推しのペルソナ   作:のりしー

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芸能界編 地下アイドルの心の闇

「な!何だよらら!!何だよあのデカい大男は!!こんな話きいてねえぞ!!!!」

「んーなんだ田舎のヤンキー10人くらいか…正直ちょい物足りねえなあ」

 

都内のとある河川敷。

時刻は夜。

ヤツラに呼び出された通りに、俺とオーガは指定の場所へ出向いていた。

 

例のヤキ入れに来た地下アイドル率いる地元のヤンキー連中との対面のお時間であった。

 

金属バットなどの凶器を持ち最初ニヤニヤと笑っていたヤンキー連中は、俺の隣のオーガの2メートル超えの鍛えられた巨体を前にすると、一気に逃げ腰になり始めた。

 

まあ、無理もない、

優男の芸能スカウトマンにヤキを入れるつもりが、鬼を招いてしまったのだ。

こういう反応にもなるだろう。

 

暴力と縁の無さそうな優男。

それを暴力でいたぶるつもりで来たコイツラは、実は自分達が蹂躙される側であると気付いてしまった。

 

「…ま、あんまワガママ言っても仕方ないか。せっかくの暴力のお時間だもんなあ!」

「ひ!!!」

「んじゃま、いっただっきまーす!!!」

 

そう言うと、オーガの巨体が音も無く前に滑り出す。

地面の上を滑るような、あまりにも滑らかな前進。

滑らかかつ高速。

俺のように慣れてないものからすると、視界から消えたと錯覚するほどのスピード!

河川敷の土の上を、まるでスピードスケートの選手が氷面を滑るように圧倒的な縮地で一気に敵との距離を詰める!

 

「ハッハッハ!!!」

 

「ゲブ!」「ぐは!」「ぎゃあああ!!!」

 

超スピードでヤンキー連中との間合いを詰めたオーガは、まずヤンキー連中のリーダーらしき中央の男に正拳突き!

ついでその左右の男に回し蹴りをお見舞いする!

 

2メートル超えの鍛えられた長い手足が、まるでダンサーのように優美に動く。

超一流のダンサーのように美しい動きは、残酷なまでに強靱な破壊力を持つ。

華麗な手足の動きが、凶悪なハンマーの威力を持って次々とヤンキー達を打ち倒していく。

最初の3人の悲鳴を皮切りに、続々と悲鳴が上がり、やがてすぐに消える。

 

「あ、あっ…ああああ……」

「んーちいと物足りねえなあ。バイト代は牛丼大盛り1杯くらいってとこか」

「バイト時間約一分と考えれば破格の時給だな」

「はっは!そりゃ交通費込みってことにしといてくれよ!」

 

そして一分も経たないうちに、ヤンキー全てが地面に倒れていた。

残ったのは…

 

「あああ…ううう……」

「さて、ららさん。不幸な行き違いが生じてしまい申し訳ありませんでした。ですが申し訳ありません。社内協議の結果、ららさんを苺プロで受け入れることは出来ないとなりましたので、この話はここまでということでどうかお願いします」

 

恐怖に怯える、地下アイドルの少女。

ららさん。

地面にペタンと座り込んでしまった彼女の手に、お詫びとして金一封を握らせる。

まあ、元は俺が彼女を利用したのも悪い。

このくらいはしておかないとな。

 

怯えながらオーガを見て、手の中の金一封を見て、最後に俺を見る彼女。

そして彼女は……

 

「ううううう………」

 

……ブーブーブー!!!

なんだ?

前にもこんな事があった。

俺のスマホをしまっているポケットからではないスマホの振動。

電源を落としているはずの、アイのスマホ。

そこからの振動。

思わず、アイのスマホを取り出す。

 

45510

 

「暗証番号が!勝手に!!」

「?んーどした姫さん」

 

頭上でカラスが鳴いている。

手元には、なぜか急に起動したアイのスマホ。

 

そして目の前には…

 

「憎い……憎い憎い憎い…」

 

胸元から、闇が溢れ始めた少女がいた。

「お!何だ良くわからんが2回戦あり?あり?」

「…落ち着けオーガ…どうみても様子がおかしいだろ」

再度暴力の予兆に身を震わせるオーガをたしなめる。

 

「憎い…憎い憎い…私を雑に扱う運営も、贔屓されてるあの子も…スカウトしたのにほっぽり出すアンタも…せっかくあそこまでしたのに役にたたないコイツラも…みんなみんなみんな憎い憎い憎い……」

 

闇は少女を中心に広がり、やがて少女自身を飲み込む!!

アイのスマホの振動が、さらに激しくなる!!

 

「姫さん!」

「くっ!」

 

さらに広がる闇!闇は少女の体だけでなく、その周囲の世界すらも闇で塗りつぶし始めていた!!

それに、俺は飲み込まれた!

オーガが俺に手を伸ばす!

 

「ちい!!」

 

その手を取る!

「抜け出せねえだと!俺の力でか!」

「オーガ!無理するな!お前まで巻き込まれる!」

「は!どうにもさっきのだけじゃ物足りねえとこだったんだ!どうせなら付き合ってやるぜ姫さんよ!」

 

そうして、闇は俺達も飲み込んだ。

 

最後に、カラスの、鳴き声が聞こえた気がした。

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