刹那、オルステッドが踏み込んだ。
落雷のようなスピード、聞くだけで耳が爆発するような音が鳴り地面がひび割れる。
オルステッドは自身に治癒魔術を掛けていた。
上級の治癒魔術。故にエリスの炎の太刀、俺の不意打ちのダメージは消えていた。
しかし、上級では欠損までは治せない。
奴の右腕は消えたままだった。
水神流から剣神流へ。
オルステッドの左腕がエリスへと向かう。
エリスは仰け反りながらも、顔の前で必死にオルステッドの手刀を受ける。
ガキン!!!
「……っ!」
「水神流を使わずとも、貴様らを殺すぐらい容易だ」
戦いは単純な撃ち合いへ。
オルステッドは片腕。エリスは両腕。
水神流も封じた。しかし、剣神流でも、奴は…
『最強』
エリスの剣とオルステッドの手刀が甲高い音を立て、火花を散らす。
ガン!
エリスが捌ききれず、一歩下がる。
オルステッドが一歩詰める。
二歩、三歩。
エリスが退く、オルステッドが詰める。
その繰り返し。優勢は常にオルステッド。
それは片腕でも変わらない。
エリスが負ける。その可能性が俺の脳裏に刻み込まれる。
しかし、そうはならない。だって、エリスには…
俺が居るから。
「エリスっ!!!」
俺はエリスの名前を叫びながら右腕を奴に向けた。
向けたのは、俺の最大の攻撃手段『ガトリング砲』
ストーンキャノンを連打する、そんな単純な攻撃。
そう、単純。しかし、奴にとって一番脅威となる攻撃。
オルステッド。この攻撃、簡単に受け切れると思うなよ。
「もう、それは食らわん。ディスタブマジック」
魔力を乱す龍神の技。
エリスの攻撃を横薙ぎで受け、その勢いのまま俺に指を向けてくる。
しかし、止まらない。
俺のストーンキャノンは奴のディスタブマジックでは止まらなかった。
「撃ち抜けぇぇぇぇぇあああぁ!」
ディスタブマジックは考慮すれば防げる。
そして、俺はディスタブマジックを考慮出来る。
故に、不発にはならない。
オルステッドは目を見開いて驚いた。
しかし、奴も最強。
すぐに冷静を取り戻し、俺のガトリング砲とエリスの太刀を避けるため、最低限のバックステップ。さらに自分に向かってくるストーンキャノンを手刀で弾きながら…
『水神流』を使った。
「やはり、先に殺すべきは貴様だったか」
カウンターの対象をエリスから飛んでくるストーンキャノンへ。
その先に居るのは…
『ルーデウス・グレイラット』
「死ね」
オルステッドは、左手の手刀に力を込め、俺に踏み込んでくる。
『死ね』という言葉を放ち、勝負を決めにくる。
この言動、最強の言動に俺は…
…静かに笑った。
カキン!
オルステッドの手刀が魔導鎧の腕にぶつかる。
左腕に仕込まれた土の盾。
それをオルステッドの手刀にぶつけ、カキン!という甲高い金属音を上げながら奴の手刀を止める。
そして、一言。
最強に向けて、俺から一言置いていく。
「俺でも苦し紛れのカウンターなら受け切れる」
「………」
俺の言葉を聞き、静かに俺を睨みつけるオルステッド。
その顔は何を考えてるのかは分からない。
しかし、事実もまた変わらない。
オルステッドの手刀が止まった。
それは紛れもない事実。
そうだ、俺は毎日エリスと組み手をした。
毎日、毎日愛しの人と鍛錬した。
そして、それだけじゃない。
ギレーヌ、パウロが居て、彼らと毎日修行をして。
日記みたいな未来は嫌だと必死で努力をして。
本気で頑張ってきた。
そんな俺ならば、闘気を模した魔導鎧を纏えば簡単には死なない。
そう自信を持って言える。
瞬間、殺気が走った。感じ慣れた心地良い殺気。
オルステッドの後ろから、赤い髪を揺らして。
俺のエリスがやってくる。
「ルーデウスに近付くんじゃないわよ!」
エリスの怒声。俺は、それを聞きながら歯を食いしばる。
オルステッドの正面には俺。
背後にはエリス。
最強を挟み込む形で追い込んでいく。
とてつもない速度で変わる攻守。故にオルステッドは気付けなかった。
フィールド全体に漂う、大きな『違和感』に。
「まさか、ラプラスよりも苦戦することになるとはな……」
オルステッドの言葉。
しかし、奴に焦りは無い。
その証明。最強が言葉を一つ置いていく。
「貴様にストーンキャノンは撃てん」
この発言。その真意は明白だった。
俺から見て、オルステッドの後ろにはエリスが居る。
ストーンキャノンを撃って、オルステッドが避けたら……
エリスが餌食になる。
だから撃てない。
警戒するのは他の魔術。
オルステッドは全身に力を込めた。
奴の推測。
ストーンキャノンが来ないという推測。
完璧な推測、最強の推測。
しかし、俺たちは……俺とエリスは、その上を行く。
ドン!
俺はバックステップで距離を取る。そして、魔導鎧の右腕を奴に向ける。
放つのは泥沼じゃない。
ライトニングじゃない。
俺の一番得意な魔術『ストーンキャノン』
瞬間、この戦いで初めてオルステッドが眉を顰めた。
「ルーデウス・グレイラット。仲間を捨てたか」
この言葉と同時。
オルステッドに向かうのは、何十、何百というとてつもない数の鋭利な土。
至近距離で放たれるガトリング砲は龍神でさえ全て避け切ることは不可能。
少し顔を曇らせながら、避けと手刀を繰り返すのが精一杯。
それほどの技、ストーンキャノン。
そんな技がエリスに向かえば、自ずと彼女は死ぬ。
これが龍神の考え。
刹那、加速する『違和感』
「ヒトガミに狂わされたか。今度こそ死ね」
オルステッドが言葉を放ち、手刀を振り上げる。
予見するのは、俺が奴の手刀に切り裂かれる最悪の未来。
しかし、そんな未来がやってくることはなかった。
ガン!!!
鳴ったのは大きな爆音。
場所はオルステッドの背中。
「だから言ったでしょ、ルーデウスから離れなさいって」
「ごふっ。エリス・ボレアス・グレイラット。何故、貴様が生きている……」
「……ボレアスは余計よ」
エリスの炎の太刀が龍神の背中を貫く。
彼女の力強い太刀が最強を傷つける。
エリスは、俺のお嫁さんは…
……無傷だった。
最終決戦 泥沼&狂犬VS龍神 勝者予想
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ヒトガミの敵にして最大の使徒 泥沼&狂犬
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世界最強 七大列強二位 龍神