推しのペルソナ   作:のりしー

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中堅編 静かなる攻勢

「神木社長。今回は突然のご無理なお願いに協力していただき、本当にありがとうございました」

 

「ララライの後輩の力になれたなら何よりだよ。しかし見た目は大人しそうなのに、意外に大胆なんだね星野君は」

 

「はは!意外に大胆ってのは良く言われますね。ウチは妹もそうですし、どうもそういう血が流れてるんでしょうねきっと」

 

「……へえ、そうなんだ」

 

「ええ……」

 

ここは神木プロダクション、その社長室。

俺がレギュラー出演している番組で、今度コスプレを取り扱う事になったのだが、上手く出演者が集まらなかった。

俺は所属している劇団ララライの伝手で神木社長を紹介してもらい、神木プロダクション所属のタレントに出演をお願いしたのだ。

『本人が出演を望んでいるなら構わない』

 

そんな感じで所属タレントに出演を勧めてもらい、なんとか番組の出演者を集める事に成功した。

 

そして、その御礼という形で本日アポを取り神木プロダクションで神木社長と会う算段を取り付けた。

 

カミキヒカル

 

眼前に居る男……その顔を睨まないように心を落ち着けながらじっくりと見る。

 

カミキヒカル。

 

……ついに、ついにだ。

 

ほぼ間違いなく俺とルビーの父親。

そして……アイの仇。

 

……ついに、俺はここまでたどり着いた!!!

 

「……まあ協力と言ってもあくまで出たい人は出てもいいよ、って勧めたくらいだからね。こんな直接お礼に来なくても良かったのに」

 

「いえいえ……最近の大阪万博でもそうでしたけど、コスプレは色々な炎上要素の多いテーマです。それを事務所内で勧めてもらえただけで大感謝ですよ」

 

「ふーん……でも東京ブレイドのコスプレの許可を良く取れたね?」

 

「ええ……ちょっと原作者に伝手がありまして。直接許可取りました」

 

「……なるほど。そういえばこの前東京ブレイドの劇に出演していたね確か」

 

「はい。そんな所です」

 

「そうなんだ」

 

「そうなんですよ。でも酷くないですか?こんなに僕裏方で頑張ってたのに、そんな僕を女装コスプレさせて番組に出そうと企んでたんですよウチのスタッフ!!」

 

「へえ……でも確かに星野くんは綺麗な顔立ちしてるからねえ……確かに女装コスプレは見てみたいかもね。スタッフさんの気持ちもわからないでもないかな」

 

「あはは……勘弁してくださいよ……ただでさえ双子の妹がアイドルなんてやってるから、その関係でやれやれって煩いのに」

 

「へえ……そうなの?」

 

「はい」

 

……そこで俺は一拍置き、

 

「B小町のアイ」

 

「…………」

 

「……悪趣味ですよね。いくらウチの妹がB小町の名前で活動してるからって。昔のアイドルのアイのコスプレを僕にさせようなんて。あ!すみませんね急に!B小町のアイってご存知ですか?知らなかったらわからないですよね。結構昔のアイドルなんですけど?」

 

「……うん、知ってるよ。僕もB小町の世代だからね」

 

「ああ!そうですね!!確かに神木社長はそのくらいの世代ですものね!!知っていても納得です。良かったぁ!知らない人にこんなネタ話してもスベってしまってサムイだけですもんね」

 

「確かにね。もう10年以上経つのか……色々と伝説のアイドルだよね」

 

「ええ本当に。神木社長も実はファンだったりしたんですか?世代という事でしたけど?」

 

「……そうだね。正直僕ら世代はアイの……彼女のファンだったよ」

 

……ここまでで、まだ、ポケットの中のスマホは反応しない。

 

しかし……

 

……

 

しかし、

 

 

「……じゃあ、僕なんかがアイのコスプレとかしたらその憧れに対する冒涜ですね。似てない上に、男の僕がアイのコスプレするだなんて……アイに対する冒涜になっちゃいそうですね」

 

……ブ

 

……少し、アイのスマホが振動した。

 

へえ……

へえ……

へええええええええええええええ………

 

「……そんな、冒涜だなんて、そんな事はないさ。彼女も君みたいなイケメンが自分のコスプレしたら笑って楽しんでくれるんじゃないかな?きっと」

 

「へえ……そうですか。そうなら僕も嬉しいですけど」

 

……ここで、反応するのかぁ。

そっかぁ……

 

……色々と情報は集められた。

……そろそろかな。

 

「さて……すみません、本日はお忙しいところお仕事とっていただきありがとうございました。あまりお邪魔してもあれなので、本日はこのくらいで」

 

「いえいえ……こちらこそわざわざ来てくれてありがとうね」

 

「……そう言えば神木社長は、もう演劇はされないんですか?」

 

「僕は自分に才能がないってはっきりとわかってしまったからね。今はマネジメントに集中しているんだ」

 

「そうなんですね……実は僕も色々と悩んでまして……今後自分がこの芸能界でどうするかとかで……良かったら、またそのうち色々お話し聞かせていただけないでしょうか?」

 

「僕のはあくまで自分で自分の才能を見限ったってだけの話だから、あまり面白くないかもよ?」

 

「それでもですね。僕も自分に才能が無いとは思ってるんですが、それでも芸能界で頑張ってみるか?それとも他の道を選ぶかで悩んでまして。本当に色々お話を聞いてみたいです」

 

「そうなんだ……じゃあ、良かったらその内食事でも行こうか」

 

「はい!……ぜひお願いします」

 

 

………そうして、今日はそんな話をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……聞いてるだけで胃が痛くなるンゴ……」

 

……翌日、オーガに話の内容を伝えるとそんな事を言われた。

 

「……そうか?確かに色々踏み込んだけど」

 

「……どう考えても高校生がする会話じゃねえよ……俺様が言えたこっちゃねえけど」

 

「レベル的にはお前も別種ではそんなもんだろ」

 

「まあなあ……」

 

やれやれ……とオーガは呆れた顔でこっちを向いて、

 

「姫さん……ちょっと最近吹っ切れ過ぎじゃね色々と?」

 

「そうでもないさ」

 

「……まあ姫さんがそう言うならいいけどよ」

 

 

そう、確かに色々吹っ切れはしたさ。

相棒にしろ、恋愛にしろ、復讐にしろ、未来にしろ色々と。

 

「……胃が痛い思いしたらお腹空いたンゴ。姫さん飯行く?」

 

「悪い……今日はあかねと食事の予定なんだ」

 

「そっかぁ……そろそろ一回くらい刺されるかもしれないから、腹部にジャンプとか仕込んだ方がいいと思うよ」

 

「……二股勧めておいたお前がそれ言うのかオーガ……」

 

 

 

……こんな感じで日々は進みつつ過ぎていく。

 

カミキヒカル。

 

奴とのファーストコンタクトで掴んだ大きな情報。

 

……奴はまだ、アイに執着がある。

 

……これだけは間違いない。

 

……ここからどうやって復讐に繋げていくか?

 

色々とジャブを打ち、探りながら調べて行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

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