「いーけないんだーいけないんだー」
「あん?」
色々あっての明けて翌朝。
流石にあの広い空洞を埋めるのは一苦労だったため、俺は少し寝不足気味だった。
姫さん達より少し遅れて目覚めた俺は、朝の支度を済ませ1人ホテルの辺りを散歩していた。
「遺体から身元のわかる証拠品を取って、見つからないように勝手に遺体を埋めて………って、これ実は普通に犯罪?犯罪行為じゃ?……本当にやっちゃいけない事してる!!」
「ああ、カラスのガキか」
「うん、そうだよ!……って、何でわかるの!?」
「うーん……カンかなあ」
「カンかあ……そっかあ……とはならないよ!」
そんな俺に1人の子供が話しかけて来た。
明らかに年齢離れした怪しい気配を漂わせるそのガキ。
実のところ、この気配には覚えがあった。
「あんだけチロチロ要所要所で俺達の上でカァカァ鳴いてるんだ。気づかれてないとでも思ってたのか?」
「普通は気づかないんじゃないかなあ……」
はあ………
カラスのガキは大きくため息をつくと、
「……まあ、いいか。正体がバレてるのは予想外だけど、別にそんな話をしに来た訳じゃないしね」
そのガキはこちらをじっと見て、
「おめでとう。君たちは昨日、間違いなく別の未来へと移動した。世界は無事改変された」
「あん?なんだよそりゃ」
「わからなくていいさ君は。ただ、僕がそう伝えたかっただけだから」
こちらの理解などどうでもいい。
そう全身で語りながらガキが続ける。
「この世界では演劇を愛する少女は殻を破り切れず」
「とある少女は心の中に闇を宿さず」
「そして、彼は1人で全てを背負わない事を決意した」
「…………」
ガキはその場でくるくる回りながら1人語り続ける。
「精々、変わったのはその3つくらい。でも、それは僕が…僕達が、そして皆が……願い、祈り、こうであって欲しいと思い続けた、そうであったらいいな、と考え続けた大きな大きな変化なんだ」
「ふーん?何言ってるか結局よくわからねえけど」
俺の言葉にガキはくすくすと笑いながら、
「君がわかる必要はないさ。でも多くの人の願いが、思いが君に感謝をしている。それは伝えておこうかな」
「感謝される覚えもないのに感謝されるのは不思議なんだが」
「気にしないでいいよ。これは本当に身勝手な皆の感謝なんだから。ここではない何処か。違う世界線。そこでの結末を許せず、悲しみ、嘆いた人達がいたんだ。その人達の願いは大きな力となり、この世界にペルソナという力をもたらした。だけど……」
「だけど?」
「……だけど、本当の奇跡は君かもしれないね鬼島凰牙太郎。君は……君に関しては、本当に奇跡なんだよ。ペルソナは別世界の人達の願いの結晶だけど、君達の出会いは本当に偶然……そう、本当の奇跡のような出会いなんだ。ここに神の手は本当に介在していない。何か歯車一つ噛み合わなければ、君達は友人付きあいすることもなく、この世界で別々に過ごしていた事だろう」
「ふーん、まあ、出会いが偶然なのは事実だけどなあ」
それにしてもよく分からない。
ペルソナが奇跡の力だってのはわかるけど。
「……さっきも言ったよ。別に君がわかる必要はないってさ」
そう言って、ガキはこちらに背中を向けて歩きだす。
「言うだけ言って勝手に去るってか……全く、よく分からないガキだな」
「ふふふ!神様ってのはそういうものさ。まあ、また何処かでそのうち会うだろうけどね。君達がペルソナを使う以上」
「そうかい。んじゃまたな」
「……うん、またね」
最後にそう振り向いて挨拶すると、ガキは静かに立ち去った。
「そっかー振られちゃったのか姫さん」
夜、姫さんと2人で飯を食う。
今日の夕方、姫さんはあねさんに告白したらしい。
「俺はあかねが好きだ。でも有馬も好きなんだ。出来れば3人で付き合いたい」
「アクアくんはバカなのかな?オーガくんに毒され過ぎてない?それ私が許すと思うの?」
そんな感じでボコボコに言われて振られたそうな。
「うーん……何がダメだったんだろーなー」
「……いや、俺も後で冷静になって考え直したわ……ダメだろ……ダメダメだろ流石に……」
珍しくヘコんでる姫さん。
あねさんとはその後もしっかりと話し合い、別れると正式に決まったそうな。
「私は浮気とか3人で付き合うとか無理だから!!でもアクアくんが私だけを好きになってくれるよう頑張る!私だけをちゃんと好きになってくれたら改めてもう1回付き合おう!!」
との事。
「……で、大人しく諦めんの姫さん?」
「……まさか。そんなつもりなら最初から正直にあかねに話したりしない。3人で付き合えるようにこれからも頑張るつもりだよ」
「そっか、頑張れよ姫さん」
「ああ」
こうして宮崎の旅行は終わる。
ジャリ達のMVはこの規模のアイドルとしては結構評判になるくらい出来が良かったらしい。
その後のライブなどの集客に好影響だった様子。
あねさんは映画の出演が決まった。
流石に主演とかの大抜擢ではないそうだが、わりとメインに絡む役らしい。
姫さんは劇団ララライに入団。
「色々調べる事があるし、好都合だ」
何の都合なんだかって話である。
調べ事があるのは事実だろうが、元々劇も好きなんだから変に隠さなくてもいいだろうに。
医者に劇団にペルソナにと中々多忙な日々を過ごしている。
プラス、何か変な番組へのレギュラー出演も決まっていた。
ある意味1番売れっ子になっていた。
そうして約半年の時が過ぎ、俺達は2年生になった。