「なんかヒデェことになってるみてーだな姫さん」
「まあな。俺に害はないが、黒川がかなりしんどそうだ」
いつもの高校の昼休みの中庭のベンチ。
姫さんとテキトーに飯食いながら話している。
話題は例の番組の子。
真面目に当事者同士の問題じゃね?としか思えないのだが、なぜかそれを許せない正義感に溢れた奇特な連中が多いらしい。
「不思議なもんだなあ。ぶっちゃけ自分と縁のない人間のケンカだろうが不倫だろうがどーでもよくね?勝手にしろよ、としかならんのだが」
「正義棒を振りかざして誰か殴っていい奴を見つけて殴りたいだけのヤツが多いんだろ。誰も彼もがストレス溜まってるのさ」
「ま、それで正義棒で殴られる方からしたらたまらんだろうけどな」
貢ぎ物の唐揚げを食べながら、そんな事を話す。
「オーガ。しばらくスマホをなるべく細かくチェックするようにしててくれ」
「…いいけどよ、なんでまた?」
「前の地下アイドルの子と同じことが、黒川に起こるかもしれない。兆候があったら連絡するから、力を貸してくれ」
「へえ…」
姫さんの言葉で、心の奥底にある衝動に火が灯ったのがわかる。
あの、今まで経験したことの無い状況。
自分の鍛え上げた暴力を、トコトンまで解き放っても許されるあの状況。
「いいじゃねえの…血湧き肉躍るとはこのことだなあおい」
「アレをそこまで楽しめるのはお前くらいだろうなオーガ…」
姫さんはヤレヤレと言いながら、
「正直、黒川を助けても俺の欲しい情報が手に入るかはわからん。だが、何か今後の手助けにはなるかもしれないから、助けたいとは思う」
「…別に照れて言い訳がましく助ける理由なんて探さなくていーんだぜ姫さん。助けたいから助けたいでいーじゃねえの」
「………」
プイッ、と横を向く姫さん。
全く。 悪びれてても基本的には善人なんだから、善人らしくすりゃいいのによ。
「まあ、いつでも呼んでくれや。スマホは気をつけておく」
「ああ、頼む」
その日は、そんな感じで話は終わった。
んで、そう日も経たないうちに呼び出しが来た。
『よりにもよって台風の日とかまじかよ…』
姫さんはスマホ越しに冷え切った声で
『よりにもよってな。台風の日にわざわざ呼び出しするような事が起こった。わかりやすい異常な事態だ』
『つまり?』
『また、あの地下アイドルの子と同じことになるかもしれない』
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「オーガ!気配はわかるか!」
「俺はその子に会ったことねえから特定できねえ!姫さんの頭でなんとかならんか!」
台風の中、姫さんと合流する。
例の子の家の最寄り駅付近。
強風と雨により声が聞こえにくい。
怒鳴りあうようにして言葉を交わす。
「…あの感じだと、食べ物とかを買いに行く様子だった…黒川の家ら辺からの、コンビニまでのルートは…」
しばらく考え込む姫さん。やがて考えがまとまったようで、
「オーガ、ナビするから俺を背負ってダッシュで移動を頼む」
「OK!なんならお姫様抱っこでもかまわんぜ」
「抜かせ!いざという時のため両手は空けてろ。しがみつくくらいは自力でするさ」
「俺が体で、姫さん頭か。愛の共同作業になっちまうなあ!しっかり捕まってろよ!!」
姫さんを背負い、案内されるがままにダッシュ!
台風の中、向かって来る強風を裂くように走る!!
「ポイントはいくつかあるが、多くはない」
背後から姫さんの声。
「突発的に自殺が出来るような場所。探すのはそこだけでいい。それ以後は後で何とでもなる」
「取り返しのつかないとこだけ早めに探索ってね!なるほど!そりゃ道理だわな、って!姫さん!!あの歩道橋の上!!」
「黒川だ!間違いない!!!」
高速で流れていく街の風景。
台風の雨風が視界を遮る。
それでも、歩道橋の上から今にも身を投げ出そうとしている少女を見逃す程ではなかった!
「あれは!前と同じ黒い闇じゃねえの?!」
少女から立ち昇る黒い闇!
地下アイドルの少女と同じものが、あの少女からも溢れ出していた!
急いで歩道橋まで辿り着き、階段を駆け上がる!!
今にも少女が飛び降りそうな瞬間!!
「やはり、このスマホが入り口の鍵か…」
姫さんの声。
無表情の少女。
体から溢れ出した闇が、少女を飲み込み広がる!
台風のうるさい雨風の音。
カラスの鳴き声が、不思議と聞こえた気がした。
「姫さん!このまま突っ込むぜ!」
「その為のお前だ!行けオーガ!」
姫さんを背負ったまま、俺達は闇の中に飛び込んだ。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「…2回目ともなると、気を失わないようだな」
そう言って、姫さんが背中から降りた。
いつかと同じような景色。
場所は先程と同じ歩道橋。
周囲の電気の明かりは消えている。
暗い、黒い闇の中。
不思議と台風の雨風も止んでいた。
歩道橋の下を走っていた車も、今は1台も見当たらない。
俺達以外の、全ての存在が視界から消え去ってしまっていた。
「さっきの子の姿もねえな」
「ああ、また少し探索の必要がありそうだ。」
2人、とりあえず歩道橋から降りる。
「オーガ、何か気配は感じるか?」
「…ああ、前とも少し違う気配をあっちから感じるぜ」
「…前回と同じなら、行くしかないだろな」
「ああ!早く行こうぜ姫さん!ワクワクが止まらねえよ!」
「ヤレヤレだ…」
俺が先頭に立ち、姫さんと2人、気配を感じた方へ少し進む。
すると…
「おーエロい天使とゴツい天使」
「言い得て妙だなそれ…」
そこには、美しい肢体をわずかな布で覆った女天使と、鍛えられた肉体を鎧で覆った男天使の群れがいた。
「おや、ニンゲンですか?こんなところに来るとは珍しい」
1人の男天使がこちらに気づき声をかけてくる。
「人を探している。もし俺達と同年代の黒髪の少女の居場所を知っていたら教えて欲しい」
姫さんが問いかける。
が…
「それは出来ませんね。彼女の絶望は私達が現世に転生するために必要なエネルギーですので」
「へえ…つまりわかりやすく言うとどーなんだよ」
暴力への抑えきれぬ衝動が、俺の口から溢れ出してしまう。
男天使を始め、天使連中はこちらに向かって、
「彼女の元には行かせるわけには行きません。貴方達は、ここで死んで…」
「はっはー!!いつまでもグダグダ口上述べてんじゃねえよこのアホ羽根つきどもがあ!!!」
天使が言葉を終えるまで待つこともなく、俺は前方に飛び出す!!!!
手には、心の力の籠もった注射器!!
「おおお!!!ペルソナ!!!」
首筋にそれを叩きつけ、ペルソナを召喚する!!
「蹂躙するぜ!シュテンドウジ!!!」
『鬼神楽!!!』
背後に出現した凶悪な鬼の力を借り、身体能力を大幅に引き上げ、その場の全ての天使に襲いかかる!!!
「ひ!この野蛮な鬼が!!!」
「はっ!それは褒め言葉だぜ!!!」
「ぎゃあああ!!!」
まず先頭の男天使に正拳突き!
その横の男天使に上段回し蹴り!
その勢いを利用しその横の女天使に肘打ちを叩き込む!!
多対一をやる場合、流れを止めることは出来ない。
攻撃の終点は、次の攻撃の起点となる。
それを意識した連続攻撃。
鬼神楽で強化された身体能力が、それをさらに後押しする!
「タルカジャ!!」
姫さんから更に攻撃力を高めるバフがかかる!
「いーいサポートだぜえ姫さんよ!!!」
俺は殴り、蹴り、肘打ちをし、頭突きを連続し放つ。
時には投げ、相手が剣で切りかかってきた腕を捉え関節技で腕を破壊するなど止まらず動き続けた。
時には相手を盾とし敵の剣を受け止め、戸惑う天使の胸元を手刀で貫いた。
「がははは!!楽しい!実に楽しい!!いい闘争だぜえ!!」
暴れる最中、躱しきれない攻撃が俺の身体を傷つけるが、
「ディアラマ!」
姫さんの回復魔法がその傷を癒す。
「や、ヤツだ!先にヤツを倒せ!!」
気付いた天使連中が数匹姫さんの方に向かう。
「おいおい!俺に背中向けていいのかよ!!!」
「ぎゃあああ!!!」
そいつらの背後から俺は襲いかかってぶちのめす!
「そっちこそ背後がガラ空きだ!!!」
その俺の背後から敵が襲いかかってくる!
「はっはっはー!!!痛え!痛えじゃねえかこのヤロウ!」
「…ディアラマ!…テンション上げ過ぎだ、天使もドン引きしてるぞ」
「はーっはっはっはっ!」
「ひいい…なんなんだこのニンゲン!」
思わず後退りする天使ども。
何だ面白くねえ。
「おいおい何退いてんだよもっと来いよ面白くねえだろがよ。大体天使サマとかってあれだろ?『ニンゲンとかくだらない舐め腐ってしかるべき存在だ』とか内心で思ってるんだろどうせ。もっと気合いれてこいやおら!」
殺意の波動を、気迫の声とともに放つ。
その気迫と、ここまでの俺の戦いに多くの天使達が腰を抜かし倒れるか、もしくは後ろにジリジリと後退りしていく。
「…参考までに、もしほんとに人間のことを舐め腐ってたらどうするんだ?この状況でも許してやるのか?」
「あ?決まってるだろそんなん。許してやるよ」
「マジで?」
「おう、マジだぜ」
姫さんの問いに答える。
「男天使は皆殺しで、女天使は全員犯すけどな。全部終わったら許してやる」
「だめじゃん」
「ひいいいい!!!鬼!悪魔!!」
「何なのこのニンゲン!!」
「今は現世って平和な時代なんじゃないのか!!!」
「なんでこんなのがいるのよ!!!」
更なる恐怖に震える天使達。
背を向けて逃げ出す天使達も出てきた。
「鬼ってのは舐められたら殺し返す生きもんだぜ。俺に会ったのが運の尽きだと思うんだな!!!」
「「「「ぎゃあああ!!!!」」」」
そうして、その場に残る天使連中を殲滅した。