死の黒針は白獣の拳とともに死神のカラダへと突き刺さり、その魂を取り立てる。
カイザーレオが叩き込んだイチゲキにより、魂の性質はまた朽ちずにいた元の肉体へと引き寄せられ、褪せていた色が元通りになっていく。
「【グラビティコート】……汚れてもミエナイ透明人間の正体は重力がミソか」
死神の魂を封印したディスクを指に挟み、やっと怪人を倒したという実感を改めて得る。
いぜん勝利を祝福する青い流星のように魂が人間たちへと降り注いでいく。
そして中には戻らず──カイザーの目の前に一列に浮かぶ奇妙な魂もあった。
「ナンダ? お前らも…いっちまうのか……。────ハッ」
火玉のような魂がみせた拳を向ける幻影たちに、覚醒をといた半田夢露は怪人を屠ったその拳でこたえた。
見知らぬ幻影たちは天へと召されていくように、やがて消えゆく。
荒れ果てたステージにただひとり残された緑髪は、いつかのように消えゆくまで天を見上げていた。
すると突然、見上げていた天が黒に覆われた。
正面を向くと黒セーラーの彼女が番傘をさして突っ立っている。
「カイザーレオ、つよい怪人を討つつよいカイザー」
「それ……褒められたって認識でいいか」
「ん」
「ってそうだ……! 観客たちはどうなった…んだ? ……」
「カイザーが死神の怪人からみんなの魂を取り戻した、ん──【
彼女が番傘を揺らすと、降ってくるのは雨ではなく、摩訶不思議にも異空間に避難させていた人が──どさりどさりと降ってくる。
「ハァ…とんだ相合傘だな……なんだそりゃ────ってア?…レ…ぇ………」
もはや苦笑いとんで笑うしかないそんな光景に。
わらってしまっていた夢露は突然カラダが重く、瞼がおもく────────
やわらかな感覚に抱かれながら、おだやかな夢を見る。
しかし、そんな良い夢の中でも誰かがじぶんを呼んでいる。それは助けをもとめているのか、その呼び声に夢露は目を覚ました。
目を覚ますと────黒猫と目が合う。
しかしそれはぼやけた眼をこすり、よくよく凝視すると黒猫ではなく黒髪黒目の……黒セーラー。
つい最近色違いの状況があった気がする、今回はあまり愛想のないクールな黒で統一されたひざ枕に……緑髪の家主はあくびをイチドし──また目を閉じていった。
『カイザー、話がある』
閉じたその目は開かない。
『半田ロメ、話がある』
「どっちも俺じゃあねぇな」
それでも彼は目を開けない。用意されていた枕を遠慮なく使い、憩う。
『
「てめぇわざとか!」
「ん──ロメが、ニックネーム?」
「ちげぇ!」
思わず飛び起きた半田夢露は、すっとぼけ首を傾げる黒セーラーの顔を見てツッコんだ。
一言で彼女の誤認識の訂正をし、眠気が失せた夢露はちいさな冷蔵庫から水のボトルを取り出し一気にその冷たさを飲み干した。
「どこにいくの」
「どこでもいいだろ。────ラーメン屋」
冷蔵庫には何もない。家にはまだ消費しきれずにいた大量の駄菓子しかない。
そうと分かれば玄関に空腹のからだを導き、靴を雑に踏み履いていく。
「何してる、おごってやるからとっとと準備しろ。──3分以内な(しまっちまう)」
時刻午後8時47分
ドアにもたれ振り返る緑髪に、正座していた黒セーラーは立ち上がる。
激闘明けのカイザーはひどく空腹だ。
立ち止まっている時間は3分ともない。美味しい方のラーメン屋が閉まる前に、2人は外の世界へと繰り出した。