化け物の方が本体なタイプの美少女傀儡遣い   作:どこかの誰かのneonさん

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第2話

 よっしゃあひゃっはー、人里を見つけたぜぇ!!!!

 ていうか割と早い段階で人の通ったであろう道を発見し、それに沿って歩いてみたら普通に人里というか村を発見したのである。

 ぱっと遠くから見てみた感じ木製の家が多くいかにも田舎って雰囲気が漂っている。

 文明レベルは……何とも言えない。

 ただ幸いと言うべきかは分からないが、遠くに見える人間は西洋人ベースのような感じがした。

 もし東洋人ベースだったらアリスちゃんは明らかに浮くというか下手すれば化け物扱いされている可能性があったので、これに関しては本当にラッキーである。

 そして俺自身が化け物みたいな――ていうか化け物そのものなのでやっぱりって感じだったが、どうもファンタジー異世界のような雰囲気がある。

 剣を持った人が歩いているのが見えるし、本当に王道な感じだった。

 

 そうと決まれば早速行ってみよう、と思ったが冷静になってみるとこのまま向かっていくのは流石にまずい。

 いや、俺の体が明らかに化け物だからそのまま行くのはまず無理だし、だとしたらそれこそ人形遣いのようにアリスちゃんだけを向かわせるのが良いかというと、これも多分ダメ。

 というのも、このアリスちゃんは例によってまだギリギリ未成年な見た目をしているので、こんな少女がいきなり現れたら流石に怪しまれると思ったからである。

 あっという間に「あ、こいつ人間じゃねえわ」と思われ追放、あるいは攻撃される可能性は高いのでどうにかして怪しまれずにあの村に入る方法を探さねばならないのだ。

 

 まあ、最悪の場合この村を避けるという手もあるにはある。

 そもそも俺は人間ではないのだし、人間の中で暮らさねばならないという事はない。

 あくまで人間の中に行ってみたいのは「俺が元々人間だから」であり「人間に関わりたい」という欲があるからである。

 一人はやっぱり、寂しいし。

 だから完全に我欲でこの村に近づいてみたかったし、化け物の見た目をしている俺が何も考えずに近づけない事も理解していた。

 

 人と関わりたいという欲を満たしたい、だけど出来るだけ彼らの日常を壊したくない。

 そしてその二つを同時にクリアするために思いついた方法とは、即ち、マッチポンプである。

 

「きゃーっ」

 

 アリスちゃんが悲鳴を上げながら村の方へと走り、それを俺が追いかける――ように見える光景。

 実際は俺とアリスちゃんとの間には糸があってそれで彼女を操っている訳だったが、そもそも何事もなければ糸は感知されないし、だからはたから見れば完全に「女の子が魔物から逃げている姿」なのである。

 そして、アリスちゃんの悲鳴を聞いたであろう村の人の一人が何事かと姿を現し、そして自らが立っている場所へと逃げてくる(ように見える)アリスちゃんを発見した。

 すぐさまその表情は厳しいものになり、剣をさやから抜き放った。

 まさしく風のような勢いでの突貫。

 神速と表現するに相応しい肉薄。

 恐らくは魔法みたいな力を使っているのかもしれないし、この世界の人間はみんなそれくらいの事は出来るのかもしれない。

 なんにしても、この時点で「少女が魔物に襲われ不本意ながら村に逃げ込む事となった」図は完成したので、本体である俺はもうこの場にいる必要はない。

 姿を消し、そのまま離脱。

 あとは遠くから糸を用いてアリスちゃんを操作し、適度に情報を得つつ人間達と交流するだけだ。

 さーて、頑張るぞー。

 

 

  ◆

 

 

 その悲鳴はまさしく絹を引き裂くような声色だった。

 数少ないS級冒険者である彼女、ビアンカがその村にいたのは本当に偶然であり、リラルド村の近くにある森で発生していたらしい「生態系の異変?」に関してはそれこそ村に立ち寄って初めて知ったくらいだった。

 ……そして、その調査に当たっていたらしい冒険者から聞かされた謎の死体の山についても。

 何事かがその森で起きているらしい、その事を知る事が出来た。

 わざわざ自分がそれを調査する義理はないが、しかし彼女はそこで見て見ぬふりを出来るほど薄情な性格をしていなかった。

 だからこそ彼女は自らが目撃した異様な光景を思い出し体を震わす冒険者を村の人に任せ、自らの足でその調査へと向かおうとしていた、まさにその時だったのである。

 

「きゃーっ」

 

 少女の悲鳴を聞き、その場所へと向かったビアンカの視線の先にあったのは……あれは、何なのだろうか?

 魔物と言うのは、確かに魔から生み出された存在ではあるもののその姿かたちはおおよそこの世に存在している生き物の特徴を有している場合がほとんどだった。

 例えばワーウルフだったらオオカミ。

 ジェノサイドビーだったら蜂。

 ゴブリンだって……一部の者は嫌がるだろうが、人らしい外見的特徴を有している。

 

 だが、それは、なんなのだろう?

 光、歯車、そして、黄金の手?

 あまりにも異常、異形、非現実的、冒涜的な生命体、いや、生命体と呼んでいいかも分からない。

 そんな存在している事自体が世界が許してくれないであろう『それ』を見た彼女は自らの精神がずきずきと痛むのを感じつつ、しかし今は少女を救うのが先決だと思い剣を抜く。

 魔力解放、一息でその魔物へと肉薄したビアンカはその剣を振り下ろす――が、しかしそれは空振る事となった。

 その巨大な黄金の手で弾かれると思っていたが、まさか避けてくるとは思っていなかったから流石に驚く。

 勢いのまま倒れこみそうになり、しかしそこはS級冒険者と言うべきだろうか。

 すぐに態勢を立て直した彼女は魔物の姿を探し、しかしそこにはそれなりな巨体を有していた魔物の姿がどこにもなかった。

 一体どうやって……いや、それよりも今は少女の安否を確認するのが先決か。

 

「君、大丈夫?」

 

 地面の上にへたり込んでいた少女に手を差し伸べると、彼女は我慢していたのかもしれない、ぽろぽろと涙を浮かべつつ「あ、ありがとうございます……」と感謝の言葉を告げてくる。

 鈴を転がすような可憐な声色だった。

 

「気づいたらあの森にいて、私、何も分からなくて、逃げるしかなくて」

「……そっか、それは怖かったね。もう大丈夫だよ」

 

 気づいたら、あの森にいて。

 やはり、あの魔物が諸悪の根源だろうか?

 疑問は尽きないが、とにかく今は彼女を保護しよう。

 

「貴方の名前を教えてくれるかな」

「私の名前は」

 

 彼女は、落ち着いてきたのか少しだけ微笑みながらビアンカに名乗る。

 

「私の名前は、アリスです」

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