「あーいたなこのバカ鬼!!!」
時間は学校の昼休み。
ここは学校の中庭のベンチ。
いつものごとく貢ぎ物をありがたく頂いていると、耳にキンキン響く声で叫びながら誰かが近づいて来ている。
まあ、途中でそいつが誰かって事はわかっていたのだが。
「……(モグモグゴク)…ああ、うるせえなと思ったらやっぱお前か星野ジャリ」
「ジャリ言うな!!ルビーだって毎度毎度言ってんでしょ!」
「ああ、知ってるよジャリ」
「がー!!!!!!!!!」
姫さんこと星野アクアの妹。
星野ルビーである。
「大体!お兄ちゃんが『姫さん』で、何で私が『ジャリ』なのよ!普通!お兄ちゃんが姫さんなら私はスーパー姫さんとかウルトラデラックス姫さんとかになるべきじゃないの!!!」
「まあ、今まさに何故オマエがジャリ呼ばわりされてるかの理由を自分で説明してんだけどな」
「ムキー!!!!」
そう言うと、ジャリは俺の足をゲシゲシ蹴ってくる。
「…って、痛ったーい!!クソこのバカ鬼!相変わらず理不尽に硬い足をしやがって!何で蹴ってる私の足のが痛いのよ!」
「理不尽に蹴っといてそれか。やっぱお前ジャリだわ」
「ムッカチーン!」
…ま、よくあるいつものやり取りである。
「…で、何か用かよジャリ。俺早く貢ぎ物の残り食べたいんだけど」
「『鬼の餌付け』ね…毎度毎度みんなよくやるわホント」
ジャリはため息をつくと、
「いい!私がわざわざ貴重な昼休みにアンタのとこに来た理由は1つ!」
気を取り直し、ビシッ!と俺を指さし。
「また何かお兄ちゃんと変なことしてるでしょ!危ないからやめなさい!!バカ鬼が1人で行くなら良いけど、お兄ちゃんも巻き込まないで!」
「あー…」
実際のところ、巻き込まれているのは俺なのだが。
俺は俺で危険な遊びをする事はあるが、そういう事には姫さんとかは巻き込まないように当然している。
必然的に、俺達が2人でそういう事に巻き込まれる時はアクア主導な訳だが…
プンプン!!
と擬音語が聞こえそうなこのジャリに言うわけにはいかない。
シスコンの姫さんが嫌がるからな。
「…ま、気ーつけるさ。ちゃんとそっちでも姫さんに言っとけよ」
アクアがあまり良くない事をしているのはわかっている。
出来れば止められるならそれに越したことはないのだから。
「全く…お兄ちゃんたら少しは友達選べばいいのに…あ、でもそっか、お兄ちゃん友達いないもんなあ…」
「おう辞めとけジャリ。その話題はそこまでだ」
「だって!だってだって!なーんでよりにもよってこんな見る目の無いバカ鬼なんて友達に選んじゃうのよ!ありえなくなーい!アイドルへの第一歩を踏み出したこのスーパー可愛いルビー様に向かってジャリジャリジャリジャリ連呼するよーな見る目の無いバカ鬼が唯一の友達ってありえなくなーい!なーい!」
こーゆーとこがジャリジャリしてるんだけどなあ。
まあ、見た目がいいのはわかる。
実際姫さんの双子の妹だけはある。
遺伝子の暴力を感じる。
「だけど、それだけ何だよなあ…」
「何よ、何か言いたいことあるなら言ってみなさいよ」
「ジャリは何か、チ◯コにピンとこない」
「ムカムカムカムカチーン!!!」
発言や振る舞いが、な~んか違うんだよなあ。
「…じゃ!何よ!お兄ちゃんはピンって来るってゆーの!!」
「姫さん?そうだなあ?」
気になって周囲の様子を見渡す。
そこらで、今の一瞬で耳をダンボにした女生徒の群れ。
メガホン耳に当てだすくらいは可愛気がある方で、集音マイクを向けてくるヤツもいる。
ふーむ…ここは、今後の貢ぎ物の質の保全の為にサービスするべきか?
「その辺でやめろバカオーガとバカ妹」
「あ!お兄ちゃん!」
「中庭で何の話をしてるんだお前らは…また皆に新しいネタを提供するつもりか?」
(((((…………チッ!!!!)))))
舌打ちし、その場から去っていく女生徒達。
はい解散ー!解散ー!とも聞こえてくる。
ウチの女生徒達はたくましいなあホント。
「大体、お兄ちゃんとそこのバカ鬼のせいじゃないのこうなったのは!お兄ちゃん×バカ鬼のカップリング妄想がこの中学から広まり過ぎたせいで、この学区の中学女子の9割くらいBL目覚めちゃったんだから!」
「…一応抵抗するが、それは俺達のせいじゃない」
「…だな。まあ、おかげで貢ぎ物には困らないが」
そう言って、貢ぎ物のおにぎりやら惣菜パンなどを見せてやる。
そんな俺を姫さんがジロリと睨み、
「オマエもあまり火種は注ぐなよ」
(((((火種を注ぐだと!!!)))))
「……すまん、今のは俺が悪いな」
キュピーン!と目を光らせた女子にネタを提供してしまったようである。
「…まあともかく!あまりお兄ちゃんを危ないとこに連れてかないでねバカ鬼!お兄ちゃんも変なとこ行かないように!!」
そう言うと、ジャリ妹が去っていく。
まあ、あまり昼休みの時間も長くないしな。
「ヤレヤレ騒がしいジャリだなホント」
「…全くだ」
2人でヤレヤレと目を見合わせる。
「…で、どーしたわざわざ中庭来るなんて?何かあったのか?」
「ああ、またオーガお前の力を借りることになるかもしれない」
「へえ…」
心の内側が興奮で沸き立つ。
暴力の予感。
それが俺の心を昂らせる。
「実は、この前の件で不味いことになってきた」
「この前の?」
「ああ…ルビーをスカウトしたグループの調査で、この前スカウトした子が、ちょっと厄介な事になっている」
そう言って、こちらにチャットアプリの履歴を見せてくる。
「…へえ、これはこれは」
そこには、こう書かれていた。
『テメエ!マジいい加減にしろよ!最初声かけてきたのそっちだろーが!!もうムカついた!!地元のダチ連れてヤキ入れに行ってやるから首洗ってまってろよテメエ!!!』
「は!いいじゃねえか、俺様好みの展開だなあこら!」
実に俺様好みの展開だ。
「ここからは暴力でお話するお時間ってこったな」
血が、沸き立つ。
蹂躙への渇望が。