あと少し、もう少しで地獄が終わる。
老人の軌跡……続きを読もうと思う。
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自宅を見渡した。
もう誰も居ない。誰も居なかった。
居るのは、廃人状態のゼニスと衰弱したリーリャ。
そして、泣いているエリスだけ。
賑やかだった家は、面影は、もうそこには無かった。
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俺は決めた。
この家を一人で出て行こうと思う。
俺が居るとみんなが不幸になるから。
俺がクズで、みんなの迷惑になるから。
もう居なくなろうと思う。
大切な人は、家族はほとんど居なくなったけど…
全員居なくなるのは嫌だから。
早く、一刻も早く居なくなろうと思う。
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敵が来たので魔導鎧を着てみた。
着て、戦ってみた。
結果は勝利。
ただの勝ちじゃない、圧勝。
敵が怯えて戦意を喪失するほどの圧勝劇。
これはすごい。
今まで避けられなかった攻撃が簡単に避けられる。
今までにないスピード、パワーが出せる。
たった一言『強い』
魔導鎧は、その言葉に相応しい物だった。
ザノバ、そして、クリフ。
本当に、こんな俺のために、こんなすごい物を作ってくれてありがとな。
クリフは居ない。だけど、それでも…
…俺は小さく呟いて、二人に感謝を述べた。
▫️
魔導鎧は強いが弱点もある。
今日は、それを書き記していこうと思う。
①魔力消費が多い
②魔導鎧が重く、持ち運びが難しい
①に関しては、しょうがない。諦めよう。
問題は②だ。
一人で出ていく以上、持ち運べないのは苦しい。どうしようか。
少し考えてみることにする。
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②の解決策を思いついた。
重くて持ち運べない魔導鎧。その持ち運び方を思いついた。
そう、重いならば軽くしてやればいい。
重力を操作して軽くしてしまえば良いのだ。
聞いたことがある、王竜の魔術である『重力魔術』
それを使って軽くすれば魔導鎧を持ち運べるだろう。
重力魔術の習得。
よし、時間はかかるだろうが頑張ろう。
家族の近くでやる、最後の頑張り。
ロキシー、シルフィ、パウロ、ノルン。
俺は失敗した、失敗し続けた。でも、だからこそ、最後ぐらいは成功させてみせる。絶対に、絶対に。
───
しばらくは魔術についての研究が書いてあった。
重力魔術の原理や使い方等々。
難しくて理解出来なかったが、すごいということだけは理解出来た。
───
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研究を始めてどれくらいの月日が経っただろう。
短かった気もするし、長かった気もする。
そんな月日を使った重力魔術。あと少し、もう少しで習得出来る。
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エリスが可愛かった。
すごく、すごく可愛かった。
そうか。俺は、まだ一人じゃなかったんだ。
そんな気付きを彼女が与えてくれた。
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昨日のことを整理しようと思う。
自室に篭って魔術の研究をしていた俺。
そんな俺の部屋に一人の女の子が入ってきた。
赤い髪の女の子。そう、俺の大好きな女の子エリス。
彼女は、剣も持たずに俺の近くにやってきた。
そして「ごめんなさい」って言ってきた。
アルスの件だろうか?俺は、そう思っていた。でも違った。
彼女は、こう言ったんだ。
「ミリス神聖国に、一人で行かせてごめんなさい」って。そう言ったんだ。
可笑しいよな。俺がエリスに睡眠薬を盛って、勝手に一人で行ったのに。
謝るのは俺の方なのに。
でも、彼女は俺に謝ってた。
ルーデウスを一人にしてごめんなさいって謝ってた。
そして、同時に彼女はこう言ったんだ。
もう一人にしないって。
ルーデウスの隣に居るって。
フィットア領で、ルーデウスがしてくれたみたいに。
思い出すように、そう言ってたんだ。
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今日は部屋が少し賑やかだった。
理由は単純。俺の自室にエリスが来るようになったからだ。
ツンデレ…じゃないな。
デレデレの彼女が座って魔術の研究をする俺の背中に抱き付いてくる。
ルーデウス、お腹空いてないの?とか、最近一緒に添い寝出来なくて寂しかったとか。
挙句の果てには、お腹減ってるなら私のこと食べても良いわよとか言い出した。
なんとなく意味は分かるが理解は出来ない。
まぁ、えっちして良いよってことだろう。
エリスを食べる、食べる、かぁ。
俺はEDだけど、エリスとならシたいと思った。
最悪なED…そんな病気も彼女となら治せると思った。
何故か、この日はそんな気がした。
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エリスが常に俺の手を握るようになった。
起きる時も、魔術の研究をする時も、寝る時も。
ずっと、ずーっと手を繋いでくるようになった。
暑くないですか?って聞いたら、抱きつかれた。
もう離さないっていう、返事として可笑しな言葉が返ってきた。
俺は笑いながら赤い髪を撫でた。
彼女は、一緒、ずーっと一緒って言ってた。
この光景を俺は静かに見てた。
永遠に見てた。だから少し分かってきたことがある。
俺だけじゃなかったんだ。彼女も孤独だったんだ。
俺が一人になったように、彼女も一人になった。
そうか、そうだったんだ。
一人ぼっちな俺と、一人ぼっちなエリス。
それが現状。それが今の俺たち。
よし、理解した。
孤独でエリスが悲しんでる。そうなれば、俺の答えは一つだ。
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重力魔術が完成した。
便利な魔術だ。物を浮かせるのはもちろん、人だって浮かせられる。
だから、エリスを浮かせてみた。
彼女が浮いてみたいというからね。
すーっと浮くエリス。そんな事象に、彼女は、はしゃいでいた。
ルーデウスはすごいわね!と言いながら、はしゃいでいた。
でも、同時に文句も言っていた。
重力で浮くとルーデウスと離れちゃうじゃない!と文句を言われた。
だから、フワフワと浮かんでいた彼女をぎゅーっと抱きしめてあげた。
彼女は殴らなかった。「ルーデウスの近くに来れた」と言うだけで殴らなかった。
まぁ、俺は知ってたんだけどね。
もう、彼女は殴らない。怒らない。
嬉しそうに、俺の胸に顔を埋めるだけだと。
▫️
今日は家族の墓参りに行ってきた。
パウロ、ロキシー、シルフィ、ノルン……みんなのお墓に手を合わせる。
パウロにはお酒を注いで。
ロキシーには重力魔術の原理を話して。
シルフィには何度も好きって言って。
ノルンにはミリス教徒はまだ許せないけど、ノルンとゼニスは大好きだと言った。
みんなにメッセージを残して『二人』で、この家を出ていくと伝えた。
そう、二人で。俺とエリスで、この家を出ていくと伝えた。
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家を出た。
目指す地は砂漠。
焦ってはいない。ゆっくりと歩こうと思う。
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道中、エリスとたくさんキスをした。
俺もエリスも暑いとは言わない。
寧ろ、もっとくっ付きたいと無言で肩を寄せ合った。
▫️
砂漠の奥地に着いた。
ここに来た理由は二つ。
一つ目は人が少ないこと。
砂漠は水不足で生活が困難だ。
普通は人なんて住めない。でも、俺が居れば別だ。
俺が魔術で水を出せば、生活することが出来る。
それが一つ目の理由だ。
俺たちは罪人。人の居ないこの地が一番向いている。
二つ目はEDを治せると思ったから。
そう、ED。EDを治してエリスと子供を作る。
それが今の俺の夢だ。
あの魔物を使ってEDを治す。
無理矢理シちゃう、レイプみたいになっちゃうかもですけど大丈夫ですか?と彼女に聞いてみた。
彼女は嬉しそうにコクコク頷いてた。
もう一度、ルーデウスとの子供が欲しいと頷いてくれた。
そうか、俺はやり直せるのか。
大切な物を失い続けた俺。そんな俺でも、もう一度やり直せるのか。
エリス、ありがとう。
日記を書きながら、無意識に何度もこの言葉を呟いた。
気付いた時、俺は笑ってた。無意識に笑ってた。
幸せだった。すごく幸せだった。
俺は、彼女のおかげで、また笑うことが出来た。
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サキュバスに襲われた。
俺たちが望んでいた魔物。
エリスの豊満な胸が俺の視界を支配した。
彼女の可愛い顔が崩れていた。
あまり良く覚えていない。だけど、だけど…
俺の息子がガッチガチになっていたことは、今でも鮮明に覚えてる。
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俺のEDが治った。
エリスのおかげで治った。
彼女は身体と顔にたっぷりキスマークを作って、俺に甘えてきた。
ルーデウスの近くに居るだけで私は幸せって、元気に言ってた。
俺は、そんなエリスを眺めてた。
なんか、なんていうんだろうな。書くのが難しい。
だから一言だけ記しておこうと思う。
この言葉を、この真実を。
『俺は、エリスを愛してる』
たった一言の真実。
もう、俺にはエリスしか居なかった。
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今日から暗殺者になろうと思う。
罪人の俺たちは冒険者等の表の仕事は出来ない。
だから、裏の仕事である暗殺者をやろうと思う。
エリスと暗殺者。なんだか昔を思い出すな。
冒険者だったころを思い出す。
二人で強さを求めて、戦って、添い遂げる。
そんな生活をしていた時。
確かに今は冒険者とは違う。
でも、だからこそ頑張ろう。
エリスとのイチャイチャ。
この幸せを噛み締めるために。
───
しばらくは暗殺者時代とエリスとの関係が書いてあった。
お前は、七大列強五位 死神以上に恐ろしいと言われたと、日記に淡々と書かれていて驚いた。
あ、そういえばというテンションで書かれていた。
未来の俺は、本当に強いんだな。
そんな未来の俺の物語。
ここからは、変化したところから読み始めることにする。
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▫️
今日もエリスと一緒に居た。
すごく、すごく可愛かった。
エリスと俺、どっちの方が相手を好きか言い争いになった。
エリスが俺に好き好き好きと連呼してきた。
俺も負けじと連呼した。
笑顔のまま連呼した。
可愛い言い争い。
結局、終わりはキスだった。
エリスに深いキスをすると彼女は静かになった。
続きはベッドですね?と言ったら、静かにコクンと頷かれた。
もう言葉なんて要らない。
俺たちの愛情は何にも例えられない物になってた。
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俺は強くなった。
魔導鎧無しでも大抵の奴は殺せるし。
魔導鎧を着れば七大列強下位よりも強い。
しかし、強さに興味はない。
俺が興味があるのは水神。
シルフィの敵、レイダ・リィア。
そろそろ殺しに行こうと思う。
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今日から水神の居場所を調べようと思う。
会えれば必ず殺せる。
これは過信じゃない。事実だ。
必ず殺してやる。待ってろよ、水神。
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水神の情報が入ってきた。
居場所は迷宮都市ラパンらしい。
何故、そんな場所に?なんのためだろうか?
まぁ、良いか。ラッキーだ、すごく近い。
殺す、殺しに行く。
エリスを連れて水神を殺しに行こうと思う。
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エリスが嘔吐した。
具合が悪そうだ。
何か嫌な予感がした。でも、違った。
やってきたのは幸せだった。
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エリスが妊娠した。
ルーデウスの子供!やったわ!!!と喜んでくれた。
赤い髪を揺らして、ルーデウスの子供が産めると喜んでくれた。
幸せ、幸せ。そのはずなのに複雑な気持ちだった。
その理由は明白だった。
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近くに来た水神を殺すか、妊娠しているエリスの近くに居るか。
出産まで一年ぐらい掛かる。エリスの近くに居るということは一年ぐらい動けないということだ。
一年、一年。
それまで水神が迷宮都市に居るとは思えない。
そうなるとシルフィの敵は取れない。
どうしよう、どうしよう。いや、違うな。迷うことじゃない。答えは明白だ。
▫️
エリスと一緒に居ようと思う。
エリス、妊娠中のエリス。
彼女を一人には出来ない。だから一緒だ。彼女と一緒に居るんだ。
そんな考え。
明日、エリスに話そうと思う。
▫️
エリスに怒られてしまった。
いつもみたいなツンデレじゃない。かなり本気のやつ。
一緒に居るという俺の言葉。
彼女は反対した。
シルフィの敵を取れと怒られてしまった。
そうか彼女も目の前でシルフィを失っている。
彼女もシルフィが大好きだったんだ。
敵を取りたいのはエリスも同じだったんだ。
もう考えは固まった。
守るために戦う。
よし、決めた。強くなった俺を見せてやる。
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妊娠しているエリスが当たり前のように剣を振るっていた。
どうしたんですか!?と俺が言うと、ルーデウスと一緒に水神を殺しに行くのよ!と言われてしまった。
驚いた。まさか行こうとしてるなんて。
その発想は無かった。
驚いたが、ふふっと笑ってしまった。
明日は出発前にエリスを説得しようと思う。
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エリスを説得した。
彼女のほっぺをぷにぷにと突いて、俺にエリスを守らせて欲しいと伝えた。
妊娠している彼女を戦場に向かわせるわけには行かないし、彼女も分かっていたのだろう。
俺が負けないと、水神如きに俺が負けないと。
俺を信頼してくれているエリス。彼女は最後は笑顔で出迎えてくれた。
ミリスの時とは違う。二人で納得した出発。だから、大丈夫。絶対に大丈夫だ。
それにラパンは近い。
エリスが心配なら秒で水神を殺せばいい。
殺して帰ってくる。それだけの簡単な仕事だ。
▫️
迷宮都市ラパンに着いた。
仮面を付けて情報を集める。
まぁ、推測は簡単だ。
北に行って砂漠を抜けるか、ラパンに滞在か。
それしか奴の選択肢はない。
どちらでも良い。殺すだけだ。
▫️
なんで、なんで?意味が分からない。
は?なんで?
奴は水神は、南に行ったらしい。
砂漠の奥地へ行ったらしい。
意味が分からない。俺の頭は意味を理解することが出来なかった。
▫️
情報を整理しようと思う。
女の老人、レイダ・リィアは兵隊を率いていたらしい。
その正体はアスラ王国の兵隊。
そいつらを連れて水神が向かった先は南。
南、砂漠の奥地。何か嫌な予感がした。
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俺は読み間違えた。また間違えてしまった。
奴らの行き先、目的。それを読み間違えてしまった。
そもそも奴らが迷宮都市ラパンに来た理由を考えるべきだった。
目的。水神は俺たちを殺しに来ていたんだ。
砂漠の奥地に居た俺たちを殺す。なんで気付かなかったんだ。
いや、そもそも、なんで俺たちの居場所が分かったんだ?
誰も居ない砂漠の地なのに。分かるはずがないのに。
可笑しい、何もかもが可笑しい。
でも、大丈夫だ。きっと間に合う。
だって、約束したんだ。
妊娠したエリスを助けるって、もう大切なものを失わないって。
死ぬ気で約束したんだ。
だから、だから……きっと大丈夫だ。
▫️
エリスが死んだ。もう嫌だ。もう、嫌だ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……
なんで、なんでだよ。可笑しいだろ……
なんで、エリスが死ぬんだよ……
▫️
もう何も書きたくない。
俺は一人ぼっちになった。
ただ、それだけ。日記を書いている今も一人ぼっちだ。
▫️
一昨日のことを整理しようと思う。
家に帰った俺、そんな俺の視界に飛び込んできたのは、犯されているエリスの姿だった。
サキュバスにやられて溜まってたとか。
犯罪者なら良いよな!?とか。
そんなことを言われながら、エリスが犯されていた。
虚ろな目をして、ただ腕をだらんと伸ばして、ずちゃっという水音だけが鳴り響く部屋で犯されていた。
元気なエリス、活発で可愛いエリス。そんな彼女の可愛い声は…
……もう、聞こえなかった。
気付いた時、俺は魔導鎧を着込んでた。
小細工は要らない。正面から、ぶっ殺してやった。
水神も、北帝も、それ以外も、全部、全部雑魚だった。
一分も経たずにぶっ殺してやった。
俺は強くなった。前に負けた水神がまるでウジ虫だった。
重力魔術とストーンキャノンで瞬殺だった。
驚く暇もなく、殺してやった。
でも、無意味なんだよな。
そんな強さ、もう意味なんてないんだよな。
だって、エリスは死んでいたんだから。
犯されて、首を絞められて。
腕と胸を切り刻まれて死んでいたんだから。
彼女のお腹に傷はなかった。
彼女の大きくなったお腹に傷はなかった。
俺との子供。それを、どれだけ大切にしていたかが分かった。
砂漠に乾く、赤い血溜まり。
俺は佇んでエリスだけを見てた。
赤い綺麗な髪だけを見てた。妊娠しているのに、有象無象共に犯されて、苦しそうな顔をする…そんなお嫁さんだけを見てた。
どんなに見つめても動かない、愛しの人だけを見つめてた。
あぁ、そうか。もう、無いのか。
強さを手に入れた俺。守るために強くなった俺。
そんな俺の背中には、もう…守りたい物なんて、無くなっていたんだ。
▫️
ロキシーの授業が受けたい。
シルフィとイチャイチャしたい。
アイシャに甘えられたい。
ノルンに叱られたい。
パウロとくだらない話がしたい。
エリスと、一緒に居たい。
俺の夢。
もう、そんな夢は叶わなくなった。
みんなの最後の顔が忘れられない。
俺には、もう何もない。
俺は、どうしたら良いんだろう。
───
しばらく、日記は書かれていなかった。
読んでいる俺も辛い。もう、嫌になる。
でも、あと少し。この地獄も、あと少しだ。
続きを読む。詳しくは分からないが紙質的に数年後の出来事だろう。
───
▫️
夢に、あいつが出てきた。
あいつ……ヒトガミ。自殺しないんだね?と言ってきた。
俺が死んだら、アイシャ以外の家族は悲しむだろうから自殺はしないと答えた。
奴は俺の言葉に、ただフーンとだけ答えて、くだらない話をしてきた。
魔力って何で出来てるんだろうね?とか、重力魔術を習得するなんてすごいねとか。
助言も何もなかった。
奴は、ただ喋って去っていった。
▫️
今日も奴とくだらない話をする。
くだらない話。しかし、これが中々楽しい。
奴は俺の話を聞いてくれる。
隣にシルフィが居る気がするんだとか。
ロキシーに似た色の花を見つけたんだとか。
エリスの声が聞こえた気がしたんだとか。
俺は、そんな話をする。楽しい話をする。
楽しい、楽しい。そうだ、楽しいはずなのに、毎回こんな話をすると俺の瞳から涙が溢れてしまう。
何故かは分からない。だけど、無意識に溢れてしまう。
ヒトガミは、そんな俺を優しく見つめてくれる。
そして、最後に、この言葉を残してくれたんだ。
「僕と友達になるかい?」
一人ぼっちな俺。
俺は寂しかった。
そんな俺は、奴の手を醜い自身の手で握ったんだ。
▫️
奴と話をした。
今日は真面目な話。
これまでの俺の疑問を解決してくれた。
ロキシーの腹の子に関してはヒトガミに謝られた。
奴も未来視に自信が無かったらしい。ごめんねと言われた。
いや、ヒトガミが謝ることはない。現にオルステッドは襲ってこなかったんだ。
ヒトガミ、友人が謝ることじゃない。
選択したのは俺。俺のせいだ。
もう一つの疑問、そっちの方が大事だった。
ロキシーの王級治癒魔術がバレていたこと。
水神やアスラに俺の居場所がバレていたこと。
それは、全部、全部……オルステッドのせいだったらしい。
龍神が裏で操作していたらしい。
龍神は人に怖がられる呪いを克服したのだそうだ。
そんなことが出来るのか?と聞いたら、詳しくは見えないけど出来るよ。と言われた。
現にクリフはエリナリーゼに道具を使って呪いの軽減を施していた。
出来ても不思議じゃない。
そうか。龍神は呪いさえ無ければ人を操る交渉術やコミュニケーション能力もあるのか、厄介だな。
考え込む俺に、僕のことを疑わないのかい?とヒトガミは言った。
俺は疑うわけがないと即答した。
だって、俺の友人が言っているんだから。
俺が一人の時に話しかけてくれたヒトガミ…そんな友人が言ってるんだから。
信じなければダメだ。アイツを信じられないなら、俺は、また一人ぼっちになる。
それは、それだけは嫌だ。
また一人ぼっちになる。それだけは嫌だった。
▫️
今日は昨日のことをヒトガミが詳しく教えてくれた。
龍神が、どうやって俺たちの居場所を見つけたのか。
龍神が、アスラ王国になんて言って操ったのか。
龍神が、水神になんて言って操ったのか。
しかし、そんなものはどうでもいい。
大事なのは最後の言葉だ。
「君の全ての元凶、そして、僕の最大の敵、オルステッドを…」
今でも思い出す。
鮮明に思い出す。友人の言葉。
「殺してよ」
ヒトガミの言葉。瞬間、俺の生きる理由が決まった。
全てを失った俺の人生、何も残っていない俺の人生。
俺の人生、最悪な人生。
俺は、そんな人生の残りを賭けて、龍神を、最強を殺すことにする。
それこそが、俺の最後の願い事。
そう、最強を殺す。それこそが、俺の人生最後の…
…友人との、たった一つの約束だ。
日記編について
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いる(読みたい)
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いらない(読みたくない)