「あ、いたいたおーいバカ鬼!」
「ん、どうしたジャリ。みなみちゃんもか」
放課後の教室を出て校内を出口に向けて歩いていると、背後から耳慣れた声が聞こえてくる。
姫さんの妹、ルビーとみなみちゃんだ。
「ねえねえ!明日時間ある?暇?暇だよね?お兄ちゃんの劇の練習の見学一緒に行かない?」
また急なお誘いだ。
「まあ、行かないけど」
「ムカ!バカ鬼はお兄ちゃん心配じゃないの?あのコミュ力激低のお兄ちゃんが知らない人達の中でちゃんとやれてるかどうかとか!!」
「そら余計な御世話ってもんだろ…」
まあコミュ力低いのは事実だけど。
仲良く友人関係とかまで築くとこまで行ってるかはともかく、ちゃんと必要なコミュニケーションくらい取るだろ姫さんなら。
「それに最近毎日帰りが遅くて…日付が変わるくらい遅くまでやってるから心配なんだよねお兄ちゃん…」
ブラコンである。相変わらずのブラコンである。
「姫さんなら監督さんの所で演技指導頑張ってるだけだよ。あまり心配するなって大丈夫だから」
「でも…最近一緒にご飯とかも全然食べれてないんだよ!」
「ブラコンやなあ…」
「ブラコンだよなあ…」
全く…
「まあ、そんぐらい頑張ってるって事だから、今はそれだけ大切な時期なんだろ。次メシ食う時姫さんには言っとくから今は頑張らせてやれよ」
「……ちょっと待てバカ鬼…貴様…妹の私ですら最近一緒にご飯食べてないのに、ひょっとすると一緒にご飯食べてるのか!?」
「まあな。ウチでも殺陣の稽古することあるし」
「ムカー!!何でよ!!何でよムカー!!!」
ギャンギャン吠えるジャリ。
ようは最近愛しのお兄ちゃんが構ってくれなくて寂しいのね、ヤレヤレである。
「しかし見学ねえ…よく姫さんが許可したな。ああいうの多分事前に見学の申請して許可とかいるんじゃねえの?」
「許可?申請?してないよ」
「「え??」」
まじかよこのジャリ…
みなみちゃんですらコイツまじかよジャリ…って目でジャリを見ている。
「…ってえと、許可とか取らず飛び込みで見学行くつもりだった、と…」
「うん!!」
迷いなき曇りなき眼でそうのたもうた。
ヤレヤレ…
俺は頭をガリガリかくと、
「…そっか、頑張ってな、俺は行かないけど」
「あ、オーガくんヒドイ!今!今ウチのこと見捨てたやろ!完全に見捨てたやろ!!」
「見捨てましたすまんね女好きの俺ですら付き合えんよこれ…」
「くっそー!!オーガくんなんて!オーガくんなんて!同人誌が増えてしまえ!!!」
「斬新な悪口だなあ…むしろ何もしなくても勝手に増えるからなあ…減らし方を誰か教えて下さい…」
「バカ鬼の薄情者!みなみちゃん!やっぱ私達2人で明日は行こうね!!」
「黙っときこのジャビー!!!」
「ジャビー!?ひ、ヒドイみなみちゃん!!!」
そうして騒ぎ出す2人を背に、俺は校舎を出て学校を出て帰路についた。
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そうして、姫さんとあねさん、あとお嬢ちゃんの出演する劇の公演が始まった。
「せっかくだからオーガくんも観に来てよ!!」
とあねさんがチケットをくれるというので観に行く。
流石に初日とかはチケット取るの大変だろうから、後の方のチケットでいいよと伝えて公演の中盤くらいのチケットを取ってもらった。
んで本日観に来ています。
いやいや…すげえな最近の演劇とかってこんな感じなのね!
もっと学校の体育館でやるようなものだと思ってたから、正直舐めてましたあねさんゴメン。
これはスゲェわ!普通に面白い!
舞台はマンガ原作の劇。
殺陣のシーンも多く、動かが多くて楽しい。
マンガ原作読んでないけど、帰りに買ってみようかな?
もしくは知り合いの女の子で誰か持ってないか聞いてみよ。
ちょっと原作読んでみたくなった。
そして面白い勢いが最後まで続いた後に終幕となる。
姫さんとあねさんへの殺陣の指導は効果あったように思う。
正直、他のメンバーの中で殺陣の仕上がりは格別上等だったと思う。
だが…
『かなちゃんには負けたくない』
あねさんは稽古の時にそう言っていた。
そういう観点で見ると、
「残念ながら、お嬢ちゃんの勝ちかなこれは」
あくまで俺の印象である。
プロから見てどうかはわからない。
姫さんとあねさんの演技も素晴らしかった。
だが、お嬢ちゃんの演技の方がよく見えたのは事実だ。
多分相方の演技に引っ張られた所為もあるんだろうけど。
姫さん・あねさんコンビがお嬢ちゃん・主演コンビに負けた。
なんとなくそんな印象である。
そうして、劇が終わる。
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その更に数日後、姫さんから呼び出しを受ける。
いつもの学校の中庭ベンチとかではなく、カラオケの一室。
…集音マイクとかNGのマジの話らしい。
「俺とルビーの異母兄が見つかった」
「…へえ、それはそれは…」
ヘビーな話だこと、覚悟はしてたけど。
姫さんは続ける、
「それが誰かとかは言えない。向こうにも迷惑がかかるからな。だが、その異母兄の父親はすでに死んでいた」
「ほう」
姫さんが芸能界の誰かを探しているのは知っていた。
それが父親だとは知らなかったが。
あまりそこに興味は無かったし、知っても止めるつもりは無かった。
「…つまり、探していた父親は見つかったけど、すでに死んでいた。俺達の活動はこれで終わり、って事か?」
今の説明を聞いて、思った事を口に出す。
まあそういう事かな?
俺の言葉に、姫さんはふるふると首を振り、
「終わりかもしれないが、まだ終わりとは断定出来ない」
姫さんが一拍置き言葉を続ける。
『托卵』
「そういう可能性がある」
「…まあ、それはそうだな」
托卵
母親側の不貞行為で、戸籍上の父親と違う男性の子供を産む事。
あまりいい話ではないが、あり得る可能性である。
「…今後はそういう方向も調べるつもりだ。頼りにしてるぞオーガ」
「…この事、あねさんには?」
「言わない。だからお前には話した。お前もこれに関してはあかねを巻き込まないように気をつけてくれ」
「心のお医者さんは継続で、でも姫さんの父親の話は黙っとけ、ってね!了解!」
そうして幾つかの事を打ち合わせる。
2.5次元の舞台は終わった。
そしてまた新しい演目の舞台が始まろうとしていた。