「黒川あかねさんかー…んじゃ、あねさんって呼んでいい俺?」
「うーん…なんかそれだとヤクザの女感が凄いんだけど…」
「そか?『あ』か『ね』であねさんのつもりだったんだけどなあ」
「人生初めてのあだ名だ…」
「まあ、極妻感も意識してるわ意識してるけど」
「あ、やっぱその意図もあるんだ」
「バカオーガ…お前絶対それルビーと有馬の前で言ってぐぎぎぎぎさせたいだけだろ…」
「バレたかがはは」
「妹さんがジャリで、かなちゃんがお嬢ちゃんだっけ?確かに2人の前で私だけあねさん呼びだと、2人がぐぎぎぎぎってなるかも…うーん、アクアくんに聞いてた通り愉快な鬼さんだね」
場所は都内のとあるカラオケ。
オーガとあかねの初対面である。
事情はお互いにある程度事前に伝えてあるので、今後の顔合わせみたいなものだ。
「もう一度確認するぞ、あかね」
「うん」
あらためて、その意思を確認する。
「俺達と一緒に、ペルソナを使って心の医者をやるってことで良いんだな」
俺の問にあかねは
「私は、アクアくんとオーガくんに助けられた。だから、今度は私が2人の助けになるよ」
「命の危険は正直あるぜ?それでもいいのかあねさん?」
オーガの問にも、
「…怖くない、と言えば嘘になる」
でも…
「…知ってしまって、それでも2人だけを危険な所に向かわせるだなんて私には出来ないよ。それに、私自身心の闇に潰されそうになって、助けてもらって…だからこそ、あんな辛い思いをしている人がいるなら、私もそれを救う手助けがしたい」
そう、強く宣言した。
「…わかった。これからよろしく頼むあかね」
「あねさんの魔法には苦労したぜ。これからよろしくな」
「うん!こちらこそよろしくね!」
そうして、俺達は3人でチームを組むことになった。
新たな仲間が加わり、取れる戦術も増える。
正直言えば心強い。
元々あかねを利用させてもらうつもりだった。
まさか、こんな事でも協力してくれるとは予想外だったが。
あかねのプロファイリングで心の闇を見てもらうことで、俺達には気づかない何かに気づいてもらえるかもしれない。
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♫♫♫♫♫♫♫……
ダンススタジオに軽快な音楽が響いている。
メムを加えたB小町3人がダンスの練習をしている。
前世から耳に聞き慣れたメロディーに心が高揚する。
差し入れに来たのだが、その見返りは十分もらえた気がする。
俺も根っからのB小町オタクという事だ。
昔のB小町の歌を聞くだけで、こんなにも楽しめるのだから。
ちょうど休憩らしく、ルビーとメムが練習部屋から出てきた。
「あ、お兄ちゃん!」
「アクたんお疲れー!何?差し入れ持ってきてくれたの?」
「お疲れ。水分補給はしっかりしろよ」
「「ありがとー!」」
このくらいの差し入れで喜んでもらえるなら、いつでも持ってきていいくらいだ。
後は有馬か…
…探すと、いた。
まだ練習部屋の中に、1人だけ座っている有馬を見つける。
「有馬おつかれ」
有馬に近づき、差し入れの飲み物を渡そうとするが…
「ありが…」
一瞬。
飲み物を受け取った有馬は、渡したのが俺だと気づくと、
「いらない!あっちいってよ!」
そう強い言葉とともに、飲み物を俺に突き返して来た。
…さっきまでの楽しい気分。
その全てが、一気に最悪な気分となる。
「有馬。俺に対して最近ずっとそんな感じだな」
差し入れの飲み物。
それを彼女の横に置き、
「有馬が口も態度も悪いのはわかってる。けど、いい加減俺も傷つく」
もう、流石に彼女の顔を見る余裕は無かった。
飲み物を置いて、俺はその場を立ち去った。
この後は、鏑木Pと約束した寿司の時間だ。
それまでに、心の余裕を取り戻さないと…
「ん?」
スマホが振動する。
オーガからだ。
スマホの画面には、
『姫さんだけ寿司ズルい』
「ガキか…全く…」
さてなんて返信するかと考えている間に、
『ズルいから俺も回転寿司行ってくる。この前パパ活でエグいくらい金巻き上げ過ぎて、逆恨みで襲われてたJD助けたからめっちゃ回転寿司食ってくるわ。パパ活で巻き上げた金でめっちゃ奢られてくるわ』
『自慢じゃねえかバカオーガ』
思わずムカっと来たのですぐ返信する。
『てへ♡』
『てへ♡じゃねえよ…絶対俺がこれから食う寿司より美味しそうじゃんそんな回転寿司…』
「全く…コイツといると真面目に色々考えてるのがバカらしくなるなホント…」
さっきまでの落ち込んでた暗い気持ちが、少しだけ晴れていた。
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鏑木Pとの会食が無事終わる。
劇団ララライの事など、非常に多くの有益な情報を得ることが出来た。
食後、オーガからメッセージが来てるのに気づく。
…コレ絶対見るとムカつくやつだ。
わかってはいるのだが、とりあえず確認する。
『いっぱい食べた。これからデザートの時間です』
山盛りの回転寿司の空き皿と一緒に写る、オーガとパパ活JDの写メも付いている。
たくさん金を巻き上げるだけあって、見た目とスタイルは非常に優れた女の子だった。
夜職みたいな怪しい気配のある、オーガ好みの子だった。
予想通りにめちゃくちゃムカついた。
コイツの言ってるデザートが何なのかわかってしまい更にムカつく。
「なんか…俺の恋愛の悩みとかホントにバカらしくなってくるな」
画面の中のピースするオーガを苦々しく眺め、
『バーカ。腹壊しちまえ』
そう返信だけして、スマホを仕舞う。
もうこの後はスマホを見ないことに決めた。
全く…しょうがないヤツだほんとに…