強烈なパンチをもらい吹き飛ばした怪人はやがてゆっくりと立ち上がった。
しかし透明になろうとはしない、衝撃で装置がイカれたのかなろうとはしなかった。
透明でなければ料理方法はいくらでもある。カイザーレオはこの機を逃すまいとまた勢いに乗りしかけた。逃げる怪人を追いかける、追いかけて────
ステージ外。
なんと死神クンはこだわっていたカイザーとの戦いの舞台、死のステージから易々と降りたのだ。
「おい待ちやがれえええ!!! コイツ逃げや──アァ!!?」
「フフフフフフ!! フハハハハハ!!」
そして怪人は狂気の行動に出る。どこからか取り出した真っ黒なレイピアで動かずにいた観客を串刺しにし始めたのだ。
待てと言われても止まらない次々と突き刺し、針にささった魂を抜き取り狩っていく。
黒セーラーがまだ避難させそびれていた置物の魂を狩り駆ける。
魂を抜き取られた人間の肉体は異様な色に褪せていく。
そして怪人の狙いは、もっと価値ある魂を。眠る王様のもとへとその黒刃で客席をかきわけ突っ込んできた。
黒セーラーは突如向かってきた凶刃に対して王子練馬玲央の盾になるように傘を開き構えた。
傘にぐさりと穴があき、傘の中に収容していた観客が2、3飛び出してしまうも、これ以上そのレイピアの刃を進ませない。
が、しかし──開いた傘盾を飛び越えて怪人は無防備な彼女の背方へと、傘に突き刺さっていたレイピアを不思議にも取り寄せ、向け直す。
「舞台はこっちだ、戻りやがれ怪人野郎!!!」
追いついたカイザーが黒セーラーと玲央にそのレイピアの刃が届くよりも速く、黒い怪人をステージ方へと殴り飛ばした。
「テメェ……!! なにしてやがる…!!」
「これは失礼。あなたの価値を少々見誤ってしまいついつい魂の調達を。ですが、お待たせしましたフフフフフ」
そう言うと、噴きあがるように膨らんだ怪人の纏うその紫のオーラ。それは尋常ではなく、異様。
「カイザー気を付けて、あつめた魂でオーラを供給している、お菓子のときといっしょ」
「チッ、また怪人の土壇場ってやつかよ(お菓子のとき……あの馬鹿げた応援と同じってことか)」
舞台はふたたび、舞台上。
構える黒いレイピアの切っ先はカイザーが指差すのを真似たのか。怪人の向ける切っ先が今度はカイザーを鋭く襲った。
しかしカイザーはその身に突き向かう針のひとつひとつを見極めて、全て避けた。
「土壇場のこけおどしはそうそう当たらねぇぜネタバレの透明人間!!」
「フフフ土壇場などではなく──」
「──!?」
「こちらの方がミエないかと、フフフ、フハハハハ!!!」
黒い針の剣筋にはよく目を凝らしていた。しかし途中から剣筋を見失ったカイザーレオはその身を2、3黒レイピアに貫かれてしまった。
さらに休まず死神クンのレイピアは襲い掛かる。
また針の雨のように突き刺すラッシュにさらされたカイザーレオは何とかその針をタイミングよく絡め取る。ディスクセットした薔薇の鞭を両手で引っ張りもち鎖鎌の鎖のように扱い、その身を貫こうとした刃を硬く巻き取る。
しかし、黒い刃は急に紫の炎を纏い──絡まっていた薔薇の蔓を焦がし燃やした。
慌てて避けようとするもまたその身を刻まれてしまう。火花散る白い装甲に傷跡が増えていく。
読めない太刀筋、見えない太刀筋、読めても止まらないそのレイピアがカイザーレオを痛めつける。刃を一瞬透明にするだけでその剣を見切るのは困難と化し、刃に集めたオーラを纏わせるだけでその怪人のパワーは跳ね上がる。
そしてまた斬られ続けた白獣はやがて膝をつく……それはまた見たような光景。
正真正銘の舞台は整う、怪人ののたまう死の舞台が。
「魂を高め愛、あなたカイザーの価値はワタシの課した幾度の死の試練を乗り越えてまさに今をもって最高に──ようこそ死の舞台へそしてサヨウナラァァ!!!」
助走をつけて一直線に駆けた死神。
トドメを刺さんと切先を向け、死の舞台を一歩一歩靴音鳴らす。
手負いの白獣に死の足音が一歩一歩──走る存在が白獣の見据える視界に失せた。
「以上ォ!! 死神クンたるゆえ──」
「──そう来ると思ったぜ、透明チキン野郎。芽吹け【ライブラリー】!!!」
「ナッ、ナゼ咲き!??」
死神が透明になる、確実な死をお届けするために。そんな悪事を見越していたのか、カイザーレオは花を咲かせる。
カイザーレオはまた怪人に透明になられては困ると実は最後までそのパンジーの花を咲かせずに、拳で埋め込んだ技の種を発揮させずに残しておいていたのだ。
ソレが今遅れて花開き、死神がとった透明化は仇となる。
その身にカラフルな花飾りなどをしていては、その存在を透明人間と言うことはできない。
気配に振り向いたカイザーは、走ってきた方向とは逆側の背方から襲いきた細い細い死の刃を……その左手に握りしめる。
「はッ、ハナレなっっ!?? ハ、ハナセええええ!!!」
「そうかよ、あらよっ!!!」
必死に引き抜こうにもピタリとも黒いレイピアの刃は動かない。
その白手を刃に伝わす紫の炎で焦がそうとも、離れない。
腹にセットしたディスクは緑光を放ちながら、カイザーのパワーをぐんぐんと上げてゆく──そして下からアッパー気味に鋭く放った右の拳が黒いレイピアをついにへし折った。
「アッ、アリエナイぃぃいこんなっこんなカイザーのチカラはッッ!?? コンナ魂がぁああ!!!!」
「Are you ……ready──!!!!」
砕いた刃がひらひらと舞い落ちる。
宙をただようその黒の針ごと、カイザーレオは拳にノセて放った。
翠に灯るその眼、オーラ唸る白獣に睨まれた怪人には──
「【カイザーファング…】────お前をぶち抜いたこの技がカイザーたる所以だ」
カイザーたる…カイザーレオたる所以の大技【カイザーファング】は炸裂し。覚醒した白獣のその牙の餌食になった死神クンはやがて爆発するエメラルドの閃光に呑まれた。
最後の最後の土壇場に冷えゆく死の色を塗り替え彩られたのはカイザーの色、鮮烈なエメラルドにフラッシュするカイザーの舞台。
カイザーレオと死神クンとの長きにわたる闘いの決着は派手に眩く、ロックホール増川をその熱い光で満たした。