ツーターン・スリーターン   作:ジェレミー

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息抜きばかりで申し訳ありません。
天皇賞秋編もレースシーンの執筆に入りましたので、今しばらくお待ちください。

今回は寺尾記者の手記のようなものを。
全スポや日金新聞社系列に競馬雑誌を発刊している社はありませんから、寄稿かネット記事ですね。



【手記】各国競馬ファンから見たジェルディサヴォア

 

 筆者・寺尾はジェルディサヴォアを管理する井野調教師の番記者として、同馬の海外遠征にも随行させてもらっている。そこで今回は視点を変えて、海外の競馬ファンから見たジェルディサヴォアの評価を掲載する。

 

【フランス】

 まずはジェルディサヴォアが初めて海外レースに出走した遠征先、フランス。

 同世代に凱旋門賞3連覇を成し遂げたアンベストネヴァーがいるが、フランスで最も有名な日本馬はと言えば過去を通してもジェルディサヴォアだと断言できるほどに人気がある。

 

「英雄だよ、あいつは。イギリスの競馬を踏み荒らすだけでなく、イギリス王室を黙らせてるんだから本当に胸がすく思いだ。ロマネ・コンティを一瓶贈りたいぐらいだよ」

 これからフランス旅行を考えている人がいたら、ジェルディサヴォアの近況を調べておけばビストロで地元民との交流に困ることはないと教えたいところだ。

 

「あの馬は日本の馬じゃない。フランス馬だ」

 最近競馬にハマったという若い青年は真っ直ぐな目でそう答えた。フランスのスポーツ紙にはジェルディサヴォアの成績が全レース載っており、彼が勝つたびに、たとえフランスのGⅠが終わったばかりでも一面を飾るのだ。

 タイトルは決まって「フランスの英雄ジェルディサヴォア〜」から始まる。フランス国民の中には、ジェルディサヴォアがフランス馬であると本気で信じている人も珍しくない。

「GEL DES AVOIRS」という馬名がフランス語由来というのも一因だろう。

 

 ジェルディサヴォアが「フランスの英雄」と称される切欠となった2036年のパリ大賞典とキングジョージⅥ&クイーンエリザベスS(以下、キングジョージ)。

 パリ大賞典の勝利に関しては、地元の競馬ファンはこう語った。

「パリ大賞典はフランス人のプライドを賭けたレースなんだ。凱旋門賞?あれは欧州規模のフェスティバルのようなものだ。

俺たちはダービー馬ブローブランが、卑しくも英ダービーを勝ってもいないのに出走してきたホールドフローターローを倒すのを楽しみにしていた。ジェルディサヴォアは日本のダービーを勝っていなかったが、ホールドフローターローと違って始めから眼中に無かったさ。ジェルディサヴォアが逃げた上で最後にまた加速を始めた瞬間、石をぶつけてやろうかと思ったぐらいだったよ」

 過激な表現も交えていたが、この男は楽しそうに語り続けた。

「そしてその後、連闘でキングジョージに出た。しかも急に決まったようで、飛行機の手配もしていなかったらしいね。

でもそれだけじゃない。ジェルディサヴォアはキングジョージでも圧勝したんだ。連闘なのにだ。コロネーションですら成し得なかった事だよ。

イギリスの王室にとっては屈辱だったろうね。俺たちは何度もそのレースを見返したし、新聞にも大きく取り上げていた。

その時から、俺たちは彼を『日本からやってきた傭兵で、フランスの英雄』と呼んでいるのさ。まあ最近は略してフランスの英雄、としか呼ばれなくなっているけどね」

 

【イギリス】

 こちらは対照的に徒党組んで倒すべき邪悪なアスコットの魔王という、よく言えば畏怖される存在、悪く言えば厄災扱いである。

「奴が走れば走るほど、我々の馬が殺されていくんだ。今まで奴のとんでもないレースに付き合わされて心臓麻痺で死んだ馬は3頭だったか。しかもダービー2着のエキゾチックチャペルは、奴が跳ね飛ばした蹄鉄が頭に当たって大けがをしている。ドバイでも蹄鉄を観客の頭に直撃させているし、BHAはヤツの出走を拒否すべきだってずっとそう言ってるんだ」

 もちろんジェルディサヴォアが最高の走りをしているだけで、限界を超えた後続馬に関してはそこで止めなかった騎手が悪いので完全に逆恨みというものである。

 

 彼はもう語りたくないとばかりに席を立った。同じパブの別の客に話の続きを聞くのも気が引けたので、筆者はロンドンを離れニューマーケットに向かった。

 イギリス最大の調教場があるニューマーケットでは日常的な角度からジェルディサヴォアの話を聞くことができた。

「またヒルストン厩舎の大掃除が始まるのかい?」

 ジェルディサヴォアの名前を出した瞬間、男が楽しそうに聞いてきた。

「奴がこっちに来るときはすぐわかるよ。ヒルストン厩舎のスタッフたちがいきなり馬房を磨き始めるものだから、3時間後にはニューマーケット中に噂が広まるよ。いい加減あのオンボロ馬運車も買い替えた方がいいと思うけどね」

 

 また、散歩がてらトレーニング中の馬を眺めるのが趣味だという老夫婦は、ライムキルンズの周回コースを走っているジェルディサヴォアを何度か見かけたことがあるという。

「いつも3周ぐらいしているんじゃないかな。ノビノビと走っているよ。疲れ知らずだね」

 ライムキルンズの周回コースは1周最長で2400mほどになる。3周もすれば7000mを超えるが、どこにそんなレースがあるというのか。

 ジェルディサヴォアを臨時で受託するカルム・ヒルストン調教師は、

「ライムキルンズの周回コースに入るには60ポンドを支払わなくてはならないんだ。それなら1回入って長時間使ったほうが得だろう?」

と言っていた。それを聞いた谷地オーナーも井野調教師も頷いていたのだから「公認」であることは間違いない。

 

「今年のゴールドカップ、ジェルディサヴォア以外の馬が全部回避したんだよな。そりゃレース中に死ぬ可能性があるんだから、その選択は正しいと思う。

その時に奴は5ハロン半ぐらいをとんでもないタイムで走ったんだよ。そのあとに行われた6ハロンのGⅠに換算してみたら、0.2秒ジェルディサヴォアの方が先着する計算だった。ゴールドカップのレースはなくなったんだから、(QEⅡ)ジュビリーSに出走してほしかったよ」

と、とある競馬ファンが残念そうに首を振った。

 

【日本】

 最後は日本だ。

 とはいえ本国での評価は読者の皆様がそれぞれ下していることだと思う。こちらではファンの声ではなく、美浦トレセン内で話を聞いてみた。

 

「怪我知らずに見えて、ウチの常連だよ」

と、競走馬診療所(以下、馬診)の獣医師。

「ちょっと専門的な話になるけど、あの馬は喉頭蓋が短くてね。AEというやつなんだけど、人間に近い喉になっているんだ。たまに口呼吸するんだよ。

AEは仔馬には珍しくなくて、成長とともに喉頭蓋も伸びるはずなんだけど、結局5歳も終わりに差し掛かっても短いままだからね。流石にもう塞がらない」

 レースへの影響はないのだろうか。

「DDSPやEEと違って気道を塞いでいる訳ではないから、呼吸に関しては影響はない。どちらかと言えば心配なのは誤嚥なんだ。衰えてくると軟口蓋の動きが鈍くなって飼料が気管に入りやすくなる。

これも人間と同じだ。歳をとるとむせやすくなったり、餅を喉に詰まらせやすくなるようなものでね」

 

 次に、別陣営の調教師からもコメントを頂いた。

「いつも閉門ギリギリに馬場に出てくる。あの時間になると周りを走っている馬はウチの馬も含めて未勝利や1勝クラスの馬ばかりだから、フラフラ走ってジェルディサヴォアと接触したらとんでもないことになる。こっちも気を遣わないといけないんだ」

 筆者も井野厩舎の番記者として同厩舎の調教を取材しているが、同厩のリンガスマイセッサやシビアレコードは開門と同時に馬場入りすることが多く、オープン馬ではジェルディサヴォアだけがいつも「遅出」なのだ。

 

「アイツが走るとBコースのメンテが長引くんだよ」

 馬場管理を委託されている造園業者の職員はこう語った。

「いつもBコースに入るけど、アイツが走ったあとはハロー掛けしても蹄穴が塞がらなくてな。閉門後に1つずつ埋めていかないと穴が残るんだ。

ウッドチップの坂路やDコースでは比較的マシなんだけど、C(芝コース)に入ったときはふざけんなと思ったよ。よりによってクソ暑い日にさあ」

 ジェルディサヴォアは踏込みが強く、日本の芝ではベストパフォーマンスを発揮できていないのはご存知の筈だ。そのため蹄鉄も特殊な形状をしており、井野厩舎と契約している装蹄師に話を聞いた。

「いわゆる『ハイベスト蹄鉄』を使っている。蹄と蹄鉄の間にウレタンなどのゴム素材を挟んで少しでも反発を和らげる。でもこれでも足りないみたいだけどね。で、蹄鉄も前脚と後脚で形が違う」

 丁度取り外したばかりの蹄鉄があると、見せて貰った。

 

【画像】ジェルディサヴォアの蹄鉄

【挿絵表示】

 

 

「普通の馬でも前後で少し形は違うものだけど、ジェルのはまるっきり違う。

前脚の方はつま先側を分厚く作ってある。爪を立てるようにして走る癖があるから、ハイベスト蹄鉄ということもあって簡単に変形してしまうのよ。

で、こっちが後脚用。こっちは踵側まで覆うように、一般的なU字じゃなくて卵型をしている。ただでさえ蹄鉄の面積が大きいのに、ウレタンを挟むために一部が二重になっているから、規定の重量ギリギリなんだよ」

 美浦トレセン内からは中々の厄介者扱いを受けているジェルディサヴォア。それもまた個性とも言えよう。

 ただし誤嚥の危険性や歩様の癖など、注意深く管理する必要があるというのは引退後の馬生を難しいものにするかもしれない。

 

ー文・寺尾(全報スポーツ)ー

 





先に天皇賞・秋の出走表を貼っておきます。
例によってPC版推奨。
フルゲート18頭中、初登場の馬はわずか5頭です。


11アメリカンフォース牡5先行――――桐島 大地京都大賞典⑤早抜け注
2ミュージカルレース牡5追込――△―中村 優次宝塚記念⑨外出れば
23セントリック牡4差し――――三輪 開斗京成杯AH③活路見て
4リッチセレクション牡5追込―△―▲中村 春貴宝塚記念④狙い不明
35アーバンレジェンド騙6先行――――長澤 奏多オールカマー⑦格上では
6エピックパラレル牡4差し▲△△―近藤 正文毎日王冠①復活期す
47グレイスアコード牡5逃げ――――田沼 康広札幌記念⑤ペース鍵
8リヴェッティ牡5先行◎◎◎◎柳 裕則オールカマー②逆らえぬ
59アルディメント牡4差し――――早川 晶一新潟記念①相手強く
10シビアレコード牡4差し―▲▲―進藤 誠紅サセックスS①軽芝でも
611コンティルミエール牡5差し△△――柚瀬 椋聖オールカマー①距離不足
12ライブジョーカー牡3先行△△―○長野 大夢東京優駿⑤鉄砲でも
713ジュライロンド牡4差し△――△ハリル・ルードルフ宝塚記念⑥手応有る
14アークレイ牡5先行――――杉谷 和智毎日王冠②外枠では
15ジェリーホーネット牡5追込○○△△宜保 裕也宝塚記念②もう一歩
816グランドシェイド牡5差し―――△江川 幸太郎チャレンジC①逆転狙い
17アンテリゼスト牡4先行――――伊丹 友樹37年皐月賞①圏内迄は
18ライトニングバレル牡6逃げ――――渋谷 蓮小倉記念⑤大外切込


1.7 リヴェッティ
5.4 ジェリーホーネット
8.6 リッチセレクション
10.9 ライブジョーカー
12.7 エピックパラレル
15.3 シビアレコード
21.8 ジュライロンド
24.6 コンティルミエール
29.4 ミュージカルレース
35.8 グランドシェイド
46.7 グレイスアコード
52.6 アルディメント
61.3 アークレイ
88.2 アンテリゼスト
104.6 アメリカンフォース
131.8 ライトニングバレル
167.4 セントリック
236.9 アーバンレジェンド
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