推しのペルソナ   作:のりしー

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ファーストステージ編 異変のJIF

「姫さん!姫さん!お腹すいたぴえヨン!肉まんとカレーまんとピザまんと、あとおやつであんまんが食べたいぴえヨン!」

「マジ黙れこのバカオーガ…」

 

 

「あ、またなんか愉快なこと始まってるこれ?」

「あかね…君は気にしないでいい。このバカオーガの言う事に一々反応しないほうがいいぞ」

「んー…でもなんか疎外感あるなあ。公式彼女よりオーガくんと仲が良すぎるのはどうかと思うよアクアくん」

「思うぴえヨンよ!!」

 

…集合した瞬間にどっと疲れてしまう。

主にバカオーガの所為ではあるが。

 

ここはJIFの会場だ。

俺がオーガとあかねを呼び、2人がそれに応えてここに集まってくれた。

理由は、

 

「んで姫さんマジなの?この会場に心の闇抱えた人がいるって?」

「…いたとしてもそれが誰かを特定するのが大変そうだね…正直、人が多すぎるよ」

 

そう、ここはルビー達新生B小町が出演するJIFの会場。

俺は3人の応援の為に早めに会場入りしていたのだが、そこでアイのスマホが何かに反応したのに気付いた。

 

45510

 

…今までのパターンからすると、これは例の破裂寸前の心の闇を抱えた人がこの近くにいる事を意味する。

 

その場でオーガとあかねに連絡。

予定が空いていた2人はすぐに会場に駆けつてくれた。

 

会場には多くのアイドルと、そのファンが集まっていた。

喧騒を避けるように端っこで3人集まり、俺達は話をしていた。

 

「過去2回目とも、心の闇の世界に入る時このスマホが反応していた。そして、この会場で今日もスマホが反応した。確実とは言わないが、かなり可能性は高いと思う」

 

「…共通要素は確かに多いのかもね。アイドルのフェスなんて心の闇抱えて来てる人もいそうだしね確かに」

 

「俺様は偏見かもしれないけど、会場内のけっこー多くの人が心の闇抱えてる気がすっけど偏見かねこれ?」

 

「オーガそれは言いっこなしだ。だが、アイドル側も、ファン側も心の闇を抱えていておかしくない世界なのは確かだ」

 

SNSなどで誹謗中傷を受けるアイドル側にも。

アイドルを自死を選びかねないほど誹謗中傷するファン側にも。

 

正直、あの心の闇の世界を抱えるくらいの人がいても全然不思議ではない世界である。

 

JIF(日本のアイドルのフェス)なんて、その見本市みたいなものである。

 

「状況はわかったよアクアくん。で、その心の闇を抱えているかもしれない『誰か』をどうやって特定するの?」

 

あかねがそう言う。

周囲を軽く見渡す。

あかねの言う事は最もだった。

会場内には、本当に人が多い。

 

砂漠で一粒の砂金を見つけるようなもの、という類いの例え話がある。まさにそういう状況ではあった。

 

「一応、ある程度目星はつけている」

「ホント?どうやって?」

 

俺はアイのスマホではない自分のスマホを取り出し、

「今日出演しているアイドルグループの公式SNSのうち、過激な投稿がされていたグループと、投稿したアカウントをチェックしておいた」

「…なるほど、それは確かに可能性あるかもね」

「思わずSNSに過激な投稿しちゃうくらいメンタル荒れてる奴がいる、ってことね。まあ闇雲に探すよりは可能性あるわな」

 

「あかね、君の分析力でSNSアカウントの書き込みから、その書いた人間がどういう人物か?どういう心理状態か特定することは可能か?」

 

「…書き込みの量と内容にもよると思うけど。そういうプロファイリングは得意だから、ある程度どういう人で今どういう心理状態かはわかるかもしれない」

 

「わーお、あねさん素敵」

 

オーガの率直な賞賛にあかねが照れる。

だが完全に同感だった。

これは俺やオーガには無いあかねの強みだろう。

心の医者をやる上で、事前に患者の心理状態を知る事が出来るかもしれないのだ。

オーガが心の闇を切り。

俺が心の闇を治す。

あかねは心の闇の病状を正確に分析出来るという訳だ。

 

あかねが仲間に加わってくれた事は、今後本当に俺たちの力になると確信する。

 

「アクアくんが見つけたSNSのアカウント見せて。その人達の心理状態とか分析してみる」

「頼む。あかねが頼りだ」

 

そして、あかねが集中してスマホを見る。

 

しばらくの時間が経った。

 

「すげー集中力…やっぱどんな分野でもトップクラスまでいく人間はすげーわなマジで」

「ああ、本当にあかねは凄いと思う」

 

 

ぶつぶつ小声でつぶやきながら、いつものメモ帳に色々高速で書き込みを行うあかね。

 

そしてさらにしばらくの時間が経ち、

 

「多分、この人かな?他にも危険な心理状態の人もいたけど。この人が一番心に深い闇を抱えていそう」

 

そう言うと、あかねは1つのアカウント名を、そのアカウントが書き込みをしたアイドルグループの名前と共に告げる。

 

タイムテーブルを確認する。

ちょうど、そのアイドルグループがステージに立つ少し前の時間だった。

 

「よし!行くぞ!」

「うっしゃ腕がなるねえ」

「え!ほんと大丈夫?その可能性が高いだけで、まだ合ってるかわからないんだよ!」

「違っていたら、また新しく探すだけだ」

「だな。それに闇雲に探すよりよっぽどいいや」

「うーん…そうだけど…でも、そうだね!行こう!」

 

そして、3人でそのアイドルのステージに向かう。

 

ステージが近づくと、アイのスマホの振動が少しづつ強くなっていく。

…どうやら、当たりのようだ。

 

そして、ステージに着く。

 

「アクアくん…あれは…」

「ああ、大手柄だあかね」

「ビンゴだな」

 

アイドルの出番待ちをしているファン達の中に、一際目立つ心の闇を身体から立ち昇らせる1人の男を見つける。

周囲の人は誰もその闇に気づいていない。

俺達にしかその闇は見えていないようだ。

 

「…下手くそな殺気だ。刃物くらい持ってるかもしれん。俺が先頭立つぞ」

「頼んだオーガ」

「気をつけてねオーガくん」

 

オーガを先頭に、俺達はその男の方に向かう。

男は、開いているが何も見ていないような目で虚ろに宙を眺めていた。

心の闇が、更に大きくなる。

 

男の身体全体を、心の闇が覆い尽くした。

 

「ショータイムだな」

「オペの始まりだ。ショーではないだろう」

「…二人とも余裕だなあ。結構な異常事態だと思うんだけど…」

 

3人がそれぞれの言葉を残し、

俺達は、男の心の闇に飛び込んだ。

そして、遠くではカラスが鳴いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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