転生神竜「何も救えなかった負け犬なのに英雄扱いされた」 作:鳩胸な鴨
「俺でよかったのか、ベレス?」
『ベニマルたちの前に実験したいだけ。
私は紋章士としての勝手がわかってないから』
俺たちの軍門に降ることを選んだ大鬼族の6人に名を与え、数日。
一時的に契約を結び、薬指に通したベレスの指輪を見やる。
紋章士がそばにいる感覚は慣れないが、リグルドが言っていたように能力が上がった気がする。
体がやけに軽く、頭が冴えている。
紋章士による能力の向上を噛み締めながら、俺は大賢者へと問いかける。
(大賢者。紋章士がいると何ができるんだ?)
《解・シンクロ状態にある紋章士のスキル、及び技術を行使できます。
紋章士ベレスが保有するスキルを解析。…一部成功。「指導者」、「時之縁」、「黒魔術」、「白魔術」、「戦技」、「計略」、「
(他も気になるけど…、
明らかに人名だよな?
それに、神祖という字面。気になって仕方がない。
俺のワクワクに対し、大賢者は務めて冷淡に答えた。
《告・「神祖」含む一部スキルについての解析は現時点では不可能です》
(いつかはできるってことか?)
《紋章士と魂の繋がりが強くなれば可能です》
(つまり…仲良くなればいいってことか!)
そういえば、リュールも絆を結べば力を貸してくれるって言ってたな。
じゃあ、今わかる分だけでも聞いておくか。
《告・現在使用可能なものはユニークスキル「指導者」のみです》
(どんなスキルだ?)
《指揮下にある対象の能力を向上させるほか、隠された素養を開花させるスキルです。
また、このスキルにより、他者に自身が持つスキルを一部伝授することも可能です》
(おぉー…)
なんとも教師らしいスキルだ。
そんなことを思っていると、ベレスが半目を俺に向けた。
『あんまり根掘り葉掘り聞かないで、恥ずかしい』
「………え?聞こえてたの!?」
『ばっちり』
「ごめんなさーーーーーい!!!」
びたーん、とスライムボディをこれでもかと伸ばし、深々と謝罪する。
まさか聞こえるとは思ってなかったんだ。
そんな言い訳をする暇もなく、ベレスは「でも」と俺の謝罪を遮った。
『自分がやれることを知れたのはよかったかな。スキルも大体想像できるし』
「そ、そっか」
『じゃあ次は、エンゲージしてみよう』
「エンゲージ?」
《解・紋章士と契約者が融合し、一つになる現象のことを指します。
融合すれば能力の大幅な上昇、並びに紋章士にまつわる武器を顕現できます。
絆が薄い状態では数分しか持ちません》
いよっ、待ってましたそういうの!
俺は大賢者の言葉にテンションを上げ、リュールから教わった呪文を口にした。
「それじゃ行くぞ…。
エムブレム・エンゲージ!」
噴き出た青い炎が俺たちを包む。
俺の中にじんわりと、暖かさが溶け込んでいくかのような感覚。
ふと体に目を落とすと、淡く光るベレスの鎧が俺の身を包んでいた。
「お、おぉー…。やっぱロマンだなぁ…」
『その状態なら…、私が記憶する「英雄の遺産」、「神聖武器」の一部が使えると思う』
「英雄、神聖!どっちも唆られる響き!」
『どれも破格の性能だよ。リムルが剣を使うなら…、これとかどうかな』
ベレスが顕現させたのは、インドにあるような少しばかり刀身が曲がった片刃の剣。
やけに手に馴染むそれをまじまじと見つめる俺に、ベレスが解説し始めた。
『ブルトガング。魔力を威力に変換する英雄の遺産だよ』
「つまるところ、俺に向いた武器ってわけか。
…なんか骨みたいな感じするな」
『骨だよ』
「………モンスターの?」
『谷で暮らしてた一族の』
「深すぎるわ業が!!!」
道徳のテスト0点かよ。
思いつかねぇよ、「ある一族ぶっ殺したんでその骨使って武器作ろう」なんて。
どんな鬼畜だ、とドン引きする俺に、ベレスは深く頷いた。
『安心して。私の記憶から再現されたもので、副作用はないから』
「本家は副作用あんの…?」
『これに対応する血筋じゃないと化け物になって死ぬ』
「危険物じゃねぇか!!!」
やってきたのが紋章士でよかった。
マジモンが転移されたら、目も当てられない大惨事になっていたことだろう。
胸を撫で下ろす俺に、「試しに振るってみて」と促すベレス。
俺は大鬼族の1人…現在は村で剣の指南役を務めるハクロウに習ったように剣を振るった。
もう2度と使わないことを決意した。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「そういえば、リムル様。
つい先日、この付近の木々が消し飛ぶ事件があったのですが、何かご存知ですか?」
蜥蜴人族の来襲後、作戦会議に乱入した森の管理者…樹妖精であるトレイニーさんの話を聞き終えた直後。
トレイニーさんの問いに、ぶわっ、と出るはずのない冷や汗が噴き出る。
俺が助けを求めるようにベレスを見やると、同じように冷や汗を垂らす彼女と目が合った。
「……………な、何も知りません」
『お、オークロードの仕業だと…思う…』
『……………………ブルトガング』
やべ。
某ウサギの名探偵のような鋭い目つきで俺たちを睨め付けるリュール。
そうだった、コイツ紋章士についてめちゃくちゃ詳しいんだった。
どうにか誤魔化そうと思考を巡らせるも、リュールの放つ凄まじい圧がそれを許さない。
俺たちは半泣きになりながら、深々と頭を下げた。
「『私たちがやりました…』」
『トレイニーさん、彼らを土壌にして再生していただけますか?』
「も、もう元に戻しておきましたので、そこまで気にせずとも…」
『罪には相応の償いが必要です。
ここで許すとコイツらはまたやります』
「いえ、その、豚頭帝を倒してくれたらそれでよろしいので…」
おっかねぇ。怒らせないようにしよう。
次怒らせたら、俺が水田になってしまう。
と。そんなふうに戦慄く俺たちに向け、リュールは深いため息をついた。
『あのですね、リムルさんのバカみたいな魔素量で魔力武器を振るったら、周囲が消し飛ぶに決まってるじゃないですか』
「面目ない…」
『ベレスもわかっててけしかけましたよね?』
『……その、どのくらいの変換率かわかんなかったから…』
『シンクロしてるならリムルさんの「大賢者」とかいう異世界バージョングーグル先生使えるじゃないですか』
『……………………あっ』
そうじゃん。事前に聞いとくんだった。
見事に言い訳を潰された俺たちが沈んでいると、トレイニーさんが「まあまあ」とリュールを宥めた。
『……まあ、今回のは完全に事故です。
これ以上責めるのはやめておきます』
「ほっ…」
理詰めのお説教が終わり、胸を撫で下ろす。
リュールのお説教は胃がチクチクするんだよな。今の俺、胃袋ないけど。
そんなことを思っていると、トレイニーさんが笑い声を漏らした。
「…ふふっ。紋章士様たちも、リムル様をお認めになっておられるのですね」
『器の大きさは認めています。
向こう見ずの一等賞なのが腹立ちますが』
『私も似たような感じかな』
「頑張って治します…」
散々な評価を下され落ち込む俺に、皆の笑い声が響いた。
リュール ステータス
称号:
種族:神竜族→紋章士
ユニークスキル一部抜粋
「継承者」…死した仲間からスキルを継承することができる
「聖地創造」…天空に浮かぶ聖城「ソラネル」を顕現する
「神竜之結束」…絆を結んだ者の能力上昇
「時空竜石」…数分の時間遡行が可能
「紋章鍛治」…エンゲージ武器の鍛治による強化の解禁。他者への貸し出しが可能
究極能力
「
「
「
ベレス ステータス
称号:雪月の
種族:???→紋章士
ユニークスキル一部抜粋
「指導者」…指揮対象の能力増強、才能開花、スキル伝授
「時之縁」…戦乱の絶対予知。予知された未来は変更不可
「黒魔術」、「白魔術」…理学と信仰の結晶。
「戦技」…武具の秘奥。絆を深めれば、紋章士が記憶しているすべての戦技を習得可能
「計略」…計略の秘奥。絆を深めれば、紋章士が記憶しているすべての計略を習得可能
究極能力
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