

 

目立った出遅れはありません。アストラヴェイルもいいスタートを切りました。

まずは真ん中から11番ヴァルザリオン。意気揚々と今日も先頭に立っていきます。

そしてアストラヴェイルも前の方につけます。

 

まずは1周目の上りを目一杯使っての先行争い。

11番のヴァルザリオンが2馬身ぐらいのリードを取って逃げます。

2番手インコース、9番アルカディオス。並んで14番テンペストロード。

そして10番アストラヴェイルはこの位置。フォルテグリムと並んで先行集団の一角。

坂の下りに入って3~4コーナーの中間。

 

その後ろ1馬身ぐらい空いて、3番のバロックシティ。

外12番カルデラソード、16番レグルスハート、この辺りは澱みなく進んでいます。

その後ろ1馬身離れて7番エーデルシュヴァル。その外8番リンガスマイセッサ紅一点。

半馬身差インコース、2番ブライトエルデ。4番トゥモローアビオンで、各馬が1周目のスタンド前に出てまいります。

 

1馬身離れて6番ノヴァルクス。その後ろは17番ロングアコード。

この後ろも1馬身空いて13番オービットクラウン。

外に15番リヴァースケイル。

少し距離があって後方2頭、1番セイクリッドレイン。

最後方18番シルヴァンリッジ。

 

馬群は縦長です。スタンド前を各馬通過していくところ。

拍手が沸き起こる中、軽快に逃げていきます11番ヴァルザリオン。

今最初の1000mを通過、61秒3で行きます。ヴァルザリオンのペース。

2番手9番アルカディオス、半馬身差3番手14番テンペストロード。

 

そして5番フォルテグリムの外、10番アストラヴェイル。無敗の三冠へ、前での競馬となって、各馬が1コーナーに向かいます。

少し離れて3番バロックシティ、12番のカルデラソードに外から8番のリンガスマイセッサ並んで行って、その後ろに16番レグルスハートです。

 

2コーナーのカーブ。

7番エーデルシュヴァル、内に4番トゥモローアビオン。

2馬身差2番のブライトエルデ。それを見るようにノヴァルクス。

1馬身ぐらい差があって17番ロングアコード、13番オービットクラウン。

向こう正面に出ます。

少し距離を取って15番リヴァースケイル、1番のセイクリッドレイン。

最後方は3~4馬身ぐらい空きまして18番のシルヴァンリッジ。

 

このあたりで向こう正面の中間点。

先頭西垣とヴァルザリオン。まだリードは2馬身ぐらい。

アルカディオスが2番手。少し離れてテンペストロード。

その後ろも間が空いて、ここにアストラヴェイル。ルードルフは早めの競馬を選択。

内にフォルテグリム、並んでバロックシティ。そして1馬身離れて8番のリンガスマイセッサ、外から行きます。

 

12番カルデラソード、外16番レグルスハート。

インコース4番トゥモローアビオン。

坂を登って3コーナーに向かいます。

後方勢動いてきました。

エーデルシュヴァル、ブライトエルデ伊丹が激しく追い始めて、まだ内で構えるノヴァルクス早川晶一。

ロングアコード、オービットクラウン。

後方勢リヴァースケイル。

その後ろ離れてセイクリッドレイン。大きく離れました最後方のシルヴァンリッジ。

 

3~4コーナーの中間、残り800を切りました。

ヴァルザリオンのリードが詰まって、外から並びかけようとする14番テンペストロード、その後ろにアストラヴェイル。アルカディオスは後退。

さらに外から上がって行く8番リンガスマイセッサ、ムチが入った。4コーナーのカーブ。

 

カルデラソード、外に持ち出してレグルスハート。トゥモローアビオン、インコースで構えている。

そして外から進出7番エーデルシュヴァル。

まだ前はバラけている。4コーナーから直線を向きました。

 

まだヴァルザリオン粘って先頭。並びかけるテンペストロード。

馬場の外目リンガスマイセッサ堂々先頭に替わるか。

アストラヴェイルも上がってくる。フォルテグリム、トゥモローアビオン。追い込んでくるレグルスハート。

 

先頭大外に行ったリンガスマイセッサ。内でヴァルザリオンとテンペストロードが叩き合いになっている。

アストラヴェイルムチが入って追っているが、前が止まらない止まらない。

トゥモローアビオン懸命に脚を伸ばして残り200。

 

リンガスマイセッサ大外突き抜けた。

もう一度盛り返すヴァルザリオン。叩いてトゥモローアビオンが前に加わって2番手争い接戦。

アストラヴェイルはその後ろだ。

 

牝馬がやった。外ラチいっぱい。リンガスマイセッサ4連勝ゴールイン!クラシック三冠達成!

2着は盛り返したヴァルザリオン。その後ろ、3着争い接戦。

テンペストロードと追い込んできたトゥモローアビオン。そしてその後ろで、3冠ならずアストラヴェイル。

 

勝ったのは8番のリンガスマイセッサ、鞍上進藤誠紅。

最後は大外いっぱいに使って、一瞬姿が消えるほど。

距離を伸ばして、伸ばして、史上初となる牝馬クラシック三冠です。

時計は3分2秒6、上がり3ハロンは35秒2、4ハロン47秒3でした>

 

 

 場内はまだ無敗の三冠を逃したことによる落胆のムードで、進藤に対する拍手も疎らだった。

 記者室では関西系の記者が揃って突っ伏しており、馬主席からは谷地が家族を引き連れて逃げるように下に降りていった。

 

 勝ったのにまるで注目を集めていないことを感じ取ったリンガスマイセッサは、検量室前の枠に先に入っていたヴァルザリオンやトゥモローアビオンを理由もなく威嚇し枠から追い出そうとするなど不機嫌さを剥き出しにしており、中村厩務員が急いでホライゾネットをつけたメンコを被せた。

 

 進藤も珍しく荒れていた。

 後検量が終わったあと、うっかり落としたヘルメットを蹴り飛ばし、祝福に来た上田騎手に宥められていた。

 ただでさえ気性の荒いリンガスマイセッサと、意外と沸騰しやすい進藤。

 人馬とも息ぴったりで荒れているのだから手が付けられず、流石に今日ばかりは谷地の娘をリンガスマイセッサの隣に並べるのは控えることにして、リンガスマイセッサの隣には谷地の妻が並んだ。

 

 メンコが外され、ようやく正面のカメラが自分に向いていることを理解したリンガスマイセッサは少し大人しくなったが、進藤はスタンドの方を睨みつけた。

 写真撮影の準備が整うと、進藤は、三冠馬の勝利騎手がやるように手を高く掲げるのではなく、顔の横で、手の甲を見せるようにしながら指を3本立ててみせたのだった。

 

【全スポ】2038年 10月24日 15:57

〜リンガスマイセッサ大外消えた?! GⅠ4連勝で牝馬クラシック三冠達成〜

 

3番人気のリンガスマイセッサ(牝3・井野)が外ラチをいっぱいに使って差し切り優勝。

2着に3馬身差をつけ、桜花賞から続くGⅠ連勝を4に伸ばし牝馬クラシック三冠達成。

勝ち時計は3分02秒6。

中団から徐々に順位を上げていき、馬群から離れた大外を進み直線入口で早くも先頭を奪うと、そのまま外ラチ沿いまで使って後続を突き放した。

進藤誠紅騎手は「この距離は本当に走りますね。(同厩の)ジェルディサヴォアと走っても間違いなく勝てるってオーナーが言ってました」とおどけた。

 

単勝(8) 510円

馬連(8)(11) 1180円

馬単(8)(11) 2680円

三連複(4)(8)(11) 4360円

三連単(8)(11)(4) 2万3540円

 

 

【京浜スポーツ】 2038年 10月24日 17時07分

~(菊花賞結果・コメント)進藤リンガスマイセッサ史上初牝馬クラシック三冠達成~

 

リンガスマイセッサ1着・進藤騎手

「言いたいことはいっぱいありますけど……。まずはリンの強さを称えたいです。オークスの2400mでようやく距離が合ってきたと思いましたし、ナッソーSでも短そうだったので、走りやすそうでした。もっと距離はもつと思ってましたので、常に外を走っていても不安はありませんでした。最後は叩き合いに持ち込むつもりでしたけど、リンがスタンドに近い方を走りたがったので。ちゃんと撮ってくれてましたか?ソエの影響はほとんどなかったですね。100%のデキではなかったとは思いますけど、このあとどうするかはまだ聞いてません。(口取り式での変わった三冠ポーズは)あの雰囲気にちょっと……。こっちだって正統な牝馬クラシック三冠なんだから」

 

ヴァルザリオン2着・西垣騎手

「いつも通り手前を替えるのに手間取ってました。でもそれは織り込み済みの競馬をしましたし、全て作戦通りだったとは思いますが、完敗でしたね。手前が替わってからもう一段階伸びることができる馬なので、今日みたいに京都の外回りぐらいの直線の長さはないと厳しいかな。また東京や京都の外回りがメインになってくると思います」

 

トゥモローアビオン3着・ロメロ騎手

「最後は伸びてきているけど、前が止まらなかった。前の方はスペースがあったのでスムーズに抜け出すことはできたんだけどね。距離はそこまで気にならないと思う。大きいところも狙えるよ」

 

テンペストロード4着・柳騎手

「常にアストラヴェイルにマークされているような状態になって、やりづらさはありました。正直苦しいかなと思っていましたが、意外と止まらなかったですね。実力以上の競馬をしていたと思いますし、最後(トゥモローアビオンに)交わされたこと以外は満足の結果です」

 

アストラヴェイル5着・ルードルフ騎手

「無敗の三冠、獲りたかったですね。残念です。パドックからずっとテンションが高くて嫌な予感はしていたけど、レースに入ると折り合いはついていた。前の方に行った馬で脱落したのはアルカディオスとこの馬だけだったから、もしかしたら距離が限界だったかもしれない」

 

カルデラソード6着・中村優騎手

「マイペースで進めようとしましたけど、中団の方は出入りが激しかった分、ちょっとあてられたところもあったかもしれません。4コーナーでも手ごたえは残っていましたから差し切るチャンスはあるかと思いましたが、あまりにも前が速すぎました」

 

エーデルシュヴァル7着・渋谷騎手

「ここまでくるとさすがに力の差としか言えません。折り合いよくレースを進めることは出来ましたが、上位勢はほとんど前にいた馬ですからね。淡々と流れてしまったのでこれが精一杯でした」

 

フォルテグリム8着・大迫騎手

「人気以上には走っていますし、距離はもっていました。今日は相手が強かったですが、条件を下げればチャンスは巡ってくると思います」

 

 

【京浜スポーツ】2038年10月24日 17時10分

~アストラヴェイルはまさかの5着 ルードルフ「折り合ってはいたけど」 コントレイル以来となる無敗の3冠ならず~

 

単勝1.9倍の1番人気に支持され無敗の3冠に挑んだアストラヴェイルは前目でレースを進めるも直線の伸びを欠き5着に終わった。

好スタートを切り、そのまま先頭を走るヴァルザリオンから5馬身ほどの位置を選択。テンペストロードを見るような恰好でレースを進めた。

 

4コーナー手前で早めに仕掛けたリンガスマイセッサを見送った後、抵抗なく抜け出せるポジションにはいたが、先に抜け出したリンガスマイセッサや逃げたヴァルザリオンに逆に突き放され、無敗の3冠の称号を取り逃す形となった。

 

ルードルフは「パドックから明らかにテンションが高かった。リンガスマイセッサを見て馬っ気を出していたけど、アストラヴェイルだけじゃなくて、(アストラヴェイルの)前を歩いていたアルカディオスももっと酷かった。まさかああなるとは思わなかったから、別周申請をしていなかったんだ」と、想定外の事態に首を振りつつも、「レースに入ると落ち着いたし、折り合いもよく進めていた。リンガスマイセッサから離れたところを走らせようと思って、あのポジションにしたんだけど、まさかバックストレッチあたりから向こうが近づいてくるとは。3コーナーあたりからはまた集中を欠き始めて、息を入れるタイミングを逃したのも痛かった」と、ライバルの"色仕掛け"に対して恨み節。

 

 

【全スポ】2038年10月25日17:35

~(一夜明けて)牝馬クラシック3冠達成のリンガスマイセッサはレース後直帰「別に起こさなくても・・・」~

 

桜花賞、オークスに続いてクラシック3戦目の菊花賞を制し、"牝馬クラシック3冠"を達成したリンガスマイセッサが一夜明けた25日、脚のケアをしながら次に向けてさらなる上昇気配を見せた。

同馬はレース後速やかに移送に入り、美浦トレセン到着は月曜朝の5時ごろ。優勝レイをかけ、「彼氏」のシビアレコードを叩き起こして勝利報告。

中村厩務員は「これもいつものことだが、レコードは今週末レースだから寝かせておいてほしかった」と肩をすくめた。

次走は未定だが、現段階では放牧の予定はなし。

 





1着 8番 リンガスマイセッサ 進藤誠紅 3:02:6
2着 11番 ヴァルザリオン 西垣成明 3馬身
3着 4番 トゥモローアビオン M・ロメロ 1馬身
4着 14番 テンペストロード 柳裕則 クビ
5着 10番 アストラヴェイル H・ルードルフ 3/4馬身
6着 12番 カルデラソード 中村優次 1 1/4馬身
7着 7番 エーデルシュヴァル 渋谷蓮 1/2馬身
8着 5番 フォルテグリム 大迫春寿 クビ
9着 3番 バロックシティ 杉谷和智 1馬身
10着 17番 ロングアコード 波田和仁 1/2馬身
11着 16番 レグルスハート 桐島大地 1馬身
12着 6番 ノヴァルクス 早川晶一 クビ
13着 2番 ブライトエルデ 伊丹友樹 1 1/4馬身
14着 9番 アルカディオス 江川幸太郎 2馬身
15着 13番 オービットクラウン 戸木慎太郎 1/2馬身
16着 15番 リヴァースケイル 東山紀陸 3馬身
17着 1番 セイクリッドレイン 三輪開斗 1 1/2馬身
18着 18番 シルヴァンリッジ 柚瀬椋聖 8馬身


小説タグに「制裁チキンレース」と「AI間接使用」を追加しました。
「AI間接使用」は現在はハーメルンではなく小説家になろう特有のタグで、最近ハーメルンに追加された「AI本文利用」には当小説は該当しないため、赤文字タグはつけていません。
当小説がAIにたたき台を作ってもらうのは例えばオークスレース後やグッドウッド直前の長い記事だけで、それ以外は本文はこちらで執筆。新規登場馬の戦績やレースタイムの計算、誤字や整合性、海外競馬のルールなどについてはAIに調べてもらう形になります。
ただ、新聞記事も「本文」の中に含めてしまっていますので、「AI補助的利用」ではなく、「AI間接利用」とさせていただきました。
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2003年、ナリタタイシンの種牡馬供用停止。種付数1。▼2004年にナリタタイシン最後の産駒が誕生した。▼これはナリタタイシンのラストクロップに転生した男が勘違いしつつ頑張るお話


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親愛なるシャーロックへ(作者:カニ漁船)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

決まっている運命を覆すために。メジロ復活のために奮闘する。▼※8/10追記 Simca V様からAI作成イラストでメジロシャーロック(ウマ娘の姿)のファンアートを頂きました!ふつくしい……。▼【挿絵表示】▼


総合評価:6214/評価:8.64/連載:84話/更新日時:2026年08月30日(日) 23:00 小説情報

競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話(作者:雅媛)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

 ウマ娘に転生したから百合ハーレムを築きたい競馬ミリしら民のお話。▼ なお、名前はディープインパクトという。


総合評価:2393/評価:7.96/未完:20話/更新日時:2026年04月04日(土) 11:39 小説情報

桜の姫がターフを駆けた軌跡(作者:夜刀神 闇)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

競馬ファンである女の子が2020年代の競走馬に転生する物語でございます。▼ドゥラメンテ産駒、しかも白毛の牝馬として。▼ターフを駆ける、競走馬として。▼いつか、誰もいない先頭の景色を見るために。▼チート過ぎても面白くないのでそこそこ競走馬としての宿命みたいなのを背負わせてます。ごめんね主人公、そして主人公が生まれたせいで勝てなかったコたち。▼あと、鞍上と馬の関…


総合評価:1795/評価:8.06/連載:41話/更新日時:2026年07月21日(火) 04:46 小説情報


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