「過去転移、執念、変な恩返し。本当に厄介極まりない奴だよ」
白い空間、たった一人の神が何かを呟く。
「クズで醜くてさ、最低最悪な奴……」
彼の名はヒトガミ。
一人ぼっちで悪態を繰り返す。
「最低最悪……ふふっ。でも僕は本当にあると思ってるよ」
流れが変わる。
言葉は悪態から期待へ。
自身が本当の意味で倒しきれなかった男。『ルーデウス・グレイラット』
そんな男だからこそ、ある種の期待にヒトガミは胸を膨らませていた。
「龍神殺し。可能性は十分あるよね」
最強殺し、この言葉を放つヒトガミの顔は笑っていた。
楽しんでいるのか、はたまた本気で思っているのか。
その心情は誰にも分かるはずはない。
誰にも理解されないヒトガミ。彼は、一つ言葉を置いていく。
「オルステッド、君が今から戦うのはね」
泥沼VS龍神。
始まりの合図は、この男の言葉。
「僕にとっての最大の敵。そして……」
歪み始める白い空間。
さらに大きく笑うヒトガミ。
彼の最後の言葉は、これだ。
「ヒトガミの使徒。僕の最大の切り札だよ」
自身が育てたルーデウス・グレイラット。
その対決。彼は楽しみで仕方がなかったのかもしれない。
空間は歪み、終わりを迎える。
しかし、それは終わりと同時に始まり。
そう、最悪の始まり。
最悪への第一歩。
地獄に片足を踏み入れる、最悪の一歩目だった。
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チュンチュン
朝が来た。不幸な人間、幸せな人間。それら全ての人間を見境いなく綺麗に照らす朝日。
そんな朝日が俺の横顔を照らしていた。
今日は俺にとっての決戦の日。
ザノバとクリフと共に制作した魔導鎧を信じて。
ロキシーとシルフィに教わった治癒魔術を思い出して。
エリスと共に出掛けた。
扉を出て家を離れる。
家がどんどん小さくなって、ラノア王国も小さくなって。
隣に居るエリスだけが大きくなっていく。
それほどの歩み。
俺は一粒小さな汗をかいた。
嫌な汗じゃない、昔みたいな恐怖の汗じゃない。
エリスと共に今日、俺は『最強』を超える。
そんな思いが募った覚悟の汗だった。
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「ルーデウス、大丈夫よ。私が居るわ」
「エリス、心配なんかしてませんよ。俺たちなら最強を超えられる。俺は本気で思っています」
エリスと小さく言葉を交わして、林の中で待ち伏せする。
待つのは俺たちが超えるべき相手。
息を殺して一人の男を待つ。
………
……
…来た。
銀髪に竜の目。恐ろしいほどの闘気を纏った男が部屋に入った。
ナナホシと一緒に立てた不意打ちの作戦。
その部屋に入り込んだ。
瞬間、俺は撃ち込んだ。
ライトニング、ライトニング。
巨大な岩を作り、夢中で落とす。
ドン!ドン!ドン!!!
息が切れるまで必死に。
ナナホシが作ってくれたチャンス、その不意打ちを無駄にしないように。
「……やったか?」
俺の疑問。
返答は一瞬にして返ってくる。
「ライトニング。とてつもない威力だな」
竜の目が俺を睨み付ける。
黒焦げのオルステッド。しかし、奴は狼狽えない。
瞬間、俺の背筋が凍る。
奴の殺気が俺の背筋を凍らせる。
真の勝負。
エリスとの共闘が始まりを迎える。
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ライトニングに異常な威力の土魔術。
オルステッドは、それを受けた。
しかし、表情に大きな変化はない。
何事もなかったように、ゆっくりと言葉を溢す。
「不意打ち、か」
奴の顔に焦りは無い。
ただ、考える。
最短の殺し。それだけがオルステッドの脳を支配する。
殺気を込めた目には二つの人影があった。
完成度の高い魔導鎧を身に纏った怪物と、剣を握る女。
女……エリス・グレイラット。
呪いなんてお構いなし。ルーデウスを守る。それだけを考えて、エリスは闘気を練り上げる。
剣に炎を纏って、構えて、腰を落として地面を鳴らす。
彼女の足音から聞こえるのは耳を壊すような爆音。
「…良い踏み込みだ」
刹那の出来事。エリスがオルステッドに踏み込む。
速い、とてつもなく速い。真っ直ぐで破壊力のある太刀。
殺気が大量に篭る炎の太刀。
そんなエリスの踏み込みにオルステッドも腰を落とす。
奴が放つのは『光返し』
速いエリスの太刀に対して、選択するのは完璧なカウンター。
「確かに速い。だが、それだけだ」
小さく呟く最強の言葉。
同時、オルステッドが振り上げた右手を振り下ろす。
最強の名に恥じぬ攻撃。
刹那、鳴ったのは爆音。
バン!
音と共に飛んだのは右腕。
飛んだ人物は俺じゃない。エリスじゃない。
右腕が消し飛んだ人物。その名は、龍神 オルステッド。
光返し、最強の光返し。
そんな光返しは、この日、この時、封じられた。
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俺のストーンキャノンが奴の右腕を消し飛ばす。
目を見開き、驚いた表情のオルステッド。そんな奴の胸をエリスの炎の太刀が切り裂いた。
「ルーデウスは、やっぱりすごいわね」
「土魔術。そうきたか」
オルステッドの言葉が物語る。
光返しの不発、俺のストーンキャノンの威力。
そして、それだけじゃない。
このダメージは次に繋がる一手になる。
「よし、通用する」
俺の呟きと同時、オルステッドが俺たちから距離を取った。
奴の姿が物語る現状。不意打ち、右腕の欠損、エリスの炎の太刀により切り裂かれた胸。
奴のダメージは確実に蓄積している。
故に警戒しているな。俺の水神流潰し。
しかし、関係ない。俺の狙いは見事に決まった。
俺は水神流を習得しているわけではない。
寧ろ剣は苦手だ。
しかし、エリスのことならばなんでも分かる。
感情、趣味、そして剣技。
ずっとエリスと共に生活してきたんだ。
エリスのことは誰よりも分かる。
お前が何度ループしていようと関係ない。
そこは、そこだけは、俺はお前に勝てる。
そんなエリスへの感情。そこから導き出せる答えは一つ。
それは『エリスに対する』カウンターならば、俺でも読めるんじゃないか?
これが俺の導き出した答えだった。
水神流の初級だろうが神級だろうが関係ない。
水神流が敵に、エリスに合わせる技な以上、俺でも防げるんじゃないか?
エリスのカウンターにカウンターを合わせる。
そんな推測。答え合わせは奴の消えた右腕が証明してくれた。
神級の水神流、最強の水神流は…
……この時、死んだ。
エリスの剣を120%引き出す。
俺がエリスを支える。
俺はそんな決意を込めて大きな声で宣言する。
「俺は絶対にエリスを差し込む!お前に!オルステッドに!!!」
「……」
黙るオルステッド、その姿を見つめて俺は覚悟を決める。
愛しのエリスを差し込むという俺の仕事。
エリスの夫として恥ずかしくないように。
俺は仕事を完遂し、オルステッドを殺す。
しかし、これで終わりではない。
最強を倒す。それは生半可な物じゃない。
その証明。
聞こえてきたのは有り得ない言葉。
「……水神流封じか。だが、甘いな。」
オルステッドの言葉。右腕と胸を切り裂かれても動揺を見せない言葉。
龍神が練り出すのは闘気と殺気。
それを込めて。
刹那、最強が踏み込んだ。
最終決戦 泥沼&狂犬VS龍神 勝者予想
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ヒトガミの敵にして最大の使徒 泥沼&狂犬
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世界最強 七大列強二位 龍神