化け物の方が本体なタイプの美少女傀儡遣い 作:どこかの誰かのneonさん
人形と一言で言っても様々なものがある。
使われている材質も多種多様だし、関節に当たる部分があるから自由にポーズを取らせられるものもある。
オタク向けのフィギュアだとしても色々な種類がある事からも人形というものを簡単に説明する事が出来ない事は簡単に想像出来ると思う。
ドール、蝋人形、他にもこけしや藁人形だってある。
だから漠然と「人形が好き」と伝えられたところできっと「どの?」となってしまう事だろうから、ここはもう少し具体的に自分の事を語ろうと思う。
俺は「人形遣い」が好きだった。
いわゆる創作物、アニメや漫画に出てくるような「人ならざる創造物を操る者」が好きだった。
個人的には「人が化け物のような人形を操る」というタイプではなく「化け物が人の形をした人形を操る」タイプが好きだった。
……それ、単に化け物が性癖なだけなのではと言われてしまえれば反論に困ってしまうけど、なんか化け物が人の形を模したものを使って好き勝手やっているのって凄く「癖」だったのだ。
いいよね、人だと思っていたものがいきなりカキカキと機械的な動きをし始めるの。
手足に糸のようなものが見えて宙に吊られ始めたら絶頂ものである。
と、まあ。
そんなこんな感じで自分の「前世」の癖を思い出しつつ現実逃避をしていたのは自分が異世界転生してしまったからだ。
転生したという事実は置いておくとして、どうしてここが異世界だと判断したのか。
まず第一に「自分が人ではない」から。
そして「明らかに自分が化け物である」からである。
俺の存在を一言で説明する……のも、結構難しい。
まず、目の前に広がっている泉の水面に映っているのは「光」だった。
実体のない光がそこにあり、そしてそこには一つの瞳があった。
しかしながらこの体、何故か瞳が向いていない方向の事も知れるので多分それ以外の知覚能力があるみたいだ。
……光を中心に黒の歯車が八つ浮かびそれらは常に噛み合い回っている。
そしてそのさらに外側に黄金の機械製の手が三つ。
そんな、明らかに「人外」って感じの見た目をしているのが今の俺だった。
うーん、この。
そもそも今の自分、前世の記憶はあっても何故死んだのかの記憶がなく、もしかしたら「俺である」と勝手に思っているだけの異常化け物の可能性だってある。
とはいえ、今はそこに関して考察しても仕方がない。
とにかく今は、生きる事を考えなくてはならない。
この肉体はどのようにして動いているのか、それはどうやら魔力を吸収しているらしい。
その魔力というものはあくまで空気中から吸収している謎のエネルギーを仮にそう呼んでるのでもしかしたら違うかもしれない。
なんにせよ、今の所はその辺りの魔力を吸収してるから大丈夫だが、しかし吸収より消費の方が早いみたいなのでもっと効率的な方法を探さなくてはならないだろう。
異世界の定番(と勝手に思っているが)としたら、魔物を倒して魔石を手に入れる、とか?
しかし悲しいかな、魔物の気配はあるものの自分が近づこうとすると爆速で逃げられてしまう。
どうやら俺の事が怖いらしい。
こうなってくると何とか方法を工夫しないと、とりあえず色々と試してみた上で、自分の性癖の話に若干戻る。
つまり、人形を用意して囮にすれば良いのでは!?
いや、最初はもっと別のものにしていたのだ。
まず、この肉体はどうも思い浮かべたものを「しっかりと思い浮かべられれば」魔力を消費して作り出す事が出来るらしい。
なのでまず、牛肉を用意してみた。
しかしこれは意味がなかった。
匂いも漂ってくるリアルさだったのに。
そして色々試してみたところ、分かったのは魔物は動く獲物しか襲わないらしい、つまりハイエナのように死肉を食べにくる習性はないらしい事だ。
だったら動かしたらどうだろうと思い──自分の趣味もあるけど上の方から糸で吊ってピクピクさせてみたところ魔物達の警戒が若干和らいだのである。
そしてそこで気づいたのだが、そうやって魔力を用いながら動いているとどうやら俺は気配が消える、いや、本気を出せば物理的に消える事も可能みたいなのだ。
なんて都合が良い、いや、むしろこれは僥倖。
こんなの、人形作って動かせと言われてるようなものじゃん!
そんなわけで、とりあえずしばらくの間人形を作りながらそれをリアルに動かす練習をした。
その過程で何体も失敗作が生まれたが、それはさておき。
「お、おー」
と、泉の湖面をまじまじと眺めながら感動……しているように見える美少女が一体。
プラチナブロンドのウェーブヘアに青の瞳。
身長はおおよそティーンエイジャーの平均くらい?
これこそが今の俺が作り出せる最高傑作。
命名、「アリスちゃん」だ!
可愛い、自分の癖を注ぎ込みまくったのだから当たり前だけど。
そして実際本来の目的も達成していた。
つまり、この人間そっくりな人形は魔物を誘き寄せることに成功し、俺は大量の魔石を手に入れられた。
「お腹いっぱい、これならばここから移動する事も可能だよね」
「うん」と一人満足げに頷き、人形を担いだ俺は移動を開始する。
人がいると良いな、退屈しないし。
なぁに、今の俺にはこの人形があるからコミュニケーションも取れる!
今から楽しみだ!!
◼️
その森から魔物が確認されなくなった。
冒険者ギルドからの依頼を受け、その冒険者は「リラルド」と呼ばれる村の近くにある森を調査する事となった。
その森は強力な魔物が多数生息していたはずだったが、今は何故か見当たらないらしい。
生態系に変化が起きたのか、それを調べるために森の奥へと進んだその冒険者は、その先で地獄を見る事となる。
泉付近に積み上げられていたものは、『人ならざるもの』。
手足、内臓、首。少女だったもの達。
それが折り重なって山になっていた。
「う、うわああああ!!!!」
冒険者は悲鳴をあげ、この事態を報告するために走った。
この森で「何かが起きた」。
そしてそれは──決して良い事ではないだろう。