キヴォトスの時計塔   作:Laplaaaaaaaaaaaace

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こんにちは、私です。

何とか書けました。


見たまえ!指名手配犯だ!

 シャーレの仕事を始めて手伝った日から数週間、シャーレ所属の生徒として何件か仕事を手伝ったりして、時間が過ぎていった。その間に、私用であるシャーレの制服などの調達も含め、諸々の用意が進んでいった。

 そしてとある雨の降る夜。シャーレの仕事帰りに、傘を差しながら帰路に着いているところ、ふと少し前に思い出したことが、脳裏を過った。

 

 『そういえば、アツコが連れ去られたのも、雨が降る夜だったっけ』

 

 あの日がきっと、エデン条約編第4章のスタート地点だったんだ。傘の下から、どんより曇り、闇に染まった空を見上げて、ふぅ……と一息つく。

 私の記憶が正しければ、この後先生はトリニティへ出張へ行くはずだ。シスターフッド、救護騎士団、そして人の欠けたティーパーティーの話し合いに立ち会うため。そこで幽閉されているミカに会い……。その後は、確か……セイアがゲマトリアを覗くはずだ。

 

 この通りに事が運べば、時は近い。私は私で、先生とは別で動かなければならない。私もベアトリーチェと同じくして、居場所こそあれど、真に存在していい者ではない。だから、彼女達の物語に出てきてはいけないんだ。

 結局、時計塔も残っているまま。何故残っているのか、理由を知る者は居ないし、私にも分からない。

 

 なぜ、あの時計塔は今も残っているんだろう。あの中に秘匿されていた私が外に出たのだから、消えても良いはずだ。なのに、正面の鉄扉を固く閉ざして、未だ来るものを拒み続けている。

 

「分からないことだらけ……か」

 

 ぽつり、つぶやきを零しながら帰路へ。生憎、この雨はしばらく止んでくれそうにない。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 さあて、狩人諸君。おはよう。朝だ。目覚めの時だよ。

 少し前に予想した通り、先生はトリニティへ出張に出かけた。この間に舞い込んでくるシャーレの業務は一旦お休み。ということは、私の仕事も当分の間無し、ということになる。

 それはそれでこう……、退屈というもので。暇すぎる。仕事は無いし、呼び出しも無い。家に一日中いるというのも、却って面倒だ。

 そういえば……イチカから、銃のメンテナンスはこまめにやっておいた方が良いってメッセージを貰ったんだった。銃のメンテナンスかあ……そういえばこっちに来てから一度もやってなかった。

 というか……エヴェリンのメンテナンスってどうやるんだろう。分解したら二度と戻せない覚悟だけは決まってる。

 フリントロック式……、フリントロック式なのかなあ。だとしても分解の仕方とか分からないし、ブルアカの世界でフリントロック式の銃使ってる人いたっけ?アキラの銃ってそうだったっけ……。でも七囚人の人と関わり持つと危ないって言うし……。

 

 こうなれば、然るべき場所に、メンテナンスを依頼するしかない!……フリントロック式の短銃って幾らくらいでメンテナンスしてくれるんだろう。相場が分からないから、分からないなら調べよう。さーてと……。

 えーっと……なんだろう。骨董品?ってレベルで値段が高い。イチカと一緒に買いに行った服とか目じゃないくらい。まあ、この世界でこんな銃使ってる生徒なんて誰も居ないし……仕方がないとはいえ、高すぎる。これじゃあお金が足りない。

 

 お金が無いのも当然、こっちで暮らすのに必要な日用品とか食材とか、その他もろもろを買っていると、金欠気味になるのだ。完全に金欠という訳ではないけど、メンテナンス分の料金が、細かく言えば足りない。

 

 うん。イチカにメッセージでも送って聞いてみよっと。

 

 

 

 『イチカ様、イチカ様』

 

 『はいっす!何か問題でもあったっすか?』

 

 『お金を稼ぐには、どうすれば良いのでしょうか?』

 

 『……?』

 

 

 

 その数時間後には、何故かヴァルキューレの門前に私は立っていた。何故???

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 ヴァルキューレの門前で一人、狩装束を着たまま「ふむ……」と唸る。それもそのはず。

 あの後イチカとメッセージのやり取りをしたところ、『指名手配犯をとっ捕まえる』のが一番効率が良いと教えてくれた。なんと、というかこのキヴォトスには例のごとく犯罪者がおり、ヴァルキューレ警察学校が指名手配を出しているのだ。中には懸賞金が掛けられている者もいる。

 

 そんな非道な奴らを捕縛して、ヴァルキューレに突き出せば、懸賞金も貰えて治安も良くなって一石二鳥っす!というのはイチカの話。正義実現委員会として、確かに理に適ってはいるけれど……。こうして稼ぐお金はどうなんだろう。

 世の為人の為とは言うけれど……。まあ、汚いお金ではないし、良い……のかな。うおお、揺らぐなあ、心が。

 

 今現在張り出されている指名手配書は3枚。この身体には、これら全員を相手取るポテンシャルくらいは秘めている筈だ。正直なところ、誰から探しても良いんだけど……。

 これじゃ、やってることは狩人って言うより傭兵だね。仕事の時間だ、マリア。取り敢えず燃え残った全てに火を点けておかないといけない気がする。

 

それはさておき、懸賞金の金額だけど、多分一番多い人が一番厄介ってことだよね、この通りに行くと。ともなれば、一番少ない人から階段を登るように片付けていくのが定石なんだろうけど、別に三人全員捕まえる必要はない。

 あくまで銃のメンテナンス費用が手に入れば良いのだ。フリントロック式の短銃、そのメンテナンス費用だけ。ただ、狩人の使用する道具という事で、多少複雑な作りになっていることと、カインハーストの意匠が邪魔をすることが問題だ。

 普通のフリントロック式短銃なら、木製パーツと金属パーツで簡単に分けてメンテナンスが可能だけれど、エヴェリンはまたソレとは違う性質を持つ。使用する弾丸も水銀弾という特殊な弾丸だからこそ、内部構造は複雑。そもそも、この世界で水銀弾を使う人間なんていない。キヴォトス人に水銀弾を撃ったところで、ただバカ痛いで済むだけなので、そこは救いだ。

 それに、この銃。マリア向けに多少カスタマイズされている。そこが本当に厄介。

 

 見た目こそエヴェリンに変わりないが、血質補正が通常より高めに付与されており、実質マリア専用エヴェリンと言っても過言ではない性質なのだ。

 実際に分解して貰わないと、中身がどうなっているのか分からないから、お店に預けてからが問題なんだけど……。それよりもお金だ。

 

 ここでうだうだしていても時間の無駄だ。一番懸賞金の高い人の手配書をパシャリ。スマホで写真を撮ってからイチカに送信する。ある程度向こうでも動いてくれているらしく、指名手配犯探しに協力してくれるとのこと。

 なんといい友達を持ったことか……。と、送信してすぐにイチカから返信が来た。

 

 

 『おっけーっす!だいたいの位置は後輩ちゃんが目星をつけてるんで』

 『何か所か候補地を送るっす!その位置を探してくれれば、きっと見つかる筈っすよ!』

 

 『ありがとうございます、イチカ様。私の我儘に付き合っていただいて……』

 

 『良いってことっす!友達が困ってたら、助けるのが普通っすよ!』

 

 『感謝してもしきれません……。では、行って参ります』

 

 『ファイトっすよ、マリア!』

 

 

 続いてスマホに送られてくる詳細地図を確認しながら、正義実現委員会の子がつけてくれたという目星のある場所に向かうことにする。合計で……三か所。決して多くない数だ。

 もしかしたら、一発目で当たりを引く可能性もある。この指名手配犯捕縛が早く終わることを祈りながら、私は一ヵ所目の候補地に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 さて、到着した一ヵ所目。見た目は異様な雰囲気が漂う廃ビル。何年も前にテナントが全部退去し、空き物件になっているのだろう。犯罪の温床と考えれば、そうなり得る可能性を大いに秘めている。

 狩帽子を深く被り直しながら、廃ビルへと足を進める。階数は四階、探索に時間を割いている場合ではないかもしれない。もしこの廃ビルに潜んでいて、下手を踏めば逃げる時間を与えてしまうだろうから、索敵は迅速かつ確実に。

 

 

 ……なんてカッコいいことを言っていたのも懐かしい。両手に携えた武器は今や背中に担がれ、手の中には子猫が1匹収まっている。なんと可愛らしい。

 マリア様が子猫を抱いている!おぉ……!!素晴らしい……!マリア様、マリア様……!*1

 

 索敵をした結果、一ヵ所目は不発。何故か最上階に子猫が一匹だけ迷い込んでいたので、それを助けて廃ビルを後にしたところだ。人差し指で顎の下をすりすり、と撫でてやると、ゴロゴロと喉を鳴らす。

 ……持って帰って良いかな、この子。可愛すぎる。白い毛並みでまるで私の髪のようで、親近感が湧いてしまう。持ち帰って飼いたいけど……きっとこの子には親がいる。廃ビルの外で、猫を地面に降ろしてやり、片手の手袋を外す。

 

「……ばいばい」

 

 手袋を外した手で、ぱたぱたとお別れの挨拶をすると、子猫はゆっくりと此方に近寄ってきて、手をぺろり、と舐めてくれた。

 ああああああああ!!!!!!可愛いなあ!!!!!!!!!飼いたい!!!!!!!!!!……ぐっと我慢。我慢……はぁ、はぁ。

 

 拳を握ると子猫は、にゃあと一鳴きしてとことこと、私の前から去って行ってしまう。あぁ……、我が天使……。導きの子猫よ……。

 すっと角を曲がって、見えなくなったところで、悔しそうに膝に手を打ち付ける。でも、仕方ないのだ。あの子は野良。外に返してやるべきだったのだ。

 

 

 

 とても悔しい気持ちと寂しい気持ちを引きずりながら、手袋を付け直し、候補地である二ヵ所目へと向かう。今度こそ、当たりますように。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 やってまいりました、二ヵ所目でございます。

 どうやらここは、廃工場のご様子。落葉を振り回すには持って来いの場所だけど……、果たして中には何がいるのやら。

 

 話し声や物音は一切聞こえてこないけど……、廃工場自体の鍵は開いているみたいだ。ちょっとお邪魔しちゃおう。

 おぉ~……。意外と中は物々しい雰囲気で、これぞ犯罪者の巣窟!って感じがする。でも、誰も居ない。痕跡とかは……

 

 おや?なんかみ~つけた。これは……椅子?こんな廃工場に?何個かあるみたいだけど……、何に使ってたんだろう。使用用途は不明だけど、何らかの痕跡を発見!

 ここに目星付けていいかもしれないね。偶然かと思ったけど、外にタイヤ痕も見つけてある。この椅子の数に、外のタイヤ痕。うん……多分ここで確定かな。

 

 今は……陽も高いし、動くにはまずい時間帯なんだろう。夜になるまで待つとしようかな。丁度ここに椅子もあるし、幸い今の私は狩装束だ。

 アレが出来るじゃないか!!!!!!何時ぶりかなぁ、あれやるの。できるかな……?

 

 

 まあ、来るかは分からないけど、陽が落ちるまで待ってみよう。もしかしたら、暗くなったら活動を開始するタイプの犯罪者かもしれない。……大体犯罪者の人たちってそっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、あれから相当時間が経ちましたとさ。途中、スマホを使ってイチカにメッセージを送ったり、先生に近況を聞いたりしてたけど、その間も誰かが来ることは無かった。

 工場の中に入ってくる陽の光も殆ど無くなって、廃工場全体が闇に包まれた辺りで、ふと 遠くから車の音が聞こえてくる。1台分の音しか聞こえないけど、どんな車かも想像がつかない。ワゴンタイプだったらそこそこの人数がいることを仮定して戦わないといけない。とりあえず、準備くらいはしておこうかな。

 

 椅子に腰かけて、スマホをしまって……。得物は背中の方に隠しておこう。それじゃ、足を組んで寝たふりだ!ついでに、胸元のブローチにも触れておく。これで私のヘイローは不可視となった。

 一般の人はおろか、生徒、先生からも認識されない。これを使うことによって、気絶を偽造したり、狸寝入りすることが出来る!!なんと便利な機能なんでしょう。

 

 一人で喜んでいるところで、廃工場の扉がギギ……と小さな音を立てて開かれる。完全に目を伏せてしまっているから、人数までは把握できないけれど、足音から考えて複数人。どうやら、大型の車でここまで来たようだ。

 なぜここに来たのか、理由は分からないが、ここが犯罪者たちの根城と見ていいだろう。

 

「おい!今日の稼ぎはどんなもんだ?」

 

「あ~……、あんまり美味しいとは言えないな、こりゃ」

 

「まぁ、でも稼げたもんは稼げたんだろ?」

「ならとっととここに隠して、ズラかるとしようぜ」

 

「ここが見つかるのも時間の問題ですぜ。はやいとこ、次の隠れ家を……って、うん?」

 

「なんだよ、どうした?」

 

「いや……あそこの椅子。誰か座ってないですか?」

 

「椅子ぅ?」

 

 強盗団のリーダーらしきロボットが此方に視線を向ける。椅子に座っていたのは、一人の少女だ。

 俯いて、足を組みながら眠っている。いや、気絶しているのか?ヘイローは確認できないし、少女は微動だにしない。

 

「なんだ、この女。どっから入ってきやがった?」

「というか……良さそうな服着てんじゃねぇか。こいつを売りゃ、相当な高値が付くだろうぜ」

 

 ずかずかとリーダー格のロボットが近寄ってくる。そう、そのままこっちに来ればいい。そうすれば、したいことが出来る。

 

「寝てるところワリィが、服は頂いていくぜ……へへ……」

 

 

 

 ゆっくりと、ロボットが手を伸ばしてくる。身体に触れる直前で、目を見開き男の腕を視界に入れた。

 

 

 

 

 

ガッ!!

 

 

 

 

「んな!?」

 

「……死体漁りとは、感心しないな?」

 

 

 

 うおおおおおお!!!!!!!初めてキヴォトスで先生に会った時もこれやったけど、今やっても普通に燃えるな、コレ!!!

 ロボットの手を掴んだまま、ゆっくりと立ち上がる。ゲームとは違う動きだが、多少許容範囲内だろう。

 

「呆れ果てる。貴公らの、その醜悪さには」

「目が眩んだのだろう?目先の"秘密"というものに」

 

「な、なんだよ!それが何か悪いことか!?寝てたお前が悪いんだろ!」

 

「眠っている?フフッ、冗談は言わない方が良い」

「私は初めから、()()()()()()()()()()

 

 ぽんと、胸元のブローチに軽く手を添える。瞬間、頭上に現れるヘイロー。ロボットたちは、驚きを隠せないらしい。

 

「なあに、驚く事じゃない。君達の世界では、コレが普通なのだろう?」

 

 ぎりぎり……握っているロボットの手に力を籠める。みしみしと嫌な音を立てながら、ロボットの手が潰されそうになっていく。

 

「う……っ、ぐぅ……!」

 

 どうやらしっかりと痛覚はあるようで、痛みに顔を歪めている。その顔を見れば満足そうに手を離し、ロボットと数歩距離を取る。

 

「これは私的な依頼……というより、貴公らへのお願いでね」

 

 

 

 落葉を片手に、ロボットたちの前に立つ。狩装束のマントがばさぁっと靡き、青白い瞳が、ロボットたちを射止める。

 

 

 

「ここで、少し眠っていてもらいたい……」

「憐れな機械に、巡り、そして終わりの見えぬ悪夢を」

 

 

 

「しかし……果たして機械人形は、夢を見るのだろうか?」

 

 

 

 ふわり、どこかから花の香りが漂ってきた。香しい、花の香だ。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「なんだコイツ!速すぎ――っ」

 

 

 

 

 

 

「小さいうえに速いなんて、当たる訳がっ――!!」

 

 

 

 

 

 

 

「う、うるせぇ!とにかく撃ちまくれぇ!」

 

 もう二人、意識を落とした。後数人の意識を奪う事なんて、造作もない事だ。相も変わらず銃を撃ち続け、私を狙い続けてはいるが、加速を用いて姿が掻き消える私を捉えることなど、到底不可能だ。

 

 精々、見えぬ存在を目で追って、健気に戦い続けると良い。君達に勝利など、訪れやしないのだから。

 

 

 

「そんなもので、この私を倒そうと?」

 

「なっ!?俺の後ろ――がっ」

 

 

 三人目。

 

 

 

「くっそぉ……!なんで当たらないんだ!!」

 

 

「貴公は、素早い獲物を標的に捉える術を、知っているだろうか」

 

「何を……!」

 

 

 

「常に移動先を見ておくのさ。貴公に、ソレが可能であれば……ね」

 

 トッ、と柄頭でロボットの頭部を突き、意識を奪う。これで、四人目。最早相手に攻撃の意志はない様だが、来てしまったものは仕方がない。

 此処に居るロボット、全ての意識を刈り取るまで、私の攻撃は終わらない。

 

 

「あぁ……、良い夜だ。月は優しくこの場を照らしてくれている」

「絶好じゃあないか。狩りの夜にしては……」

 

 ふわっと、ロボットたちの間を吹き抜けていく風。しかしてその正体は風などではなく、マリア本人。

 加速を使いながら急接近し、彼らの意識を瞬く間の内に奪ったのだ。その瞬間は、肉眼などで視認できる速度ではなく、機械を使って漸くといった所だろう。

 

「な、何なんだ……、オマエ……!」

 

「なに、ただの生徒さ」

「御し得ぬ秘密を、隠し持ってはいるがね」

 

 

 

 リーダー格のロボットとの会話を終えると、ゆっくりと、彼に近づく。

 嗅覚などない筈の機械人形。その彼の思考回路内に割り込んでくるナニカ。匂いという概念だ。この場に存在しない花の香りが、ロボットの頭の中を支配した。

 

 

 

「ゆっくり眠ると良い。次に起きるときは、しっかりと周りを見ておくことだ」

「貴公、立場を分かっているのなら、次に目覚める場所くらい想定は出来ているだろう?」

 

 

 

「ひ……っ、来るな!来るなぁ!!」

 

 

 

「……あなたの目覚めが、有意なものでありますように。おやすみなさい、名も知らぬあなた」

「恐怖の中で、巡る悪夢に打ちひしがれると良い」

 

 

 

 優しくロボットの顔に触れると、ショートしたかのように顔の表示が消え、その場に力なく倒れ伏す。

 これが人間相手なら、しっかりと眠っている確認をとれるのだが、ロボットとなると呼吸を必要としない。そうなれば、ここに転がる彼らはまるで死体だ。

 

 人知れずヘイローが変容し、瞳の形から時計盤の形へと変わっていく。それと同時に、意識が引き上げられるような感覚に襲われる。まるで、目覚めの様な―――。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 廃工場での戦闘はどうやら上手くいったようで、犯罪者集団は皆地面に倒れ伏している。……生きてるよね?

 取り敢えず全員一ヵ所に纏めて、その辺に落ちているロープでぐるぐる巻きに。ちょっとやそっとじゃ切れないと思うけど。まぁ、念のためきつく縛っておいた。

 

 あとはイチカに連絡をして……、捕まえたよ。っと。これでヴァルキューレに通報して……多分事情聴取とかされるんだろうなぁ……。めんどくさいけど、こうしてしまった責任は取らないといけない。

 責任を取るのが私なのかって、不思議なところもあるけど、皆ビクともしないし。それに前と同じ、戦闘中の記憶が曖昧で、全てを上手く思い出せない。

 事情聴取される時は何個か捏造して話さないと。私が矯正局送りになりかねない。檻の中はごめんだ。もうどこかに閉じ込められるのも嫌だよ~。

 

 

「……もしもし、ヴァルキューレの方、でしょうか」

「指名手配犯と思われる一党を捕縛したのですが、どうすれば……」

 

 うはぁ~……こっわいなぁ。警察に電話する時って謎に緊張するんだよね。別に悪いことをしている訳じゃないんだけど、何故か緊張する。

 何だろう、遺伝子に刻まれた恐怖みたいなのがあるのかな……。いいや、今はそんなことを考えている場合じゃない。一応この廃工場の場所も伝えてあるし、あとはヴァルキューレの面々が来るのを待つだけ。

 あっ、武器仕舞わないと。落葉、裸で持ち歩くのそろそろ危ないよねぇ。多分この一件でヴァルキューレには落葉を見られてしまうだろうし。何か入れ物が必要かも。

 

 そもそも刃物を丸出しで歩くとか、正気の沙汰じゃない。良く今まで何も言われなかったなぁと感心する。銃は良くて刃物はダメ。うーん、良く分からないぞ、この世界の秩序というか法律というか。

 まぁ、どこかの学校には全裸で校内を練り歩く人もいるし、案外緩いのかもしれない、この世界は。あの子はやりたくてやっているというより、色々考えた結果なんだろうけれど。

 

 『一人でやっちゃったんすか、マリア!?』

 

 『はい。そこまで過剰な戦力ではありませんでした。私一人でも十分な程で……』

 

 『まったく無茶なことするっすねぇ……。まるでツルギ先輩みたいじゃないっすか』

 

 失礼な。人を戦略兵器呼ばわりしないでいただきたい。そこまで馬鹿げた治癒力を持っている訳でもないし、攻撃力も別に高い訳じゃない。

 

 『いつか、ツルギ様と言う方と、手合わせをしてみたいものです』

 

 『……怪我するっすよ?』

 

 その可能性はゼロじゃない。絶対怪我する。先生に心配されて、最終的に戦う事を禁止されかねない。そこまでじゃないかな……?まぁでも、怪我は必至だ。

 もし戦う時が来たら、準備は万全にしておかなければいけない。そもそもこの世界、ヤーナムの輸血液が無いから即時回復なんて無理な話。でもこの肉体、カインハーストの系譜だから、輸血液じゃないのかな。

 

 おや、余計なことばかり考えてたらヴァルキューレの面々が到着したらしい。事情聴取されるならカンナにしてほしいなぁ。最推しはホシノとミカだけど、カンナも好きです。

 さてと……、この一党を引き渡しに行こう。今後の展望はこの後の私に期待だ。できるなら穏便に済んでいてくれるとありがたい。

 

 

 それじゃ、行ってきます。

*1
啓蒙+2




お疲れ様です、私です。

先日は皆々様からの応援の言葉を頂き、感謝に感謝を重ねて、感謝を送っておりました。
完全に回復しない病気だからこそ、なんとか体調の維持に努めてまいります。

これからも拙作をよろしくお願いします!



ここで一つ、ちょっとしたネタを。

似非マリア様が戦う時に漂ってくる花の香り、実はあれとんでもないものなんです。
あの香りを嗅いだ後に、似非マリア様に倒されると、二日ほど昏睡します。その間、倒された者の意識は狩人の悪夢を彷徨います。そう、あの狩人の悪夢です。
目が覚めても、三日三晩悪夢に魘されることになります。怖いですね。
もう、ローレンスは狩れそうにない。後進の狩人諸君、カンストローレンスには気を付けるんだよ。
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