地獄の日記、永遠に感じるほどの日記。
そんな日記も、残すは後わずか…
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殺す、殺してやる。
最強、最強。全ての元凶、龍神、お前を殺してやる。
ロキシー、シルフィ、エリス、ノルン、パウロ。
皆の敵を討つのは……俺だ。
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エリスの鳳雅龍剣を握った。
闘気を無視出来るすごい剣、鳳雅龍剣。
まだ、ほんのり愛しの人の匂いがするエリスの剣。
エリス、エリス。今度こそ守るよ。
ずーっと一緒っていう約束は守れなかったけど、今度こそ君に誓うよ。
最強を超える。この剣と一緒に、エリスと一緒に龍神を超える。
俺は、鳳雅龍剣を握りしめて、赤い髪を思い浮かべて。
大きくなり続ける愛情に、たった一つの誓いを立てた。
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最強を超えるために俺は頭を回した。
もう俺には誰も居ない。周りに誰も居ない。
だから、たった一人でゆっくりと考えられる。
強くなるために、元凶を殺すために。
自分で考えてヒトガミに聞く。
このサイクルを確立しようと思う。
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夢にヒトガミが出てきた。
俺は自身の案を伝えてみる。
「魔術はかなり鍛えたから剣を鍛えようと思う。そのために、昔ギレーヌが言っていた剣の聖地に行きたいんだけどさ、どう思う?」
こんな提案。ヒトガミは「君は、今のままでも龍神を超えられるよ」と返してくれた。
この言葉を聞いて、俺は思わず苦笑いしてしまった。
流石に無理だろ。今のままで勝てないことは俺が一番分かってる。昔、龍神にボコボコにされた俺が一番分かってる。
まぁ、アイツなりの元気付けだったんだろうな。
俺は「ありがとう」とだけ伝えてヒトガミの元を去った。
俺が目指すのは最強。そのためなら出し惜しみは一切しない。
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剣の聖地まで空を飛んだ。
重力魔術を使って最短距離で移動した。
その間も、ヒトガミに行く必要無いよ!と言われた。
その言葉に俺は何度も微笑んだ。
ヒトガミは失敗することもある。間違えることもある。
俺と似てるな。そんなヒトガミ、俺の友人。
でも安心してくれ。
もうお前に失敗はさせない。
俺がお前を守るよ。
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剣の聖地に着いた。
そこにギレーヌが居た。
少し喧嘩になった。
なぜ、エリスの所に私を連れて行かなかった!と怒鳴られた。
俺は、ごめんとだけ謝った。それだけを言ってギレーヌの元を去った。
もう喧嘩はしない。もう争いはしない。
俺の労力は最強を超えるためだけに使う。
それが今の俺の気持ちだ。
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ギレーヌが俺に着いてきた。
エリスお嬢様は、お前が好きだったと、狂うほど大好きだったと伝えられた。
毎日、毎日、ルーデウスのことだけを話していたと伝えられた。
俺は、その言葉を静かに聞いていた。
エリス、エリス。彼女は最後になんて言っていたのかな?
死ぬ間際に、虚ろな目をする前に何を話していたのかな?
俺は、そんなことを考える。それだけを考える。
瞬間、俺の視界が濡れた。
エリスを守れなかった俺が嫌いになった。
ずーっと一緒に居なかった俺が嫌いになった。
もしかしたら、エリスはそう思っていたのかな?
死ぬ間際に愛しの人から嫌われた……少しだけど、そう思ってしまった。
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剣聖十人と組み手をした。
お前みたいな中年の魔術師じゃ勝てないと言われた。
ふっ…と鼻で笑うと、剣聖達は苛つきながら俺に襲いかかってきた。
魔導鎧は要らない。予見眼だけで全員床に眠らせてやった。
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剣神と話をした。
剣神は龍神と戦ったことがあるらしい。
話を聞いてみた。
龍神は龍聖闘気という物を纏っていて、馬鹿げた防御力を持っているらしい。
さらに剣の流派は全て神級。アホみたいな強さらしい。
流石は最強だと思った。しかし、それだけ。俺は特に驚かなかった。
驚かない俺に笑う剣神。
そんな剣神に俺は聞いてみた。
「俺は龍神に勝てるか?」
俺の言葉。
剣神は笑いながら答えた。
「お前の目には欲が無い。それじゃあ勝てねぇ」
ムカついた。
魔導鎧を着て分からせてやることにする。
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ギレーヌに、お前でも剣神には勝てないと言われた。
この言葉に俺は笑った。
……面白い、ぶっ倒してやる。
剣神を倒す。
剣神に勝てなければ、最強に勝つなんて夢のまた夢だ。
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ギレーヌが驚いた顔をしていた。
見習いの剣士たちも驚いた顔をしていた。
その理由は明白。
俺が鳳雅龍剣を突き立てていたから。
倒れる剣神の顎先に剣を突き立てていたから。
無表情の俺、笑う剣神。
魔術師より剣士の方が強い。
その常識は、この日、いとも容易く塗り替えられた。
▫️
剣神に再度聞いてみた。
俺は、龍神に勝てるのか?と。
剣神に勝った俺。
しかし、奴は同じことを言ってきた。
「欲が無いお前じゃ勝てない」
そう言ってきた。
俺は何も言わなかった。
『欲』という抽象的な物、俺には分からない。
だから、やりたいことを挙げていく。
俺は強くなりたい。
光の太刀と無音の太刀。
強くなるために、俺は剣神流の奥義をこの地で習得する。
───
しばらく、剣の聖地での出来事が書かれていた。
周りに沢山剣士が居るが、やっぱり一番可愛いのはエリスだとか。
一人でご飯を作って不味かった、やっぱりシルフィやアイシャはすごかったとか。
魔術を忘れないように論文が書きたいけど、書くのが難しい。やっぱり魔術を論理的に説明出来るロキシーはすごかったとか。
そんなことが書かれていた。
しかし、それだけじゃない。
所々に書かれた龍神を殺すという文字。
時に赤字で、揺れる文字で書かれたものを見て、俺は唖然としていた。
その文字には執念が篭っていた。
───
▫️
俺は強くなった。
剣の聖地で強くなった。
予見眼をフル活用する戦い方を確立した。
初撃を放つ、敵が避ける方向を予見眼で捕捉。そこに光の太刀や無音の太刀を放つ。
敵が攻めてくるのを予見眼で捕捉。
殺気と動きを見て水神流、カウンターで殺す。
そんな戦術を確立している。
もう俺は誰にも負けない。
俺は誰にでも勝てる。
やっと言えるな、この言葉を。
自信を持って言える。この事実を。
たった一つの揺るぎない真実。
『俺は最強になった』
こんな短い言葉が、俺の心に突き刺さった。
▫️
剣の聖地を出る前に剣神と稽古をした。
真剣の稽古、相手は二人。
前剣神『ガル・ファリオン』
現剣神『ジノ・ブリッツ』
同時に二人と相手をした。
魔術は無し、真剣の撃ち合い。
流石に強かった。しかし苦戦はしない。
俺の目の前には膝を着く二人の剣神。
この光景にギレーヌも剣聖も驚かない。
そう、俺が勝つのは必然だった。
▫️
剣の聖地を出た。
俺は最後に、ガル・ファリオンにもう一度聞いてみた。
この言葉、最初の言葉を。
「俺は龍神に勝てるか?」
この言葉に剣神は薄く笑って答える。
「もう、分からねぇよ」
俺の分かる次元じゃねぇ。
欲がある奴が強いというのも自信が無くなった。
そう言われた。
分からないという曖昧な言葉。
しかし、十分だ。
剣神が理解出来ないほどの領域に立った、それが何よりも大事なんだ。
もう、ここに用は無い。
俺の決意。あとは、それを見せるだけだ。
▫️
剣の聖地から飛ぶ。
空高く飛ぶ。
移動する俺。そんな時、異変が起きた。
異変、大きな異変。
その発生源は遠くの土地。俺の視界の端で大きな砂埃が起こっていたことだった。
▫️
夢にヒトガミが出てきた。
久しぶりだな!と俺が笑顔で言うとヒトガミも笑ってくれた。
そして、俺の見つけた異変。砂埃について説明してくれた。
どうやら、あの砂埃は軍隊らしい。
アスラとミリス神聖国の軍隊、大量の軍勢らしい。
ヒトガミは細かく話してくれた。
その軍隊を率いているのは北神だとか。
北神の父親も居るとか、まだまだ強い奴がいっぱい居るとか。
せめて、剣神が近くに居る時に攻めてきてくれれば良かったね〜と笑っていた。
もう死んじゃうね?と言われた。
俺は、この言葉に笑った。
大きく、大きく笑って、醜い握り拳をヒトガミの胸に当てた。
そして、一つ。安心する言葉を一つ、ヒトガミへ置いてやった。
「俺は勝つよ。任せてくれ」
この言葉にヒトガミは困惑していた。
……は?と首を傾げていた。
国二つに七大列強を初めとした化け物共が居るんだよ?と言われた。
それこそ、勝てるのなんてラプラスだけ……そう言っていた。
ヒトガミの心配。
俺は、この心配に、ゆっくりと言葉を残す。
「化け物の集まり、か。そうか、そうなんだな。でも…」
醜い握り拳に力を込めて、ゆっくりと笑って。
この言葉を一つ。
「最強じゃ、ないんだな」
最後の言葉。
俺は、この言葉を置いて、友人との白い空間を去った。
▫️
パチパチという森が燃える音。
大量の死体と生首。
怯える奴と助けを乞う奴。
お前を倒して英雄になるんだという北神。
俺は、そんな北神の腕を切り落としてやった。
化け物……と言ってくる北神に、俺は笑ってやった。
満面の笑みで言葉を置いてやった。
「化け物じゃない、最強って言えよ」
俺は王竜剣カジャクトを奪って言ってやった。
北神の頭を潰して言ってやった。
二つの国と北神を倒した俺。
魔導鎧に付くのは傷じゃない。痛みじゃない。
有るのは、返り血だけ。
大量の返り血を浴びて、俺は笑う。
さぁ、待ってろよ最強。
俺は、お前を殺す。
最強が、お前を殺してやる。
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大量に残る死体の山。
何も感じないが、あまりにも臭いため火魔術で処理することにする。
はぁ、めんどくさい。
まぁ、祝勝会みたいなものか。
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今日は死体を片付けていた。
そんな時、驚くべきことが起きた。
大量の死体……その中にギースが居たんだ。
なんでアイツが?良く分からない。
すごく良くしてくれたギース、そんな彼の死体。
それを俺はじっくりと見ていた。
俺は俺自身が悲しむと思ってた。辛くなると思ってた。
でも、何も感じなかった、日記を書いてる今も何も感じない。
あぁ、そうか。そうだったのか。
俺は壊れていたんだ。
シルフィが昔言っていた言葉。優しいルディが壊れたという言葉。
今なら分かる。
殺人が容易になった俺。強くなった俺。
そんな俺は、とっくの昔に…
…壊れていたんだ。
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今日から龍神を探す旅に出ようと思う。
俺のすべきことは、それだけだ。
そういえば、アスラとミリスの二つの国を滅ぼしてからヒトガミに会ってないな。
会ったら自慢したい。
もう勝てるかもしれないって。
お前との約束を絶対に守ってやるって。
最後の願い。俺は、それを叶えようと思う。
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最悪だ、最悪だった。
もっとヒトガミの言葉を考えるべきだった。
奴が、剣の聖地に行くなと言った理由。それを考えるべきだった。
俺は、人だ。
人、人族。寿命がある。
ゴホッと一つ咳をした俺。
そんな俺の視界には、見慣れた、赤い血溜まりがあったんだ。
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俺は病に冒された。
咳をすれば口から血が出る。
走れば肺が痛くなる。
自身の手を見れば、シワだらけ。
あぁ、もう時間がない。
もう動けない。
俺は最強になったのに、結局ダメなのか。
約束。俺は大切な人との約束を一つも守れないのか。
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俺は、なんで一人になったんだろう。
リーリャが居たら看病してくれたのに。
ゼニスが居たら、母親として心配してくれたかもしれないのに。
ナナホシが居たら……龍神と旅をしたナナホシが居たら、彼女にお願いして、病気になる前に龍神と出会えたかもしれないのに。
本当に俺は駄目だな。
何も出来ない、何もやれない。
強くなっても。俺はクズなままだ。
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夢に、みんなが出てきた。
ヒトガミの計らいだろうか?それとも偶々だろうか?
どっちでもいいか。
すごく、すごく幸せな夢を見た。
何もせずに、みんなと見つめ合う夢。
みんなで抱き合いながら笑い合う夢。
もう叶わない夢。
……叶わない、なんでだ?
本当に、そうなのか?
叶わない、叶わない。それは過去のことだから?
過去、過去…そうか、そうか!
俺は、やるよ。やってやるよ。
龍神、ヒトガミ…みんな見ててくれ。
本当の本当に、これで最後だ。
俺が最後に固める……正真正銘の決意だ。
▫️
過去に転移する魔術を作ろうと思う。
過去転移魔術。これが完成すれば全てが覆る。
やりたい、作りたい。
そうか、これが『欲』なのか。
剣神の言っていた『欲』ってやつなのか。
最後の最後で気付けた、俺の本当の願い。
ヒトガミ、待っててくれ。
俺が送る最高の感謝。お前への恩返しは、まだ終わっちゃいない。
▫️
夢にヒトガミが出てきた。
俺は、剣の聖地に行くなというお前の言葉を無視してごめんという旨と、過去転移魔術について説明した。
そんな俺の謝罪、しかしヒトガミは聞いていなかった。
彼は、大きな声で「過去転移……そんなことしなくていいよ!」と言ってくれた。
「恩返しなんて要らないよ!」と言ってくれた。
アイツは、とことん優しいな。
俺は微笑みながらヒトガミを見た。
ただ黙って、笑って、ヒトガミだけを見てた。
彼、ヒトガミは「武力でも、病でも、君は死なないのかよ…」と言ってくれた。
褒めてくれてありがとう。俺は、お前が、ヒトガミが……大好きだ。
ニッコリと笑って、そう返した。
▫️
過去転移魔術が完成した。
もう一度日記を読み直す。日時はロキシーが死ぬ前、俺が選択を間違えた所に飛ぼうと思う。
後は、昔の俺に伝えることだな。魔術、剣術。
言い過ぎても全部習得出来ずに中途半端になる。
何を伝えるか……明日までに考えよう。
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昔の俺に言うことを決めた。
伝えること。それは『魔導鎧』だ。
神級レベルの剣神流や水神流。
重力魔術、その他の様々な混合魔術。
色々考えたが、一番は、やはり『魔導鎧』だろう。
ザノバとクリフが居れば作れるし、戦闘力も格段に上がる。
昔の俺に必要なものを完璧に補ってくれる。
よし、よし…
さぁ!行こう!ヒトガミの恩返しへ!!!
過去という名の俺の未来へ!!!
ここから数ページ何も書かれていなかった。
日記の最終ページまで何も書かれていない。
最後の最後。裏表紙に書かれていた言葉は…
『魔導鎧』を作って、ヒトガミの恩返し……龍神を殺せ!!!
そう、殴り書きのように書かれていた。
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読み終わった、遂に終わった。
俺の、俺自身の未来……読み終わってしまった。
俺は暫く愕然としていた。
俺を虚無感が襲う。なんとも言えない感情が俺の心に襲いかかっていた。
「すごく重かったけど、日記で書かれたことが全てじゃないんだろうな」
俺は誰も居ない地下室で呟いた。
全部じゃない。そう思った理由は簡単だ。
「龍神がループしていることは、この日記に書かれていないし、呪いについても少ししか触れていない」
分からないことだらけ。しかし分かることがある。
それは俺が不幸になるということ。皆を失うということ。
そして、もう一つ。すごく大切なこと。
「やっぱり、ヒトガミは俺の仲間だったんだな」
老人の力強い文字。
偽りの無い助言。俺は奴を信じようと思う。
「魔導鎧の制作、そしてヒトガミに相談だな」
地下室にある椅子を引いて、俺はゆっくりと歩き出す。
地下から出た俺の顔を太陽が照らす。
老人は過去へ、俺は未来へ。
そんな言葉が似合う。
皮肉なほど綺麗な太陽が、俺と未来を照らしていた。
老人の日記を見た一人の男。
彼は、どんな決断をするのだろう。どんな最後を迎えるのだろう。
終末は、たった一つ。
しかし、その一つが分かる者は誰一人として居ない。
https://youtu.be/on2VsvDNiDU?si=Hc6OA4dBhefEoG01
もしも、この老デウスがオルステッドと戦ったifを見たい方はこちらをご参照ください。
https://syosetu.org/novel/389624/
日記編について
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