もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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老人の日記 その2

 

 

 

日記の続きを読むことにする。

ロキシーが、師匠が死んでしまった続き。本当は読みたくない。

でも、意を決して読むことにする。

 

俺は、読まなければならないのだから。

 

 

─────────────────────────

 

 

▫️

ロキシーが死んだ。

……今、俺は何て書いた?

ロキシーが死んだって書いたのか?

信じられない、全く実感が湧かない。

 

▫️

ロキシーのお葬式をした。

自殺したロキシーのお葬式をした。

 

自殺、自殺か。

 

そうか、ロキシーは苦しんでたんだな。

俺のせいで。俺の選択のせいで。

 

なんか、もう嫌だ。何もかもが嫌だ。

 

▫️

今日は机に突っ伏して考え事をしていた。

シルフィが心配してくれているのを無視して、考え事をしていた。

ロキシーは、なんで死んだのだろう。

なんで謝ったのだろう。

謝るのは俺の方なのに。

俺は、彼女に迷惑をかけてばかりだったのに。

 

いっぱい考えた。脳が爆発するほど考えた。

日記を書いてる時も考えた。

そして、そのおかげで一つの結論が出せた。

 

俺の選択がロキシーを追い詰めたんだ。

俺がロキシーを殺したんだ。

ロキシーを殺したのは俺なんだ。

大切な師匠を殺したのは……俺だったんだ。

 

ははっ。俺って、やっぱりクズだな。

 

▫️

日記を書くために椅子に座ったが書くことがない。

というか、書きたくない。

もう良いや。知らない。

 

▫️

今日はお酒を飲んだ。

酔って、少しロキシーのことを忘れられた。

 

本当は忘れちゃダメなのかもしれない。

けど、ダメだ。辛すぎる。

 

少しなら……良いよな?

 

▫️

酒を飲んだ。少し楽になった。

ロキシーのことは頭にこびりついて忘れられなかった。

やっぱり、俺はロキシーが大好きだったんだ。

 

───

 

ここからは、暫く酒のことしか書かれていなかった。

後は、ちょくちょくロキシーのこと。

それ以外は何も書かれていなかった。

変化がある所から読んでいこうと思う。

 

───

 

▫️

今日もいつも通り酒を飲んでいた。

何も変わらない、そう思っていた。

でも違った。

背中から誰かに抱きしめられた。

すごく暖かくて、フニャンと胸が当たる感触が心地良かった。

 

シルフィの胸じゃない。

リーリャでもない。リーリャは小言を言ってばかりだから。

アイシャでも、エリナリーゼでもない。

 

彼女は、エリスだった。

 

▫️

昨日と今日のことを整理しようと思う。

エリスが俺に抱き付いてきた。

ルーデウスが好き、そう言われた。

EDですよ?って言ったら、それでも好きって言われた。

 

辛そうだから、暫く近くに居てあげるって言われた。

 

まだ勃たなかった。

でも笑えた。

久しぶりに笑えた。

 

▫️

今日からお酒を辞めることにする。

エリスとシルフィに好きって言おう。

リーリャとアイシャを大切にしよう。

 

俺は、パウロの代わりだ。この一家の大黒柱だ。

 

俺は覚悟を決めることにする。

皆を守る覚悟を固めることにする。

 

よし、やろう。

ロキシーを忘れたわけじゃない。寧ろ、逆だ。

きっと、ロキシーも頑張れって言ってくれるだろうから……

 

ロキシーの弟子として、夫として。

ロキシーの教えを俺が体現するんだ。

 

▫️

皆の前で謝った。

クズ夫で、情けない家族でごめんと謝った。

 

小言を言っていたリーリャも、たくさん迷惑をかけたシルフィも…

みんな、みんな許してくれた。

 

シルフィに関しては、たくさんの闘気を纏えるようになっていた。

ルディが好きだから、守りたいから修行したと言われた。

 

酒に溺れた俺は、勝手にシルフィに嫌われてると思っていた。

でも、その考えは良い意味で裏切られた。

 

その晩、シルフィとエリスと添い寝した。

二人の寝顔は天使みたいに可愛かった。

 

すごく、すごく楽しかった。

なんだ、なんだよ。お酒なんかより、ずっと幸せじゃないか。

 

▫️

シルフィと手を繋いだ。

エリスと沢山キスをした。

 

二人ともニコニコ笑ってくれた。

俺もニコニコ笑えた。

 

▫️

鼻歌を歌いながら街を歩き回った。

一人きりで少しだけ歩いた。

 

すると、派手な格好をした女が俺の腕に抱き付いてきた。

名前も知らない、どうでもいい女だった。

 

なのに、そのはずなのに、俺の息子は硬くなっていた。

何故かガッチガチに勃起してしまった。

 

▫️

また失敗した。俺は、また失敗した。

失敗…俺は、知らない女と性行為してしまった。

 

媚薬を飲まされて宿屋に連れ込まれた。

俺の顔がタイプだったらしい。

連れ込まれて襲われた。

 

でも、言い訳にするつもりはない。

弱い女だった、逃げることも出来たはずだ。

 

本当に二人には申し訳が立たない。

大きな失敗をした。だけど、まだ取り返せる。

明日、シルフィとエリスに朝一番で謝ろう。

うん、そうしよう。まだ大丈夫だ。

 

▫️

家に帰ってエリスとシルフィに謝った。

なんか最近謝ってばかりだな……そんな気がする。

 

自己分析だが、妊娠してもどうでも良い女だから勃ったんだと思う。

言い訳がましいけど、そんな言葉を交えつつ謝った。

良ければ殺して欲しいと言った。

納得するまで殴って欲しいと言った。

 

…でも、違った。

 

二人は、何も怒っていなかった。

 

▫️

昨日のことを整理しようと思う。

俺は謝った。その時、彼女たちにルディが謝る必要なんてないって言われた。

寧ろ、ルディが、ルーデウスがスッキリしたなら良かったって言われた。

 

二人は、すごく優しかった。

だからこそ、申し訳なさというモヤモヤが俺の中に募り始めてた。

このモヤを消すためには、きっと恩返しが必要だ。

シルフィとエリスへの恩返し、出来る時が来たら必ずしよう。

 

▫️

今日はEDの対策会を行った。

大切な人が相手だと勃たなくなる。そう言うとシルフィがニコニコと笑ってくれた。

ボクは、ルディの前だと…えへへ。そんなふうに笑ってくれた。

そんな彼女は、レイプみたいな感じでボクを憎い相手だと思って犯したら良いんじゃないかな?って提案してくれた。

エリスは、私はいつも殴っちゃうからどうせ嫌われてるって言ってた。

 

俺は、二人の意見を否定した。

 

憎い相手とも思えないし、嫌いにもなれるわけないよって言った。

二人とも笑ってくれた。

満足そうに笑ってくれた。

 

あぁ、安心する。あと少しで、もう少しで興奮出来る気がする。

 

二人とえっち出来るようにするために、今度媚薬を買おう。

そんなふうに考えながら、俺は笑って……神様、ロキシーに誓いを立てた。

 

▫️

やっと、シルフィへ恩返し出来る時が来た。

アリエルがアスラ王国に戻って第一王子から王の座を奪うらしい。

所謂クーデターだ。

 

俺は、それに付いていくことにした。

シルフィに、ルディは無理して来なくても大丈夫だよ?って言われた。

俺は、そんなシルフィの手を掴んだ。

シルフィと一緒に戦いたいって言った。

 

彼女は、耳をポリポリと掻いて「ありがとう」って言っていた。

 

ヤバい、可愛すぎて悶え死ぬかと思った。

 

▫️

メンバーはアリエルとルーク。

従者二人と最近剣の聖地から帰ってきたギレーヌ。

それに俺とエリスとシルフィだ。

 

なんて強いメンバーだ。

負ける気がしない。

 

アリエルがペルギウスの説得に失敗したと言っていたのが少し不安だが……まぁ、大丈夫だろう。俺たちなら、このメンバーなら負けることはないだろう。

 

▫️

エリスがギレーヌから鳳雅龍剣を貰っていた。

鳳雅龍剣。剣神からなんとか貰うことに成功したらしい。

 

闘気を無視出来る剣、鳳雅龍剣。

そんな剣を握るエリスの姿はすごくカッコよかった。

 

ブンブンと振りながら、ルーデウスを守るわ!ってテンションを上げる彼女が可愛かった。

 

▫️

赤龍の顎髭と言われる土地で、北王と北帝。それに加えて有象無象共が攻めてきた。

北帝はオーベールと名乗っていた。

 

北王に関しては、鏡かなんかで小細工してきた。

しかし、関係ない。俺はストーンキャノンで吹っ飛ばしてやった。

 

有象無象共の頭も、ストーンキャノンで吹っ飛ばしてやった。何人も、ぶっ殺してやった。

シルフィの恩返しの場だ、手加減はしない。

北王は最終的にエリスが止めを刺した。

 

北帝には逃げられたけど、どうでもいい。

俺たちは強い。

負けるビジョンなんて見えなかった。

 

そういえば、初めて人を殺したな。

特に何も感じなかった。

シルフィとエリスが無事ならそれで良い。心の底から、そう思ってた。

 

▫️

シルフィに、人を殺すのは、やっぱり嫌だねって言われた。

俺はそれに対して、シルフィを、エリスを守るためなら何人でも殺せるって返した。

 

かっこいい言葉だと思ったのに、シルフィは少し悲しい顔をした。

そして、こんな言葉を返された。

 

優しいルディを壊しちゃったのは、ボクなんだね。そう言われた。

 

俺は、この言葉に何も返せなかった。

意味が分からなかった。俺は壊れてなんかいないのに。

 

ただ、人殺しが平気になっただけなのに。

 

▫️

道中、シルフィとエリスが話をしていた。

俺は、その話を木陰から静かに聞いていた。

 

シルフィが、俺のことを心配していた。

最近の俺の姿が、様子が少しおかしいと心配していた。

エリスは、俺のことが好きで出来れば子供が欲しいと言っていた。剣を振りながら俺と子作りしたいと言っていた。

 

少し会話が噛み合っていなかった。

 

そんな姿を見て、また笑えた。

最近いっぱい笑えて嬉しい。

やった、やった。嬉しい、嬉しい。

ふふっ。エリスとシルフィにも、笑っていて欲しいなぁ

 

▫️

アスラ王国の関門を強引に突破した。

盗賊団を頼るという選択肢もあったが、恐らく俺たちならそんな選択をしなくても大丈夫だろう。

 

案の定、関門を抜けようとした時北帝が攻めてきた。俺が一番厄介だと、そう叫びながら俺を狙ってきた。

 

一人で返り討ちにしてやった。

人がくっ付いて離れなくなる『赤玉』とかいう物を使ってくる奇抜な戦術を用いてきたが、スピードはギレーヌより少し速い程度だった。

 

闘気を纏えないくせに化け物だと言われた。

化け物、化け物か。それでも『最強』にはならないんだな。戦いの最中、そう思ってた。

 

奴は逃げ足だけは速かった。

忍者のような逃げ方をされた。

 

また、逃してしまった。まぁ、どうでもいいか。

俺が勝たせれば良い。

アリエルを、シルフィを…

 

俺が勝たせるんだ。

 

▫️

明日はパーティ会場に貴族が集まる。

アリエルは、そこで演説して王としての素力を見せるらしい。

 

難しいだろうが、アリエルにはカリスマ性がある。

 

きっと、成功するだろう。

 

▫️

動かない、身体が動かせない。

やった、やらかしてしまった。

 

俺が勝たせると言ったのに……俺が足手纏いだった。

 

相手には水神が居た。

水神 レイダ・リィア

 

奴の使う剥奪剣界。それが、異常なほど強かった。

 

▫️

シルフィが死んだ。

エリスが右足を失った。

 

ボロボロだった。

アリエルは演説でも武力でも負けた。

アリエルとルークは、クーデターを犯した極悪人として処刑された。

 

俺とエリスも……その日、罪人になった。

 

▫️

昨日のことを整理しようと思う。

剥奪剣界に捕まって動けない俺、そんな俺をオーベールが殺そうとした。

水神が名指しで俺を選んだんだ。

なんで俺を殺そうとするのだろう。

少し不思議だった。

でも、そんな疑問はすぐに消えた。

 

あぁ、そうか。俺がクズだからか。

恩返しが出来ないクズだから、俺がムカつくのか。

 

そんな考えで納得していた。

 

俺だけじゃない。エリスも、ギレーヌも、水神の剥奪剣界に捕まっていた。

全員、そう。一人を除いて全員、剥奪剣界に捕まっていた。

 

捕まっていない一人。それはシルフィだった。

シルフィは剥奪剣界の範囲外に居た。

パーティ会場全体を覆う剥奪剣界。それを見たシルフィは目を見開いていた。

 

シルフィとオーベールの目が合った。

少し心配だった。でも大丈夫だと思った。

 

シルフィは多くの闘気を纏えるようになっていたから。

彼女は、とても強くなっていたから。

 

そんなシルフィなら逃げられる。恩は返せなかったけど、シルフィが生きていてくれるなら俺が地獄に落ちるだけで済む。

 

だから大丈夫、満足だ。俺は、そう思ってた。

 

でも、違った。俺の身体は小さな白い髪に押されたんだ。

 

彼女は、シルフィは、迷いなく俺に突っ込んできた。

最大の闘気で、全力の風魔術で加速して、水神が油断した瞬間に俺の身体に飛んできた。

 

瞬間、俺は剥奪剣界の範囲外に飛んだ。

 

シルフィは?彼女は、どうなった?

俺は、ゆっくりと振り返った。

汗をいっぱい掻いて振り返った。

 

振り返った先には絶望があった。

そこには真っ二つになった女の子が居た。

白い髪が、血に濡れて赤くなっていた。

 

可愛い顔が半分になっていて、血だらけになっていた。

半分になった唇、何度も口付けをした彼女の唇は微笑みを浮かべていた。

 

すごく、すごく不思議だった。

彼女は、なんで俺を救ったのだろう。

アリエルも、ルークも居たのに。

 

分からない、何も分からない。

 

俺は、涙を撒き散らしながら剥奪剣界の範囲外からストーンキャノンを水神にぶっ放した。

頑張ってぶっ放した。

 

水神は、全てを叩き切ったが目を見開いて驚いていた。

隙は作れた。

 

その瞬間、エリスとギレーヌが剥奪剣界の範囲から抜け出した。

 

抜け出す時、その時にエリスが右足を失った。

すごく痛そうだった。

 

俺は、そんなエリスを抱えてその場から逃げ出した。

 

長い一日だった。

すごく、すごく疲れた。

 

明日は、エリスの右足を治して……

そして、そして帰ろう。

 

帰って、帰って……あぁ、ダメだな。シルフィのことが頭から離れない。

可愛くて、素直で、家事が出来て。ちょっと嫉妬してくれる俺のお嫁さんが居ない。

 

夜になって日記を書いて気付いた。

俺は、シルフィを失ったんだ。

ロキシーとシルフィを失ったんだ。

 

大切なお嫁さん。もっと、もっと大事にしておけば良かったなぁ。

 

後悔だけが募った。

俺は、彼女に何一つ恩返しが出来なかった。

 

俺は、俺は弱い。

 

俺は、大切な人を、二人のお嫁さんを…

 

…失ってしまったんだ。

 

 

 

 

パタンっ

 

俺は再度日記を閉じた。

あまりにも生々しい。

 

希望から絶望への連鎖が妙に生々しかった。

 

「読むのが本当に辛い……」

 

薄い日記なのに思ったより読むのに時間が掛かる。

魂が篭っているからなのか、とんでもなく胆力を使う。

 

ふと、地下室にある時計に目を向けた。

埃を被った時計。見ると深夜二時を回っていた。

 

「人肌が、恋しいなぁ」

 

地下は寒いから…いいや、違うな。

日記の一ページ一ページ、その全てが俺の悪寒を刺激してくるんだ。

だから寒気がするんだ。

 

うん、甘えるわけじゃない。

でも、人との関係は大事だ。

続きは明日読もう。

 

「そういえば、エリスがベッドで待ってくれてるって言ってたな」

 

エリスとの添い寝。

もう寝ているかな?起きていたらシルフィとロキシーも呼ぼう。

えっちなことはしない。だけど、皆で寝てみよう。

 

幸せを噛み締めたい。

この日記を読んで、それが当たり前じゃないと気付けたから。

 

地下から上がる俺の足取り。

その足取りは、ゆっくりとしていて、何かが纏わりついているように……すごく、重たかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




老人の軌跡は、続く。
地獄は、終わらない…

日記編について

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