もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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5月28日 文体を大幅に変更しました。


運命が、変わる
序章 『守る』ではなく『支える』


「私、ルーデウスの子猫が欲しいにゃん。」

 

小さなテントに二人。

凄くて大好きなルーデウス。

彼は、私に興奮してくれた。

 

「エリスっ…」

 

彼と繋がっていたい。

その思いが溢れて止まらなくなって、私は必死に絡ませた。

 

「ルーデウスっ…んっ…」

 

世界で一番幸せで悲しい恋人繋ぎ。

ルーデウスの手。すごい、すごいルーデウスの手。

でも、そんなルーデウスの手は私の手より、一回りも二回りも……小さかったんだ。

 

─────────────────────────

 

幸せな匂いがする。

船酔いした時と同じ匂い。

ルーデウスの匂い。

 

目を覚ますと、目の前にルーデウスがいた。

二人で体温を分け合うように抱き合っている形。

ルーデウスが私のお腹に腕を回して、スヤスヤと眠っている。

 

「そういえば、ルーデウスより早く起きたことなかったわね。」

 

厳密には私のほうが早く起きたこともあるんだろうけど、なぜかこの日は、そう思った。

 

「へへへ、えりすぅ…ダメですよぉ…」

 

私は、そーっとベッドから抜け出す。

そして……

 

「手紙ぐらい、書かなきゃよね」

 

呟きと同時、私はペンを握る。

呼吸を整えて、覚悟を決める。

痕跡を残さないようにする。

賢い彼にバレないようにする。

それだけを心を決めて、短く、簡潔に。

 

(守れるように強くなるって書いたら、行き先が剣の聖地ってバレちゃうかもしれない…)

 

手紙を書くのは、少しだけ楽しかった。

ルーデウスに教わった読み書き。

彼の一部が私に注がれてる気がしたから。

 

『今の私とルーデウスでは釣り合いが取れません。旅に出ます』

 

(よし、これで良いわ)

 

手紙を書き終え、剣を引き抜く。

私は未練を断つように、自らの髪をばっさりと切った。

 

地面に赤い髪を置き、手紙を確認する。

そして、振り返って…

最後に、ルーデウスに、眠っているはずの彼に別れの言葉を……

 

「エリス?」

 

彼の小さな上裸が、見事に起き上がっていた。

私は衝撃のあまり、言葉が出せなかった。

 

─────────────────────────

 

幸せなはずなのに、嫌な予感がした。

夢ではツンデレなエリスが俺に抱き付き、愛を囁いてくれる。

あぁ、幸せだ。今日から俺はリア充だ。

目を覚ますまでは、そんな呑気なことを考えていた。

 

「エリス?」

 

「……」

 

昨日は凄く気持ちよかった。

決してやましい気持ちで共に冒険して守ってきたわけじゃない。

でも、あれが恋なんだろうな。

強張る彼女も、震える彼女も、ぐったり疲れて息が切れた彼女も…

昨日のエリスのすべてが、俺の興奮材料だった。

 

可愛いエリス。

そんな彼女が、昨夜こんな言葉を残してくれたんだ。

 

「ルーデウス、私の家族になりなさい。」

 

強引で遠回しなプロポーズ。

彼女らしい。俺はそんなエリスが大好きだ。

 

大好きなエリス、世界で一番幸せな俺。

そう、そのはず。そのはずなのに。俺は彼女を目の前にして、悪寒が止まらなくなる。

 

「え、エリス?服なんて着ちゃって…もう少し僕と寝ていても良いんですよ?」

 

まるで、すぐにでも出かけられるような格好。

いや、戦うことが可能な格好。

 

「少し、外を歩いてくるわ。」

 

「あ、そういうことだったんですね! でしたら僕も行きます! 今日から僕はエリスの旦那さんですから!」

 

本当は朝からもう一発やりたかったけど、下心丸出しもよくないしな。

へへへ。彼女も顔を真っ赤にして、一緒に外を歩いてくれるかな?

 

「ダメよ。一人で行くわ。」

 

「…え?」

 

眠たかった視界が徐々に鮮明になってくる。

それと同時に見えてきたことが二つ。

一つ目は、彼女の顔が真っ青なこと。

二つ目は…

 

「え、エリス? 髪…」

 

地面に転がる綺麗な赤い髪。

エリスの表情も暗い、何かがおかしい。

いつものツンデレじゃない。

 

「ルーデウス、手離して。」

 

「……」

 

俺は無意識に彼女の手を掴んでいた。

嫌だ。嫌だ、何か嫌だ。

 

「良いじゃないですか。あ、上裸なのが嫌でしたか? じゃあ、すぐ服を……」

 

「ダメ! 来ないで!」

 

エリスの拒絶。

俺は歯を食いしばった。

 

「嫌です、離したくないです。」

 

手を離さなければ服は着れない。

俺でも分かる。それは真実だ。

でも、俺は手を離さなかった、離せなかった。

 

離さない手、一向に進まない二人の時間。

動き出したのは、三人目の介入だった。

 

「エリス、遅いぞ」

 

言葉と同時、静かに入ってきたのはギレーヌ。

瞬間、彼女が目を見開く。

 

「そうか、起きてしまったか。エリス、ここまで来たら話すべきじゃないのか?」

 

ギレーヌの言葉に、エリスは俺をちらっと見る。

そして俯きながら、悩みながら、口を開いた。

 

「そうね。話さないと進めなさそうね…分かったわ。ルーデウス、少し話があるの。来てくれる?」

 

未だ嫌な予感はする。

しかし、少しだけ和らいだ。

俺は彼女から手を離し、服を着る。

 

服を着終えて、天幕を出る俺たち。

ただ黙って、俺たちは外に出る。

そこにあったのは綺麗な空。そう、皮肉なほど綺麗な青空に向かって、俺たちは歩き出した。

 

─────────────────────────

 

「エリス、すみません。鈍感な僕でも話が見えてきました」

 

ギレーヌのテント。

剣以外は何もない質素な部屋。

俺は口を開く。

この質素な部屋のように頭を整理して、小さな声を発していく。

 

「僕、頼りなかったですもんね。エリスのことを困らせて、苦労させて、龍神に殺されかけて…」

 

長い言葉、涙が出そうな言葉。

あぁ、ダメだな。

もっと簡潔に言えるはずなのに、分かってるはずなのに。

上手く言葉が出てこない。

 

「昨晩も、僕、下手でしたもんね…」

 

口が回らない俺。代わりに瞳から溢れ出してくるのは、涙。

 

「僕、嫌われちゃいましたね…」

 

「…!?」

 

俺は何も言わずに俯いた。

これが失恋ってやつか。

前世じゃできなかった失恋。

辛い。めちゃくちゃ辛い。

 

「ルーデウス、ちょっと待って! 私はルーデウスのこと嫌いになったりしないわ!」

 

「気を遣ってくれるんですね。でも、大丈夫ですよ…」

 

俯いた俺、薄く笑う俺。

プロポーズされて一日足らずで失恋。

ははっ、我ながら伝説だな。

 

「エリスは可愛いですから。きっと良い人が見つかりますよ」

 

「かっ、かわっ……ルーデウスが頼りなかったら、この世に頼れる人なんて一人も居ないじゃない!」

 

「……」

 

「もういいわ。」

 

何が?

 

次の瞬間、落ちるのは特大爆弾。

 

「ルーデウス! 愛してるわ!」

 

「……へ?」

 

真っ赤な顔でなんてことを…。

聞き返せば、また恥ずかしそうに。

 

「す、好きって言ったのよ…」

 

「ぼ、僕のことが、ですか?」

 

「そ、そうよ。世界で一番よ…」

 

「……」

 

「これでは埒が明かんな。」

 

ギレーヌが口を挟む。

頼む、エリスの考えを代弁してくれ。

 

「ルーデウス。お前死にかけたらしいな?」

 

「まぁ、はい」

 

死にかけた。

恐らく龍神と戦った時のことだろう。

不甲斐ない俺、エリスを守れなかった俺。

龍神に傷付けられた彼女は、その一件があったから、俺を嫌いになったんだと思う。

 

「エリスお嬢様はルーデウスを守れなかったと後悔したんだ。大きく、深くな。」

 

「なんで、エリスが後悔なんて…」

 

「嘆き、後悔していたんだ。今までルーデウスに守られていたと。ルーデウスの近くに居たら自分は成長できない。だから強くなるために離れることを決心した」

 

俺はギレーヌの言葉を聞き、エリスに目を向ける。

すると、彼女は俺に頷いてくれた。

 

「エリス? 僕の考えを聞いてくれますか?」

 

「もちろんよ。聞くわ。」

 

少し落ち着いた。

息を吸って、吐いて。

 

「僕はエリスみたいに剣が得意じゃないです。」

 

「嘘よ。ルーデウスは私より強いじゃない」

 

「いいえ。エリスより弱いです」

 

エリスの肩に寄り掛かる。

彼女の手に、自身の手を絡ませて。

 

「だから、一緒に強くなりたい。エリスと一緒に」

 

これからは守るんじゃない。

夫婦として、一緒に強くなるんだ。

 

「それに! エリスが居なくなったら僕は悲しいです!」

 

「私が居なくなったら、ルーデウスは不幸になるの?」

 

「はい! そうです! 大不幸になります!」

 

「ルーデウスが不幸になるのは、嫌」

 

小さな背中が作り出す新婚。

ギレーヌのテントから出る時、俺たちは恋人繋ぎだった。

昨晩と同様に、幸せな恋人繋ぎだった。

 

「そういえば、名家に嫁ぐっていう話は…」

 

「昨晩も言ったでしょ? どうでもいいって。私は、ルーデウスが守れればそれで良いのよ。」

 

……エリスさん、平然と恥ずかしいこと言いますな。

まぁ、精神状態が戻るまでのことだろうけど。

 

「ねぇ、ルーデウス。その、今日もしたいの?」

 

「それは、まぁ…」

 

「良いのよ我慢しなくて。一応新婚なわけだし。」

 

新婚、この響きが脳内に木霊する。

酔いしれる俺に、エリスが口を近付ける。

 

「もう、私たちは家族なんだから。」

 

『子猫が欲しいにゃん』この言葉が、彼女の口から放たれることはなかった。

しかし、これはこれで最高だ。

あぁ、エリスがお嫁さんになってくれて本当に幸せだ。

 

「はい! 僕たちは家族です! 新婚です!」

 

言葉と同時、俺は決心する。

二人で強くなるんだと。愛しの人と、エリスと強くなるのだと。

決める決意と覚悟。

とてつもなく大きな熱。それが、何かを変えていく。

何か、それは『運命』

運命という歯車が、変わっていく。

 

冒険、魔法大学、迷宮。

そんな運命が、この時、この瞬間、音を立てて変わろうとしていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




https://youtu.be/on2VsvDNiDU?si=ix-6zNnDEHI-7FPb

まだまだ編集下手ですが、映像バージョンをYouTubeに上げました。
良ければ閲覧、アドバイスお願いします。

この後の展開について…

  • ルーデウスとエリスのいちゃいちゃ多め
  • シルフィ視点多め
  • 展開早めにして、早く進める
  • ルーデウスとエリス(別枠でR-18)
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