推しのペルソナ   作:のりしー

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恋愛リアリティショー編 心のオペ

「がーっはっはっは!俺様大満足ー!!!」

「まだ終わっては無いけどな」

 

その場にいた天使全てを倒し、とりあえずご満悦なオーガ。

天使を恐怖させるというマジオーガムーブをしてご満悦の辺り、コイツはほんとに生まれる時代を間違えてると思う。

 

その場で俺の魔法で回復を行う。

 

「でもアレだなー姫さんも一応遠距離攻撃というか、牽制の手段は何か持っておいた方がいいかもな」

「確かにな。今後のこともあるし、考えておく」

 

強力なエアガンとかその手のものはオーガの言う通り準備しておいた方が良さそうだった。

 

「…さて、回復も終わったし、次行こーぜ次々!!」

「だから何でそんな元気なんだ…」

 

オーガが気配を感知した方向に向かって二人で歩く。

周囲の天使は全て倒し、残りの天使はいたとしてもこちらには近づいて来ないようだ。よっぽどオーガが怖かったのだろう。

 

二人でしばらく無人の街中、それも暗闇で普段よりも暗い街中を歩く。

 

すると、

「黒川?」

「おーいたじゃん」

 

そこには、周囲よりも一段と濃い暗闇を身にまとった少女、黒川がいた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…お母さんごめんなさい、お父さんもごめんなさい。みんな迷惑かけてごめんなさい…」

 

「前の子とは違って、こっちは自罰的とゆーかなんとゆーか」

「世間が憎い、というよりは世間に憎まれる自分が悪い、って感じだな。真面目な黒川らしい」

 

暗い顔で下を向き、ぶつぶつつぶやく少女は見てるだけで哀れみを感じるほど落ち込んでいた。

正直、彼女がそんな死を選ばなければいけないほど悪い事をしたわけではないのだ。

だが、SNSはそれを許さない。

 

「恋愛リアリティショーの負の側面の結晶だなホント」

 

真面目な奴ほど損をする世の中。

俺みたいに自分を上手く偽ったり、役柄を演じるようなタイプだけが上手く得したり損しなかったりする。

 

それはそれで大切な事だと思う。

だが…

 

「…それで誰かが傷ついたり、死んだりするのなんて、俺はゴメンだ」

 

だから…

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

 

1人心の闇の中で、今も謝り続ける少女。

「疲れた…もういいや…考えるの疲れた…何も考えたくない」

 

恋愛リアリティショーという番組に潜む闇に、心を傷つけられた黒川。

悪くないのに、自分を殺してしまうほどに追い詰められた彼女の心を、俺とオーガで救ってみせる。

 

黒川の体から、更に濃い闇が溢れ出す。

それは、1つの魔物。 

黒川の心の闇に潜んでいた怪物の姿となった。

 

『堕ちたムーサ』

美しい闇の女神。

 

それが黒川の闇の怪物だった。

 

「さあ、心のオペを始めよう」

 

心の悪いところ。

 

「俺が切り」

 

それをオーガが切り離し

 

「俺が治す」

 

その傷を、俺が治す

 

「行くぞオーガ!黒川を助ける!!」

「はっはー!いいぜ!やるぞ姫さん!!」

 

二人で戦闘態勢を取る。

 

 

『アギラオ!』

 

「ぐっ!」

 

強力な火の魔法が、闇のムーサから放たれる。

巨大な火炎を、横っ飛びにオーガが躱す。

 

「オーガ!防炎の壁!!これで火の耐性がついた!」

 

火の魔法への耐性を持たせる魔法をオーガにかける。

「サンキュー姫さん!突っ込むぜ!」

 

オーガが猛スピードで突進する。

 

『…エレメントチェンジ。9人のムーサ』

 

「何!!」

 

闇の中、ムーサが怪しく輝く!!

 

『ブフーラ!!』

「うお!次は氷かよ!!!」

 

突っ込む勢いから急激な方向転換!

オーガは無理やりに横に倒れるようにして、その激しい氷の刃の魔法を避ける。

 

「9人のムーサ…あれはギリシア神話のムーサか!」

「知ってんのか姫さん」

「英語名はミューズとも言う」

「ああ、芸術の女神だっけか?」

「端的に言うとな。確か神話だと、ムーサは1人ではなく複数いるはずだ」

「…それで属性チェンジ出来ますよ、ってか?厄介なこった」

「だな…対属性の魔法はあるが、それが封じられた」

 

『マハブフ!!』

 

「うおっと!」

「く!!」

 

先ほどより威力は弱いが、広範囲に広がる氷の刃が俺達を襲う!

 

オーガは自分は躱しつつ、俺に向かう氷の刃を拳や蹴りで迎撃する。

 

「作戦はどーするよ?何か対策あるか姫さん」

「2人で出来る作戦なんか大したものはない」

「するってえと?」

「ちょっとだけ小細工するから、お前は突っ込んでなんとかしろ」

「はっ!いいじゃねえの!そーゆーシンプルなのは俺好みだぜ!!」

 

『エレメントチェンジ。9人のムーサ』

 

また属性を変えるムーサ!

 

『ジオンガ!!』

 

今度は電撃をこちらに向けて放つ!

確かにこれは拳や蹴りでの迎撃が難しい!!!

 

 

オーガが俺を抱きかかえ、横っ飛びに跳ねる!!

2人分の重量など感じないほどの距離を一瞬で移動し、電撃を避けた。

 

「相手の動きを鈍らせ、お前のスピードを強化する。魔法を掻い潜ってぶん殴れ!」

「はっ!了解だ!テンション上がって来たぜ!!!」

 

「スクカジャ!」

オーガのスピードをバフで強化する!

「スクンダ!」

ムーサのスピードをデバフで遅くする!

 

「行け!オーガ!」

「おうよ!!!」

 

スピードの上がったオーガが、ムーサに向けて突進する!!

 

『ジオンガ!』

「遅え!掌向けてりゃ雷撃の来る向きなんて丸わかりだぜえ!」

「だからって避けられるのはどうなんだ、って話だが」

 

オーガが雷撃を回避しながら、ムーサに近づき!

「シャア!!!ガトリングブロー!!」

 

『!!!!!!』

 

強力な打撃が何発もムーサを直撃する!!

 

ダメージで仰け反るムーサ!!

 

チャンスだ!

「オーガ!!」

「おうよ!!」

 

「「ペルソナ!!」」

 

2人、最大出力でペルソナを召喚する!!!

 

「隠し剣 鬼の爪」

 

オーガは、その強力な十指をさらに超強化し、ムーサに襲いかかる!!

俺は、走りムーサに近づいていく!!

 

『!!!!!!!』

 

オーガの強力な爪攻撃が、ムーサの心の闇をドンドン切り裂いていく!

切り裂かれた闇の中から、黒川の姿が見えた!!

 

「オラオラ!!まだまだ!!」

オーガがさらに加速!!

黒川の身体を傷つけないように、慎重に、かつ高速で闇を切り裂いていく!!

 

黒川の身体が、完全に闇の中から解き放たれた。

 

「アスクレピオス!!!」

ここだ!

俺の全魔力を集中する!!

 

『サマリカーム!』

 

圧倒的な癒しのエネルギー!!

戦闘不能の者ですら、一瞬で完全回復させるほどの莫大な癒やしの魔力が黒川を覆った。

 

「……クア、君…?と、誰、か…?」

 

ふと、黒川のそんな声が聞こえた気がした。

癒やしの光に包まれる黒川を見る。

だが黒川はずっと目を閉じていた。

気の所為だろうか?

とりあえず治療に専念するとしよう。

ここでしくじったら、全部台無しだからな。

 

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

 

黒川の心の闇が完全に晴れると、俺達はまた元の世界に戻って来たようだ。

 

騒がしい車の音。

身を叩く強い台風の雨風。 

その全てが俺達を現実に戻ったのだと知らせてくれる。

 

俺の腕の中には黒川がいる。

あちらの世界で治療するために近くにいたからだろうか?

座り込む俺に、寄りかかる黒川を背後から抱きしめるようにして歩道橋の上で座り込んでいた。

 

「…姫さん、どーも誰か通報したのか警察の気配がするぜ。俺面倒嫌いだから逃げてもいいかしら?」

 

「ああ…助かったよオーガ。お礼はまたいずれ」

 

「ああ、こっちも楽しかったぜ姫さん。また次も呼んでくれや」

 

そう言うと、凄まじい速さでこの場からオーガが立ち去った。

警察の気配と言っていたから、多分見つからないようなルートで帰るのだろう。

 

「う…」

「気がついたか、黒川?」

どうやら、黒川が気がついたようだ。

「ああ!いやぁ!放して!」

「落ち着け」

努めて穏やかな声を意識する。

「俺は敵じゃない。頼むから落ち着いてくれ」

「アクアくん…なんで?」

 

背後にいるのが俺だと気付いた黒川が、そう問いかけてくる。

「メムのヤツが、台風の中お前が出かけて、なのに全然帰ってこないって捜し回ってるんだよ。だからコンビニまでのルート辿ってたら…」

 

…辛かったな黒川、もう大丈夫だ。

 

「…馬鹿野郎が」

 

お前の心の闇は、俺達が治したから。

 

黒川は、目を見開き、新しい涙をこぼしながら、

「うっ……あっ……」

 

顔を隠すようにして、静かに泣き出した。

…多分、もう大丈夫だろう。

さっきとは泣いている感じが違う泣き方だった。

 

ふう…と内心で大きなため息を吐き出す。

どうやら、黒川を無事助けることが出来たようだ。

 

「ちょっと君達!危ないでしょあんな所に!」

 

オーガが言っていた警察がやって来る。 

黒川の心は救えた。

 

後は、現実世界で落とし前をつけるだけだ。

 

 

 

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