推しのペルソナ   作:のりしー

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芸能界編 ペルソナ

「…さん!…姫さん!姫さん!起きろ!」

「………オーガ、か…」

「ああ。よーやく起きたな姫さん」

 

…気がつくと、俺は地面で寝ていた。

寝ていた?何故…?

 

「!オーガ!一体あの後何が!」

「頭も回ってきたみてーで何よりだ。ま、とりあえず自分で周り見て確かめな」

 

そう言われ、身体を起こして周囲を見渡す。

周囲は、河川敷。

俺達が先ほどまでいた河川敷だった…

だが…

 

「ヤンキー達が、いない?」

「おう。俺は姫さんと違って意識そのままだから断言出来る。何か良くわからんが、あの変な暗闇に飲み込まれて、闇が晴れるとこんな感じだ。俺達以外誰もいねー」

「………」

 

とりあえず立ち上がる。

地面に手をつき起き上がるついでに、試しに地面の土を手にとってみる。

地面は、ちゃんと先ほどと同じ土だった。

周囲を観察する。時刻は元々夜だったが…

「明かりが…全くない?」

「おうよ。遠くに見えてた電気の明かりまでもが全く無い。都内では流石にあり得ないわな」

「それで、前より夜が暗く感じるのか?」

「それだけでもない気がするけどな。単純に夜の闇が黒くて濃いって感じがする」

「…………」

 

不思議だ。

不思議な空間だった。

先ほどまでと同じで、どこか先ほどまでと違っている空間。

これじゃまるで…

「まるで、マンガやゲームで良く見る異世界に紛れ込んじまったみてーだなこりゃ」

「確かにな。その前の良くわからん闇の広がりといい、ホントゲームやマンガみたいな不思議な話だ」

 

しかし、そもそもこうして星野アクアという前例がある。

この世界には、元々俺達が知らないだけで様々な不思議があるのかもしれない。

ひょっとして、これはその一つなのだろうか?

そう考えると、俺としてはこの不思議空間も十分受け入れられるのだが…

 

「…ま、考えても何もわからんわな」

オーガがそう言うと。

「とりあえず、あっち言ってみるか?」

そう言って、とある方向を指さす。

河川敷の、更に闇が濃い方向を。

 

「なんか良くわからんが、何かがいる気配がする。気配の動き方的に、多分人間じゃねーけどな」

 

そう言って、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「…それ、オマエが行きたいだけだろバカオーガ」

「がっはっは!わかっちまうか!まあそうなんだが!」

「ヤレヤレ…」

このオーガは、こんな状況でも闘争への予感に身を震わせているらしい。

この先に、何かがいるのだろう。 

このオーガの気配探知にひっかかるような、何かが。

 

「このまま、ここにいるわけにもいかないか…」

「だろ!」

「うるさいバカオーガ…すまないが先導頼む、少し下がって俺は進むから案内頼む!」

「流石姫さん!よっしゃ!行こうか!!」

 

そう言って、実に楽しそうに歩き出すオーガ。

未知への関心というより、この男は常に危険を楽しみ、探し求めているフシがある。

だからこそ、俺の手伝いも引き受けてもらえるのだが…

 

しばらく無言で俺達は進む。

進む程に、闇は深くより濃くなってきている。

そして……

 

「なんだ?妖精?」

「カボチャのおばけか?」

 

そこには、不思議な生き物達がいた。

 

マンガやゲームで見るような存在。

 

羽が生えた妖精。

マントを身につけたカボチャが、空をふよふよ飛んでいるようなおばけ。

 

そんな不思議な生き物が、たくさんいた。

 

「…ん、あれひょっとしてニンゲンじゃない?」

「あ!!ホントだ!ニンゲンよニンゲン!」

「ホントだーニンゲンが心の闇の中にいる不思議不思議!」

 

喋れる、言葉が通じるのか?

「あの、すまないココは一体…」

 

「…!チッ!も少し下がれ姫さん!」

 

妖精とカボチャの悪魔は邪悪な笑顔を浮かべ、

「「「キャハハハ!!遊ぼう!遊ぼうニンゲン!!」」」

「「「私達と」」」

「「「僕たちと」」」

「「「遊んで遊んで遊んで!!!」」」

 

妖精はこちらに向けて

「「「ジオ!!!」」」

そう言うと。妖精の手のひらから稲妻がこちらに襲いかかってきた!!

「シャア!!」

 

オーガが、地面を思い切り蹴り上げて砂と土の盾を即興で作る!

上手い!

しかし!!

「あばばばば!!!」

「オーガ!!」

 

その盾を避けて飛んできた一部の一撃がオーガを襲う!!

雷で肉の焼ける嫌なニオイが辺り漂う!!

 

「「「アギ!!!」」」

今度はカボチャのおばけがこちらに炎の塊を飛ばしてくる!!

 

「ちいい!!!」

炎の塊を、オーガは躱し、躱しきれないものは蹴りで迎撃する!!

空気を恐ろしい勢いで裂く蹴りが、空気ごと炎の塊を蹴り飛ばす!!

理不尽への理不尽な暴力での対応!

オーガの真骨頂とでも言ったところだが…

 

「痛つつ!!は!まさか妖精やおばけと戦って、ソイツらが魔法まで使えるたあな!全く!姫さんに付き合っててよかったぜ!ホント退屈しねえや!!!」

 

傷を負ったオーガが獰猛に笑う。

周囲に漂う肉の焦げた匂いは、そこまで軽症だとは思わせないものだったが、それは更にオーガの戦意を増す役割を果たしているようだった!!

「「「キャハハハ!!スゴイスゴイスゴーイニンゲンスゴーイ!!!」」」

「「「遊んで遊んでもっと、遊ぼ!!」」」

 

「ああ!遊んでやるぜ!今度はこっちの番だ!!」

 

その言葉と共に、オーガが前方に飛び出す!!

驚異的なスピード!!

 

「キャハハハ!…え?」

「え?」

「え?」

「は?」

 

「オラァオラオラオラ!!!!」

 

妖精とおばけすら反応出来ないスピードで飛び出したオーガは、その長い手足を猛然と、しかし美しい軌跡で振り回す!!

 

「ぎゃあああ!!」

「ひえええ!!」

「ぎゃ!」

 

一瞬で妖精とカボチャのおばけを5体ほど地面に打ち合わす!

その5体は光の粒子となって消滅していく!

 

「このー!」

「生意気だぞーニンゲン!」

 

そのオーガに向けて、また雷と火球が襲いかかった!

オーガは、あるものは躱し、またあるものは妖精やカボチャのおばけを盾にするなどし、躱していく。

しかし!

 

「ちい!痛えじゃねえかオイ!!」

「ぎゃあああ!!」

「ぐわは!」

いくつかは

躱しきれない!

オーガは痛みを感じないかのように、それでも攻撃を続け敵を倒していく!

しかし、続ける程に敵は減り、オーガの傷が増えていく。

 

「ハッハッハ!楽しくなってきたじゃねえか!!!」

「ひいいー!!!」

「何なのこのニンゲン!!」

「まるでオニだよう!」

 

化物にも鬼呼ばわりされている。

しかし!

流石に傷が増えすぎている!

 

そんなオーガを、俺はただただ見ているしかなかった…

無力感が自分を苛む!

クソ!俺さえこんな事にアイツを巻き込まなければ!!

 

体の色々な所に出来たばかりの火傷。

それでもオーガは前を向き、戦い続ける。

 

正拳突きは1体の妖精を消滅させ、続く回し蹴りがカボチャ2体を消滅させる!

 

情けない。

情けない情けない情けない!

何が復讐だ。

何がそのためにアイツを利用するだ!

 

これじゃ、アイツにおんぶに抱っこじゃないか!

こんな!こんな!

俺はこんな!無力なままじゃいちゃいけないんだ!!

力が!力が、力が欲しい!

俺にも、アイツを!オーガを助ける力が!!!

目的を果たす為の力が!

力が、欲しい!!!

 

『その願い!その心の叫び!確かに我の元に届いたぞ!!』

「な!誰だ!」

 

『我は汝、汝は我。我は汝の心の海よりいでし者。汝のありたい心の姿!もう1人の自分!!』

 

心の中で、声が響いている!

俺の片手には、心の力が、集まってくる!

不思議な注射器が俺の手の中に出現していた!

 

『さあ!我が名を呼べ!我は誰かを癒したいという、汝の心の化身なり!!』

 

注射器を、自分の首に叩きつける!

注射器の中の心の力が!俺の中に解き放たれる!!

 

「ペルソナ!!!」

 

その叫びと共に、俺の背後から光が溢れた!!!

 

 

「出ろ!!アスクレピオス!!!」

 

 

ギリシア神話の医療の神。

もう1人の俺。

 

豊かな神とヒゲをもつ、知的な神。

 

俺のペルソナが、顕現した。

 

 

 

 

 

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