化け物の方が本体なタイプの美少女傀儡遣い   作:どこかの誰かのneonさん

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第4話

  ※

 

 健全な魂は健全な肉体に宿るように、健全な肉体が異形の振る舞いをした時その魂の不浄を感じるだろう。

 

  ※

 

 

 ゔえェッ!!!!

 

 姿を見られるリスクを減らすために最初の場所に戻ってきていたんだけど、な、なんか見られている感覚があるなーと思ってたらがっつり見られてるみたいだ……?

 いや、視線というより不快感をずっと感じていたが、どうやらこの感じだと冒険者の一人が何らかの方法でこちらを観測していたらしい。

 なんで、姿はちゃんと消してたじゃん。

 まあ、姿を消せる能力があればそれを看破する能力もちゃんとあるのが異世界らしいが。

 このまま彼らがここに来たらまず間違いなく俺の魔物ボディを見られてしまう訳で、そうなるとその流れでバトルが始まってしまうだろう。

 戦闘能力に関しては今のところクソ雑魚も良いところなのであっさり討伐される未来は避けられない、なので戦闘自体を避けなくてはならない。

 

 と、このようにしている間にも俺はアリスちゃんを通じて彼らの説得を試みている訳だったが、あいにくと失敗に終わっている。

 こう、「あんな危険な生き物のところに行くなんて危なすぎますっ」と必死に言っているのだがなしのつぶてである。

 いきなり現れた正体不明な少女の言い分なんて聞くはずもないって感じだったし、信頼関係が築けていたとしても冒険者としては彼らの方が専門家な訳だからその専門知識に則って彼らは行動するに違いない。

 

 うーん。

 こうなってくると俺とはまた別に殺人事件を起こして彼らに警戒心を抱かせた何者かに対して「何てことしてくれたんだ」なんて理不尽な文句を言いたくなるし、あるいはそれを前提としたうえで自身の魔物の肉体を晒したのは失敗だったかなとも思う。

 自分の魔物としての姿が彼らに更なる警戒心を抱かせたであろうことは容易に想像出来るし、とはいえいきなり理由もなく少女が現れるという事も割と不自然な気もする。

 下手するとアリスちゃん自体がその殺人事件の容疑者として扱われていたかもしれないから、今のところアリスちゃんは不審に思われていないみたいなのでそこは不幸中の幸いかもしれない。

 

「……」

 

 と、そこで気配。

 何かが近づいてくるのを感じたし、そしてそれが現れる事はおおよそ覚悟していた。

 というのもアリスちゃんからの説得はとっくのとうに失敗していて、既に俺の存在に気づいていた冒険者が何人かこちらへ向かっていたからである。

 俺の存在に遠隔だというのにもかかわらず気づいているのならばその流れで目視も出来るだろうし、このままいけば俺はしっかり見つかる事だろう。

 やっばい、つんだか?

 逃げるにしても俺の足はステルス能力で身を隠す事を前提とした速さみたいなので、見つかってしまっている今では失敗するだろう。

 そうこうしているうちにがさがさと言う音が近づいてくる。 

 あ、ダメみたいですね……最低限自己防衛はしないと。

 

 

  ◆

 

 

 その気配はじっとその場から動いていなかった。

 魔力だけを感じ取れたがそこには「何もない」。

 何らかの手段で姿を隠しているらしいその魔物の場所へと、正直その冒険者は行きたくなかった。

 というのもその魔物は泉のほとり、つまり彼が見つけた「人だったもの」達のなれの果てがあった場所にいるのである。

 それはどうしてか、捕食のためかまた別の目的か。

 なんにしても、あの光景をまた見なくてはならないというのは――正直キツイ。

 

 とはいえ、今回の目的はあくまで「姿の確認」。

 倒せるような相手ならば倒すが、得体のしれない存在と戦って勝とうとするほど無謀な事は出来なかった。

 メンバーは二人。

 元々生態系の調査のために訪れていたメンバーであり、そしてビアンカはここにはいない。

 万が一の事が村に起きた場合のために彼女はそこに留まっていた。

 ビアンカはどうもアリス――正体不明の魔物に追われていた記憶喪失の少女、彼女の事を気にしているらしい。

 冒険者に対してあの透き通った瞳を向けながら「危ないです」と告げるような者は少ない。

 だからこそその冒険者は素直に嬉しかったし、気持ちを奮い立たせてその魔物へと相対する覚悟を決めたのだ。

 

 草の隙間を通り、音を立てずに、そして彼らはそこにたどり着く――

 

 

 

 

 

「……」

 

 そこにあったのは。

 

 ()

 

 肉だ、血をにじませた肉が、ある。

 そしてそれがかつて自分が見た「人だったもの」であるらしい事に、その冒険者は気づいた。

 ふよふよと、ぶよぶよと。

 手足が、内臓が――少女の首が。

 どういった原理かは分からない、とにかくそれは宙に浮かんでいる。

 そしてそれらが盾になっていて見えづらいが――奥には、()()()()()

 黄金の手、歯車、なんと現実離れした光景なのだろう。

 

 意識を失えない。

 失う事を許されない。

 だけど、嗚呼、今見ている現実を『夢』じゃないと誰が証明出来るのだろうか?

 

「は、はは……っ」

 

 笑いが零れる。

 そうしか出来ない。

 身体が、震。

 

 

 ダメだ、もう、心が、モタナイ――

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 ──そして、彼等は帰ってきた。

 

「……」

 

 かくん、かくん、かくん、かくん。

 瞳は虚、表情は笑っている。

 まるで手足を彼等の上で我々を見ている──天上の神々が糸を引いているかのように。

 かくん、かくん、かくん、かくん。

 ぎこちない動き。

 そして彼等は、村の外にいたビアンカの前で、止まる。

 言葉が見つからない彼女、静寂。

 それを破ったのは、隣にいて今の今まで不動で黙っていた一人の少女だった。

 

「よ、良かったですね……! よ、様子はなんかおかしかったですけど戻ってきてくれて!」

 

 まるで心を乱されて叫び出しそうになっていたビアンカを慮るようなそんな言葉。

 ビアンカはいつの間にか止まっていた呼吸を再開し、とにかく彼等がなぜこうなったのか……なぜ戻ってきたのかを調べようと。

 その前に村の人達に冒険者等を中に連れ運ぶ事を手伝ってもらう事をアリスに伝えてきてもらおうと思い。

 

「……」

 

 ガラス玉のように綺麗な瞳を見る。

 

「どうか、しました」

 

 ?

 小首を傾げる。

 

 その動きは彼女も恐怖を感じているからかぎこちなく。

 

 

 

 

 まるで、先ほど見た冒険者達の動きにそっくりに見えた。

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