元の世界に戻った俺達は、とりあえず河川敷を離れた。
「骨折くらいはみんなしてるだろうけどよ、誰も死ぬほどの重傷になるほどいたぶってはねえ。転がしといても問題ない」
「わかった」
オーガの言葉を信じる。
コイツはこういう時、変な嘘はつかない。
もし致命的重傷を相手に与えていたら
「ごめんちょ。やっちった!てへ!」
ってちゃんとオーガする。
未だ地面で気絶するヤンキーと、助けた地下アイドルをその場に残し、河川敷から去る。
「いやー!!!しっかし楽しかったなあおい!!」
「…アレを楽しいと言うのはお前ぐらいだ…」
ボロボロの服を纏い、傷1つない体でオーガがそう言う。
それが、あの世界…不思議な世界での経験が現実だと俺達に教えていた。
ペルソナ
妖精やおばけ。
闇のセイレーンになった地下アイドル。
そして、その心の闇を治した俺。
傷ついたオーガを治した俺。
その全てが夢ではなく、現実だったのだろう。
信じがたい話。
普通の人なら信じない話。
だが、アイの子供として転生をすでに俺はしている。
きっと、こういう事もありうるのだろう。
そして、確信する。
この力と、あの不思議な心の闇の世界。
これは、俺の目的に役立つものだ、と。
芸能界にいるであろう、俺たちの父親。
アイの仇。
ソイツへの復讐…ソイツへ続く道を探すのに、この力は間違いなく役に立つ!
なにせ、今回の事もそうだが芸能界には特に闇が多い。
心の闇を抱える人なんて無数にいるだろう。
その人達を見つけ、心を治す傍ら、その人が心を病んだ原因…知っている情報を手に入れる。
おそらくそれは、普通の手段では簡単に手に入れられない生きた情報となるだろう。
何せ心の闇の中に直接飛び込み、心そのものから情報を聞き出せるのだ!
未成年のアイを妊娠させ、ライブ直前に殺す。
まともな人間のやることではない。
どこか心が壊れた人間なのだろう、俺の父親は。
芸能界の闇の中に、きっと何か情報があるに違いない。
並行して科学的な調査もするが、そちらとはまた違ったアプローチとなるだろう。
俺は芸能界で心を病んだ人の心を治し、復讐への手がかりを探す事を決めた。
「決めたぞオーガ」
「ん?どした姫さん?」
隣を歩く強面の巨漢。
オーガに向けて、宣言する。
「決めたぞ。俺達は心の医者になる」
そう言うと、オーガはニヤリと笑い。
「…なんだかよくわからんが、いいぜ!さっきとおんなじような事をするんだろ!そいつは最高だ!さぞかしいい闘争がそこにはあるに違いねえや!」
そう歯をむき出し獰猛な笑みを浮かべる。
そう、ここから心の医者を始めよう。
「お前は、心の闇を切れオーガ」
「んで、姫さんが心を治すか!」
まさか前世の夢…産婦人科医以外の医者になる夢がこうして叶うとは思わなかったな。
さあ、心のオペを始めよう。
心の病んだ人から、病んだ心を切り取り治す。
そんな心のオペを。
「オーガ、オマエも陽東高校に来い」
「ん?それって姫さんとジャリが行く高校だっけか?」
「まだギリギリ願書は間に合うはずだ」
「…いーけどよ、何でまた?」
「あそこには、陽東高校には芸能科がある。心の闇を抱えた生徒もいるだろうよ」
「…なるほどね。まあ、特に高校にはこだわり無かったから構わねえけど…あ、でも面接とかどーしよ?なんて言うかね?」
「そんなの、自由な校風に憧れて、とか言っておけばいいさ」
「…ふーん、ま、いーけどな」
これでオーガは別に頭が悪いわけでもない。
普通に勉強すれば普通に受かるだろう。
妹が心配で付き添うだけのつもりだった高校生活。
これで、少しは面白くなってきたな。