もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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最強との対決 準備 その2

 

 

 

「ルディ!ふざけてんじゃねぇぞ!」

 

一人の男の怒声が響き渡る。

彼の名は『パウロ・グレイラット』

父である彼が、息子の胸ぐらを掴んでいた。

 

「父さん、離してください」

 

「離さねぇ!ルディ!訂正しろ!今の言葉!」

 

「訂正はしません。俺は、戦います」

 

「ルディ!なんでだ!なんで、そいつと戦う必要がある!?」

 

無表情の息子と激昂する父。

そんな二人の会話は、一時途切れることになる。

理由は簡単。

戦う必要があるのか?という疑問に、息子が答えなかったからである。

 

一瞬の静寂。

沈黙を破ったのは、質問をされた息子ではない。

質問した父親の方であった。

 

「ルディ、聞いてくれ。お前が戦おうとしてる奴は、すげぇ有名だ。馬鹿な俺でも知ってるぐらいの相手だ」

 

「…」

 

激昂する父の声が途端に小さくなる。

優しく、心配するような声色。

 

そんな父の様子を、息子は静かに見つめていた。

 

「ルディ、お前は天才だ。迷宮でも、アトーフェとの戦いでも、お前はすごかった。でも、それでもダメなんだ」

 

俯いて項垂れて、膝を落とす父。

その姿を見つめる息子。

しかし、息子の表情が変わることはない。

 

ただ、黙って見つめる。それだけ。

話すのは、言葉を続けるのは父親。

 

「龍神 オルステッド。そいつだけは、ダメなんだよ…」

 

家族が揃ったのに、なんで死にに行くんだよ?と涙ぐむ父。

膝を落として、俯く父。そんな彼の背中は、息子よりも小さかった。

 

「父さん、ご心配ありがとうございます」

 

父の激昂の正体は、心配。

心配する父。全ては愛情から怒っていたんだ。

 

愛情からの怒り。

そう、愛情という感情は変化する。

 

例えば、こんなふうに…

 

「ルーデウスは、龍神に勝てるわ。絶対」

 

元気で、力強い声。

そんな声を放つ赤い髪の女性が、息子の横に並ぶ。

 

彼と同じ目線で、一緒に何かを見つめている。

 

「だって、私が付いてるもの。ルーデウスは、私が守るんだから」

 

横に並んで、手を絡める女性『エリス・グレイラット』

恋人繋ぎで旦那を見つめる姿は、まさにパートナーと呼ぶに相応しい。

 

「龍神との戦い。私は、この時のために強くなったんだから」

 

彼女の愛情は、決意へと変化する。

そう、決意…愛する人を守るという決意。

 

そんな彼女の瞳には、何かが宿っていた。

 

「エリス…」

 

「ルーデウス…」

 

見つめ合う夫婦。

そんな二人の瞳には、愛する人しか映らない。

 

戦って、勝つ。

そんな単純なことが、二人の愛情となって絡まっていく。

 

 

─────────────────────────

 

 

あの日、龍神と戦うと決めた日から一ヶ月が経過した。

死ぬ気で頑張った一ヶ月。

頑張ったことをまとめようと思う。

 

①龍神を誘い込むためにナナホシと相談。

②魔導鎧制作

③剣の聖地に居るギレーヌに手紙を出し、鳳雅龍剣を持ち帰ってもらう。

④龍神について、ヒトガミに細かく聞く。

 

この四つだ。

①に関しては、なんとか成功することが出来た。

龍神は悪い人じゃないと言っていたナナホシ。

そんな彼女に、一緒に旅をしただけで龍神の何を知っているんだ?と言った。

俺の地獄の日記…龍神の悪事を見せてやった。

 

この言葉と行動に、ナナホシは、すごく悲しい顔をしていた。

考えて考えて、悩んで、悩み抜いて。それでも、俺に恩があると手伝ってくれることになった。

ドライン病で、ベッドに寝ていたナナホシ。

そんな彼女に罪悪感が募るが、これしか方法が思い浮かばなかった。

 

ナナホシ、ごめん。

 

彼女への謝罪。

俺は、小さく呟きながら、彼女の側を後にした。

 

②に関しても、とても順調だ。

魔力消費は大きいものの、とてつもないものが作れている。

制作の中心はザノバとクリフ。

彼らが一生懸命作ってくれている。

 

右手にはガトリング砲。前世の知識を活用した俺のストーンキャノンが一秒に十発も撃つことが出来るえぐい代物だ。

 

左手には吸魔石を搭載した。

オルステッドは、呪いで魔力の回復が遅いらしい。

だから、魔術を使ってくるかは分からないが…まぁ、搭載しておいて損はないだろう。

左手には、さらに盾も搭載している。

大きな、大きな盾だ。土の盾、それを押し付けて攻撃しようと考えている。

盾の先端には、防御を無視出来るパウロの剣を付けているからな。

パウロと共に戦う気持ちで頑張ろうと思う。

 

魔導鎧に関しては、こんなところだな。

すごく順調だ。

 

③に関しては、日記から得た情報だ。

ギレーヌが、鳳雅龍剣を持ち帰ってエリスに渡すという情報が老人の日記に記されてあった。

ということは、ギレーヌが鳳雅龍剣を剣神から貰えているということになる。

鳳雅龍剣、闘気を無視出来るこの剣は、必ず戦いに必要になるだろう。

 

そうなれば話は早い。『俺とエリスでオルステッドと戦うことになった。ギレーヌ、こっちに戻ってきてくれ』という手紙を出せば、急いで来てくれることだろう。

 

現に、彼女が最近帰ってきた。

エリスと毎日のように剣の稽古をしている。

 

こちらも順調に事が運んでいる。

 

④に関しても、かなり順調だ。

アイツ…ヒトガミは、なんだかんだ優しいからな。

色々と教えてくれる。

 

魔導鎧の作り方だったり、戦略の立て方だったり。

色んなことを教えてくれる。

 

その中でも、大切なことはこれだ。

 

龍神は全ての流派が神級だが、特に水神流はアホみたいに強い。

 

ヒトガミの言葉。

俺は、これが特に大事になると思っている。

 

エリスの苦手な水神流。

それを、どうやって突破するかが鍵だ。

 

まぁ、ヒトガミとの会話はこんなところだな。

あ、いや、もう一つあったか。

そこまで大事でもないが…一応、整理しておこう。

 

龍神と戦うことは、ロキシーに言わない方が良いよ。

 

ヒトガミの、こんな言葉。

まぁ、特に理由はないらしい。

妊娠してる彼女に、これを言って心配させて…流産なんてことになったら洒落にならないだろ?って言われた。

なんだよ。ロキシーの子供殺せって言ったのはお前だろ?と言ったら、はははーと笑われてしまった。

 

まぁ、ロキシーは相手を伏せても手伝ってくれるだろうし。

無理させたくない気持ちは俺もヒトガミと同感だ。

聞いてやることにする。

 

この四つ、中々順調だ。

オルステッドとの戦いまで、あと少し。

勝ちへの布石は、全て撃つ。

 

俺の本気を、注ぎ込んでやる。

 

 

─────────────────────────

 

 

「威力はとんでもないですが、実戦では使えなさそうですね…」

 

「師匠、やっぱりそうですか」

 

俺は、治癒魔術を掛けながらロキシーと話をしていた。

治癒魔術を掛ける相手は自分じゃない。ロキシーでもない。

相手はエリス。黒焦げの彼女を、俺は治癒魔術で治していた。

 

「ゴホッ。ルーデウス、魔力使わせてごめんなさい…」

 

「エリス、そんなこと心配しなくて大丈夫ですから。歩けなかったら、俺に寄りかかっても大丈夫ですからね?」

 

「それは、大丈夫よ。この後、ギレーヌと稽古があるから」

 

黒焦げになった彼女、エリス。

彼女は、自らの魔術による自傷に苦しんでいた。

 

学園の時に浮き彫りになった、制御が出来ないという弱点。

しかし、それは弱点というだけではなかった。

 

「自身が傷付くほどの魔力を、一気に魔術として放出出来るのはすごいんですが…」

 

「そう、ですよね。エリスは、すごいですよね…でも、師匠?使わせるのは、あまり…」

 

「もちろんです。エリスの上級火魔術の修行は辞めておきましょう」

 

彼女の自傷の正体は、自らの上級魔術。

彼女は妊娠している間、剣が振れないからと魔術の修行をしていたらしい。

それによって、上級を習得…かなりすごいが、実戦で使うことは難しいということになった。

 

無詠唱も、詠唱短縮も技術として難しい。

その上、自傷ダメージもある。

 

すごいのは、威力。ただ一つ…

突出した技術はすごいが、龍神戦で使うことは無理だろう。

 

それが、エリスの魔術を見たロキシーと俺の決断だった。

 

「ルーデウス!治ったわ!」

 

「ふふっ、元気になって良かったです」

 

彼女は剣に炎を纏える。

それだけで魔術を鍛えた価値はあるし、それで十分だろう。

あとは、俺がやるだけだ。

 

「頑張ったつもりだったけど、ルーデウスが無理っていうなら無理よね…分かったわ!それなら、剣に全振りするわ!」

 

俺は、エリスを励まそうと準備していた。

しかし、彼女は落ち込まない。

彼女は、ギレーヌから貰った鳳雅龍剣を握りしめ、強くなろうと歩みを進める。

 

「やっぱり、エリスはすごいなぁ」

 

俺は、この言葉を小さく呟いた。

誰にも聞こえない声、感嘆するような声。

怪我が治って一直線で走る彼女。

俺は、そんな彼女に何度も惚れ直す。

 

「よし!俺も頑張るぞ!」

 

俺もエリスに負けじと大きな声を上げた。

目指すは、みんなを守る未来。

俺は予見眼を開いて、近接戦闘の修行へと赴いた。

 

 

─────────────────────────

 

 

「はぁ、水神流潰しかぁ…」

 

「どうした、ルディ?落ち込んでんのか?」

 

「まぁ、そうですね。落ち込んでるかもですね」

 

「なんだ、どうした?父さんが聞いてやるぞ」

 

俺は、ギレーヌとエリスの打ち合いを座りながら眺めていた。

ため息を吐きながらエリスのことを考える俺…そんな俺に話しかけてくれるパウロ。

 

パウロ、パウロ…そうか、パウロは水神流上級だったな。

聞いてみるか。

 

「父さん、なんでも聞いてくれるんですか?」

 

「あぁ、もちろんだ。一ヶ月前は、お前の胸ぐら掴んじまったからな…これぐらいは父さんとしてやらせてくれ」

 

「そんな、怒ってませんよ。でも、そういうことなら言わせてもらいますね」

 

俺は言うことを頭の中で整理する。

しかし、上手く纏まらない。うーん、難しい。しょうがない、素直に聞いてみよう。

 

「父さん、水神流の潰し方ってありますか?」

 

「水神流の潰し方か?そんなの簡単だろ。攻撃しなきゃ良いんだよ」

 

「いや、攻撃しないって…それは流石に無理ですよ」

 

パウロの口から放たれたのは、攻撃しないという選択肢。

まぁ、そりゃあそうなのだろうが…なんというか、納得出来ない。

 

「攻撃しないのは分かりました。そうしたら、他に弱点ないんですか?例えば、いきなり抱き付いて愛してる!って言うような意表を突く攻撃に弱い〜とか」

 

「ルディ、いきなり抱き付くって…やっぱり、お前の頭すごいな。まぁ、意表を突くのは効果的だが、無理だろうな。全ての攻撃が警戒するレベルなら出来るだろうが、今のルディの攻撃で脅威になるのはストーンキャノンだけだろ?それじゃあ意表は突けねぇよ」

 

やっぱりそうか。

難しいよなぁ。まぁ、薄々分かってたけど。

 

「水神流は相手に合わせる技だ。攻撃しない以外だと……本当に無いだろうな。少なくとも俺は知らん」

 

「上級の父さんでも知らないんですか…それは、難しいですね」

 

俺は、この言葉を呟きながら考えていた。

難しいと言いつつ、なんだか、そろそろ見えてきそうなんだよなぁ。

一ヶ月みっちり修行して、水神流も見てきて、パウロと会話して…そろそろ分かってきそうなんだが。

 

水神流、カウンター、相手に合わせる。

 

ん?相手に合わせる?

 

相手…エリスに合わせる?

 

エリス、エリス…そうか、敵はエリスに合わせるのか。

 

「父さん!ありがとうございます!なんか、見えてきました!」

 

「お!ルディ、元気になったな。まぁ、こんなんでも俺はお前の親父だ。なんでも相談してこい」

 

「はい!父さん、ありがとうございます!」

 

俺は、大きな声を綺麗な空に広げた。

希望が広がる未来。そんな未来に届くように、大きな声を放っていく。

 

エリスの魔術、剣術。

俺の近接戦闘と魔導鎧。

 

そして、水神流潰し。

 

全ては、龍神を殺すために。

 

俺は意を決して、戦いに身を放り込む。

全力で、本気で、士気を高めて最強に挑む。

 

目指すは、大切な人が笑える世界。

 

俺は、そのために…生成するストーンキャノンに魔力を込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





『現状の力』

ルーデウス・グレイラット

ストーンキャノン 
前世の知識を活用した技。人体を破壊することに関しては超一流。

近接戦闘
魔導鎧無しの時はアトーフェに歯が立たないレベルだったが、魔導鎧を着れば魔術無しでギレーヌにも勝てる。
予見眼による判断力も高い。
パウロとエリス、ギレーヌと研鑽を積み、かなり強くなっている。


エリス・グレイラット

剣神流の使い手だが、光の太刀は撃てない。しかし、火力は剣に炎を纏わせる技術により一級品。
踏み込みがなくても常に高火力が出せる。

剣神流のみの戦いならギレーヌより少し弱い程度。
しかし、水神流には上級にも勝てない。

魔術は自傷ダメージ込みならとてつもない技が出せる。
しかし、自傷で身体はボロボロになる。






















最終決戦 泥沼&狂犬VS龍神 勝者予想

  • ヒトガミの敵にして最大の使徒 泥沼&狂犬
  • 世界最強 七大列強二位 龍神
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